株式会社パラドックス

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「派遣ではたらく」選択に、求職者目線でとことん寄り添う。
すべてのタッチポイントを改革した新卒採用ブランディング。

CLIENT:UTグループ株式会社さま

  • 採用ブランディング
  • 東京都

1995年の創業以来、製造業をはじめとする派遣請負事業で多くの雇用を創出してきたUT株式会社。「はたらく力で、イキイキをつくる。」というミッションのもと、派遣社員の「正社員雇用」や「社会保険完備」、さらには業界初の上場など、業界の常識を変えるさまざまな挑戦を続けてきました。そんなUTが次に挑んだのが、技術職としてUTから派遣される新卒人材の採用ブランディング。採用チームの土台作りから、「派遣」というはたらき方の啓蒙まで射程に含んだプロジェクトが行われました。

1ブランディングの背景

UTの社員はおよそ3万6千人。多くがUTで雇用された後に顧客先に派遣され、技術職としてはたらく人々です。中途採用は通年、新卒採用は年に一度で行われています。

今回パラドックスにお声がけいただいたのは、その新卒採用のブランディングです。発端には、当時の人事部長様の「もっととことんまで人物重視の採用がしたい。本音で話し合えない日本の就活を本気で終わらせたい」という熱い訴えがありました。

得てして、新卒ではじめから「派遣社員になる」ことを選択肢に持つ学生は多くありません。就活がうまく進まない中でUTに出会い、入社に至るというケースがままあります。苦い経験の中で自信を失い、将来への心細さを抱えている学生たちの、社会への第一歩目。「はたらく人に向き合う会社」として、自分たちと関わる自分たちが学生ともっと本音の関係を築ければ、一人ひとりが前向きに、より納得感を持って自分の人生に踏み出せるのではないか。さらにはそういう人が増えることで、「派遣」に対する社会の見方もいずれ変わっていくのではないか。こうした想いを背景に、プロジェクトがスタートを切りました。

 

2プロジェクトの内容

プロジェクトは主に2つのフェーズに分けて行われました。

 

フェーズ1:採用チームポリシーの策定(2020年)

採用チームの「あり方」で尖りを出すことを目的に、全メンバー参加のセッションを行いました。

セッションでは、UTらしさや価値観を抽出するために各人のメモリアルワークを共有。自分たちの大切にしてきたことを改めて言葉にしていきました。そこで出てきたUTの個性とは、言うなれば「人に向き合うことに覚悟している会社」。中途採用も含めれば、年間10万回以上の面接を行う会社として、求職者の方々、とりわけ新卒の学生とはどう向き合うべきか。志望動機を聞かず、その人の歩んできた人生をただ語ってもらうという面談スタイルは、なぜ必要なのか。「はたらきたいという意志を持った人がいるとき、そこにはたらく機会を公平に用意する」という信念のもと、常に「はたらく人」に軸足を置いて正道を考え、行動してきた歴史が各人のエピソードで裏付けられていきました。一方、ただ優しくあるのではなく、ときに思い通りにならなかったり目を背けたくなるような人の現実に向き合ってきたことも、UTの「らしさ」を形作る一要素です。こうして歴史や想い、姿勢を丁寧に言語化し、UTらしいトーンで採用ポリシーが紡がれていきました。

▲フェーズ1(2020年)で生まれた採用ポリシー。その後のプロジェクトやクリエイティブの思想的土台となりました。

フェーズ2:採用シンボルワードの策定と施策全体の再設計(2021-2022年)

より強い採用ブランド・採用チームになることを目指し、具体的な施策の拡充を行いました。

まずは採用チームの価値創造のプロセスを明らかにするため、社長インタビューの掘り起こしに着手。UTという企業の原点を改めて紐解きました。浮かびあがってきたのが、創業当時、社長が派遣で働く社員たちに「なにかできることはありますか?」と声をかけていた象徴的なシーン。目の前の人の人生に感情移入し、困りごとに一つずつ応えようとするこの姿勢こそが価値を生み出してきたのではないか。こうした考えから、採用チームのシンボルワードに「就活生のみなさん。私たちに何かできることはありませんか。」をご提案。コミュニケーションフローや施策を全体設計しました。

3クリエイティブを通じたアウトプット

フェーズ1からフェーズ2にかけて、段階的にクリエイティブを刷新しました。特にフェーズ2ではアウター/インナーの両面で施策を大きく拡充。学生に対して「何かできることはないか」という目線でクリエイティブを企画し、採用におけるすべてのタッチポイントにアプローチしました。

 

◉フライヤー

……「就活でホンネを話したら嫌われるかもしれない。でも、タテマエばかりだと自分が嫌になる」と感じている学生に向けて、シンボルワードと採用チームの想いを伝えています。

 

◉採用サイト(https://fresher.ut-g.co.jp

▲自信がなくとも、スキルがなくとも、まずは派遣として社会への一歩を踏み出そうとする学生に向けて「はたらきながら、自分らしい道を探していこうじゃないか」とメッセージしています。

 

◉WEB用バナー広告

……求職者目線でのホンネや「就活あるある」をフックに、採用サイトやLPへの導線を設計しました。

 

◉ブランドムービー

……就活の象徴である「面接」をテーマにしたブランドムービー。実際のUTの人事たちが登場し、UTの面接を再現しています。

 

◉新聞広告

……日経「就活特集」に5段広告を掲載しました。面接に対するUTの思想を伝えています。

 

◉特設サイト(https://fresher.ut-g.co.jp/momo/

……「お金さえもらえるなら、仕事なんてなんでもいい」と思っている学生を読者に想定。どんな一歩目からでも「はたらく」ことはきっと最初の想像以上のよろこびをくれることをメッセージしています。

◉インターンシップ

……「そもそもなんのために働くんだろう?」と考え始めた学生に向けて、納得感のある社会人人生を考えるためのインターンシッププログラムを企画しました。

 

◉採用パンフレット

……「自分にもできる仕事なんだろうか?」と具体的に考え出した学生へ。派遣社員としての働き方の実態を伝え、自分の将来を具体的にイメージしてもらうことを意図しています。

 

◉内定者カード

……「自分のどこがよかったんだろう?自分はどこを認められて社会に出ていくんだろう?」と思っている学生に向けて、採用チームからの手書きメッセージで一人ひとりの人生にエールを送ります。

 

◉ご家族に向けたパンフレット

……「派遣としてはたらくことを、家族に理解してもらえるだろうか」と不安に思っている学生に役立ててもらえるよう、ご家族や教職員の方々に向けて、派遣ならではのメリットをお伝えするパンフレットを制作しました。

 

◉理念カード(※インナー向け)

……採用にあたる社員一人ひとりが同じ意識で仕事に向き合えるよう、採用チーム全員で自分たちのミッションとバリューを策定。スマホや手帳に挟んでいつも持ち歩けるサイズのカードにして採用のメンバーに配布しました。

 

4ブランディングの効果

プロジェクト開始から約3年。UTの思想は採用サイトを基軸に求職者へと伝わり始め、UTの「あり方」に共感したことを入社理由に挙げる学生が増加しています。採用目標としての2021年度580名/2022年度550名を達成しながら、新卒就業者の4ヶ月後の離職率も3カ年で56.7%から10%に減少。採用の土台ができてくる中で、より現場のニーズを拾えるように、採用チーム自体も、グループ一括から各事業会社の担当制へと体制変更が行われました。

ここから先、よりエンジニア職に適性の高い応募者を呼び込めるよう、「派遣」というはたらき方と「技術職(エンジニア)」の両面でのブランド構築を進めていくなかで、UTグループ様のビジョン実現をサポートできるよう、これからも伴走を続けてまいります。

 

担当部長 飯塚様

私たちの業界が採用を行うと、いわゆる大量採用の悪いイメージの代表のように受け取られてしまう事があります。『いくらでも人手が欲しいからたくさん採ってるんでしょ』と言われますが、冷静に考えれば、いかなる理由があったとしても採用というのは『人手』が欲しいから行うものだと思います。それは世界共通だと思います。

また、忘れてはいけない事の1つに私たちの業界が採用を行うのは、国内のモノづくりメーカーであるお客様の『声』であるという事です。あくまでお客様からのオーダーにそって新卒採用を行っております。また、私たちの会社は、UTの社員から、お客様先の社員になることができる「転籍制度」を1つの軸としている為、お客様の採用代行というポジションでもあります。

そして、忘れてはいけないもう1つのお客様。それは学生です。UTグループ株式会社は、クライアントはもちろんですが、応募をして頂ける転職者、新卒者もお客様だと定義しています。そのお客様の満足度を向上させるための採用活動とはどのようなものなのか?本当に現代の若者は『イマイチ』なのか?就活の仕方は正しいのか?採用部署全員で考えた結果が今の新卒採用です。

守りたかったのは1つ。学生と同じ目線になる事です。決して上から目線にならない事。1つ1つのツールはあくまで活動のためのツールであり、大切な土台は目線でした。この目線が学生と同じ状態になる事をフォローしてくださったのがパラドックスです。そして、今までもこれからも、「はたらく力で、イキイキをつくる。」はたらく人を、イキイキとさせていくというその視点では、UTグループとパラドックスの目線も一緒だと思っています。