株式会社パラドックス

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「おいしくてたのしいまち、下関へ」。
下関市・事業者・市民が一致団結し、ビジョンに向かう
下関市産品ブランディングプロジェクト。

CLIENT:下関市 産業振興課さま

  • カスタマーブランディング
  • 地方創生
  • 山口県

ご依頼の背景
下関産品の国内販路開拓プロジェクト

「下関といえばふぐ」。現在も、多くの方にそのイメージが定着しています。しかしながら、下関にはふぐ以外にも、くじら、あんこう、明太子といった様々な海産物に加え、和洋菓子・ジェラート・クラフトビール・野菜・フルーツなどたくさんの魅力ある「食」があることはあまり知られていません。何より、想いやこだわり、地域への愛、新しいアイデアを持った「事業者=つくり手」がたくさんいます。

すでに周知されているふぐだけでなく、下関の食の可能性を知ってもらい、新しいイメージをつくりたい。一度すべてをリセットして戦略を考え直すべく、これまで続いていた下関産品の認定制度を見直し、新たな下関ブランドをつくることを目指しました。

尚、本事業はマーケティングやイベントの企画運営などを強みとする阪急阪神マーケティングソリューションズ株式会社とブランディング・クリエイティブを強みとするパラドックスの協働で手掛けました。

1プロジェクトフロー

下関産品の販路を開拓していくためには、まず下関産品の存在意義を明確にしなくてはいけません。それをはっきりとさせないままでは、誰に売っていくのか、何を売っていくのか、どんな価値を伝えていくのかもままなりません。

 

そこで、「下関産品の存在意義=ミッション」「下関産品が実現したい未来=ビジョン」「下関産品が約束する価値=バリュー」を言語化することを目的に、下関市内の事業者、下関市役所のメンバーとワークショップを実施。それぞれ仕事を終えた平日の夜に集まり、6回にわたって議論を繰り返しました。

 

【プロジェクトフロー】

 

①下関産品の問題はみんなの問題=一致団結して解決すべき問題として、つくり手である「下関の生産者・事業者のミッション」を策定

②下関産品の存在意義・実現したい未来・約束する価値(ミッション・ビジョン・バリュー)を言語化

③統一したメッセージや世界観で、下関産品のイメージを伝えていく。
「仲間づくり」を意識したツール制作や取り組み

▲ワークショップには、下関市内の生産者・事業者が参加しました。

2下関市の事業者たちのミッションとは?

ワークショップでは「食」に対する課題だけでなく「学生たちが卒業と同時に外に出ていき下関に帰ってこない」「たくさんある下関の魅力を伝えきれていない」「下関市民自身が下関の魅力を知らない・気づいていない」など地域に対する課題も多く挙がりました。

 

そこでまず目指したことは「下関の事業者たちのミッション」の言語化です。下関の課題は、みんなで解決するべき課題と捉え、一致団結するためのミッションを策定しました。

 

それが、「下関を楽しみ尽くす生き方を伝える」です。

 

ワークショップに参加したメンバーの多くは、産品のつくり手であると同時に下関市で事業を営む経営者でもあります。「まずは、大人たちが下関での暮らしや人生を存分に楽しんでいる姿を見せるべき」。そうすることで、「下関の企業で働きたい」「下関に戻ってきたい」という人も増えていくはずだと考えました。つくり手自身が、自分たちの言葉で魅力を伝えていくことも大切だと考えました。イベントをする際や、日々行う事業活動で大切にする指針として共有しました。

3下関産品の価値の見直しと市場リサーチ

次に議論したのは本題の「下関産品そのものの存在意義や価値」です。

 

それぞれの事業者が、自社のこだわりや卓越性、下関ならではの価値などを出し合いました。

 

●歴史がある。「粒うに」の元祖。
●誰でも簡単につくれない技術力。
●一子相伝、門外不出。口伝の製法を守る。
●「ここでしか食べられない」と言ってもらえる。
●意外性、サプライズのあるフレーバー。
●手間を惜しまず、時間をかけて作る。
●常に新しい商品を開発し続ける。
●どんな組み合わせにも合う楽しさ。
など、「下関産品」のさまざまな価値や魅力が浮かび上がってきました。

 

その一方で、近隣圏・関西圏・首都圏の人々を対象に「下関市」および「下関産品」のイメージ調査を実施。その結果、予想どおり「ふぐ」の認知度は抜群。しかし「認知はされていないが、知ってもらえれば魅力を感じてもらえる」という地域産品がたくさん眠っていることが確認できました。また、お土産需要やハレの日需要だけでなく、「ちょっとだけ贅沢をしたい日に、スーパーマーケットで買いたい」といった日常的な需要も多いということがわかりました。

▲リサーチの結果、さまざまな産品に大きなポテンシャルがあることを確認できました。

4下関産品のミッション・ビジョン・バリューとは?

地方都市の人口減少や過疎化。高度化なIT化による人と人とのコミュニケーション不足。世の中に暗いニュースが多い中、下関産品の存在意義は何なのか。それを突き詰めて考えていきました。

 

もともと下関は本州の玄関口として海運業や貿易業が栄え、世界中からモノが集まり、おいしいものはもちろん、さまざまな新しいものにたくさん触れられるまちでした。それは、今も変わっていません。歴史・文化・観光・景観・イベントなどさまざまな魅力があふれるまちです。
バラエティあふれる下関産品の存在意義。それは下関を訪れる人や産品を手に取る人に、「おいしい」と「たのしい」が共鳴する黄金時間をつくること。議論の結果、下関産品のミッション(存在意義)として

 

「おいしい!」と「たのしい!」の共鳴。

 

という言葉が決まりました。
また、「おいしい!」と「たのしい!」の共鳴の先に、下関産品が実現したい未来(ビジョン)、下関産品が約束する価値(バリュー)も言語化しました。

▲下関産品の存在意義(ミッション)を言語化

▲下関産品が実現したい未来(ビジョン)

▲下関産品が約束する価値(バリュー)をもとに、産品認定の審査基準が設定されました。

5みんなをひとつにする、スローガンとロゴマーク

最後に、このプロジェクトにさまざまな人を巻き込み、ファンを増やしていくためのブランドスローガンとロゴを開発しました。「おいしい!とたのしい!の共鳴」を生み出していくための合言葉として「おいしも!たのしも!」というスローガンを開発。ブランドを象徴するロゴマークも制作しました。

▲ブランドロゴは「おいしい!」と「たのしい!」が互いに共鳴しあい、つながることで、ここ下関から右肩上がりの新しい潮流が生まれる様子を表現。また、新たな文化の玄関口として、海運業や貿易業が栄えた「海峡」をモチーフにしています。

「おいしい!」と「たのしい!」が共鳴する「黄金時間」と、生産者のこだわりや技術を詰め込んだ下関産品の品格を表現する金色をメインカラーにしています。

▲ブランドロゴを使用したキービジュアルも制作し、WEBサイトなどの広報活動に活用。

▲ブランドムービーは下関のボートレース場のスクリーンや下関市内各所のサイネージで公開。

6その産品は、市民に愛されているか?
市民試食審査会の開催

下関産品の販路開拓を行なっていく際、「その産品は地元の人たちに食べられているか?愛されているか?」というのは非常に重要なテーマです。また、それ以前に「そもそも地元の人たちが、まだまだ下関のポテンシャルに気づいていない」「地元にたくさんおいしいものがあることを知らない」という状態でした。今後、長きにわたって下関を盛り上げていくためには、まず市内に多くのファンをつくることが大切だと考えました。

 

そこで、「下関の認定産品は下関市民に決めてもらうべきだ」と考え、認定産品の市民試食審査会を実施。駅前の商業施設「シーモールホール」にて、実際に市民が応募産品を試食。この市民試食審査会を経て正式に「おいしも!たのしも!認定産品」として20品目が認定されました。同時に、市民が「こんなおいしいものが下関にあるんだ」という発見にもつながりました。

▲市民試食審査会は、あいにくの雨天で急遽、屋内での開催となりましたが大盛況に。

7新たな下関のイメージをつくる産品たちが勢揃い

2024年度「おいしも!たのしも!」認定産品の認定式が下関市役所本庁舎で行われました。

 

◎認定証を授与された産品は以下の通り

  • 潮風育ちの垢田トマトとトラフグのスープ] 株式会社Maazel Corporation
  • [天然ふぐの下関パエリアの素] マガサン
  • [鯨ユッケ] 株式会社蟹屋
  • [関門海峡にのぼる月] 有限会社松琴堂
  • [北浦のアジと地酒を使用した辛子明太子] 株式会社イリイチ食品
  • [かにを使わずに作ったかに香るかに風味かまぼこ] 有限会社村田豊商店
  • [菊川手延そうめん菊川の糸] 菊川手延そうめん協同組合
  • [瓶詰ボトルピクルス おすすめピクルス5本セット] 株式会社トレーダー愛
  • [山口のんたぐろラングドシャ] 株式会社食天地
  • [とらふく皮めんたい] 株式会社林商店
  • [ふく福お米ピッツァ] KOMEKO88
  • [マメナミルク] Mamena
  • [豆乳マヨ] ヤマカ醤油株式会社
  • [奇兵隊のおやつ] フードテック株式会社
  • [てっちりしゃぶ鍋セット] 山西水産株式会社
  • [下関缶詰研究所・01 河豚のアヒージョ] 有限会社玄洋社
  • [無添加無砂糖ドライフルーツ] 花呟
  • [蔵人の自慢酒] 下関酒造株式会社
  • [やまみの焼うに20g] 下関水陸物産株式会社
  • [Honey Ale /ハニーエール] 合同会社Shimonoseki Craft Beer

 

スイーツ・フルーツやピザ、日本酒やクラフトビールなど、従来の下関のイメージをガラリと変える顔ぶれに。下関の新たなイメージづくりにふさわしい産品が出揃いました。

▲認定産品の一覧。初年度は20品目の産品が「おいしも!たのしも!」認定産品に。

8持続性のあるプラットフォームへ。
官民連携のワーキンググループを設置。

もともと「おいしも!たのしも!」プロジェクトを一過性の取り組みにするつもりはありませんでした。まずは下関市民。次に、福岡や広島といった近隣県。そして関西や首都圏へと、着実にファンを増やしていく継続的な取り組みにしていくためのプラットフォームづくりととらえ戦略づくりをしてきました。

 

下関市と民間が連携をしてプロジェクトを運営し、盛り上げていくため、下関市内の事業者を主体としたワーキンググループを設置。2ヶ月に一度、事業者と下関市が集まり「おいしも!たのしも!」のファンを増やしていく方法を考えています。

 

また、「おいしも!たのしも!」の輪を広げていくために「市民PRアンバサダー」をボランティアとして募集。認定産品のストーリーや裏側などをSNS等で発信しています。

▲「おいしも!たのしも!」プロジェクトの全体像。下関市・事業者・市民が一体となって活動するスキームを構築しています。

▲市内外で活躍するYouTuberやライターが「市民PRアンバサダー」として参画。下関産品の魅力を発掘・発信しています。

ファンづくりと売り場づくりへ
そして、「おいしくてたのしいまち」というブランドづくりへ

「おいしも!たのしも!」プロジェクトは地元メディアにも取り上げられ、サービスエリアや道の駅での売り場づくりに向けて準備中。2025年度は市内だけでなく近隣県でのイベントも実施予定。「おいしくてたのしいまち、下関」というブランドづくりを目指して活動を続けています。

 

最新の情報は、ぜひ下記公式サイトよりご覧ください。

https://oishimo-tanoshimo.com/