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創業71年。小・中・高校の教科書の編集・出版をつづけ、たくさんの教材を教育現場に届けてきた光村図書出版様。新型コロナウイルスが全国の学校にも影響を及ぼす中、これまで先生方に向けて年二回発行されてきた紙媒体の広報誌にも新しいあり方が求められます。教育に携わる会社として、今やるべきこととはなにか。コロナに負けない授業づくりをサポートするために立ち上がった「ウェブ版広報誌」について、お話をお伺いしました。
報道機関でも日々報じられてきた通り、新型コロナウイルスは、全国の教育現場にも大きな影響を及ぼしました。各学校は感染予防対策のために休校措置をとり、子どもたちは家庭での学習が続く日々。緊急事態宣言が5月の大型連休明けも延長されると決定された頃、「これではもはや、通常のカリキュラム運営はできない。先生方はどんなに混乱しているんだろう」と感じた光村図書の皆さんは、試行錯誤を続ける学校教育現場のために行動に出ました。
「私たちに、なにかできることはないでしょうか」。光村図書が、同社の教科書編集に長年携わられている大学の先生へご連絡をされたのは、5月半ばのこと。その答えは、「私も今しかやれないことをやらなければと思っていました。できることがあれば、なんでもやらせてください」。相談を通して、学校が、子どもたちが困っている時にこそ行動するのが、教科書会社の使命だと再認識されたそうです。「今はとにかくタイムリーな情報発信が必要だと感じました。けれど、これまでの紙の広報誌では、取材から印刷までで2ヶ月を要してしまう。全国の先生方にいち早く情報をお届けするために、ウェブ版広報誌の企画がはじまりました」(同社広報課)。はじめの連絡から2日後には、全国各地からご賛同いただいた10名以上の先生方とウェブ会議で方針の打ち合わせを実施。「すぐに役立てていただけるもの、明日から使えるものを発信しよう」「これが正解なんてないのだから、様々なアイデアを載せていいことにしよう」「読者の先生が、それぞれの学校の実態に合わせて参考にしていただけるものにしよう」など、基本の編集方針が迅速に決定されていきました。
最初のコンテンツアップは6月初旬。先生方に上げていただく原稿は可能な限り即座に公開し、全国で日々生まれる新しい知恵や工夫をお届けしていきました。ああするべき、こうするべきという焦燥感を煽るものではなく、こんな時だからこそできることや気づけたことを発信する、前向きで明るいコンテンツにしたいという思いもありました。たとえば英語の音読は、家庭のほうがかえって子どもは恥ずかしがらずに練習でき、いつもより上手になる場合もあること。ようやく登校が再開されたばかりの生徒たちを評価するのは難しいけれど、「友達といっしょに授業ができて嬉しい」「普段どおりに生活できるってありがたい」、そんな思いを子どもたちが抱けているなら、それだけで十分ではないかということ。一人の先生が現場を通して感じられたことは、必ず他の先生の助けになります。様々な考えを共有するための場所になってほしいという思いの元、各教科のウェブ版広報誌は現在も継続して毎週更新されています。
学校現場はいつにも増して臨機応変な対応が求められ、大変な毎日が続いていますが、取材と原稿の執筆を依頼した先生方のうち、お断りされた方はお一人もいなかったそうです。通常、教科書は、編集委員など多くの先生方との議論を通して編集されます。これまで光村図書が教科書づくりにおいて大切にされてきたのは、未来を担う子ども像から話し合うこと。真に子どもたちのためを考え、自由闊達に議論される光村図書の姿勢に、日頃から多くの先生方が共感されていたからこそ、今回の非常事態においても想いをひとつにこのような施策が実現したのではないでしょうか。「今回の一件を通して、あらためて先生方との絆の存在を強く感じました。熱意と優しさの塊である先生方の想いをひしひしと感じたことで、私たちも気づかされるものがありました」(同)というお話から、志を実現していくため、そしてよきモノづくりには、志で共鳴するよきパートナーの存在が不可欠であるということを感じさせられました。
・70周年記念動画『光村図書の教科書づくり』はこちらから(企画制作:パラドックス)
https://www.mitsumura-tosho.co.jp/company/mitsumura70th/index.html
・光村図書出版様 「ウェブ版 広報誌のご案内」はこちらから
https://www.mitsumura-tosho.co.jp/kyokasho/kohoshi_special/index.html
・光村図書出版様「児童生徒に向けた学習支援コンテンツ」はこちらから(8月末まで公開)
https://www.mitsumura-tosho.co.jp/oshirase/shien_index.html
光村図書出版様はこの他に、今回の事態を受けて文部科学省から各教科書会社に要請のあった「児童生徒に向けた学習支援コンテンツ」もウェブサイトでご提供されています。これまでに教科書の補助教材としてつくられてきた「使ってもらえさえすれば、必ずいいものだとわかる」コンテンツが、この機会にたくさんの家庭に届けられることとなりました。著名な俳優や声優による国語の教材の朗読などはSNSで話題となり、サイトにアクセスが集中してサーバーエラーが起きるほどだったそうです。子どもたちに、本当にいいものと出会ってほしいと願う気持ちが、多くの方の共感を呼んだ結果だと思います。光村図書のみなさんとのお仕事は、一つひとつの原稿に入れていただく朱字の美しさにまで、子どもたちへのまなざしが行き届いているようで、いつも背筋が伸びる思いになります。今回取材をご依頼させていただき、あらためて志で共鳴するパートナーの存在の大切さを実感しました。そして、その関係性の根底には、時代が移り変わっても変わることのない、子どもたちへの大きな愛情と、教育に携わる会社としての使命があるということも。