“社員が主役”の組織へ変革。
社員のココロに火をつけた、
インナーブランディングプロジェクト。
CLIENT:内海産業株式会社さま
- インナーブランディング
- 東京都
内海産業株式会社様は、家電、自動車、住宅、化粧品など、さまざまな業界でノベルティグッズやプレミアムグッズを手がける会社です。1972年の設立以来、リーディングカンパニーとしてセールスプロモーション業界を牽引。常に生活者目線に立ち、生活者が「買いたい」と思うきっかけを増やすような、ワクワクするプロダクトを生み出しています。
プロジェクトの概要
経営体制の移行に伴う、『①理念策定とビジュアルアイデンティティ(以下VI)の刷新、②浸透活動のベースづくり、③浸透活動への継続的な伴走、④イノベーションの促進』という4つのフェーズを通じて、企業風土の変革、そして離職率の低減という成果を残したプロジェクトです。
1課題感と解決の方向性
経営の世代交代のタイミングで、内海産業の「らしさ」をあらためて見直し、時代にあったアイデンティティを確立したい。また従来のトップダウン型の社風を変え、理念に基づき社員ひとりひとりが主体的に考え、行動する“社員が主役”の組織へと変えていきたいというご要望をいただきました。そこでパラドックスからは理念策定とVIの変更、そして理念に基づく浸透活動を加速させる全社横断チームの立ち上げと伴走をご提案しました。
2理念策定
理念策定のプロジェクトでは、社長を含めた経営メンバーと将来を担う多様な階層のメンバーで、半年に渡るセッションを実施。創業当時のエピソードや伝説的な仕事のエピソードを通じて受け継ぐべきDNAを確認しつつ、顧客やパートナー企業へのアンケートも実施し、自分たちの存在意義を深めていきました。そのようなプロセスを経て決まったのが、「最上の着想で、購買欲に火をつける。」というミッションと、販売促進の次の時代をつくる、という意志を込めた「“購買促進”を、日本の常識に。」というビジョンでした。
3ビジュアルアイデンティティの刷新
次に取り掛かったのが、理念を体現するビジュアルアイデンティティの刷新でした。創業以来変わっていないロゴマークをはじめ、社員が普段使用する名刺や社員カード、コーポレートサイト、顧客用の商品カタログなど、あらゆるステークホルダーとの接点のイメージを変えることで、あらたなアイデンティティの構築を目指しました。
a.コーポレートロゴ
内海産業のMissionである「最上の着想で、購買欲に火をつける。」を視覚的に表現したロゴマーク。「Utsumi」の「i」は火になっており、人の心に火をつける様子を表現しています。また、全ての文字をつなげることで社員や関係者の方々とのつながりを、下の三本線は3つのValueを表しています。
b.コーポレートサイト
内海産業のルーツである瀬戸内海をイメージさせる「Utsumi Blue」を基調に制作。ファーストビューでは「買い物ゴコロに、火をつける。」というスローガンと、買い物を楽しむ生活者の写真を掲載することで、内海産業が何の会社なのかを一目で訴求できるように意識しています。
c.商品カタログ「ご販売のお手伝い」のリニューアル
内海産業で取り扱う商品を顧客に紹介するカタログ「ご販売のお手伝い」のレギュレーションを改定。表紙周りのルール(たとえば毎号必ず買い物かごをメインビジュアルに持ってくる、など)はもちろん、インデックスの見せ方や一つ一つの商品の情報や金額といった細かな部分のデザインレギュレーションも制作。それにより、内海産業内で自走できる仕組みとなりました。
4理念浸透・ビジョンへの理解促進
ここまでのプロセスは、プロジェクトのほんの序章。理念はつくって終わりでは意味がありません。45周年記念パーティにあわせ理念をリリースした直後に、理念浸透調査を実施。そこで浮き彫りになったのは、承認文化を醸成する必要性と「“購買促進”を、日本の常識に。」という独自の言葉で作られたビジョンへの理解の低さでした。そこで、それぞれの問題に対してプロジェクトを起ち上げ、解決を目指しました。
PHASE01:伝道師集団 「The ☆ビエルズ」結成
日本全国にある支店・営業所のメンバーに、どうすれば理念がもっと浸透するか。その問いから生まれたのが、宣教師ザビエルの名前に、理念の伝道師になる、という思いを込めた「The ☆ビエルズ」でした。結成にあたり、パラドックスは数ヶ月単位で行われる施策のプランニングに伴走。理念浸透の原理原則をコーチングしながら、理念策定のプロセスの振り返りや目標設定、行動内容を定めるワークショップを開催しました。社員のみなさんが積極的に意見を出しながら施策を考えることで、このワーク自体が理念浸透になるような仕立てにしました。プロジェクト後、実際にThe ☆ビエルズのメンバーたちは、各支店における浸透活動の中心メンバーとして活躍。決まった施策の中には、褒め合う風土を定着させ、理念を浸透させるために各理念ワードに紐づいた「褒め活バッジ」の贈り合いなどもあり、継続的な活動として今も続いています(2020年3月現在)。
PHASE02:ミッション・ビジョンの具体化および理解促進
ビジョンに使用されている「購買促進」という言葉。これは、売り手が売りたいものを売れるように促す販売促進とはちがい、買い手が買いたいと思うものを増やしていく生活者目線の取り組みです。しかし、これ自体が全く新しい概念のため、全員が同じゴールを目指せるように、そこにリアリティを肉付けしていく必要がありました。そこで、購買促進という考え方を深め、浸透するための、いくつかのプロジェクトが立ち上がりました。
a.ビジョンストーリー策定+ビジョンムービー
購買促進への理解を深めるための社内ラボ、それが「購買促進ラボ」です。内海産業とパラドックスの社員だけでなく、一橋大学大学院の楠木建教授にもご参画いただき、数ヶ月に渡る議論を通じて、販売促進と購買促進の違いを明確にしていきました。また、目指すべき世界が明確になった段階で、内海産業の社員のみなさんが、ビジョンが実現されるまでの道のりを未来作文として創作。実現までのプロセスを克明に言語化、ビジュアル化し、全社的に共有することで「ビジョンへの理解不足」という課題を払拭しました。
b.ビジョン実現に向けたサービス開発
購買促進ラボを通じて明確になった道筋を、より現実のものにするために立ち上がったのが、3方よし(社会・顧客・社員)の精神のうち、「顧客よし」を追求する社内チーム「買促タイガー」です。ビジョン実現に向けて、購買促進ラボの議論で出てきたアイデアを、いかに実ビジネス(商品やサービス)に落とし込むかを念頭に議論を重ねて、実際の新商品を開発していきました。これは継続的なプロジェクトとして現在も内海産業社内で運営されています。
c.表彰制度「ミッションアワード」
理念浸透で重要なのは、理念を体現した社員や仕事がきっちりと評価されること。理念策定後、内海産業ではじまったのが、月に一度の表彰「ミッションアワード」です。ミッションアワードはメンバーの仕事を上司やチームのメンバーが評価、推薦(エントリー)するという仕組みで、エントリーシートにはミッション、バリュー、スピリットが並び、各項目について「◯」「◎」をつけていくようになっています。こういった仕組みがあることで、評価する側もされる側も、日々、理念を意識する機会が増え、「全員が目指すべき、理念を体現した仕事像」が明確になり、理念浸透を加速させる装置になります。さらに、毎月の「ミッションアワード」だけではなく、年に一度、全社員投票で「ミッションアワードオブザイヤー」を選出する事で、全社員の参加意識向上と優れた仕事の理解促進、そして理念浸透を図っています。
d.年に一度の理念共有イベント
理念実現のため、年に一度開くことになった決起集会「買促フェス」。内海産業の社員が一堂に会し、ビジョンムービー(前述)の上映や、ワークショップ、レクリエーションなどを行うことで、社員の結束を強める集まりです。パラドックスは、働きがいを高め、「社員よし」を追求する社内の新チーム「Team WE」のメンバーとともに、ひとりひとりのビジョンを集めたオープニングムービーやワークショップなど、会の中のコンテンツづくりをサポート。楽しそうに仮装をして参加する社員も多く、会社の雰囲気が変わってきたという実感につながりました。
PHASE03:社内報「うつみん」創刊
TEAM WEの活動は多岐に渡りますが、その中で、パラドックスとしてお手伝いさせていただいたのが、社内報「うつみん」の創刊です。今後の内海産業側での運用を考え、パラドックスとしては企画会議のファシリテーションとデザインフォーマットの制作、コンテンツのディレクションという形で携わらせていただきました。
企画会議では解決したい課題の目線揃えからタイトル決め、コンテンツ出しや台割りへの落とし込みまでを議論。発刊された「うつみん」は社員だけでなく、社員の家族にも好評で、「課のほとんど全員が家族見せていた。中には実家の両親へ送った人もいた」「うつみんを起点に、家族との会話が広がった」「家族に見せたところ、以前とは雰囲気が変わって、今時の会社だと言っていた。」など、嬉しい声が集まっています。「うつみん」は、現在チームメンバーを変えて、継続的に発刊されています。
5成果
理念策定にとどまらず、浸透までを継続的にサポートさせていただいている本プロジェクト。毎年実施している理念浸透調査では、ミッション、ビジョンへの理解、共感はもちろん、働きがいに関する数値も年々改善しています。社内の様子は見違えるように変わり、多くの社員が生き生きとした表情で、楽しそうに働くようになりました。それを証明するかのように、理念策定前は15%ほどあった離職率が、2019年の段階で約4%と約1/3以下まで低下。理念浸透の効果を実感できるプロジェクトになっています。