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福岡県筑後市に本社を構え、電力・木材・防腐という事業を柱に、厳島神社をはじめとする歴史的建築物や近代建築ビルなどに採用される独自の保存処理技術による木材加工事業、環境対策や電力の安定供給を担う配電業務など、人や街の暮らしを幅広く支え続ける九州木材工業様。「温故創新」というスローガンのもと、今年90周年を節目に、100年企業に向けて新たな道を歩み続けています。今年7月に九州を襲った人吉豪雨災害でも、その支える力が発揮され多くの暮らしに貢献されました。自然と生きる企業の自然災害への取り組みについてお話を伺いました。
2020年7月4日。朝7時。前日夜から続くアラートはレベル4からレベル5へ。人吉事業所近くの社宅の1階にも球磨川からの水が流れこみ、水位は一時3mに。社員の方々もボートで避難を余儀なくされたといいます。倒木などによる電線にかかる枝を、一本ずつ伐採して暮らしの電気を守る配電保全業務ですが、街中は泥であふれ、山沿いは道がない状態。あらゆるインフラ企業が集結するなか、人吉事業所の伐採班は事前に集結した応援班と一丸となって時には道を作りながら、一本一本を安全に伐採していきました。
「道路が崩れていた箇所も多く、作業中に道路が冠水することもあったのでその都度作業を中断して避難を繰り返す状態でした」(人吉事業所 本田)
災害復旧に携わる社員全員が一番大切にされていることは「二次災害を絶対に起こさないこと」。支えるべき自分たちがいなくなってはいけない。緊急事態や災害時でも、一つ一つの作業を安全に確実に行なったと言われます。
「同じ現場は一つもありません。木の生え方や種類も違います。現場ごとの状況をいかに把握できるか。特に災害時は山が崩れている箇所も多いので全体に目を配ること。伐採作業に集中しすぎると逆に周りが見えなくなる危険もあるため現場把握には特に注意しています」(人吉事業所 原田班長)
豪雨発生から約2週間で緊急対応は無事完了しましたが、未だなお、開通しない国道もあり、完全復旧に向けて元の暮らしを取り戻す懸命な作業は続いています。
これまでにも数多くの災害復旧に貢献してきた九州木材工業。2016年の熊本地震の際は国道沿いの山が崩壊し阿蘇地区が停電。余震が続く中、昼夜を通して迂回ルートの復旧整備を実施。2019年に甚大な被害を与えた房総半島台風(台風15号)では、九州以外の地へ初めての災害復旧応援へ。佐賀・長崎・熊本支社から出動し、九州での復旧経験で貢献してきました。
今年創立90年を迎えた九州木材工業は、その長い歴史の中で、自然と人、木と人をつなぐ事業を続けてこられました。1930年に防腐処理木製電柱の製造販売からスタート。時代とともに電柱もコンクリートに変わる中で、培った防腐防蟻の処理技術を木材製品に応用。耐久性に優れ、環境にも優しい主力製品でもあるエコアコールウッドは現在、厳島神社、出雲大社、新国立競技場など多くの建物に採用されています。木を扱う仕事は、木を育てること、木を守ることにつながり、視野を広げれば地球環境そのものを守り続けることが使命。森林を守り、林業を守り、美しい環境を守るために手がける分野も現在は環境事業へと拡大中です。これまで不可能と言われてきた強く、割れにくく、燃えずとも自然と調和する「不燃木材」という木材の新たな未来への挑戦も続いています。自然とともに生きる企業だからこそ、自然と正面から向き合っていく。木の可能性に挑戦し続けながら、日本の豊かな暮らしを守り続けています。
創立100年に向けて掲げられた「温故創新」の通り、古きをたずね新たに創造していく企業姿勢は、昭和、平成、令和と時代変化に合わせて電柱から環境までの幅広い事業展開そのもの。培った技術で現代社会に貢献していく姿に共感を覚えました。また、九州木材工業では社内の取り組みの一環として、全社員によるクオリティの高い社内清掃業務も習慣化されており、ゴミ一つない美しい環境整備力も取材時に実感する機会が多くありました。一人一人の小さな努力の積み重ねが見える形となったのが、日本そうじ協会による「掃除大賞」の受賞。2017年、2020年の2回の受賞は史上初だということ。あたりまえの暮らしをあたりまえに守り続けていく企業様から、仕事への取り組む姿勢、視野の広さを学ばせていただきました。