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採用ブランディング2020.07.16

【第一回 VISIONS CONFERENCE アフターレポート】
「なぜ、あなたの会社は採用をするのか」から考える採用ブランディング・カンファレンス

先日6月23日(火)、パラドックスが昨年立ち上げた研究機関「パラドックス創研」が主催するオンラインセミナー、「第一回 VISIONS CONFERENCE」を開催いたしました。

「『なぜ、あなたの会社は採用をするのか』から考える、採用ブランディング・カンファレンス」というテーマで、採用および組織について、より深く考えていく機会になりました。採用に精通する二人のゲストパネラーをお迎えし、パラドックス創研の採用ブランディング主任研究員・虎上がファシリテーターを務め、YouTubeの視聴者の皆さまにはチャットでご参加いただきました。

ここでは、当日ご参加できなかった方や、再度カンファレンスの内容を確認したい方に向けて、当日議論された内容のサマリーをトークテーマ別に振り返ります。

ゲストパネラーのお二人について

株式会社人材研究所 代表取締役 曽和利光氏
京都大学教育学部教育心理学科卒業後、株式会社リクルート入社、人事部配属、組織人事コンサルタント、人事部ゼネラルマネジャー等を経験。ライフネット生命保険株式会社、株式会社オープンハウスで人事部門責任者を経て、2011年 株式会社人材研究所設立。

株式会社ヨシタケ 浅野允氏
「HR領域でフォローすべきTwitterアカウント40」に2期連続選出。自身が執筆したnote「中小企業の採用は『選択』が9割」「採用広報費0円で52名の就活生と出会った話」が評判を呼ぶ。コロナ禍における「Twitter採用人事」として講演多数。NHK出演や新聞・WEB記事にも掲載実績有。

#1:オープニングトーク

虎上:
ウォーミングアップとして、お二人に少しだけお話を伺おうと思います。曽和さんといえば、採用領域の専門家としてたくさんの書籍も執筆しておられますが、みなさんが気になる「コロナ禍における採用活動の変化」について、教えていただけますか?

曽和氏:
大きく分けると三つあります。一つは不況による求人倍率の低下です。今回のコロナショックはリーマンショックの時よりも大きいと予測されているので、当然買い手市場になります。

二つ目の変化は厳選採用になるということです。買い手市場になるということは企業側の問題は人を集めることではなく、ミスマッチを避けることになると言えます。

三つ目はオンライン化への対応です。今回コロナでオンライン化が急速に進みましたが、学生も企業側もメリットを知ってしまった以上、オンライン採用はコロナ後も定着すると思います。オンラインの場合、キャッチボール型ではなくプレゼン型の面接が主流になるでしょう。チャットやツールの利用方法、無観客で話すスキルなどの新しいリテラシーも必要になってきました。

虎上:
浅野さんといえば、「Twitter採用」で多くの講演をされていますが、そもそも、なぜTwitter採用をやろうと思ったのですか?

浅野氏:
実は、苦肉の策なんです。コロナやリーマンショックに関わらず、中小企業はいつでも採用難なので、いい人に出会えるということはなかなかありません。昨年までは、大手の就職ナビを使っていましたが、その効果も落ちていたのでやめました。合説やナビ媒体に注力する前に、弊社ならではの価値という部分を見直そうと思い、軸となる「採用コンセプト」の策定にお金をかけました。これはここにいるパラドックスの虎上さんにお手伝いをしていただきました。媒体も使わず、合説もコロナで全て中止。そこで残ったのが「Twitter採用」の道でした。「Twitter採用」をやってみて思ったのは「どう伝えるか」の前に「なにを伝えるのか」という核となるメッセージ、「採用コンセプト」があって本当によかったということです。

#2:「なぜ、あなたの会社は採用をするのか?」

虎上:
それでは本カンファレンスのテーマ「なぜ、あなたの会社は採用をするのか」について考えていきたいと思います。

<上記の問いに対して、視聴者より回答をチャット欄に記入いただきました>

虎上:
(チャットを見ながら)欠員補充のためといったご意見が多いですね。

曽和氏:
もちろん欠員補充のお話は多いですが、採用人数の目標を聞いて、「なぜその人数なんですか」と聞くと答えられない採用担当の方が意外と多いんです。欠員補充の場合、「それが新卒じゃないといけないのか?」「育成じゃダメなのか?」といったことや、「なぜやっているのか」を分かっている方とそうでない方がいると思います。

虎上:
「企業文化を継承するため」といったご意見も多いですね。

曽和氏:
企業文化に関しては継承と変革のどちらも採用に価値を見出せると思います。最近は特に「変革の人材」として新卒採用をする企業が多い印象があります。ただ、よくあるのは他の人事施策との協調ができていないパターンですね。企業を変革するのに、新卒採用だけを行ってもなかなか難しい。

虎上:
採用と入社後の教育や研修、マネジメントの施策を地続きにすることは、やはり大事なんでしょうか?

曽和氏:
そうですね、結局採用だけに限らず、人事の中で一番大事なのは「一貫性」です。新卒採用ではポテンシャルこそあれど、スキルも経験もない、いわば「一番弱い人」が入ってくるわけで、企業の変革を新卒社員だけに背負わせるのは荷が重すぎます。理念を軸に各種の施策を行い、その中に採用があるといった、一貫性のある人事を作ることが大事ですね。

虎上:
ヨシタケさんは一貫性という部分でいうと?

浅野氏:
私は採用担当でもあり、育成担当でもあるのですが、私も採用だけが自社の変革を担うとは思っていません。一方で、野球になぞっていうなら、超優秀な人材=「エースで四番」は育てられないので、やっぱり採っていきたい。もちろん、育成は回していきながらも、やはり四番になる人は採用で賄っていくしかないと思っています。

虎上:
寄せられているコメントを見ていると、企業側の視点からのコメントが多いように感じますが、学生側の視点というのはないのでしょうか?

浅野氏:
学生を見ていると学生が働くことを前向きに捉えにくくなっていると感じます。ただ、私は働くことは楽しい、面白いことだなと思っていますので、ここをしっかり伝えていかないと日本はダメになるのではないかと。ヨシタケが打ち立てた「きみダケ」という採用コンセプトは「君の代わりはいないよ」「ここなら君ならではの仕事ができるよ」ということです。だからTwitterでもよくそういうことを呟いています。

曽和氏:
採用で出会った人たちが数年後に「何者か」になっていく瞬間に触れ合っていることを楽しむことができる。それが理想です。もし入ってくれなくても出会った人たちが成長していくことに価値を感じるべきではありますよね。一方で、学生側に振り切ってしまうと、それはもはや人事ではない。

浅野氏:
もちろん、会社のみなさんが稼いでくれた利益で採用活動ができているので、完全に個人の視点に寄っているわけではありません。7割くらいは会社が前進するために採用をしています。ただ、採用をうまくいかせたいなら、一歩引いて学生にとっての価値も考えてあげないといけないんです。

曽和さん:
会社の目標と個人の目標が一致していたら、これは最強ですからね。

虎上:
ヨシタケさんは、なぜ採用をするのですか?

浅野氏:
やはり「会社の未来を作るため」ということは意識していますね。ふつう、採用担当は10人20人と目標を課せられます。ただ、採用することが目的になってしまうと個人にとっても企業にとってもよくありません。ミスマッチを一つでも減らし、未来につながる採用をするということですね。

虎上:
曽和さんはいかがでしょうか?「なぜ、採用をするのですか?」

曽和氏:
これは人間に例えると「なぜ生きるのか?」とも言える質問なので難しいですよね。私は、「なぜ採用するのか?」とは「なぜ組織化するのか?」と同義だと思うんです。何が言いたいかというと、やりたいことがはっきりしている、会社に理念がちゃんとあるなら組織を作ったほうがいい、つまり採用したほうがいいということです。刹那的なビジネスをしたいなら、組織である必要はないと思います。組織化の原点は政治運動、布教活動なので、それが採用することの究極的な意味なんじゃないでしょうか。

#3:「究極の採用とは、なんですか?」

虎上:
次の問いに移りたいと思います。「究極の採用」とはなんですか?

<上記の問いに対して、視聴者より回答をチャット欄に記入いただきました>

虎上:
回答の中で気になるコメントはありますか?

曽和氏:
回答を見てみると「マッチング」等のキーワードが多いですね。効率性とか「ピタッと当てる採用」みたいなご意見ですね。ちなみに、僕が入社した当時のリクルートは効率性をあまり重視してはいませんでした。だから、効率性の高い採用が究極なのかわからないんです。ただ、現在は他の会社の採用に触れ、マッチングや社会最適といったことも考えるようになりました。

浅野氏:
ヨシタケでは、ある年に最後まで悩んだ結果、最終的にヨシタケではなく、他の企業さんに就職された方がいました。しかし、2年後に何とその方の彼氏さんがヨシタケを勧められたと受けに来られたんです。このエピソードからも短期的な利ばかりを取るのではなく、その人が自社に合っているかを、下心を出さずに考えればいいと思います。自分たちのことばかり考えていると人は離れていきますから。

曽和氏:
その通りですよね、無理やり引きずり込んで失敗すれば、その人のネットワーク全体を失ってしまいますからね。 

浅野氏:
そうですね、情報が回るのは“光”よりも速いですよ(笑)。それこそTwitter採用をやっていて、情報の共有は凄いので、ヨシタケのことをいいと思ってくれた方は、周りにいい情報を発信してくれるんですよ。もちろん、逆もあると思うんですよね。

虎上:
「全社採用」「リファラル採用」といった「巻き込み」をうまくやっていくポイントはありますか?

曽和氏:
「巻き込み」を行うには、そもそもその会社で働いている人が満足してるかが重要ですよね。大事な人を紹介するわけですから。まずは、紹介したくなるような会社になること。そうなっていない会社は、リクルーターが「うちの会社はよくないよ」と言ってしまう現象が起きる。リクルーターを見れば会社の健康度が分かりますよね。

虎上:
会社の理念や存在意義が明確で、そこで働く社員が共感していると、学生にも響く全社採用ができるのかもしれないですね。

曽和氏:
全員が採用担当を経験するのが、結局一番いい全社採用への道なのではないかと思います。

虎上:
効果が見えにくい「採用ブランディング」において、「採用コンセプト」があることによる効果を実感した瞬間は?

浅野氏:
学生さんがコンセプトを言葉にし始めたときですかね。学生さんがヨシタケの良さを「ダケ感」と呼ぶようになりました。「採用に対する価値観」=「採用コンセプト」でしっかり学生と握手をしていると辞退が少なくなります。本人も親や友達に、「なぜヨシタケに入りたいのか」を説明できるようになります。学生本人の意思で“本命“に選んでもらえるようになりました。

#4:ゲストパネラーお二人の“使命“とは?

虎上:
最後に、ゲストパネラーのお二人の“使命”とは何ですか?

浅野氏:
私は「労働は苦役」という考えを覆すことが使命だと思っています。私の母親はすごく苦労をして働いていました。だから私は、「働くって楽しいんだ」ということを世の中に伝えたいんです。企業と学生さんの素敵なマッチングができれば「労働は苦役」という概念を覆せると思っています。

曽和氏:
私は、自分はカタリスト、つまり触媒なんだと思っています。究極的なことを言うとやりたいことはあまりないんですよ。だからやりたいことがある人のためにパワーを使っているわけです。今は人事領域での知見を生かして、人事のためのカタリストとしてやっています。

-最後に

虎上:
本カンファレンスは手法=いわゆる「HOW」の部分を授けるセミナーではありません。刻一刻と変わる採用市場、解決策が無数にある採用の世界の中で、あらためて「WHY」の部分に立ち返ることを大切にしています。

そのWHYの部分を、一人ひとりがあらためて考えること、つまり、自分自身の志や自社の志を考えることで、社会が力強くなっていくと信じています。皆さん本日はお忙しい中ご参加いただきありがとうございました。

#5:ご感想

当カンファレンスにご参加いただいた方々からのご感想の一部をご紹介させていただきます。

「『働くことは楽しいことだ、と学生に感じてもらえる採用活動をする』といったことなど、採用に携わる上で常に自ら考えていきたいと思いました。」

「ありそうで、なかなかないテーマ。是非今後も定期的に続けてほしいです。」

「手法=『HOW』ではないセミナーが新鮮でした。何より、パネラーお二方の仕事に対する情熱に触れて、自分自身もがんばらなきゃ、と思いました。」

「お二人とも、とても楽しそうに話しておられる中で、時折見える熱い顔がとても印象的でした!ぜひまたお二人のお話を聞いてみたいです。」

 

パラドックスでは今後もVISIONS CONFERENCEの開催を企画しておりますので、第二回以降も皆さんのご参加を心よりお持ちしております。告知は弊社のfacebookアカウントからも発信しておりますので、ぜひ、ご覧ください。

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