理念を起点に、
ビジョンドリブンで新規事業を生み出していく。
CLIENT:日本海洋事業株式会社さま
- コーポレートブランディング
- 神奈川県
1980年、日本水産株式会社の子会社として設立。深海潜水調査船「しんかい2000」の支援母船「なつしま」の運航・管理に始まり、以降、多数の船舶と共に深海調査の最前線を走ってきました。近年では、千葉大学が主導するニュートリノ観測装置の開発に携わったほか、次世代の人材に向けた海洋教育も実施。海を軸に、最前線での経験を強みとして、挑戦を続けています。
1課題
日本海洋事業として、初めて運航した「なつしま」は、当時の海洋科学技術センター(現・国立研究開発法人海洋研究開発機構: 以下、JAMSTEC)から委託された船舶でした。これがきっかけで、JAMSTECを中心とした深海調査・海洋調査などの委託を受けるようになり、会社は着実に成長を続けてきました。しかし、昨今は国の厳しい財政事情だけでなく、競合企業も増え、従来の受託事業だけでは外部環境に強く左右されてしまうという危機感から、より能動的な事業展開が必要になりました。企業としての未来を担う若い社員が希望を抱くことができる将来構想に向け、改めて自らの使命を見つめ直し、ビジョンドリブンな組織へと生まれ変わる。そんな期待感を乗せて今回のプロジェクトは船出します。
2セッションで再発見した原点
まずは、次世代のビジョンを検討するチームと共に、約2ヶ月にわたってミッション・ビジョン・バリューの言語化に取り組みました。なかでも、ビジョンを議論する際に問いかけた「入社の理由」は、プロジェクトにおける重要なポイントとなりました。メンバーから出てきた答えはいずれも、深海への憧れや、未知の世界への探求心など、ワクワクするような理由ばかりでした。経験を積み、仕事に慣れていく内に、いつの間にか忘れていた入社当時の純粋な気持ち。それが最初の発見でした。そして、あの頃の自分たちのように、未知への憧れを持った子どもたちに地球を受け継いでいくことこそが、自分たちの使命であることにも気づくことができました。そういった気づきを基に、ビジョンには、つなげるべき未来の象徴として「子どもたち」を明記することが決定。新たなビジョンは「未知なる世界を拓いた感動を共有し、子どもたちの探求心あふれる未来をつくる」となりました。
3「海」を出て、新たな領域へ
理念の明確化に続いて、プロジェクトは実際にビジョンを実現できる組織へと生まれ変わるための準備へと移りました。今回、新たなビジョンを定める上でポイントとなったのは、あえて「海」という言葉をはずすことでした。海という活躍するフィールドの制限を自らなくしたことで、長年、海で培った貴重な知見を、人類の地球探索の「最前線」というより大きな場で生かすという発想が生まれました。さらに活躍の場を広げる意志をビジョンで明確にすることで、従来の仕事の延長だけでなく、主体性を持って新規事業に乗り出しやすい組織文化へと変化させる動機づけができました。
また、新ビジョンの誕生により、次世代の教育の大切さにも改めて気づくことができました。昨今は洋上風力発電の広がりで、高い技術を持った船員や技術者の需要が高まっているという一方で、海洋に関わる人材は年々減少傾向にあるといいます。貴重な人材を絶やさないためにも、子どもたちへの海洋教育は重要です。地球の最前線で得た知見を、次の世代へとつないでいくことは、会社としての重要な使命であることも再認識できました。
4「探求」から生まれたクリエイティブ
言語化された理念は、各種サイトのクリエイティブにも反映されていきます。企業の想いを伝えるコーポレートサイトは、「人類の最前線での発見」をテーマに大人だけでなく、子どもも一緒に見て楽しめるような探査船から見える視界をビジュアルとして表現。次世代にとっての学びへの探究心を意識したつくりとなりました。
採用サイトでは、インパクトのある「TANKYU!」(探求)の文字と共に、子どもの頃に抱いたワクワク感をそのまま表したような社員の姿をファーストビューとしました。かつての少年少女が探求心を持ったまま、仕事に就き、活躍していることがうかがえます。
5プロジェクト成果
これからさらに企業の意識改革が行われ、ビジョンを旗印に新しい事業が生まれることが期待されます。新中期経営計画もこのビジョンに沿って設計されており、思想と事業が直結する戦略を実行していきます。日本海洋事業の明確な成果はこれからですが、下記のお声をいただいております。