ブランディングにのめり込む入社3年目のディレクターが、全力でおすすめするブランディング関連本5冊。

ブランディングディレクター3年目の私は、日々「ブランディングに関するお悩み」を抱えるお客様の様々な声に出会います。

その中で、ブランディングでなかなか成果が出ない企業の多くは、以下のような特徴を持っていることに気づきました。

  • 「ブランディング」を単なるテクニックだと勘違いしている
  • 理念を作ったは良いものの、「理念浸透フェーズ」の詰めが甘く効果が生まれていない
  • 見た目の「ブランディング」ばかりを重視している

私にとって、このような事実に気づけたのは大きな財産です。なぜなら、当時の私も上記に該当していたから。

そんな私も今では機械系メーカーやジュエリー、アパレル企業に銀行、公益事業など、特定の分野に限らないお客様のブランディングに携わるまでになりました。ブランディングの奥の深さに早い段階で気づき、数々の学びを得てきたからこそ、仕事が広がっていっているのだと思っています。

ブランディングを学ぶためのコツは、「ブランディングに詳しい人に聞くこと」でした。たくさんのアポイントに同席し、聞き、自ら手を動かして学んできました。

数々の仕事で、特にお世話になっているのは、弊社の執行役員の一人であるゆうすけさん。創業から18年以上多くの企業のブランディングに携わっている弊社に、創業間もない頃に入社した、尊敬する大先輩です。

私は、そんなゆうすけさんと、アポイントが終わるたびに以下のようなやり取りを繰り返していました。

私:「ゆうすけさん!どうしてゆうすけさんはそんなにお客様の課題や疑問に答えられるんですか?秘訣を教えてください!」

ゆうすけさん:「経験はもちろんあるけれど、、、本かな。本を読んで新しい考え方や知識を身につけてお客様のブランディングにも活かしてるよ。」

私:「本!おすすめはありますか!?ブランディングについてもっと知りたいんです!教えてください!!!!」

と、鼻息荒く聞きまくり、気づいたらたくさんの本を読んで、たくさんの知識を得ている自分がいたんです。

ということで、今回は、ブランディングを業とする弊社の役員ゆうすけさんがおすすめする数々の本の中から、私が実際に読み込み「心の底からおすすめできる!」という本を5つに厳選し紹介していきます。

私のようにブランディングに向き合っている企業の皆様が、理解を深め、ブランディングをより効果的に実践していただきたいという思いでまとめました。

実際のブランディング経験に紐付いた信頼できる内容なので、全部読んでみるもよし、まずは一冊からはじめてみるもよし。どれを手に取っても参考にしていただける自信があります。もちろん読んで終わりにするのはNG!学んだことを取り入れながら、あなたの「ブランディング」を前進させましょう!

それでは、早速参ります! 

 1.ブランディングに関する厳選5冊のご紹介

まずは、先ほどから名前が出ている、弊社の役員ゆうすけさんをご紹介。

鈴木祐介
株式会社パラドックス 執行役員/ブランディング・プロデューサー/
クリエイティブ・ディレクター
パラドックスが社員4名のときに入社。企業の成長の紆余曲折を実感しながら、さまざまな業界のブランディングに携わる。顧客や世の中が共感する。社員も誇りにもてる。会社がいきいきする。だから採用力も上がる。共感した人材が入る。また社内が活性化する。それによって、サービス(や商品開発など)がよりよくなり、顧客がさらにファンになる。そういう成長のスパイラルの基盤となるような独自のアイデンティティをつくり、理念(志)を中心としたブランド構築で、企業の進化のお手伝いをする日々。理念開発から、理念浸透(社内のモチベーションアップ・採用ブランディング等)、カスタマー向けの事業・商品ブランド構築など。事業継承を兼ねたリブランディングからスタートアップまで、幅広く従事。最近ではビジネスモデルをつくるところから関わる仕事や書籍の監修、講師、顧問なども増えている。社内では社内大学や、商品・ナレッジ開発チーム、パラドックス創研の創設〜運営に従事。

★グロービス経営大学院(2012期)
★講師:宣伝会議、企業セミナーなど多数
★書籍・寄稿:『100万社のマーケティング/経営者×クリエイターのアイデア会議』(宣伝会議:寄稿)
『企業の歴史を紐解き、理念を言語化。共感される強いブランドを育てる』(宣伝会議:寄稿)
『NPOのための想いを伝わる言葉にするワークブック』(NPO法人シミンズシーズ:書籍監修)
★東京コピーライターズクラブ会員・福岡コピーライターズクラブ会員
★AWARD:TCC新人賞、FCC新人賞、CCNクラブ賞、日本BtoB広告賞(2007・2009・2010・2015・2018)、人生広告年鑑他、携わったプロジェクトの雑誌掲載多数

社内以外にもブランディングの講師や書籍への寄稿など、幅広くブランディング関連のお仕事に携わっています。今回の本5冊について、おすすめコメントももらっていますのでぜひ参考にしてください。

ちなみに改めまして、私は、新卒でパラドックスに入社しましたディレクター3年目。これまで携わってきたのは、機械系メーカーやジュエリー、アパレル企業に銀行、公益事業など、特定の分野に限らないお客様たち。お客様の志溢れるお話を聞くのが大好きなのですが、もっともっとお客様の志を世の中に広め、その実現に貢献したい!という思いが強く、今回の記事作成に至った次第でございます。

それでは早速、ブランディング関連のおすすめ本5冊をご紹介!全て皆さまに読んでいただきたいのですが、言及するなら特にどんな方におすすめかも記載しますね!

①『ブランディングの基本』
BtoC企業の方向け

②『「変える」は会社の毎日のお仕事』
→リブランディングを考えている企業の方向け

③『ストーリーとしての競争戦略』
→経営者の方・経営戦略に関わる方向け

④『リッツ・カールトンが大切にするサービスを超える瞬間』
→インナーブランディングを考えている方・人事の方向け

⑤『WHYから始めよ!インスパイア型リーダーはここが違う』
→経営層・マネジメント層&商品開発に携わる方向け

こちらの5冊です!いよいよ、それぞれについて見ていきますよ!

①*BtoC企業の方向け*『ブランディングの基本』

『ブランディングの基本』安原智樹著/日本実業出版社

https://www.amazon.co.jp/%E3%83%96%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%83%87%E3%82%A3%E3%83%B3%E3%82%B0%E3%81%AE%E5%9F%BA%E6%9C%AC-%E5%AE%89%E5%8E%9F-%E6%99%BA%E6%A8%B9/dp/4534052251

ゆうすけさんからのコメント

主にBtoC向けブランディングの領域についての本。ブランドの方向性を明確にし、どうやってその価値を高めていくか。ブランドパートナーを軸としたブランディングについて、具体的な進め方や、実際に活用できるフレームなど、わかりやすく整理されています。ブランドが本当に大事にすべき真の顧客、ブランドの価値を共に創り、一緒に育てていけるような顧客である「ブランドパートナー」の考え方や、ブランドストーリーをつくる際の「価値創造の8つの方向性」の話が新鮮で、特にBtoC向けブランディングには大切になる視点なので、ぜひ読んでほしいところ。パラドックスでもBtoC向けブランディングのナレッジに組み込んでいます。

こちらの本は、特にパラドックスのブランディングの考えや進め方を深めた一冊と言えるのではないでしょうか?特にBtoC向けの事業をされているお客様にパラドックスからお話させていただいている内容がたくさんあります。

この本の中で改めて、私が特にお客様に伝えていきたいと思ったのは、「差積化」という考え方。「ブランディング実務を軽やかにするポイント」として説明がされているこの言葉ですが、初めて聞いた方も多いのではないでしょうか?

「差積化」というのは、「差別化」に対峙する概念で、筆者が作った言葉です。ブランディングの最初によく意識される「差別化」ですが、商品やサービスのオリジナリティなどで市場参入時には大きなインパクトを与えたとしても、例えば競合ブランドが参入してきたり、時間が経つにつれて、お客様が感じる「差」は弱くなっていってしまいます。「差」が弱くなった頃にどうにかしてその「差」をアピールしようとしたり、違う「差」を作ろうとするには、大きなパワーがかかってしまいますよね。

一方で「差積化」は、小さな活動を続けていくことで、コツコツコツコツ小さな差を積み重ねていくことになり、その規模がだんだんと大きくなったり累積効果によって深みが出てきたりするその結果、「真似されにくさ」につながっていくという流れの考え方です。

大きなパワーをかけて一時的な差別化を図るよりも、小さなパワーで差積化を図ることは、長期的に愛されるブランドづくりに繋がっていきますし、企業の中の人としても、「差」を作ろうとするたびに疲弊することもないので、嬉しいところかと思います。

じゃあ実際に何をして「差積化」していくのよ!というところですが、筆者は、たくさんあるブランディングの活動アイデアの中でも、差積化につながるものの条件として、この3つを置いています。

⑴労力が減っていくこと
これは、「活動すればするほど、社内の仕事が減る(簡単になる)か?」という判断軸。

 

⑵競合が真似しにくくなること
これは、「活動すればするほど、競合は模倣を諦めるか?」という判断軸。

 

⑶鮮度が変わらないこと
これは、「活動を長く続けても、いつも新しさがキープできるか?」という判断軸。

これらに当てはまるものとして考えられるのは、例えばコミュニティ・サイト。活気を持って運用をすることで、参加するお客様が自然と他の参加者を連れてきてくれたり、一定人数を超えると、競合もゼロからスタートして模倣することを諦め、アンケートのようなコンテンツが常に新鮮さを生み出してくれる、「差積化」につながるものになります。

この「差積化」という考えについて、私が思ったのは、BtoCの事業はもちろん、例えば理念浸透といったインナーブランディング等にもこの考えは当てはまる、ということ。

社員の皆さんがお客様だとすると、理念を作ってバンっと出すだけでは、最初は注目されるものの、そのあとは”掛け軸”になって忘れ去られてしまう。「差積化」の概念を持って、社内にコツコツ発信していく方法を考えてみると、社員の皆さんにも長く愛される理念浸透・会社づくりができるのではないかと思いました。

思えば人間も、その人が誰であるかという個性は、その人が何か1つ一時的に大きなことをしたからというよりも、些細なことでも普段どんな人でどんなことをしているのかの方が積み重なって作られていくもの。愛される要素も、然りだと思います。

何事も”小さなことからコツコツと”続けることが、ブランディングにおいても強くて、長く愛される個性を作っていくのだと気づかせてくれた一冊です!!

②*リブランディングを考えている企業の方向け*『「変える」は会社の毎日のお仕事』

『「変える」は会社の毎日のお仕事』村尾隆介・森川綵著/朝日新聞出版

https://www.amazon.co.jp/%E3%80%8C%E5%A4%89%E3%81%88%E3%82%8B%E3%80%8D%E3%81%AF%E4%BC%9A%E7%A4%BE%E3%81%AE%E6%AF%8E%E6%97%A5%E3%81%AE%E3%81%8A%E4%BB%95%E4%BA%8B-%E6%88%90%E5%8A%9F%E3%81%97%E7%B6%9A%E3%81%91%E3%82%8B%E4%BC%81%E6%A5%AD%E3%81%AE%E3%83%AA%E3%83%96%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%83%87%E3%82%A3%E3%83%B3%E3%82%B0%E6%88%A6%E7%95%A5-%E6%9D%91%E5%B0%BE%E9%9A%86%E4%BB%8B/dp/4023309680 

ゆうすけさんからのコメント

企業のブランドイメージを時代と市場に合わせて再構築・再定義する〝リブランディング戦略〟について、ソニー、トヨタ、ローソン、中川政七商店、アウディなど国内外の様々な企業の実例をもとに解説している本です。さらに、そのリブランディングの手順について、ワークショップの流れなど、具体的に説明しているため、より実践に近づける内容になっています。具体的な社内の巻き込み方など、社内で進めていくうえでの、実践的な手順と注意点がわかるのがおすすめポイントですね。実際にお客様とブランディングセッションをする際のファシリテーションや、クライアント内部でのブランディングの進め方、プロジェクトチームの作り方などを、参考にしています。

「成功し続ける企業のリブランディング戦略」というサブタイトルの通り、「リブランディング」に特化した本です。

例えば現状、

「地域や業界に競合が増えており、この先が心配」
「会社の見せ方が、何だか野暮ったいと感じている」
「世代交代を機に、会社のイメージを変えていきたい」

といった様々な自社ブランドの問題に頭を悩ませている企業に向けて、リブランディングの方法や意義をわかりやすく伝えていきます。

「ブランドとは」という根本的な意味合いから紐解きつつ、リブランディングの方向性・切り口も、明確な事例を交えながら紹介してくれるため、「あ、これは自社に当てはまりそうだ」「このフレームで自社について考えてみると」など、具体的にリブランディングを進めていくイメージが湧きやすいのが嬉しいところ。

タイトルにもありますが、リブランディングにおいて変えていくのは、“「日々」のお仕事”というのが、この本の主張です。

行き詰まってから、大胆な改革を行うのか?
それとも、常日頃から、自分たちをチューンアップしていくのか?
私たちが、おすすめしたいのは後者です。”

とあるように、パワーも費用もかかってしまうような改革よりも、日々、商品やサービスの見直しや理念の変更など、少しずつ施策を組み合わせながら、ブランドを改革し続ける、ということが必要だし、有効だということは、パラドックスで様々なクライアント様のブランディングに向き合っていても感じるところです。

理念を作って終わり、商品のデザインを一新して終わり、では、かけたパワーやお金がもったいない!そのあと何もしなければ、一時的な注目のち、社員もお客様も興味・関心を無くしていきますし、時代は動いていくものなので、また置いてけぼりになってしまうだけ。小さなこともコツコツと継続して改善・変化を続けていくことが、ブランドのイメージをお客様の頭の中に作っていくためにも必要なことなのです。

この、常日頃変化を継続させていく、ということのためにも、この本でぜひ読んで欲しいと思ったのが、Chapter5の「最高のチームでリブランディングにあたる」。リブランディングにおけるチームづくりのポイントがまとまっているChapterです。

会社のブランディングは、会社の未来に関わることなので、最高のチームで臨みたいですよね。そのチームのメンバー選びもやはり大事で、この本では、例えば、

・会社にとって耳の痛いことを言ってくれる人
・若くても、お客様のことを深く考えている人

とどんな人をチームに加えるべきかが具体的に書かれています。こう言われると、きっとあなたの頭の中にも浮かぶ人がいるのではないでしょうか?

またチームのモチベーションを上げるため、まずはじめに、そのチームがこれからやることが、会社を変える“社運に関わる”ことであり、自分たちの仕事をもっと楽しくさせるのだと、社内に浸透させる重要性も説いています。

私自身、例えば理念策定をプロジェクトチームの皆さんとするような経験もしてきましたが、みんなが全員一致の意見なのは、とても危険なことだと思っています。その時は、あえて反対意見を出して意見交換をする機会を設けるなどしているのですが、まずメンバーの皆さんそれぞれが熱意を持って考え、違った視点から意見を伝え合うようなチームづくりができていると、出てくるアウトプットも機能するものになり、よりよいブランディングにつながると感じています。

この本は、リブランディングをこれからされる方はもちろん、これからブランド作りをしていく方にも、長く続くブランドになるために今から参考にできるところがいっぱいです。読みやすさも抜群なので、この5冊の中でもまず手にとってみるのに一番おすすめな一冊です!

③*経営者の方・経営戦略に関わる方向け*『ストーリーとしての競争戦略』

『ストーリーとしての競争戦略 優れた戦略の条件』楠木建著/東洋経済新報社

https://www.amazon.co.jp/%E3%82%B9%E3%83%88%E3%83%BC%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%81%A8%E3%81%97%E3%81%A6%E3%81%AE%E7%AB%B6%E4%BA%89%E6%88%A6%E7%95%A5-%E2%80%95%E5%84%AA%E3%82%8C%E3%81%9F%E6%88%A6%E7%95%A5%E3%81%AE%E6%9D%A1%E4%BB%B6-Hitotsubashi-Business-Review/dp/4492532706

ゆうすけさんからのコメント

前書きにもあるのですが、「優れた戦略とは思わず人に話したくなるような面白いストーリー」というのが、この本のテーマであり、大きな気づきを与えてくれる視点満載の一冊です。スターバックスの事例など、具体的な事例を通した論理でわかりやすく、ストーリーを軸にした競争戦略を学ぶことができます。パラドックスのコーポレートブランディングのナレッジを考える上で、参考にしたり、ブランドストーリー構築の際も、“思わず人に話したくなるストーリー”であることを心がけていますね。 

筆者がまずこの本を手にしてみて思ったこと。

「ぶ、分厚い、、、。」

難しい話が苦手な私は一瞬怯んでしまいましたが、その分中身が濃ゆい一冊でした。

特に第1章の中で、「短い話を長くする」という話には思わずうんうんとうなづいてしまいました。筆者から見ると、現在多くの企業の戦略が「静止画症候群」に陥っているとのこと。確かにそうかもしれません。これとこれをやり、いついつまでにこうなる、という戦略めいたものには”点”があるだけで、その間が線になっていない・明確になっていないことも多々あるのではないでしょうか?

それでは、点と点の間は、どうにでもなれ、と言っているようなもの。戦略とは、本来ストーリーを持った動画、面白いお話であるべきで、whatやwhenよりもwhyに対する説明が長くなる。ワンフレーズで語れるものではなく、論理の通ったある程度の長い話にならざるを得ないものです。

思えば、イメージトレーニングも受験勉強の目標立ても、一瞬一瞬の静止画ではなく、いろいろな方向に想像して、外からの影響や自分の性格なども加味して、できるだけリアルにストーリーにして考えてみると、実現できる道に近づきますよね。

現代の「静止画」的な戦略は、忙しく戦略ストーリーを詰めているゆとりがなかったり、コミュニケーションを簡単にするために短い話にしている、などいろいろな理由からきているものですが、企業がどのようなストーリーで世の中に広まっていくのかを今一度、突き詰めて考えることが戦略の実現への近道なのだと思います。

パラドックスのブランディングでも、ブランドストーリーとして、ブランドが歩んでいく物語を描き言語化していくことがありますが、伝わりやすくするために短くするよりも、筋の通った、思わず人に話したくなる物語にするために、明確&詳細に長い話にしていくことの大事さを、お客様とも共有するようになりました。コミュニケーションのために短い言葉があってもいいかもしれませんが、長い戦略ストーリーを語れるというのが大切なことですね。

また、第7章には『戦略ストーリーの「骨法10カ条」』と題し、あらゆるジャンルの戦略ストーリーに共通した原理原則を提示しています。筆者も語っているように、優れた戦略ストーリーを描くための普遍の法則があるわけではありませんが、ストーリーを組み立てる際に参考にしたい本質的な10カ条です。戦略に関わる皆さんには、ここもぜひ読んでほしいところです。

④*インナーブランディングを考えている方・人事の方向け*『リッツ・カールトンが大切にするサービスを超える瞬間』

『リッツ・カールトンが大切にするサービスを超える瞬間』高野登著/かんき出版

https://www.amazon.co.jp/%E3%83%AA%E3%83%83%E3%83%84%E3%83%BB%E3%82%AB%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%83%88%E3%83%B3%E3%81%8C%E5%A4%A7%E5%88%87%E3%81%AB%E3%81%99%E3%82%8B%E3%82%B5%E3%83%BC%E3%83%93%E3%82%B9%E3%82%92%E8%B6%85%E3%81%88%E3%82%8B%E7%9E%AC%E9%96%93-%E9%AB%98%E9%87%8E%E7%99%BB-ebook/dp/B00J7K41EA

ゆうすけさんからのコメント

世界でも有数の名ホテルとして名高いリッツ・カールトン。そのサービス品質がなぜ高いのか。実際に現場で起きていること、大事にしている教育などを、日本支社長である筆者が具体的な事例とともに紹介しています。会社の信念とサービスをどう結びつけるか、理念浸透や組織マネジメントなど、そのヒントがたくさん載っており、インナーブランディングにおける「理解・実感・実践」のポイントの理解が深まります。サービス業のお客様に特にお話することが多いです。

タイトルから一見感動するおもてなしを紹介してくれる本かなと見えますが、そんなことはありませんでした。(もちろんおもてなしのエピソードにも「ワオ!」と感動するのですが。)一人ひとりが生き生きと会社と接点を持ちながら働いているってこういうことだと思えるお話がたくさん詰まっていました。

筆者がリッツ・カールトンに入る前に勤めていた別のホテルでの経験も書かれているため、いかにリッツ・カールトンのインナーブランディングが素晴らしいかがわかります。

特に印象的だったのは、クレドの中にある「従業員への約束」。

従業員への約束

 

リッツ・カールトンでは
お客様へお約束したサービスを
提供する上で、紳士・淑女こそが
もっとも大切な資源です。

 

信頼・誠実・尊敬・高潔・決意を
原則とし、私たちは、個人と社会の
ためになるよう、持てる能力を育成し、
最大限に伸ばします。

 

多様性を尊重し、充実した生活を深め、
個人のこころざしを実現し、
リッツ・カールトン・ミスティーク
(神秘性)を高める・・・
リッツ・カールトンは、このような
職場環境を育みます。

よく会社の中で見られるクレドは、スピリットや行動規範などとも言い換えられ、社員がお客様に向き合うときに必要な姿勢を言語化したものの活用。要するに、社員が会社に約束させられることですよね。

リッツ・カールトンのクレドにももちろん、リッツ・カールトンがお客様に約束することもあるのですが、この従業員への約束も同レイヤーに存在しています。そしてこちらは、会社から社員に約束するもの。本の中では、”宣誓書”と表現しています。会社と個人が、互いにリスペクトしあって、本物のパートナーとして信頼関係が築けているのか。一度現状に問うことが必要なのだと、この内容を読んで、ハッとしました。

会社は個人の集まりです。一人の人間としてリスペクトされ、会社から信頼されている・会社が約束してくれているという実感が責任感や会社への愛を育てていくのだと思います。

インナーブランディングで会社から社員の方々に目指したい方向性を示し浸透させていくことが重視されがちですが、まずは社員一人ひとりに向き合う会社の姿勢を示すこと。それは、みんなの心のコップを上に上げることにもつながります。

一人ひとりが生き生きと、責任感をもち、自分から創造的に仕事を行いながら、誇りや喜びを得ている。こんな会社になれたら最高ですよね。この本には、そんな組織づくりのヒントがたくさん詰まっていました。

⑤*経営層・マネジメント層&商品開発に携わる方向け*『WHYから始めよ!インスパイア型リーダーはここが違う』

『WHYから始めよ!インスパイア型リーダーはここが違う』サイモン・シネック著/日本経済新聞出版社

https://www.amazon.co.jp/WHY%E3%81%8B%E3%82%89%E5%A7%8B%E3%82%81%E3%82%88-%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%82%B9%E3%83%91%E3%82%A4%E3%82%A2%E5%9E%8B%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%80%E3%83%BC%E3%81%AF%E3%81%93%E3%81%93%E3%81%8C%E9%81%95%E3%81%86-%E3%82%B5%E3%82%A4%E3%83%A2%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%82%B7%E3%83%8D%E3%83%83%E3%82%AF/dp/4532317673/ref=cm_cr_arp_d_product_top?ie=UTF8

ゆうすけさんからのコメント

WHY(理念と大義)」を語る、それこそが組織の内外の人たちのやる気を起こさせること。アップル、サウスウエスト航空、スターバックスなどの事例から〈インスパイア型リーダー〉について語られています。組織を動かすインナーブランディングにも、ブランドパートナーを増やすカスタマーブランディングにも通じる考え方なのですが、WHYを語ることの大切さがよくわかる一冊です。ゴールデンサークル理論は、ブランディングの枠組み(WhyMIHowBI・VIWhat=具体的なクリエイティブなど)に生かしています。また、ブランドパートナーの心を掴むストーリーとはなにか、カスタマーブランディングのナレッジにも組み込んでいます。

米国のコンサルタントであるサイモン・シネック氏が、ゴールデンサークルというフレームを用いて説明しているのは、人は「なに」ではなく、「なぜ?」に動かされる生き物であり、それを知っている優れた組織は内側から外側に向けてメッセージを伝えていくということ。

企業の事例だけではなく、例えばキング牧師の「I have a dream」の演説がなぜ力をもつのかや、ライト兄弟がなぜ世界初の有人動力飛行に成功できたか、そして、そういった人たちがいかに他の多くの人たちをインスパイアしているのかに触れ、実感をもって読みすすめることができます。

経営者はもちろん、リーダーやマネジメント層にいる方は、どう周りの同僚たちをインスパイアしていくのか、参考にできる点が多くあるかと思いますので、ぜひ。

特筆しておきたいのは、第12章にある「よき継承は、WHYを生かし続ける」というお話。

会社の創業理念をはっきりと説明せずに、WHYの化身とも言えるリーダーが退任すると、後継者はリーダーとしてどうすればいいのかわからない。すると後任者は会社経営のためにCEOに就任することになり、WHATの成長ばかりに注目し、WHYにはほとんど注目を払わなくなる。

この言葉にドキッとする企業の方もいるのではないでしょうか?カリスマ的な創業者がいて、その創業者がその会社の判断軸になってしまっている。この人が退任したら、会社がどっちを向いたらよいかわからなくなる。といったような状況の企業も多いことと思います。現状そうなってしまっている、と実感がある企業には、企業の「WHY」である理念をしっかりと紐解き、会社が経営者ではなく、その理念を判断軸にして進むべき道を明確にしていくことが必須なのだと思います。

創業者の影が色濃く、リーダーとしてどうしていくべきかお悩みの、2代目を後継する皆様も、会社全体が人ではなく、同じ方向を見て前進できるように、なるべく早く理念構築をして会社の進むべき方向性を、はっきりと示しましょう。

また、これは商品開発でも言えること。「なぜその商品が生まれたのか」をないがしろにして、WHATのみの考えで商品開発を続けていても、短期的には売れるかもしれませんが、人々をインスパイアし、長く愛される商品作りには、「WHY」が必要です。

企業経営でも、マネジメントでも、商品開発でも、知っておくと役立つ考え方なので、読んだら周りの人にもシェアしたくなる一冊です。(私も早速、読書好きなお客様にシェアしました!)

ーーー

以上、ブランディング会社の役員がおすすめする厳選5冊のご紹介でした!それぞれここに書かせていただいた内容以外にも、気づきの多いことばかりですので、ぜひとも読んでいただきたいと思います! 私も5冊読み込んでみて、“進化した感”といいますか、お客様とお話させていただくときに、自信を持って本で読んだことをお伝えして、以前よりもぐっと課題を解決するための道筋をお客様に示し、共有できるようになったと実感しています。

自社のブランディングをされている読者の皆様にとっても、5冊からの学びがなにかしら、ブランディングを前進させるきっかけになればと思います。

 

2.読書するときに意識したいこと3つ

 さて、ここで終わってしまう前に、今回のようなブランディング関連の本を読むときに、(私も気をつけていたのですが、)意識していただくと理解の手助けになるだろうということを3つお伝えさせていただきます。

2—1.すべてが自社にあてはまるわけではない。

 企業も人もそれぞれの「らしさ」や「使命」をもって存在しているため、ブランディングの施策について、これをこの流れでやっていけばOK!という決まった正解があるわけではありません。ご紹介した本の中でも、さまざまな施策や事例が出てきますが、すべてが自分の企業ですべきブランディングの施策なのか、すべての成功ストーリーがあなたの企業にもあてはまるか、というと、それは違います。

読書で学んだことを生かすためには、自分の中で噛み砕き、情報を取捨選択する必要あります。自社の実態やキャラクター、現状をしっかりと見据えた上で、なにをすべきかをじっくりと考える過程をすっとばさないようにしてください。

パラドックスがクライアント様のブランディングを手掛けるときも、まずはヒアリングからはじめ、その上でどんなことが必要か、どんな順番でやっていくか、どういうやり方があっているのかをしっかりと設計し、進めていくようにしています。

読んでいいなと思ったことを周りにシェアして、意見をきいてみるのもいいかもしれません。きっと、その意見から課題や必要なことが見えてくることもありますよ。

ということで、書いてあることすべてが自分たちにあてはまることだとは思わずに客観的な目線をもって読み進めてください。

2—2.できることからはじめてみる意識と、変わる覚悟。

本に出てくるさまざまな施策の中には、こりゃパワーがかかるだろうな、と思うものもあります。それもそのはず、多かれ少なかれ、変わろうとしている企業がするのがブランディング。小さくても大きくても変革を起こそうとしているのです。

こんなのうちの会社だと無理だ〜!と思ってしまいそうですが、スモールスタートでも必要かつできそうなことを見つけてやってみようという意識をもって前向きに向き合っていただければと思います。ある意味、ブランディングをするからには、自社への愛と覚悟をもって進めていくことは必要。そのことも覚えておいてくださいね。

2ー3.世の中を見渡し想像しながら。

 ご紹介している本にはすべていいも悪いも含めて事例がたくさん出てきます。そんなときに意識してみてほしいのが、自分の近くや世の中に同じような具体例はないかなぁということ。

その視点で見渡していただくと、同じ事例にも幅があることがわかり、“活かし方の幅”も広がってきます自分で事例を探すこともブランディングの訓練。たくさんの事例から学んでいきましょう!

 

3.まとめ

ここまでお読みいただいて本当にありがとうございます。今回の記事を通して、この本を読んで自社のブランディングをもっと前進させるぞ!!と前向きな感情を思っていただいていたら嬉しいです。

5冊読む時間はなかなかとれないという方も、はじめの一歩で気になった本に手を伸ばしてみてはいかがでしょう?今回ご紹介した本を読み、自社に落とし込んで考えることで、読者の皆様の理解が深まり、あなたの会社のブランディングが前進していくことを、心から願っております!

(おわり)

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