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オープン初年度で、24万人がご来場。
地域を活性化した、水族館ブランディングプロジェクト。

CLIENT:沼津港深海水族館(佐政水産株式会社)さま

  • カスタマーブランディング
  • 静岡県

沼津港深海水族館〜シーラカンスミュージアム〜は、日本一の深度(最深部 2,500m )を誇る駿河湾の玄関口・沼津港に作られた「深海生物」をテーマとした水族館。東日本大震災の爪痕生々しい2011年、地元の老舗水産企業・佐政水産さまが沼津の活性化を目的に企画・建設した。同年12月のOPENから数々のメディアに取り上げられ、「初年度入場者年間20万人」の目標を見事クリア(24万人)。その後も入場者数は増え続け、2015年度からは年間40万人規模を維持。同社が運営する水族館や飲食店が立ち並ぶ“駿河湾を味わう町”「港八十三番地」も好調(こちらのコンセプトワークも弊社が担当)。

1課題

古くから地域に貢献してきた佐政水産さまの視点は、自社の利益よりもむしろ「地域」に向いています。かつて一大生産地として名を馳せた干物産業も徐々に縮小し、人口流出も深刻なレベルに達している沼津をなんとか活性化させたい。「地元の誇り」を生み出したい、沼津を「来たい街、住みたい街」に変えていきたい。そんな想いから出てきたアイデアの一つが、日本一深い駿河湾が目の前にある沼津港だからできる「深海生物」をテーマとした水族館でした。しかしこの前代未聞の試みには、以下のような数々の課題がありました。

 

<水族館開設前の課題>

①深海魚に対する、グロテスクで不気味なイメージ

②東日本大震災直後で、港湾地域に人が近づきたがらない

③そもそも深海生物の生態は不明で、飼育法が未知のものが多い(地上で果たして生かすことができるのか不明)

世界で唯一の冷凍個体など、5体のシーラカンスが展示されている

2解決の方向性

「深海生物」に特化した水族館は世界・全国で初と言われ、無謀な挑戦と懸念されました。深海魚は捕獲が難しい上、飼育方法もわからないため、すぐに死んでしまう可能性が高い。飼育スタッフも水質、餌、光の加減などを試行錯誤して育てていく必要があり、お客様に安定した展示を約束できません。そこで水族館のあり方自体を、「展示」から「発見」にチェンジ。人々がまだ知らない深海を「解き明かしていく施設」として運営することにしました。コンセプトは「深海が、いのちの謎を解く」。スローガンは「深海は、見えないから面白い」。生命とは何か、進化とは何か。深海を通じてそれを探っていこうじゃないか、という考え方です。他、課題それぞれに対しては以下のような対応策を取りました。

 

<解決法>

①姿や動きが可愛い「メンダコ」をキャラクターにするなど、深海魚のイメージを転換

②駿河湾という日本一の深海のそばだからこそ見れる、という特別感を演出

③YoutubeやTwitterなどを使って、深海魚を採取したときはすぐに発信するほか、飼育日記を積極的に発信し、興味喚起する

④研究施設のように、深海生物の生態や飼育法を解き明かして発信し、好奇心をくすぐるスタイルにチェンジ

3プロジェクトフロー

佐政水産専務および水族館関係者などと2時間程度のディスカッションを計5回実施。2011年6月より3ヶ月程度かけて骨子を作り、9〜12月でwebサイトなどを作成。同年12月10日にOPENを迎えました。

 

◆アウトプット

・水族館のコンセプトワークおよびコミュニケーションデザイン

・オープニングキャンペーン企画

・webサイト、ポスターなど

水族館のエントランス

館内の様子

企画ポスター

館内用リーフレット

ホームページ

4成果

OPEN間もなくメディア取材が殺到し、「初年度入場者年間20万人」の目標を大幅に上回る24万人をマーク。3年目には40万人以上という想定以上の集客を実現しました。夏休みシーズンには入場まで2時間待ち、という人気ぶりです。

 

沼津への観光客数は数年で約1.8倍(年間100万人→180万人)となり、水族館および周辺の飲食店などで雇用創出を実現したほか、深海生物をモチーフとした新たなお土産産業も活発です。テレビ局との共同制作番組の発信、新種の発見、古代魚「ラブカ」の生体展示にも成功。さらに(これまでは二束三文にしかならなかった)深海魚の値段が約10倍にまでアップし、地元漁師さんの新たな収入源になりつつあります。そもそもの目的であった「地域活性」にも、成果が出始めています。

 

こうした成果は、運営の細部までに「深海が、いのちの謎を解く」というコンセプトを落とし込み、創意工夫を続ける佐政水産さまや沼津港深海水族館さまの皆様の力の賜物。私たちの力は微々たるものかもしれませんが、沼津を活性化するという大きな志に向けて、重要なコンセプトワークに携わらせていただけたことは非常に光栄です。