株式会社パラドックス

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自分たちの「使命」を再発見し、
校舎とコミュニケーションに落とし込む
学校ブランディングプロジェクト。

CLIENT:高崎歯科衛生専門学校さま

  • カスタマーブランディング
  • 群馬県

1986年に開校した高崎歯科衛生専門学校。「かかあ天下とからっ風」と言われ、古くより女性の手に職文化が根付く群馬県で、長く歯科衛生士の育成に尽力して来られた老舗の専門学校です。創立35年の節目を迎え、新校舎建設の計画が立てられた2021年。さらなる飛躍を起こすため、学校の使命と存在価値を再発見し、理念やロゴ、新校舎のデザインにまで昇華させていくトータルブランディングプロジェクトが動き出しました。

1ブランディングの背景

高崎歯科衛生専門学校の特徴のひとつは、教員が歯科医師ではなく、みな歯科衛生士で構成されている点です。教鞭をとる自らが歯科衛生士としてのキャリアを持ち、仕事と人生の先輩として未来の歯科衛生士の育成に全力を尽くす。たとえば臨床実習にどうしても行けない学生がいたら、毎朝実習先で待ち合わせて「行っといで、大丈夫だよ」と玄関に送り込み、悩んでいるなら1時間でも2時間でも話を聞く。とことん親身に寄り添う姿勢は同校が受け継いできた文化で、愛校心が育まれる礎ともなっています。

しかし教員たちの情熱や思いとは裏腹に、学生の募集には毎年苦戦する状況が続いていました。背景には校舎・設備の老朽化や競合校の出現など、さまざまな要因がありました。

そんな中、創立35年となる2021年に新校舎の建設計画が立ち上がります。校舎のリニューアルという大きな節目に、自分たちの強みやらしさをもう一度整理し、コミュニケーション全体を刷新するきっかけにしたい。こうした思いからパラドックスへのご依頼につながり、理念策定やロゴの開発から新校舎のデザイン監修にまで及ぶトータルブランディングプロジェクトが始まりました。

 

 

 

2理念の策定とロゴ、ヴィジュアルアイデンティティ(VI)の開発

理念策定のために行われたセッションは全5回。教員全員と理事長を含む、計8名で進められました。プロジェクトの先に校舎リニューアルを見据えていたことから、すべての回に設計事務所の担当設計士もオブザーバーとして参加。校舎デザインの根幹に位置づく理念を同じ深さで理解し、プロジェクトメンバーとして足並みを揃える一助としていただきました。

セッションを通じて見えてきたのは、教員たちはみな「学生に歯科衛生士の資格を取らせること」ではなく、「その先にある人生の可能性を育てること」に焦点を当てて日々の教育に身を捧げているということでした。入学時には「なんとなく資格を取って就職したい」と思っている学生を、いかに「歯科衛生士になりたい」という気持ちにさせ、卒業後も長く有意義な歯科衛生士人生を送ってもらえるか。教員たちのこの人生に寄り沿う長期的な視座を、議論の中で、一枚のビジュアルに落とし込んでいきました。

上記のビジュアルから、ミッション、バリュー、ブランドストーリーが編まれ、さらにコンセプトビジュアルやロゴといった視覚化アウトプットにも広がっていきました。

 

ミッションでは、教員の皆さまが教育に向き合う姿勢と視座から学校の使命を言語化。学生たちが社会に出てから、歯科衛生士としてどこまでも自分らしく羽ばたいていけるよう支援するという学校のスタンスを「助走をつける」と表現。また、歯科衛生士の「資格」ではなく、歯科衛生士としての「人生」に主眼があることもここで明文化しました。

バリューでは、「人を想う心と感性」や「生かせる専門性」など、医療人としての専門性と社会性を兼ね備えた人物を育てていく学校の意思を表明。セッションの中で教員から出てきた「芯」という言葉を中心に据えています。

ブランドストーリーでは、自らもまた歯科衛生士である教員たちが親身かつ本気で語りかける口調で、学生への想いと教育への姿勢をメッセージしています。

コンセプトビジュアルは、モノクロ画家・イラストレーターの「あけたらしろめ」氏に依頼し、理念にご共感をいただきながら制作を進めました。

コンセプトビジュアルを象徴したロゴは、エンブレムとして開発し、SNSアイコンなど小さいデバイスでは翼のみでも使用可能となっています。

サブグラフィック。単体で「飛び立つ翼」「飛び立つまでの階段」「窓から見上げる空」のいずれにも見えるように開発し、それをドットとして並べることでさまざまなニュアンスを表現します。

3クリエイティブを通じたカスタマーブランディング

理念やロゴを反映し、各クリエイティブを刷新しました。

 

◉学校案内サイト

学校のコンセプトを伝えるLPを制作。第44回BtoB広告賞 ウェブサイト<学校案内>の部で銀賞を受賞しました。

https://takasaki.e-mirai.com/concept/

◉コンセプトブック(学校案内)

あえて在学生ではなく卒業生を紹介することで、歯科衛生士としての生き方や職業選択の幅を伝え、「資格取得」ではなく「歯科衛生士人生」に本気で向き合う学校のスタンスを表現しました。教員の皆さんは、このコンセプトブックが完成するとすぐに地元の高校への意欲的な営業を開始。自分の言葉で誇りを持って学校の使命を語る際に、ツールとして役立てていただきました。

◉ブランドムービー

オリジナル楽曲とイラストアニメーションによるブランドムービー。楽曲制作もディレクションを行い、曲の細部にまで学校のミッションを表現しきることを意図しました。

◉オープンキャンパスに使用する各種ツール

学校説明のスライドをディレクションし、進路そのものに悩んでいる学生たちの目線に合わせて語りかける内容にコミュニケーションを再設計しました。

4新校舎への理念の反映

理念やロゴが生まれ、満を持してはじまった新校舎の設計。セッションから同席していた設計士が、同じ理念を共有しながら設計を進めました。パラドックスは主にビジュアルアイデンティティの観点とサイン計画をディレクションしました。

2023年4月に竣工式が執り行われた新校舎の様子を写真でご紹介します。

 

▲校舎外観

▲エレベーター付近には「あけたらしろめ」氏による壁画を配置。オープンキャンパスの日に合わせて現場でライブペインティングを行っていただきました。

▲「あけたらしろめ」氏によるライブペインティングの様子

▲サイン類もすべて、「あけたらしろめ」氏によるイラストで世界観を統一。

▲壁画完成の日に撮影した記念写真。

5効果と反響

反響は、想定より早く得られました。理念を策定し、ビジュアルアイデンティティの統一を進めた段階から、オープンキャンパスへの参加申込が増加。新校舎完成前にもかかわらず、OC参加者数は、前年比12.8%増(令和4年度)となりました。

また入学希望者も早期に定員に達したため、例年より早く募集を締め切り。新しい校舎では、それまでの在学生も含めて意欲的に座学や実習に励んでおられるそうです。

教育への熱量と学生への思いがまっすぐに世の中に伝わり、新校舎と共に良いスタートを切り直された高崎歯科衛生専門学校さま。パラドックスはこれからも伴走を続けながら、ここから巣立っていく学生さんたちのみならず、日々教育に奮闘される教員の皆様が誇り新たに飛躍されることを心から願っています。

 

学校法人未来学園 理事長 野口様

今回、「日本一の歯科衛生士養成校を創りたい」という思いで新校舎設立プロジェクトをスタートいたしました。PARADOX様にはプロジェクトの根幹であるブランディングから関わって頂き、ソフト面、ハード面共に大変素晴らしい学校づくりができたと思っております。改めて深く感謝申し上げます。
PARADOX様とプロジェクトを進める中で、本校の大切にしてきた事やこれからの教育について教職員と共に考え、進むべき道を共有することができました。これは、本学園の教育理念である「Learning Together, Thinking Together」を体現できた結果ともいえます。
これからの高等教育の使命は、卒業生が社会のあらゆる場面で活躍できるよう可能性を広げていくことと感じています。今後も関係者の皆様や地域の皆様にお力をお借りしながら、日本一の歯科衛生士学校を目指していきたいと思います。