次の100年に向けて世界中の人生を、響かせる。
CLIENT:河合楽器製作所さま
- コーポレートブランディング
- 採用ブランディング
- 静岡県
河合楽器製作所は、1927年創業の世界に誇る老舗ピアノメーカー。ピアノの開発・製造・販売・アフターメンテナンスに加えて、音楽・スポーツの教室運営、金属・木工加工まで幅広く事業を展開。世界中の音楽愛好者から支持されています。
2024年4月に新社長が就任し、2027年に創業100周年を迎えるにあたり、これまで河合楽器製作所が大切にしてきたことや、これからどこへ向かうのか(目指す未来)について整理をするため、コーポレートブランディング(フィロソフィー策定)を実施することになりました。
また、策定したフィロソフィーを採用活動に活かすため、採用スローガン・ステートメントの開発も同時に行いました。
1ブランディングの背景と課題
河合楽器製作所は、ブランドの認知拡大を目的としたアーティストの起用やマス広告をほとんど行ってこなかったため、ブランドの魅力が十分に伝わっていないという課題を抱えていました。さらに、少子化に伴う音楽人口の減少によって国内市場は縮小傾向にあり、アジアや北米といった海外市場でのブランド浸透と認知向上が急務でした。そこで、改めて国内外でのブランド認知度を高め、日本と文化的背景が近く、経済的にも成長し続けている東南アジア市場への展開を重点戦略に据えて、電子ピアノのシェア拡大を目指しています。
一方で、河合楽器製作所には、背中で教えるという昭和の職人気質が色濃く残っており、企業としての想いを言語化することなく、「世界一のピアノをつくる」という標語を掲げ、長年ピアノづくりが行われてきました。そのため、本社スタッフですら当時掲げていた経営理念を理解できておらず、竜洋工場の小市庭園に象徴される「カワイイズム」の理解や製品づくりへの情熱が社内に十分に伝わっていないことが課題としてありました。
2フィロソフィーの策定
まずは、河合楽器製作所が大切にしてきた価値観やカルチャー、DNAをパラドックスのディレクター自身が理解するために
●竜洋工場への視察
●取締役・元顧問へのインタビュー
●大学教授へのインタビュー
●カワイ音楽教室の講師へのインタビュー
●カワイ音楽教室の親御さんへのインタビュー
●従業員へのアンケート
を実施。
これらの情報をもとに、次の100年を見据え、河合社長とディスカッション形式で、約6ヶ月かけてミッション・ビジョン・バリュー・クレド(MVVC)を策定。海外ではたらく社員やお客様にも河合楽器製作所の想いを伝えるべく、弊社のグローバルチームが翻訳を担当し、英語版のフィロソフィーも策定しました。
河合楽器製作所の使命とは何か、河合楽器製作所がこれから目指すべき未来はどこなのか、といった議論を行いました。河合社長の「河合のピアノは演奏者の相棒、パートナー。弾く人に寄り添って、喜怒哀楽のすべてを表現するもの」というお話から、Missionは「人生を、響かせる。」という言葉に決まりました。
また、製造・販売・調律・教育までを提供する四位一体は、河合楽器製作所ならではの強み。Visionである「100年後もつづく、音楽文化を。」は、「人生を、響かせる。」というミッションに照らし合わせ、製造から教育までを一貫して支える、四位一体の体制により、これからの音楽文化を牽引していくとともに、さらに豊かなものにしていくという覚悟の表れを言葉にしました。



▲「ピアノをつくる会社から、音楽文化をつくる会社に」ビジョンには、そんなメッセージが込められています。



▲日本語のフィロソフィーに込めた想いと背景を、より情緒的に伝わるように言葉選びにこだわりました。
3キービジュアル・WEB特設ページ制作
ミッションである「人生を、響かせる。」は、河合楽器製作所の各セクションではたらく一人ひとりの使命であるとともに、多くの人と時間を費やしてつくられたピアノそのものの使命とも言えます。それは、創業者である河合小市さんのピアノづくりにかける想い、DNAでもあります。そんな背景から、キービジュアルは、河合楽器製作所のピアノ1号機「K.KAWAI」を描きました。

▲1号機「K.KAWAI」を描いたキービジュアル。イラストレーターはagoeraさん。
河合楽器製作所が大切にし、表現したい価値観。それは「人間のぜんぶの感情」「喜怒哀楽」「人の感情を肯定すること」。サイト内で使用するキービジュアルは、「たのしい」や「にぎやか」といったポジティブな側面だけでなく、人が持つすべての感情を伝えられるものにしたいと考えました。
扱っているものは、ピアノを中心とした”モノ”ですが、提供したいのはピアノを通して得られる体験。形のない”体験”にフォーカスし、イラストのタッチの強弱や色の明暗にまでこだわり、ピアノを通じて生まれる人々の感情や情景、そしてそこに流れる物語の奥行きを丁寧に表現しました。

▲演奏者と相棒であるピアノを、温かみのあるイラスト(アクリル絵の具)で表現。ピアノを前に「人生を、響かせる。」シーンを描きました。
4採用コンセプト・ステートメント策定
まずは、採用活動の状況を理解するために
●人事担当者へのインタビュー
●社員へのインタビュー
を行いました。
また、採用ブランディングを始めるにあたり、人事部の皆さんに河合楽器製作所のフィロソフィー(使命や目指すべき未来などのMVVC)を理解していただくため、約6ヶ月かけて策定したフィロソフィーに関する情報をすべてお伝えしました。
その後、採用ブランディングセッションを実施。採用・育成の課題の共有や求める人物像の考察などを行い、約3ヶ月かけて採用スローガン・ステートメントを策定しました。
2025年度は、フィロソフィーを軸にした、コーポレートブランディング活動・インナーブランディング活動・採用活動に取り組んでいます。

▲河合楽器製作所のミッションとビジョンを掛け合わせた採用スローガン・採用ステートメントを策定。現在は、この言葉を軸に人事部のみなさんが主体となり、採用活動を行っています。
5お客様の声
今回のプロジェクトを通じて、私たち自身も改めて「カワイらしさ」とは何かを深く考える機会を得ることができました。丁寧なヒアリングと多角的なリサーチにより、私たちのDNAや想いを言語化し、「人生を、響かせる。」というミッションに結実したことは、大きな成果だったと感じています。完成したフィロソフィーや採用ステートメントは、社員からも「共感できる」「自分の仕事の意義を再確認できた」と好評を得ています。これからもこの言葉を軸に、100年後の未来に向けた価値づくりに取り組んでまいります。