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理念づくりから事業戦略、周年事業まで。
10年に及ぶブランディングの伴走。

CLIENT:湘南ベルマーレさま

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湘南ベルマーレは、株式会社湘南ベルマーレと特定非営利活動(NPO)法人湘南ベルマーレスポーツクラブの2つの組織で構成される総合型スポーツクラブ。神奈川県西部の9市11町に広がる大きなホームタウンを舞台に、サッカーだけにとどまらないさまざまな活動を行っています。ここでは、2014年の『SPIRIT BOOK』制作から始まる、足かけ10年に及ぶブランディングプロジェクトを振り返ります。

1ご依頼の背景

90年代、中田英寿氏をはじめとする数々のスター選手を擁し、「湘南の暴れん坊」として人気を博したベルマーレ平塚。99年に親会社が撤退したことを受け、一時は存続の危機にも陥りましたが、幾多の苦難を乗り越えながら地域に愛される総合型スポーツクラブとして成長を遂げてきました。

 

パラドックスと湘南ベルマーレの出会いは2014年に遡ります。最初のお声がけは会社案内の制作のご依頼でした。しかし打ち合わせを重ねる中で、「会社とチームの思いはひとつなのに、その思いを語る言葉が一人ひとりバラバラである」という課題が浮かび上がります。そこで、会社案内の制作に取り掛かる前に、まずは理念をつくり、自分たちの価値観を明確にすることをご提案。ここから、理念を土台に企業を成長させる、本格的なブランディングが始まりました。

 

ここでは主だった4つのプロジェクトについて時系列でご紹介します。

2『SPIRIT BOOK』制作(2014年)

企業のDNAを明確にするために、半年間かけてヒアリングを実施。対象者は、役員層から全社員、選手、サポーター、スポンサー、NPO法人の職員に至るまで約35人に及びました。どんな人生を送ってきて、なぜ今ここにいるのか。なぜ、たどり着いたのが湘南ベルマーレなのか。それぞれ異なる言葉で話していても、共通して浮かび上がってくる湘南ベルマーレのスタンスと、苦難から這い上がる中で幾度となく問い直した自分たちの存在意義。それらは「たのしめてるか。」というスローガンへと昇華され、歴史・理念・DNA・企業概要を一冊にまとめた『SPIRIT BOOK』の制作へとつながっていきました。またこの時に、湘南ベルマーレのビジョンは、「人生と地域を豊かにする、スポーツ文化が根ざしている世の中。」と掲げられました。同年12月の日本経済新聞・全国版コラムでは、「サッカークラブが理念をつくった稀な例」として紹介されています。

▲2014年に配布を開始した『SPIRIT BOOK』第1号。詳しくはこちらでご紹介しています。

このスピリットブックは社員や選手の採用活動からスポンサー獲得の場面まで一貫して使われ、スローガン「たのしめてるか。」はまたたく間に普及しました。翌年には改訂を加えた『SPIRIT BOOK2』を発行。より多くの人の共感を巻き込みながら、クラブは2015年以降、1シーズンをのぞいてJ1で戦えるほど強いチームへと成長を遂げていきました。

3クラウドファンディング支援(2020年、2022年)

湘南ベルマーレ誕生から20年、さらなる進化を遂げようとしていた矢先を襲った新型コロナウイルス。試合の来場者数は約70%減少し、クラブの経営状況は大きく悪化しました。

ベルマーレは、チーム強化費およびクラブ運営費補填を目的に、クラブ史上初となるクラウドファンディングを立ち上げることを決定。2020年、2022年それぞれの実施にあたり、クラウドファンディングの顔となる告知メッセージの制作依頼がありました。

▲2020年のメッセージ

▲2022年のメッセージ

第一回、第二回共にクラウドファンディングは大幅に目標を超える形で成立。のべ9,000人以上の方々のご協力をいただき、支援金額は合計2億1600万円を突破しました。Twitterにもサポーターからの応援メッセージが溢れ、湘南ベルマーレがどれほどまでに愛されているかが可視化される結果となりました。

4中期経営計画支援(2022年)

2022年、湘南ベルマーレの水谷社長は「2030年に35億円クラブになる」ことを目標に掲げることを決断。その目標を全員で共有するため、ビジョンと事業をつなげた事業戦略プロジェクトを打ち出し、社内の各部門がどのようにビジョンに近づくかを各々が棚卸しする機会を持ちました。

 

社員の皆さまから、「ふだん、なかなか聞くことのなかった周りの部署の考えや想いを分かち合う良い機会になった」とのご感想をいただいた本プロジェクト。社内の士気の高まりを背負いながら、水谷社長は2022年6月の株主総会でこの中期経営計画を発表し、未来への道筋を示した上で2022年末を持って社長を勇退されました。

530周年プロジェクト(2022年)

Jリーグ参入30周年となる2023年に向け、スローガンとロゴの作成を実施しました。30周年事業プロジェクトの主体となった若手社員のみなさんにヒアリングしてみると、「未来に向けて、自分たちらしく成長の意志を伝えられる周年にしたい」「広大なホームタウンのすべてを巻き込み、まだベルマーレが届いていない地域にも“ベルマーレがあってよかった”と思っていただける取り組みがしたい」との意思が表明され、それを受けてスローガンは「あたらしいうみへ」に決定。ロゴはベルマーレカラーを用いながら、30周年から無限の可能性を広げていくという気持ちを込めて制作しました。

▲スローガン、ロゴともに2023年1月より使用を開始。

▲2023新体制発表会にて、スローガン、ロゴを発表。

6効果と反響

約10年の月日の中で、湘南ベルマーレは安定したクラブ成績を維持しながら成長を続けています。特に、J1所属クラブの多くが大手企業のスポンサー十数社に支えられて存在する中で、湘南ベルマーレは2022年現在、168社のオフィシャルクラブパートナーと469社に及ぶサポートコーポレーション(街の小さな商店や個人が小口で出資するスポンサー制度)で成り立っており、これは湘南ベルマーレがいかに地域の一人ひとりの心の中に“自分の”チームとして深く根ざしているかを象徴する事実とも言えます。

 

最後に、プロジェクト実施当時に社長だった水谷さんからいただいた言葉をご紹介します。

 

「『たのしめてるか。』のスローガンがあるから、チームが苦しいときでも一丸となって応援しようと背中を押してくれる。そういうファンがたくさんいるんです」

「僕らが実現したいのは、ビジョンとして掲げている『人生と地域を豊かにする、スポーツ文化が根ざしている世の中』。その根底には地域をおもしろくしたい、明るくしたいという想いがあります。勝ち負けはもちろん重要なんですが、観に来てくれた人の心を動かすことができるかどうか。彼らの想いに応えられる90分だったかどうか。それが重要です」

 

地域とともに歩む湘南ベルマーレが、そのビジョンを実現する日まで。私たちもまた、大きな声援の波の中で共に声を出し、旗を持つ手を支え続けます。