株式会社パラドックス

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「こころをひと押し」
新時代の理念策定から、象徴商品の開発へ。

CLIENT:サンビー株式会社さま

  • カスタマーブランディング
  • 大阪府

印鑑製造の技術だけでなく、「人の想いを大切にする文化」を長年に渡って受け継いできたモノづくり企業。2021年に100周年を迎え、創業当時からの想いを継承しつつ、新しいことにも積極的に挑戦していくため、ブランディングのご相談をいただきました。ペーパーレス化が進む中、改めて企業としての使命を見つめ直すことで、節目の年に新たな一歩を踏み出しました。

1ご依頼のきっかけと課題

きっかけは、現・代表取締役社長の山本忠利様が(当時は専務取締役)、MBA大学院で弊社のブランディングに関する講義をお聞きになったことでした。近年は「印鑑廃止論」が叫ばれていることもあり、山本様は会社を変える必要があると考えていたといいます。以下、山本様に当時を振り返っていただきながら、お話をうかがいました。

 

山本社長:
当時、事業承継を控えていて、今後は会社をどうして行こうかと悩んでいました。弊社はメーカー業と卸業を両立していますが、将来を考えると卸業は厳しくなるだろうと感じ、メーカー要素を強くしたいと思っていました。そこで、ブランディングが必要だと思い、お話を聞いたのですが、特にその時に聞いた「みんなでどうやって一つの方向に向かっていけばいいのか」という理念の話には、とても共感しました。これが僕が求めていた、考えていたことだ、と腹落ちしたのを覚えています。

 

企業としてどのように使命を持ち、社会に貢献していくのか。老舗だからこそ、時代にあったあり方に変え、事業のやり方を変えていくため、共創パートナーとしての歩みが始まりました。しかし、理念経営をしていくことの意味を、社員に理解してもらうまでには、時間がかかったといいます。

 

山本社長:
最初は、みんなよく分からない、という感じでした。「何をやるんだ、何を言っているんだこの人は」という反応。説明はするのですが、正直、そこで腹落ちするのは難しいだろうと思っていました。なので、あえて説明し過ぎず、なるべくヒアリングをして、社員たちの意見を取り入れるようにしながら進めていきました。いきなり考え方を変えてもらうというよりは、プロジェクトを動かして行く道中で、組織内の考え方もちょっと変わってきたかなと思います。

2新しい理念の策定

まずは、約半年をかけ、ミッション、ビジョン、バリュー、スピリット、そしてストーリーをつくりました。チームにはグループ会社の方にも参加していただき、毎月1〜2回のセッションを実施。今回、新たな理念をつくるにあたり、将来に向けた話だけでなく、過去を紐解くことにも取り組みました。こうした取り組みは、会社として初めてだったといいます。

 

山本社長:
先代はビジョンにあふれるというよりは、堅実な方でした。3年後、5年後はどうしていこうというよりは、毎日堅実にやっていれば自ずと道は開けていく、というタイプでした。どちらが正解ということはないと思いますが、考え方の違いで、今まではあまり将来を語ることはありませんでした。今回、当時の役員や社長にも話を聞いて、過去を紐解けたのは面白い機会だったと思います。何となく聞いたことはある話でも、そこに宿るDNAをみんなで考察し、言語化をしたことはありませんでした。結局は、こういうことを大事にしていたから、今があるのだなと分かって、僕自身も面白かったです。他の参加メンバーも、過去から現在までのストーリーを理解し、意味付けができたのは、すごく有意義な時間だったと思います。

 

サンビーが100年にわたり受け継いできた想いを、会社のレジェンド、かつての社長や役員に話を聞くことで、「人を尊重する」という文化の大切さにいま一度気づくことができました。こうして、「こころをひと押し」という、過去と未来への想いが結びついた新たな理念が誕生しました。

▲策定された新たな理念

▲理念をもとにつくられたスローガン

▲制作したビジョンストーリー

3象徴商品の開発

100周年という節目の年ということを受け、新しい理念の策定と共に、それを象徴する商品の開発もお手伝いさせていただきました。当初、象徴商品は印鑑以外を想定していたという山本社長。しかし、セッションの中で過去を紐解いていくうちに、長年培ってきた印鑑のノウハウが何よりの強みであると気づいたといいます。

 

山本社長:
最初は、印鑑ではなく、先進的な商品がいいと思っていました。でも、過去を紐解いていくと、「我々がやる意味があるものは何だろうか」という壁に突き当たりました。そうすると、印鑑は100年つくってきたものなので、ノウハウもあるし、強みになるのではないかと。あとは、環境の変化もありました。ちょうど、印鑑が要らないと世間で叫ばれ始めた時期。「業界を守ろう」ということではないが、逆に、違う意味で印鑑にスポットライトを当てられるのではないかと思いました。それだったら、我々がやる意味がすごくあるのではないかと。

▲理念象徴商品の開発・リリース・販売まではワークショップ形式で進めました。

印鑑業界に逆風が吹く中、ただの記念商品ではなく、新たなビジネスモデルも模索しながらの開発。まずは市場調査やヒアリングを行い、今後のブランドパートナー像を明確にしました。しかし、これまで通りに購入してもらうだけでは、機会は限られてしまいます。そこで誕生したのが、今までにない新たなコンセプトの印鑑「みちてらす」でした。

 

山本社長:
弊社が昔から言っている「人間尊重」、「人を大切にしていこう」というのをコンセプトに取り入れたいと思いました。自分のためにというよりも、相手のための商品。そして、印鑑を誰かに贈るのは、どういうシーンだろうという議論になりました。議論の中で、「子どもに贈る」という意見が挙がり、あまり自分では買わないけどもらって嬉しいし、他の贈り物と被ることもないのではないかと。なおかつ、流行があまりないので年配の方も贈りやすく、名前が入るので意味づけもしやすい。こうしたポイントが、相手を思いやる、人を尊重するという社内文化と合致し、コンセプトが決まりました。

こうして決定した「親が独り立ちする子どもに贈ることで、人生をひと押しする」というコンセプトのもと、こだわりの伊勢ヒノキなどの素材、2種類ある印鑑のフォルム、ロゴや外箱まで、何度にも渡る議論の末に決定。新理念の「こころをひと押し」を象徴する商品となりました。

▲「真」と「遊」我が子のタイプに応じて選べる2種類の印鑑の形。

▲「みちてらす」コンセプトストーリー。商品のLPサイトはこちら

商品が完成し、いよいよリリースへ。今までは、主にB to Bが主なビジネスモデルでしたが、「みちてらす」は直接ユーザーへのアプローチが必要となります。そこで、PR TIMESなどのプレスリリースを行ったほか、通販番組での販売にも挑戦し、反響を呼びました。

 

多くの挑戦があった象徴商品開発プロジェクトは、B to C の新たなチャネルが開拓できただけでなく、社内へ向けてもいい刺激となりました。プロジェクトメンバーだけでなく、その他の社員も「会社が何かチャレンジをしようとしている」ということを前向きに受け取り、その先の組織変革の起爆剤となりました。

4お客様の声

新しい理念の策定から商品開発まで、パラドックスと共に歩んだ今回のプロジェクトを振り返った感想を、山本社長よりいただきました。

 

山本社長:
忙しい時、夜分遅くに連絡をしてもすぐにレスポンスがあり、一緒に歩んでもらっていると感じられました。本当によく寄り添ってもらっていて、包み込んでもらっているような感覚でした。企業理念に関しては、つくってからがスタート。これからどういう形で歩んでいくか、何をしていくのか、ブレずにやっていきたい。ひとりでも多くの人に共感していただけるよう、世の中に発信していきたい。それで、世の中がよりよくなればいいなと思います。

今後は、さらなる理念の浸透を目指すだけでなく、「人生の門出に実印を贈る」という新たな文化づくりというチャレンジにも、伴走者として貢献してまいります。
*一連の取り組みは『PR Times STORY』でも記事化しておりますので、よろしければ併せてご覧くださいませ。