株式会社パラドックス

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生活を支援する介護から、「できる」をふやす介護へ。
新しい使命で、仕事の目的意識を高め、
地域に生きがいを燈そう。

CLIENT:社会福祉法人 一燈会さま

  • 採用ブランディング
  • 神奈川県

一燈会様は神奈川県小田原市を中心に介護福祉領域における施設運営を行っている社会福祉法人です。医療先進県と言われる神奈川で、地域に根ざし、医療と介護が一体となった複合施設の開業や、質の高い介護士の育成など、業界に先駆けた新しい事業に取り組んでいます。パラドックスは採用プロモーションのご依頼をきっかけに、法人の幹となる企業理念やロゴの策定、理念を軸とした組織活性など、ブランディングをトータル的にサポートさせていただいています。このプロジェクトの一環の取り組みについて、一燈会の山室淳理事長にお話しいただきました。

ご依頼のきっかけ

山室様

私たち介護業界は採用が難しいといわれています。希望を持って入社しても、現場の大変さから離職してしまう人が多い業界です。さらに私たち一燈会は、神奈川県の県西部という土地柄もあり、都心のように人材流入が難しい。新卒採用を積極的にやっていきたいと考えている中で、何とかして私たちの魅力を伝えることができないか。そんな時にパラドックスさんと出会いました。一燈会では、地域を巻き込んだ複合型介護施設や、介護業界に先駆けたIoTや教育研修など、エポックメイキングな取り組みはあるものの、どのように一貫して打ち出せば良いかわからずにいました。しかし、パラドックスさんが自分たちでも気づいていなかった魅力を引き出してくれ、自分たちが当たり前のようにやっていたことを、強い魅力として打ち出すことができたのです。

▲採用コンセプトから策定をした採用リーフレット

1採用から理念・ロゴの一新プロジェクトへ


山室様

採用の中で、自社の魅力を言葉にしていくうちに、私たちにとって本当に必要なものが見え始めてきました。それが新しい理念をつくるということでした。一燈会は創業から約30年を迎え、ちょうど先代から私へと事業継承したばかりでした。組織体制が大きく変わり、新しい未来を描いていくためにも強い理念の必要性を感じました。創業からある「誰よりもお客様の身になって」という理念は経営の原則ではありましたが、5年先、10年先を見据えた時にみんなの旗印になる理念になっているのだろうか。その視点から考えても、早急に見直しをするべきだと思ったのです。

 

そのようなタイミングで、長崎の社会福祉法人「愛隣会」様の事例についてお聞きし、実際に長崎の法人見学もさせていただきました。そこで生き生きと働くスタッフのレベルの高さや、法人としての一貫性、まさに「理念の力」を自分の目の当たりにし、早速、各事業所の責任者と次世代を担う若手スタッフを中心に新理念策定のプロジェクトチームを結成することになりました。

 

※愛隣会様の事例はこちらからご覧いただけます。

 

パラドックスさんにファシリテーションをしていただき、何ヶ月もセッションを重ねました。先代の現会長へのインタビューを通じて、これまで大切にしてきたものを知り、そこから変えるべきこと、変えてはいけないことを議論できたことは、私たちにとって非常に意義深い時間でした。セッションは、参加したメンバーそれぞれが、日頃大切にしていることや会社が目指すべき方向性に対して、否定せずに意見を出し合えたのがよかったと思います。アイデアの量も増えました。やりたいことをみんなで作り上げていく「部活動」みたいな雰囲気でしたね。セッションの翌日は、施設長が元気になって出社してくるという声もあったほど活気に満ちていたと思います。

▲プロジェクトメンバーとセッションの様子。

2「生きがいのある人生に、挑む。」


山室様

介護業界では、お客様の生活をサポートする介助から、お客様の自立を支援する自立支援介護という考え方がスタンダードになりました。しかし、私たちは、さらにもう一つ先の介護があると考えています。それが、セッションを通して紡いでいった「生きがい」という言葉です。歩ける、食べられる、といった自立の先にある、「働きたい」とか「家族と旅行に行きたい」といった生きる喜びを支援する。自己実現や他者貢献の欲求を満たせる次元の高い介護。私たちはそこを目指そうよと。実際に私たちの施設では、お客様自らが施設の仕事を手伝うことでポイントが貯まり、ご家族に還元できる仕組みにも取り組んできました。自社の強みやらしさを一つ一つ紐解いていくことで、「生きがいのある人生に、挑む」という新たな存在意義が生まれたのです。

 

ミッション・バリュー・スピリット、そして合言葉となるスローガン「生きがい、燈そう」という言葉が生まれました。それと同時に法人の顔となるロゴマークも一新しました。お客様もスタッフにも、地域にも、地域に、生きがいを燈していく。その決意を老若男女の満遍の笑みで表現していただき、いわゆるセンシティブすぎる介護のイメージを、いい意味で壊していけるものになったのではないでしょうか。

▲各施設に張り出しているポスターに。

▲ロゴの意味を伝えるムービー

▲一燈会様の根幹にある理念を紐解いたコンセプトムービー

▲理念から伝えるウェブサイト

3Visions surveyを起点にした理念浸透活動

山室様
理念はつくるだけでは終わらない。その後の理念浸透が重要だということは、以前から認識していました。特に介護のような事業領域は、形のある商品に企業理念を込めることができません。私たちが提供する価値は、そこで働く人々です。一人ひとりのサービスが商品であり、そこへ理念が浸透することが、理念の体現でありカスタマーブランディングとなります。

一方で理念浸透が必要とわかっていても、当然経験もなく、何から始めたら良いかは全くわかりません。理念の策定や採用にも携わり、当社のことをよく理解してくださっているパラドックスさんに、理念浸透のアドバイザリーもお願いしたのは自然な流れでした。

プロジェクトの開始にあたり、まずはパラドックスさんが独自に開発・提供されている、「visions survey※」を実施していただきました。
※visions surveyは「同志度」という独自の指標を測定する組織サーベイです。サービス詳細については以下からご覧いただけます。
https://prdx.co.jp/visions-survey/

サーベイの結果をもとに会社が抱える課題を洗い出した上で、各施設の施設長と共有、課題解決に向けた月に1回の定例ミーティングを実施しました。初年度は主に理念を全社に浸透させることを目的に、各施設の具体的な取り組みを検討。翌月には取り組みの結果をみんなで共有した上で改善ポイントなどを話し合い、次月の取り組みへ活かすことを続けました。

そういったことを1年続けた上で、あらためてサーベイを実施すると、驚くことに、さまざまな数値が向上していました。特に大きく改善したのは、eNPS(「Employee Net Promoter Score」の略称であり、「親しい知人や友人にあなたの職場をどれくらい勧めたいか」を尋ね、「職場の推奨度」を数値化したもの)の数値です。前年から15ポイントも上がっており、理念策定と理念浸透の効果を実感しました。

とはいえ、まだまだ課題は山積み。そこで2年目は11の施設を3チームに分けて、各課題に取り組むことになりました。1年後に得たい成果を定性・定量それぞれ設定し、そこへ向けた取り組みを毎月のミーティングで報告。パラドックスさんには、取り組みの中で発生した課題や滞っているポイントについてアドバイスをいただいたり、取り組みや議論が理念から脱線しそうになった際に軌道修正していただきました。

現在は3年目に突入。3度目のサーベイ結果をもとに、新たな理念浸透施策について計画しているところです。

4活動の成果

山室様
この2年間理念浸透施策を実施したことで、大小問わずさまざまな変化が起きました。以前は介護の方針で対立することもあったスタッフ同士も、目指すべき方向性が定まったことで、足並みを揃えて業務を行うことができるようになりました。またこれまでは施設長が中心で提案していたさまざまな取り組みについても、スタッフから声があがるように。その際の会話でも、「生きがい」がキーワードとして無意識に使われるようになっています。

その結果ある施設では、地域とのつながりに生きがいを感じる利用者の方のために、スタッフが行政と連携して、横断歩道の旗振りを任せてもらえるように交渉しました。また日頃アート作品をつくることを生きがいとしている利用者の方のため、地域のドコモショップに場所をお借りして、作品展示をさせていただくようにもなりました。

それらの取り組みをより活性化させるため、全社ではミッションである「生きがいある人生に挑む」に基づき、“生きがいづくり”に貢献したチームの表彰「生きがいいネ!一燈賞」、推薦されたスタッフの個人表彰「生きがいマスター賞」の表彰制度が生まれました。

利用者の生きがいをつくることで喜ばれるのはもちろん、表彰によってスタッフの評価につながることでモチベーションも上がる。理念が言語化されたこと、その理念が浸透したことで、良い循環が生まれたと思っています。

5今後の展望

医療や介護などの業界は、情報の発信力を含め、ブランディングがいまだ大きな課題です。私たち自身がブランド力を上げて外に発信すると同時に、理念浸透を通じて内部を整えることも同時に進めていかないといけません。今後さらに事業を展開していくので、visions surveyを活用し、自分たちがどういう状態なのかを把握しながら、組織拡大を図っていきたいと思っています。