行政、市民、そしてパラドックス。
全員がスクラムを組んで取り組んだ
永続的なブランディング。
CLIENT:埼玉県熊谷市 One Team Kumagaya 推進委員会さま
- カスタマーブランディング
- 埼玉県
埼玉県熊谷市は、30年ほど前から、ラグビーによる街づくりを積極的に推進してきました。2019年9月に日本で初開催となる「ラグビーワールドカップ2019TM」の開催都市の一つにも選ばれ、ラグビータウンの名にふさわしい「おもてなし体制」の構築と、さらなる発展が使命となっています。世界が注目するワールドカップの成功、そして、その後も続くラグビーと一体となった街づくりの実現に向けて、約20万人の市民の心を一つにする新たな行動指針の策定は必要不可欠でした。
1プロジェクトの経緯と課題
熊谷市からご依頼をいただいたのは、2019年2月。ラグビー関連のプロジェクトも多数手がける弊社の実績を見込んでのご依頼でした。同市はこれまで「ラグビータウン熊谷」をコンセプトに掲げ、フラッグやモニュメントの作成など、さまざまな取り組みを行っていましたが、担当者へのヒアリングや現地調査などを実施したところ、そのほとんどがあまり機能していないということがわかりました。ラグビーや街づくりに対する想いが強い一方で、それぞれの矢印がバラバラになってしまっている現状に原因があると考えたプロジェクトチームは、市民を同じ方向へと導く新しいコンセプトと、誰にでも親しまれるシンボルマークの開発に取りかかりました。
2コンセプトの開発
「スクマム!クマガヤ」は、ラグビー用語である「スクラム」と「クマガヤ」を組み合わせた造語です。開発にあたって留意したポイントは、①覚えやすい短い言葉であること、②行動を喚起すること、の2点。“ラグビーにかかわる人も、そうでない人も、みんなで一緒にスクラムを組んで、ワールドカップと熊谷市を盛り上げていこう!”という想いが込められています。一過性で終わらせるのではなく、その先の未来にまで効果を発揮する、インパクトと持続性を兼ね備えたコンセプトを心がけました。
3シンボルマークの開発
2匹のシロクマが肩を組むシンボルマークは、アートディレクターの窪田新氏の手によるもの。ラグビージャージを想起させる背景のボーダー柄は、「人と人のつながり」を表現しています。シロクマをモチーフにした理由は、熊谷市が日本一暑い街であることと、誰もが自由に色を塗れるようなキャンバスにするため。世に数多くあるクマのキャラクターとの差別化も意識しました。さらに、誰もが自由に使えるように100%フリー素材としました。最終的なチェックは市が行いますが、市に申請すれば誰でも無料で使用可能です。
▲シンボルマークの「スクマム!」。
▲熊谷駅前のコンビニエンスストア。「スクマム!」のフリー素材を活用し、店員のユニフォームをデザインに反映しています。
4プロジェクトを振り返って
「スクマム!クマガヤ」は、同年6月2日、「第27回埼玉ラグビーフェスティバル」の会場で大々的にリリースされました。新聞、雑誌、WEBなど多数のメディアで取り上げられ、弊社にも各所から問い合わせが寄せられています。シンボルマークは、熊谷駅とラグビー場を結ぶラグビーロードの街頭バナーや、八木橋百貨店の大温度計にも使用されるなど、多種多様な「スクマム!」が市内全域に展開中です。その原動力となった最大の要因は、このプロジェクトにかける熊谷市の圧倒的な熱意でしょう。プロジェクトの立ち上がりから世の中へのリリースまで実質4ヶ月で完結できたことは、熊谷市の皆さまの真摯な情熱のたまものです。公益性の高い地方自治体のブランディングに携わった経験は、プロジェクトメンバーにとっても貴重な財産となりました。「スクマム!クマガヤ」が、これからも「ラグビータウン熊谷」を前へ前へと押し出す活性化の推進力となるよう願っております。
▲ラグビーロードを歩いてくださる方々に配布するうちわ。スタジアムが駅から少し遠く交通機関も限られているため、歩いてお越しいただくことを促すメッセージにしました。
▲ラグビーロード上、帰り道に設置された看板。