市場の成熟やSNSの普及などにより、自社のブランド力強化やブランドイメージ向上に取り組んでいる企業も増えています。
そもそも、「ブランドイメージ」とは、どのような意味なのでしょうか?
一般的には「顧客が商品やサービスなどのブランドに対して抱くイメージ」という意味です。
ブランドイメージとは、商品やサービスが顧客に与える印象だけでなく、企業本体が与えるイメージでもあります。
約20年にわたり様々な企業様のブランドイメージ構築のお手伝いをしてきた私たちパラドックスは、ブランドイメージは「ブレないブランドのミッション・ビジョンから生まれる」と考えています。
企業や商品自体の上部のイメージだけでは、長期的に愛される本当のブランドイメージとは言えません。
ここでは、私たちパラドックスが考える「ブランドイメージ」の定義やブランドイメージの構築の考え方、いくつかの企業事例もご紹介します。
ブランドイメージを構築・向上させたいとお考えの方にとって、「ブランドイメージ」の考え方の理解につながると幸いです。
1:ブランドイメージとは
まず初めに、この記事のテーマである「ブランドイメージ」の定義と考え方について解説していきます。
冒頭でもお伝えしましたが、一般的にブランドイメージとは、「顧客の中に想起される、商品・サービスや企業に対して抱くイメージ」という意味です。ここでは、ブランドイメージを形成するために必要なブランディングについて整理しておきましょう。
1-1:ブランドイメージとブランディングの違い
「ブランドイメージ」と「ブランディング」という言葉ですが、同じ意味ではありません。
- ブランドイメージ:ブランディングによって、顧客がブランド対して抱くイメージや印象のこと
- ブランディング:ブランドに対して顧客がプラスの影響を持つために行う活動のこと
「ブランドイメージ」を向上させるための活動のことを「ブランディング」と言います。
どちらもブランド戦略においては大切な要素と考え方になります。
1-2:ブランディングとは
ブランディングとは、一般的に「ブランドの価値を高めていく取り組み」のことを指します。
ブランディング:「企業などが、自社製品や企業そのものの価値やイメージを高めようとすること。ブランド化。」(広辞苑 第七版)
もう少し具体的にお話しすると、商品やサービスの差別化を図ることで、顧客の信頼や好感、共感を得ることにより商品価値を高め「ブランド」を確立することです。
1-3:ブランディングの重要性
ブランディングは、企業やサービスに対するブランドイメージを伝える手段として必要なものです。
企業側が一方的にイメージを作り出し、顧客に発信するだけでなく、ブランディングを行うことで、顧客の中にブランドイメージを作り出し、自主的に感じてもらうことにつながります。
企業や商品の価値自体を高めるための活動がブランディングなのです。
2:ブランドイメージを向上させる方法
ブランドイメージは、顧客が企業や商品に抱くイメージであるとご説明していますが、企業で働く自社の社員が抱くイメージも大切です。
自社の社員に対するブランドイメージを高めて浸透させることを「インナーブランディング」と言います。
インナーブランディングを行うことで、全社員にブランドイメージを統一させ、ブランドに沿った行動につながり、結果として顧客に与えるブランドイメージへとつながるのです。
例えば、インナーブランディングの例で有名な企業は、「スターバックス」。
スターバックスでは従業員に対して具体的なマニュアルはなく、それぞれが「お客様のために満足している接客」を考えることを求めているだけです。
従業員の満足度の向上が顧客満足度につながり、結果として顧客に対するブランドイメージの向上につながっています。
3:ブランドイメージの向上で得られるメリット
前項ではブランドイメージを向上させる方法とスターバックスの例を挙げましたが、ブランドイメージの向上で様々なメリットを得ることができます。
- 長期的な利益が得られる
- 利益率の向上
- 優秀な人材の確保
- 競合企業との差別化
利益率の向上だけでなく、優秀な人材確保など企業にとって経営に関わる大きなメリットと言えるでしょう。
それぞれのメリットの内容について、詳しく見ていきましょう。
3-1:長期的な利益が得られる
ブランドイメージを確立、向上させることで、継続的な購入と長期的な利益を見込むことが可能です。
例えば、無印良品のユーザーの中には、無印良品のブランドのものしか買わないという人もいます。
ブランドを愛し続けてくれる顧客(ブランドパートナー)は、ブランドイメージが損なわれない限り、購入し続けてくれるでしょう。
3-2:利益率の向上
ブランドイメージの向上により、類似商品に比べて多少値段が高くても自然に選ばれる商品となります。
顧客にとっての比較対象が値段ではなく、ブランドイメージになれば、価格競争から脱却することにつながり、利益率も向上するでしょう。
また、ブランドイメージが定着することにより、企業や商品による認知度も向上し、広告を出さなくても顧客にとって「知っている」企業や商品になります。
そのため、広告にかけるコストも削減することが可能です。
3-3:優秀な人材の確保
ブランドイメージの向上で得られるメリットは、顧客や自社の社員に対するものだけではありません。
高いブランドイメージを持つ企業には「この企業で働きたい」と思う人も増え、多くの求職者が集まることで自然と優秀な人材に出会う機会も増えるでしょう。
ブランドイメージの向上により、優秀な人材やパートナー企業が集まりやすくなり、「採用ブランディング」にもつながります。
3-4:競合企業との差別化
類似商品やサービスがあふれる市場の中で、選ばれるためには「差別化」も必要な要素の一つです。
ブランドイメージを向上させることで、他社の商品やサービスとの差別化が可能になります。
例えば、ハンバーガーと聞くと多くの人は「マクドナルド」を思い出し、イメージするでしょう。
他にハンバーガーを販売するお店や企業があっても、高いブランドイメージからマクドナルドのハンバーガーを購入すれば問題ないと考え、自然に選ばれる商品となります。
このように、ブランドイメージの向上は企業にとっても大きなメリットとなるのです。
4:ブランドイメージ戦略と構築の5つのステップ
ブランドイメージを向上させるためには、まずは企業や自社の商品のブランドイメージを構築する必要があります。
上部だけのイメージではなく、顧客に愛され続けるためのブランド戦略を考えることが大切です。
ここでは、私たちパラドックスが実際にブランドイメージを構築するときに重要視している5つのステップをお伝えします。
①ブランドをつくる自社のミッション・ビジョンを明確にする。
私たちパラドックスは、ブランドイメージを「ブレないミッション・ビジョンから生まれる」と考えています。
企業ブランドの存在価値を明確にするということは、企業として大切な理念や志の部分を明確にすることです。
ミッションとは、企業が「日々果たすべき使命」のことであり、過去や現在、未来にまたがり、日々続けていくことであり、パラドックスではミッションのことを「志」と呼んでいます。
ビジョンとは、「実現したい未来のこと」であり、自分たちが目指す姿だけでなく、自分たちのビジネスを通じてどのような社会を実現させたいかという社会的意義や価値貢献などの「世の中との接点」を併せ持ったものです。
自社の商品やサービスを通して、どのようなミッション(使命)を実現したいのか、誰がどのようにして、商品を提供するに至ったのか、という背景が重要な要素になります。
ブランドイメージの核となる部分である、自社のミッション・ビジョンを掘り下げ、事業や商品、サービスに落とし込んで考えてみてください。
②自社のミッション・ビジョンを買ってくれるターゲット(真の顧客・ブランドパートナー)を決める
自社のミッション・ビジョンに紐づいた商品やサービスが生まれると、次は「真の顧客」探しになります。
私たちは「真の顧客」のことを「ブランドパートナー」と呼んでおり、一言で表すと「理想のお客様」です。
ただ商品を買ってくれるお客様ではなく、ブランドの価値を理解して、ブランドの良さを広めてくれる、そしてこれからの未来を一緒に創造してくれる存在とも言えるでしょう。
ブランドイメージの向上と愛されるブランドになるためには、ブランドパートナーを理解することも必要です。
企業のミッション・ビジョンに共感してくれたブランドパートナーが見つかったら、積極的に意見を聞きにいかれることをおすすめします。
自社が考えているブランドイメージとブランドパートナーが考えるイメージにギャップがあることも少なくありません。
価値観のギャップを的確にキャッチすることができれば、ブランドパートナーとの関係性や価値提供につながるでしょう。
③真の顧客・ブランドパートナーが求めている価値を明確にする
真の顧客であるブランドパートナーが喜ぶ価値を提供することが大切です。
ブランドパートナーが求めている価値を明確にするためには、彼ら彼女らがどのような人物であり、どのような悩みを持ち、どのような価値があれば悩みを解決できるのか。
自社のミッション・ビジョンと絡めながら、ブランドパートナーに提供できる価値を明確にする必要があります。
例えば、バングラデシュのグラミン銀行では「貧困のない世界をつくる。」をミッションとして掲げ、根本的な貧困問題を解決するために必要な真のブランドパートナーを貧困家庭の主婦に据えて、自立支援のための少額融資の仕組みを作ることで、主婦の自立を助け多くの貧困層の人々を救うことに成功しました。
上記の事例のように、自社のミッションをベースに、ブランドパートナーの悩みに対して「どんなことができるのか」という価値提供を明確していくことが大切です。
④真の顧客・ブランドパートナーが求めている価値をブランドコンセプトにする
ブランドパートナーへの価値提供が明確になったら、その価値をブランドコンセプトにします。
商品やサービスの見た目などをコンセプトにするのではなく、企業の中心となる「志(ミッション)」をブランドコンセプトに設定し、ブランドパートナーにどんな価値を提供するのか、他のブランドにはない価値を言語化していきます。
⑤ブランドのストーリーに落とし込む
自社のブランドコンセプトを設定したら、ブランドパートナーに共感してもらえるストーリーに落とし込むことが大切です。
長く愛し続けてくれるブランドパートナーは、流行や機能、価格で選ぶのではなく、商品が生まれた背景や想いなどのストーリーに共感します。
ブランドパートナーは「Why」、つまり、なぜこのブランドが生まれたのか、何のためにあるブランドなのか、というブランド独自のストーリーが心を動かし共感を呼ぶでしょう。
唯一無二のブランドストーリーを作る
市場の成熟や類似商品やサービスが増え、マーケットの選択肢が増える中で、多くの企業は市場調査などのリサーチをして答えを求めます。
しかし、市場に答えを求めるだけでは、企業や商品の差別化が難しくなってしまいます。
マーケットもブランドパートナーもその企業にしか出せない唯一無二のブランドストーリーを求めているのです。
5:【事例】ブランドイメージ戦略に成功した3つの企業事例
ここでは、実際にブランドイメージ戦略に成功した企業を3社ご紹介します。
ブランドイメージ向上に向けた取り組みや成功した要因などについて一緒に見ていきましょう。
今治タオル
1つ目の企業は、タオルで有名な「今治タオル」。
今やタオルブランドの中でも高いブランドイメージを持つ「今治タオル」ですが、かつては輸入タオルに圧倒され、ブランドとしても危機的な状況にありました。
「今治タオル」は個別のブランドではなく、産地としてのマスターブランドの確立を目指し、愛媛県の今治をタオルの産地としてブランド化しました。
そして、あえて品質の高さを強調する白いタオルを選ぶことで、「白い無地のタオル=今治タオル」のブランドイメージを確立しています。
無印良品
2つ目のブランドイメージ戦略に成功した企業は「無印良品」です。
元々はスーパーマーケット西友のプライベートブランドとして出発しましたが、今や「シンプル=無印良品」というブランドイメージを確立しています。
無印良品の「自然と。無名で。シンプルに。地球大。」という明確な企業理念とブランドの統一感、そして独自の世界観がブランドパートナーの獲得につながっているでしょう。
ルイ・ヴィトン
3つ目のブランド戦略に成功した企業は「ルイ・ヴィトン」。
ルイ・ヴィトンといえば、Lとを組み合わせたモノグラム柄を頭に浮かべる方も多いでしょう。
ハイブランドとしての高いブランドイメージから、憧れを持つ方も少なくありません。
世界中から愛されるブランドですが、生産を限定することで商品価値を高めることにも成功しています。
希少性やハイブランドのイメージから、持っていることがステータスだと感じるブランドイメージを作り上げています。
6.まとめ
今回は、企業や商品などの「ブランドイメージ」について、パラドックスの考え方などを交えながらご紹介しました。
ブランドイメージは顧客が持つイメージだけでなく、企業が与えるイメージでもあり、ブレないブランドのミッション・ビジョンから生まれるものです。
長く愛され続けるブランドを作るためには、真の顧客であるブランドパートナーの理解や価値提供を続けていくことが求められます。
ブランドイメージは上部のイメージだけでは長く愛されるブランドにはなりません。
その企業や商品、サービスが持つ、唯一無二のストーリーを発信し続けることで、ブランドパートナーから愛され続けるものになるのです。
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