株式会社パラドックス

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理念策定から新商品の開発まで。
「自社らしさ」と「泡盛らしさ」を
研ぎ澄ませて市場に届けるブランディングプロジェクト。

CLIENT:菊之露酒造株式会社さま

  • カスタマーブランディング
  • 沖縄県

1928年に創業し、泡盛の酒造として沖縄県内でもトップクラスの売り上げを誇る菊之露酒造。泡盛らしい味わいを磨き上げた商品は、コンビニやスーパー、大衆居酒屋などのあらゆる場所で提供され、「庶民のお酒」としての泡盛文化発展の一翼を担ってきました。世代交代を終え、そして創業100周年を約5年後に控えた、2022年。「菊之露らしさ」を自分たちで再考し、新商品と共に大きく一歩進むためのブランディングが始まりました。

1ブランディングの背景

菊之露は、沖縄県内でも比較的長い歴史を持つ泡盛の酒造。古酒である「V.I.P」と新酒の「ブラウン」を二大看板商品に掲げ、泡盛らしい味わいを大事にした泡盛を、誰もが手に取りやすい場所と価格で提供することにこだわって経営をしてこられました。
先代から事業を継承した2022年。菊之露酒造の社長と専務は、これからの時代を見据えた二つの経営改革に乗り出します。一つは、トップダウンではなく全員で会社の方向性を決め、自分たちらしく自発的な動きを加速できる組織づくり。そしてもう一つは、既存製品が50代以上の方々を中心に愛飲されているのと対照的な、若者向けの泡盛を新たな看板商品として生み出すこと。この二つに照準を合わせ、理念策定から新商品開発、そしてBtoC向けコミュニケーションの企画にも及ぶブランディングプロジェクトが始まりました。

2理念の策定とロゴ、ビジュアルアイデンティティ(VI)の開発

プロジェクトメンバーには、社長、専務のほか約10人の社員を選定。一人ひとりへのインタビューを行った後、「自分たちらしさ」を言語化するセッションへと移行しました。
実は、セッション終了後には毎回必ず飲み会が行われていたのですが、そこには「泡盛をつくる会社だからこそ、自分たちの造ったお酒を飲んでもらって、菊之露の良さを知ってほしい」という想いがありました。8時間を超えた飲み会は、言うなればセッションの後半戦。昼間のセッションで出た言葉が再度吟味され、熱い思いやエピソードが溢れ、一晩に何度も皆が爆笑に包まれる。このカラッと明るくエネルギッシュな空気感はプロジェクト全体を通して漂っており、理念の言葉やロゴのトーンにも引き継がれていくことになります。

 

最終的に、理念(ミッション・ビジョン・バリュー・スピリット)、スローガンは次のように紡がれました。

▲「いろんなことがある人生だが、菊之露の泡盛を飲む瞬間は爆笑するくらい楽しい時間であってほしい」という願いが込められた理念。バリューの中では「泡盛らしいクセのある味」にこだわりを持ってきた同社の姿勢や、庶民の日常のお酒として、いつでもどこでも飲める泡盛文化を守ってきた矜持が言語化されています。

さらに、若い世代への好意形成を意識した新しいロゴの開発に着手。セッションでは菊之露酒造の会社としての性格を言葉にしていき、4つの要素に絞り込みました。

 

▼込めた想いはこちらから
https://www.kikunotsuyu.co.jp/concept/

これらの要素から、ロゴとサブグラフィックを開発しました。

▲ロゴ。洗練させつつも書体を細くしすぎず、菊之露らしい力強さを表現。

▲サブグラフィック。二つの看板商品のラベルに使用していたカラーを財産として継承しながら、若い世代に向けて浸透しやすいデザインとして開発。

スローガンには「LIFE IS FUN」を掲げ、カスタマーブランディングへの土台を整えていきました。

3クリエイティブへの展開

理念とロゴを受けて、さまざまなクリエイティブを戦略立てて作成していきました。

 

◉コーポレートサイト
ロゴやスローガンを大きくあしらったコーポレートサイトを制作しました。

https://www.kikunotsuyu.co.jp

◉オフィシャルファンブック
理念を伝え、カスタマーや飲食店とコミュニケーションを図るためのオフィシャルファンブックを制作しました。誌面には菊之露の泡盛を愛する社外の方々も登場。菊之露の泡盛のある人生について熱く語っていただきました。

◉ブランドムービー
日常の中にある「最高に楽しい瞬間」を紡いだブランドムービーを制作しました。楽曲はアーティストのMONGOL800さんによる「Life is」。沖縄県民の皆さんにご登場いただき、たくさんの弾ける瞬間をムービーに収めました。

4新商品「菊之露akari」の開発とカスタマーブランディング

次に着手したのは、若い世代に向けた新たな商品の開発です。まず、既存の二つの看板商品のキャラクターを言語化し、それに対して新商品はどんなキャラクターを有するのかを議論。その結果、新商品は「親しみやすい」「洗練された」「軽快な」「はなやかな」の性格を持つ泡盛であると方向性が決まりました。

▲企業としての性格を表す4要素のうち、最低2つを入れることを条件にそれぞれの商品のキャラクターを整理。

方向性が定まったら、菊之露酒造では泡盛そのものの開発に着手し、パラドックスは、商品のポジショニング、ブランドの設計を踏まえたネーミングの開発を進めました。2パターンの「ネーミング+キャッチコピー」ができた段階で、東京と大阪の20代に対して好感度を計る市場調査を実施。その結果を受けて新しいネーミングは「菊之露akari」に決定、ラベルのデザインなどにもイメージを反映していきました。名前の由来は、「灯(あかり・ともしび)」。「菊之露akari」を飲むことで、その人やその周囲にいる人が明るい笑い声に包まれていくこと。居酒屋や飲食店の皆さま、世の中が明るく盛り上がっていくこと。そんなことを願って名づけられました。パッケージデザインの赤い丸は、宮古島の太陽でもあり、あたたかい陽射しのように、泡盛を通して人の心や気持ち、未来への希望を明るく照らしていきたいという想いが込められています。そしてついに2023年6月、「菊之露akari」が発売を開始しました。

▲菊之露初となる「減圧蒸留」と独自のろ過製法を用いた爽やかな泡盛。炭酸でわって飲む「aソーダ」が特におすすめの飲み方です。

発売に合わせ、テレビCMや特設サイトの制作、イベントへの出店などさまざまな企画を実施。生活者との間に、菊之露酒造らしい明るく賑やかなコミュニケーションを形づくりました。

▲CMの撮影現場はコザにある「大衆劇場 足立屋」。「菊之露akari」の商品名を認知させるために、イメージキャラクターの「あかりちゃん」を設定。あかりちゃんが居酒屋の店員として明るく元気に「菊之露 akari」を紹介します。また、庶民の酒というイメージを広げていくために、足立屋さんとコラボイベントにも展開していくなど、その後のマーケティングも意識した内容に。

▲「菊之露akari」特設サイト

5効果と反響

「菊之露akari」のプロモーションイベントでは3日間で約4000杯の売れ行きを記録し、初動1ヶ月の売り上げも約4000本と好発進。社内では「akariを広めていこう!」という士気が高まり、40代の社員たちが自らインスタを開設してリール動画でプロモーションを行う等、これまでになかった自発的な動きが次々と生まれています。

さらに、県内の大学4回生から新卒採用の問い合わせがあるなど、若者への認知と好意形成が広がった結果と考えられる反響も。今後も関東地区でのイベント出店が多数控えており、着実にファンを増やしていくことが想定されます。パラドックスでは今後も大小さまざまな施策を企画しながら、菊之露酒造と「菊之露akari」のブランディングの進化に伴走してまいります。