創業から100年以上、グループ社員39,000人が
ひとつの目的を持ち、誇りを持って働いていくために。
グループ全体への浸透を兼ねた、理念策定プロジェクト。
CLIENT:株式会社神戸製鋼所さま
- 理念構築
- 採用ブランディング
- インナーブランディング
- 兵庫県・東京都
神戸製鋼所様(以下KOBELCO)は、素材系事業・機械系事業・電力事業を3本柱とする大手複合経営メーカー。1905年に、当時日本有数の商社だった鈴木商店が小林製鋼所を買収し、1911年に分離したことで株式会社神戸製鋼所が生まれました。創業から100年以上にわたり、鉄鋼をはじめ溶接、アルミ、銅、機械、エンジニアリング、電力など多岐にわたる複合的な事業を展開し、拡大を果たしています。
1. ご依頼の背景とプロジェクトの全体像。
お問い合わせいただいた当初のご依頼は採用ホームページの制作でした。「神戸製鋼所」という名前から、鉄を製造しているイメージが学生の間でも醸成されやすかったのですが、実際には鉄に限らず幅広い事業を展開しており、イメージのギャップが課題となっていました。そこで、「何のために、何をしている会社なのか」を学生に正しく伝えるため、採用ブランディングに着手しました。
またプロジェクトを進めるなかで、学生だけではなく、社内外の全てのステークホルダーに対して「KOBELCOの存在意義は何か?」を伝えることが、会社にとって重要な意味を持つのではないか、という議論に至りました。そこで、社内外のコミュニケーションを取り仕切るコーポレート・コミュニケーション部(以下CC部)チームと連携し、KOBELCO全体のアイデンティティ構築を目的とするプロジェクトも、実施する運びとなりました。
2. 「本当のKOBELCOらしさ」を言語化した、採用ブランディングプロジェクト。
鉄鋼や素材分野だけでなく、機械、電気、化学、ITなど、様々な専攻分野から優秀な学生を集め、未来のKOBELCOを担う人材を獲得していくためには、「本当のKOBELCOらしさ」を紐解く必要がありました。そこで、以下の手順により採用ブランディングを進めることになりました。
▶︎採用ブランディング実施における手順
1)経営層・事業部門長・各事業部の社員様・採用チームへのヒアリング
2)コンセプト策定
3)採用ホームページへのコンセプト落とし込み・スピリットブックの制作
まず行ったのは、神戸製鋼所を360度から理解するためのヒアリングです。経営層やエース社員の方々、総勢20人以上のヒアリングを通して、「KOBELCOが届けている本質的な価値」の言語化をしていきました。神戸製鋼所の歴史を辿ると、鉄そのものに強いこだわりを持ってきたわけではなく、時代の中でお客様が必要としているニーズを察知し、鉄から機械へ、さらには電気へと、持てる技術を応用して事業を広げていったことがわかりました。100年以上、社会が求めている期待に対して、たとえ他の誰もが手を出さないような難題だったとしても、自らの姿を変化させながら応えようと挑戦してきた。それが、歴史の中でKOBELCOが培ってきたDNAであり、強みそのものでした。
策定したコンセプトは、「つくる人の想いに応える会社」。商材に依存せずにお客様の期待に応える姿勢、また社会や時代を動かしてきた組織力を、コンセプトに込めました。
新しいコンセプトをもとに手がけたのは、採用ホームページのステートメントとコンセプトブックです。
▲採用コンセプトとストーリーを、トップページに表示。
▲KOBELCOを成り立たせる考え方・バリューを、「5ELEMENTS」として紹介するコンテンツ。社員の方々のヒアリング内容を、大きく5つにまとめた。
▲社員のスピリットを13個のエピソードにまとめた採用ブック。選考フローにのった学生への「KOBELCOらしさ」の伝達や、リクルーター研修内のワーク等で使用できるようにした。
3. 国内外で働く11,000人以上の社員の想いを込めた企業理念。
コーポレートブランディングは、様々な分野に事業を持つKOBELCOが、なぜひとつのグループとしてまとまっているのか。グループ社員全員がひとつの気持ちで取り組むために、どんな「目的」を持てばいいのか。グループの全員に共通していて、なおかつKOBELCOらしい「会社の存在意義」とはなにか。理念の言語化によって、グループの求心力を高めていけるように計画していきました。
そうして、グループ全体の使命・存在意義を言い表す「ミッション」、目指すべき未来である「ビジョン」を新たに言語化するプロジェクトを開始しました。KOBELCOにはすでに、グループの社会に対する約束事・グループ全社員で共有すべき価値観として「KOBELCOの3つの約束」、これらの約束を果たすためにグループ全社員が実践する行動規範として「KOBELCOの6つの誓い」が定められていましたが、その後の浸透やグループ内での活用に課題をお持ちでした。
理念策定プロセスを検討するうえで考慮したのは、総勢39,000人を超える規模の大きな組織体。トップダウンだけでは全社員に浸透しないのではないかと考え、CC部との会話を重ねる中で、一人ひとりがよりミッション・ビジョンを自分ごと化するために、約1年のスパンで全社を巻き込みながら策定するプロセスを開発しました。また、プロジェクトの進捗をKOBELCO内のグループ報やイントラを通じてグループ全体に発信し、プロジェクトの存在の認知や興味を高められるように、CC部とも連携して進めていきました。
▲理念策定のプロセス。多くの社員を巻き込むことにより、同時にKOBELCOらしさや理念浸透の意味合いも兼ねた。
#3−1:経営層からのヒアリング・プロジェクトメンバーとのミッション・ビジョン素案策定セッション
社長ヒアリング実施後は、神戸製鋼所本体の事業部門やグループ会社から、次世代を担う30~40代の12名のプロジェクトメンバーが集まりました。メンバーの議論により策定したのは、理念浸透ワークショップキャラバンで意見を集約していくミッションとビジョンのプロトタイプです。
#3−2:国内外の部長クラス600名と理念策定キャラバンを開催
グループ会社を含めたKOBELCOグループ全体の部長層を20名〜30名程度のグループに分け、#3-1で作成したミッション・ビジョンのプロトタイプを元に、全22回、約3ヶ月をかけてワークショップキャラバンを開催。以下のようなワークシートを用いてKOBELCOのらしさや提供価値等について考え、ミッション・ビジョンについて意見をフィードバックする中で、プロジェクトへの参加感を感じながら、同時に理念浸透の効果を狙いました。最終的なアイデンティティ策定の言葉の素材集めも同時に行っています。
ワークショップは、日本はもちろん、アメリカ・中国・タイ・シンガポールなど海外拠点でも開催し、国内外で働く全社員の思いを吸い上げることを大切にしました。国や地域によってKOBELCOや理念との向き合い方は様々でしたが、KOBELCOの存在価値やアイデンティティを一緒に考えることで、帰属意識を高める機会となりました。また、組織内でライン部長が部署を横断して会話をすることがこれまでにあまりなかったため、ワークショップを機になど、複合的な効果もありました。
▲理念浸透キャラバンで使用したワークシート。
#3−3:部長層がファシリテーターとなり、現場社員の想いを吸い上げ
#3-2のワークショップにご参加いただいた各ラインの部長の方々にファシリテーターを務めていただき、部署の社員とワークショップを開催していただきました(KOBELCO内部で実施。パラドックスはその内容を共同で検討)。グループ全体で実施したワークショップの中で、11,000枚を超える社員の想いの詰まったワークシートが集まりました。
#3−4:パラドックスにてワーディングを行い、すり合わせ後に決定
インタビューやディスカッション、各ワークショップの情報をすべて収集し、経営層やCC部ともすり合わせをしながら、ミッション・ビジョンをブラッシュアップしていきました。
多様な事業の裏には、多様な個性や技術があり、その強みを活かして社会の課題に挑んできたKOBELCO。そのミッションを日々遂行することで、人々の夢や希望が叶う社会の土台、安全・安心な暮らしをこれからも支えていく。完成したミッションもビジョンも、一言一句すべてが社員の皆様の言葉から抽出したものになっています。
最後に、出来上がった理念を英語、中国語に翻訳し、グローバル社員の拠り所にもなることを目指しました。
新しい理念は、2020年5月11日に、「グループ企業理念」として社内外に発表されました。
https://www.kobelco.co.jp/about_kobelco/outline/philosophy/index.html
今後は策定されたミッション・ビジョンを元に浸透施策を継続し、プロジェクトを進めていきます。