企業のブランドイメージを守る。コンプライアンスの考え方を徹底解説!

「コンプライアンス」と聞くと、どんなイメージを持つでしょうか? 

「コンプライアンス違反」という使われ方が多いので、ネガティブなイメージを持たれる方がほとんどかもしれません。いいニュースより、悪いニュースが取り上げられるのが世の常。とくに近年、企業の不祥事のニュースを目にすることが多くなっています。そのような社会的背景もあり、今、あらゆる企業が不祥事の発生を未然に防ぐため、企業内の倫理観・道徳感を高める活動に取り組んでいます。その文脈で注目されているのが「コンプライアンス」という考え方です。

この記事では、企業のブランドイメージを守るコンプライアンスについて、私たちの考え方を交えながら詳しく解説していきます。企業の経営者や担当者の方にとってお役に立てると幸いです。

1.コンプライアンスとは

そもそも「コンプライアンス」とは「法令遵守」と解釈され、法律や倫理観を守りながら企業が組織活動を行うことを指します。ですが、守るべきものは法律だけではなく、社会通念上の倫理観から、企業が独自に定める社内規則まで、あらゆる範囲のルールを含んでいます。さらにコンプライアンスは企業自体や従業員を守るだけでなく、企業のブランドイメージを守るためにも一役買っているのです。この項目ではコンプライアンスの由来やコーポレートガバナンスとの違いについてご紹介します。

コンプライアンスの由来

コンプライアンスは、英語の「compliance」の「従うこと・応じる・守る」の意味が由来となっています。日本ではビジネスの分野で使われることが多く、その場合は冒頭に説明したように「法令遵守」の意味合いで使われます。ですが、たとえば医療現場では「患者が指示に従って服薬すること」という意味で使われるなど、使用場面によって意味が異なる場合もあります。

コーポレートガバナンスとの違い

混同しやすい言葉として、コーポレートガバナンスがあります。コーポレートガバナンスとは「企業統治」と訳されることが多いですが、その意味は「組織ぐるみの不祥事を防ぐために社外取締役や監査役などによって、経営を監視する仕組み」を指しています。つまり企業統治の管理体制の仕組みを整え、運用していくことが、コーポレートガバナンスなのです。組織がガバナンスを欠いている状態とは管理体制の仕組みが機能しておらず、企業が不祥事を起こしやすい(コンプライアンス違反が起きやすい)状態を指しています。つまり、コンプライアンスを強化するためにも、外部から企業を統治する仕組みであるコーポレートガバナンスが必要になるのです。

2.コンプライアンスの取り組みが広がった背景

企業におけるコンプライアンスの取り組みが広がった背景には、政府主導の企業間取引に関する規制緩和が大きく影響しています。規制緩和によってより自由な企業経営や経済活動が可能になる中で、企業による違反行為などの不祥事が相次ぎました。その状況を鑑み、政府は、各企業に対してこれまで以上の情報公開を求めて自己責任体制を強化するように指導したのです。以下では、企業のコンプライアンスの取り組みが広がった背景について、より詳しく見ていくことにします。

違法行為により消費者の信用を失うケースの増加

企業の自由な経営や活動が広がったことに合わせて、企業の不祥事が相次ぎました。主な不祥事は下記の通りです。

  • 自動車メーカーによるリコール隠し
  • 食品会社による牛肉偽装
  • 粉飾決算による倒産の増加
  • 品質検査データの改竄

企業が短期的な業績や利益を優先するあまり、違反行為や反社会的行為を行い、消費者や取引先からの信頼を失うケースが増加しました。企業の不祥事が相次いだ結果、企業にとってのコンプライアンスは、不祥事を起こさないためのリスクマネジメント活動として捉えられる傾向も大きくなっています。

企業の社会的責任(CSR)が強く要求されるようになった

自由な経営・経済活動の拡大から、企業に求められる要件が従来よりも広がっていることもコンプライアンスの取り組みが広がった要因の一つです。というのも、法律や倫理観、社会的なルールを守るだけでなく、企業の社会的責任(CSR:corporate social responsibility)を果たすことが強く要求されるようになったのです。

実際、消費者が商品やブランドを選ぶ選択基準に「社会的責任を果たしているか」ということが考慮されるようになってきています。場合によっては、社会的責任を果たしていないという理由で不買運動につながっているケースもあり、企業はよりシビアな対応が求められるようになっていると言えるでしょう。

【コラム:CSRとコンプライアンスの違い】
CSRは「企業の社会的責任」を意味し、「企業が利益だけを追い求めず社会全体に対する説明責任を果たすことで、企業価値の向上を目指す」という考え方のことです。CSRには「未来の社会や地球環境への配慮」「地域社会への貢献」「働きやすい職場づくり」など、企業を取り巻く全てのステークホルダーに対する責任が含まれますが、その根幹の部分にあるものがコンプライアンスであると言えます。

国際的な価値基準への取り組みが必要になった

企業活動のグローバル化に伴い、企業は国内だけでなく、世界から評価を受けるようになりました。そういった中で、より厳しい国際価値基準を遵守する必要性に直面したことが、コンプライアンスへの取り組み強化につながっています。また、世界的な潮流としてプライバシーや環境、食の安全性に対する関心などが広まったことで、人々の企業を見る目が厳しくなったことも、ひとつの要因と考えることができるでしょう。

3.コンプライアンスの違反事例

ニュースでは「コンプライアンス違反」などと取り上げられることも多いですが、具体的な内容をイメージできない方もいるかもしれません。以下では、コンプライアンス違反とされる事例について詳しく見ていきましょう。

労働問題に関する違反事例

労働問題に関するコンプライアンス違反には、次のようなものがあります。

  • 労働基準法に反する時間外・休日労働
  • 最低賃金を下回る賃金の支払い
  • 残業代の未払い
  • 有給を与えない
  • 休日を与えない
  • 予告なしの解雇
  • セクシャル・ハラスメント
  • 雇用差別

実際にあった例としては、大手広告代理店で過労死ラインをはるかに超える残業の強制やパワハラなどによって従業員がうつ状態に追い込まれ、結果、自殺に至ってしまったケースがありました。この件で、当該広告代理店は遺族から安全配慮義務違反、労働基準法違反として訴えられ、過労による自殺が労災として認定されるなど、社会にも大きな影響を与えました。

法令違反に関する違反事例

法令違反に関するコンプライアンス違反は、具体的に次の通りです。

  • 出資法違反
  • 食品衛生法違反
  • 著作権法違反

2011年に焼肉店でユッケを食べた客が腸管出血性大腸炎O-111やO-157に感染し、4人が死亡するという事件が起きました。この事件は、ユッケとして提供していた肉が生食用ではないなど、衛生管理に対する意識の欠如が原因で発生したことがわかりました。事件後には、国が食肉用を規制する法律を制定し、保健所の許可なしでユッケが提供できなくなるなど、厳しい規制が加えられました。

不正経理に関する違反事例

不正経理に関するコンプライアンス違反は、次のようなものがあります。

  • 粉飾決算
  • インサイダー取引
  • 損失補償
  • 架空請求
  • 業務上横領

近年起きた事件では、2018年に起こった振袖の販売レンタル業「はれのひ」の突然の店舗閉鎖が記憶に新しいでしょう。「はれのひ」が成人式間近に突然店舗を閉鎖した背景には、粉飾決算がありました。経営状態が悪化しているのにも関わらず粉飾決算により融資を受け続け、債務超過が膨らみ、その結果同社は破産。社長は逮捕され実刑判決を受けています。

情報漏洩に関する違反事例

情報漏洩に関するコンプライアンス違反の具体例は下記の通りです。

  • 個人情報の持ち出しによる情報漏洩
  • 利用者情報の紛失による情報漏洩
  • サイバー攻撃による情報漏洩
  • 個人情報の目的外利用

2014年にベネッセコーポレーションでは、社内で管理していたデータベースから個人情報が不正に持ち出されたことにより、約3,504万件の個人情報が漏洩しました。情報漏洩を受け、不正競争防止違反の容疑で情報漏洩をしたグループ会社の業務委託先の元社員を逮捕。この事件によりベネッセコーポレーションは経営に大打撃をうけ、経営状態も低迷することになりました。

4.コンプライアンスへの取り組み強化は企業のブランドイメージ向上にもつながる

コンプライアンス違反は、消費者やその他ステークホルダーからの信頼を一夜にして失うことになり、ともすれば倒産という最悪の事態につながりかねません。一方、裏を返せば、企業のブランドイメージを向上させ、企業価値を高めることもできます。ここでは、ブランドづくりという観点を踏まえながら、コンプライアンスへの取り組みを強化する考え方をご紹介します。

前提として、コンプライアンスを強化するためには、

①基本方針と行動基準をつくる
②推進のための仕組みをつくる

という二つの手順を踏む必要があります。順を追って見ていきましょう。

Step1:企業理念を軸に据えた基本方針・行動基準をつくる

まずは基本方針と行動基準についてです。方針や基準というと、どうしてもありきたいな、つまらないものになりがちです。そして、そういったものは往々にして浸透しません。つくって終わりになってしまうのが関の山でしょう。

そういった事態を避けるために重要なのは、世の中一般の基準をもとになんとなく決めるのではなく、企業理念を軸に据えることです。企業理念は、企業の存在理由であり、社会への約束でもあります。だからこそ、理念を起点に企業として遵守するべきものや従業員の行動基準を考えることで、その会社らしい、血の通ったものができるはずです。それが浸透することで、社員は自然とその会社らしい行動や判断ができるようになり、そういったひとつひとつがブランドにつながっていくのです。

Step2:推進のための仕組みをつくる

当然ですが、方針や基準はつくるだけでは意味がありません。つくったあと、社員に周知し、浸透することで、機能するものに育てていく必要があります。そのために必要なのが推進チームの立上げや違反があった際に通報できる体制づくりです。

推進チームの役割は、全社のコンプライアンスへの意識を高めることです。そのために基本方針や行動基準をベースにしたコンプライアンス研修など、具体的な学びのコンテンツに落とし込み、継続的に実施する必要があります。この研修では「そもそもコンプライアンスとは何か」という基本的なことから、日々の業務のなかでいかにも起こりそうな「コンプライアンス違反事例」を紹介したり、自分が発見者になった際の対処方法、通報先の周知などが必要です。また、従業員自らコンプライアンスについて考える機会を設けることで、自分ごと化してもらうことができれば、その後の浸透が進みやすくなるでしょう。

情報化が進んだ現代において、「表の顔ー裏の顔」という考え方は通用しなくなっています。ホームページでどれだけ自社の魅力を訴求していようとも、その実態はすぐにSNSなどを通じて社会に広がります。

ブランディングがステークホルダーからの信用や信頼を箱の中に溜めていくことだとしたら、コンプライアンスは「箱の底」と言えるかもしれません。どれだけたくさんの信用や信頼を溜めたとしても、底が抜けてしまえば一瞬でなくなってしまいます。ゆえに、コンプライアンスを強化することは、章の冒頭にあるような最悪の事態を防ぐだけでなく、企業のブランド価値を高めることにもつながっていくのです。

まとめ

ブランドとコンプライアンス。一見関係ないように見える両者ですが、実際は密接な関係があります。どれだけ時間とコストをブランディング活動に割いたとしても、コンプライアンス違反を犯してしまえば、一夜にしてブランド価値が失われてしまうのです。だからこそ、コンプライアンスを徹底する組織にしていくことは、ブランド価値を守ることにつながるのです。

企業のコンプライアンスを強化をしたいと考える経営者や担当者の皆様にとって、この記事の内容がお役に立てると幸いです。

【参考サイトまとめ】

kaonavi: https://www.kaonavi.jp/dictionary/compliance/
識学総研:https://souken.shikigaku.jp/1658/

 

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