【採用内定辞退の根本的な理由とは?】内定辞退を防ぐための考え方と取り組みをご紹介!

人材確保が企業の生死を分けるとさえいわれる現在、せっかく優秀な求職者に出会えたにもかかわらず、最終的に内定を辞退をされるケースも増えており、「内定辞退」に頭を悩ませる経営者や担当者も多いでしょう。

企業における採用・育成を担う人事に対する価値もこの数年で大きく変わってきました。以前に比べても、営業部のエースなど企業の中でも優秀かつ人間力がある人材を、人事に配属させるケースも増えており、企業の採用に対する意識の高さが伺えます。

そんな企業の採用人事担当者の共通の悩みとも言えるのが、優秀な求職者の「内定辞退」です。

内定辞退の主な理由としては、そもそも労働条件の不一致や採用活動で出会った社員との相性が悪いことなどが、よく挙げられていますが、それだけではありません。

約18年以上にわたって様々な企業様の採用ブランディングに携わってきた私たちパラドックスは、潜在的な内定辞退の理由とは、学生と企業の価値観の不一致にあると考えます。

もっと踏み込むと不一致以前の問題、つまり企業理念やパーパスを起点とした本質的な対話による価値観のすり合わせが圧倒的に不足しているように感じます。

一見、学生が自分自身の価値観について、理解を深められていない場合が多いように感じますが、実際に採用ブランディングの仕事をしてみると、企業側も自社理念が明確でなく、社会への提供価値が正しく伝えられていない場合が多いように感じます。

内定辞退の原因としては「求職者の価値観がふわふわしている!」「転職者は気まぐれだ!」と言われがちですが、実は企業側のあり方や伝え方にも、大きな問題があるのです。

この記事では、内定辞退を防ぐための取り組みなどを私たちパラドックスの考え方を交えながらご紹介します。

1:内定辞退はどれくらい起きているのか    

内定辞退が企業にとって深刻な問題として取り上げられていますが、実際にどれくらい起きているのでしょうか?

まずは、新卒採用と中途採用のそれぞれ内定辞退率を数字で見ていきましょう。

1-1:新卒採用の内定辞退率

引用元:リクルートキャリアの就職みらい研究所

リクルートキャリアの就職みらい研究所が発表した「就職プロセス調査(2021年卒)」のデータには、就職内定辞退率は60%以上という結果になっています。

この結果はあくまで平均データになるので、認知度の低い企業や採用ブランド力の高くない企業などではもっと高い辞退率になっているところもあるでしょう。

1人の就活生において、平均で2社以上の内定を取得している状態なので、企業側も選ばれる工夫や取り組みが必要になります。

参考元:リクルートキャリアの就職みらい研究所

 

1-2:中途採用の内定辞退率    

一方、中途採用の内定辞退率は、2019年時点で全体の約20%という結果です。

業種別では、サービス・レジャーが33.5%、流通・小売・フードが27.6%となっており、エリアでは首都圏が24.2%と高い結果になっています。

内定辞退率の高さは求人数の多さとも比例しており、企業数が多く内定を得られやすいことも影響していると言えるでしょう。

中途採用においても内定辞退は起こるため、中途採用、新卒採用に限らず、しっかり対応していくことが求められます。

参考元:マイナビ 中途採用状況調査2020年版

 

2:内定辞退の3大理由

企業の採用活動には時間もコストもかかるため、できれば内定辞退されるケースを増やしたくはないですよね。

そのためには、まずは内定辞退の理由を知らなければいけません。その理由が分かれば、辞退されないような対策が打てるかもしれません。

内定辞退の理由には人それぞれの事情がありますが、ここでは一般的に多い3つの理由について見ていきましょう。ちなみに下記は、転職者の内定辞退の理由です。

引用元:辞退の心理。|エン人事のミカタ!エン・ジャパン

①勤務地や給与の折り合いがつかない       

内定辞退の理由の中では、「勤務地や給与の折り合いがつかない」などの条件面を理由に断る人がもっとも多いようです。

例えば、募集要項に複数の勤務地が記載されており、実際の勤務地がハッキリしなかったり、大まかな給与の目安の情報しか提示されていないケースもありますが、面接を進めていくうちに条件をすり合わせていくことが大事です。

そもそも、配属先・配属地は選択肢には書いてはあるが、実際の入社時にはほとんど希望通りの配属ができない場合などは、対面のコミュニケーションの中で、最初から誠実に伝えるべきです。

なぜなら、その条件がお互いにとって絶対譲れないものであった場合、せっかくの面接時間が無駄になってしまうからです。また、もし乗り越えられそうな条件であった場合は、その条件を補って余りあるような価値観のすり合わせに時間を有意義に使えるからです。

選考時に希望などのヒアリングを行い、面接を通じて、最初から最後まで、具体的な入社後のイメージができるように話を進めることで内定辞退を防げる可能性があります。

②社風が合わないと判断した

書類選考から面談へと選考が進むうちに「社風が合わない」と感じて内定辞退になるケースもあります。

自分が働く環境として社風を重視する求職者も多く、会社説明会や担当者の対応、社内スタッフの対応などを通して、社風が自分に合っているかを判断する人も多いでしょう。

感覚的な部分が大きいですが、「自分にはなんとなく合わない」という理由で辞退する求職者もいます。

特にWEB面接では会社の雰囲気が伝わりづらいため、会社の魅力が伝わるような紹介動画や面接官以外の従業員との関わりを増やすなどの対策も必要です。

上記のような社風を作るカルチャーモデルは、昨今では顧客に対するビジネスモデルの対をなす、企業の強みとして注目されています。後ほど、詳細は説明しますが、このビジネスモデルとカルチャーモデルの起点となるのが企業のミッション・ビジョンであり、パーパスなのです。

③他社での選考が通過・内定が決まった                    

これは、本質的な辞退理由というよりは、そもそもの価値観の共有ができていないために、志望における優先順位が生まれていたことの結果と言えるでしょう。

しかし、優先順位があったとしても、内定出しまでのスピード感とコミュニケーションの質は、特にキャリア採用においては重要です。

求職者が最終決断を迷っていた場合、先に内定が出た企業に行くというケースは、企業の人事をしているとよく目にします。新卒採用の場合などでも、企業側が早く内定が出すことは、学生にとっては「自分を評価してくれている」ということの証明として映ります。

筆者が人事をやっていた頃のことですが、どんな企業にでも入れそうな優秀な学生が、「一番早く内定をいただいたところで、全力で働きます」と言っていたのを、今でも覚えています。ある意味、潔いというか(笑)、これも一つの価値観だなと思いました。

 

3:内定辞退が起こる原因は「価値観の未共有」にあり

内定辞退に多い3つの理由についてお伝えしましたが、どの理由も知ったところで「どうしようもないのでは?」と思った方もいるかもしれません。

しかし、前述した3つの理由に共通しているものがあります。それが「価値観の共有」の欠如です。

内定辞退が起こる根本的な理由は、企業と求職者が「本質的な価値観の共有」ができておらず、表面的・条件的な話に終始してしまっていることが挙げられます。

そして「価値観が共有できていない」ということは、企業のミッション・ビジョンが正しく伝えられていない、もしくは対話の中心になっていないと言い換えることができます。

ちなみに、この価値観の未共有という問題は、就職前の内定辞退だけでなく、離職理由にも大きく関係しています。上から順番に内容をみていっても、給与や福利厚生といった労働条件よりも、半分以上が、人間関係やそもそも価値観の不一致に起因するように思われます。

この結果が、入社前に価値観をすり合わせていないから、離職につながるのか、入社前にすり合わせていても、実際に入社すると不一致が明らかになるのか(あるいは両方)は、計りかねますが、価値観の一致が内定承諾率・離職率に大きく関わってくることは間違いなさそうです。

 

退職理由の本音ランキング

1位:上司・経営者の仕事の仕方が気に入らなかった(23%)
2位:労働時間・環境が不満だった(14%)
3位:同僚・先輩・後輩とうまくいかなかった(13%)
4位:給与が低かった(12%)
5位:仕事内容が面白くなかった(9%)
6位:社長がワンマンだった(7%)
7位:社風が合わなかった(6%)
7位:会社の経営方針・経営状況が変化した(6%)
7位:キャリアアップしたかった(6%)
10位:昇進・評価が不満だった(4%)

引用元:転職理由と退職理由の本音ランキングBest10

 

4:内定辞退を防ぐ考え方と取り組み

これまでお伝えした通り、内定辞退が起こる根本的な理由は候補者の「共感」が得られていないことが原因です。

求職者の「共感」を得るためには、やはり採用活動を通じて、自社の価値観や理念をストーリーで伝えることを意識しましょう。

ここでは、私たちパラドックスが考える企業の魅力を伝える理念ストーリーの作り方や取り組みについてご紹介します。

4-1:企業理念を改めて確認する              

求職者の共感を得る理念ストーリーを発信するためには、企業理念を改めて確認しましょう。

面談や選考の際に候補者に伝えるのは、企業の情報ではありません。

自分たちはなぜこの商品を提供しているのか、そもそも自分たちの企業のミッション・目的は何か?を企業理念に立ち返って考えることが大切です。

企業の思想や価値観を表した理念は、その企業らしさを表現する上で大事な要素を担うものになります。

4-2:理念×ターゲットからアプローチを考える            

企業理念を改めて確認したら、次はターゲットに合わせたアプローチを考えます。

理念ストーリーをターゲットに対しわかりやすく伝えるための「切り口」や「テーマ」と捉えてもらえると分かりやすいででしょう。

基本的に理念を起点に採用の目的や候補者となるターゲットから紐解いていきます。ミッション・ビジョン(またはパーパス)を誰に(ターゲット)どのように伝えるのかという視点で考えていくことです。

もう少しわかりやすく分解してご説明すると、アプローチ方法は、ターゲットの価値観と企業の強みによって変わってきます。

企業としての使命や大義がターゲットにとって魅力的であれば、ミッション・ビジョン(パーパス)を重視したアプローチ。

企業のビジネスモデルや顧客への提供価値に魅力を感じてもらえそうなら、バリューを重視したアプローチ。

働く社員の日々大事にする価値観・スタンスが魅力的に映っているのであれば、スピリット・クレドを重視したアプローチなどなど。

余談ですが、企業としてのコンセプトやアプローチの軸を一つに絞って、求職者とコミュニケーションをとってもいいですし、よりスキルが高い人事やリクルーターだと、ターゲットのニーズを面接や質問内容から読み解いて、臨機応変に最も効果的なファクトを交えながら会話ができるようになります。

4-3:企業理念に沿ったストーリーで伝える           

ターゲットが求めている価値観が分かり、その価値観に応えられる自社の価値観が見つかった後は、どうやってその価値観を相手に伝えるかです。

相手の共感を得るための伝え方コツは、WHY→HOW→WHATという流れを作ること。

 

  • WHY(なぜそうするのか):企業理念や目的、ミッション・ビジョン
  • HOW(どうやるのか):事業やサービスとしてのコミュニケーションの仕方
  • WHAT(何をやるのか):企業やブランド、商品サービスそのものの部分

 

ここで重要なポイントは、人はWHYの部分に心を動かされるため、上記の順番に伝えることで強い共感を得られると言われているのです。

そのため、企業やブランド、商品そのもののWHATだけを伝えるのではなく、WHYの理念にあたる部分から順番にストーリーにして伝えることが大切になります。

つまり、どんな仕事内容なのか?どんな製品やサービスを扱っているのか?どのような福利厚生や給与体系なのか?などを伝えることも大事なのですが、なぜその事業をやっているのかという必然性から話し始めることが大事ということですね。

これは商品力やビジネスモデルに強みを持っている企業ほどよくやってしまいがちな落とし穴です。高い技術力やオンリーワン商品への自信が、自社が世の中に提供している本当の価値をぼやかしてしまっては、本末転倒です。

特に採用において、その企業の商品やビジネスのファンばかり集めるのはよくないとされています。一見集めやすい商品やサービスの表層的なファンだけを集めてしまうと、新しい価値創造が生まれにくい、単一的な人材ポートフォリオになってしまいます。

WHATやHOWといった現状の商品やビジネスに自信を持っている企業ほど、その強みは先に出さず、なぜ自分たちがその商品・ビジネスに携わり、どうやって世の中に価値提供をしているかを話してあげることで、本質的な価値に共感した上で、現状の商品・ビジネスに捉われない新しい価値創造ができる仲間を増やすことができるでしょう。

WHYから順番にストーリーにして伝えるゴールデンサークル理論については、こちらの記事も参考に読んでみてください。

ゴールデンサークル理論をブランディングに活用するポイントや具体例を解説!

5:まとめ               

今回は、企業の内定辞退が起こる理由や原因について、私たちパラドックスの考え方を交えながらご紹介しました。

内定辞退が発生するのは求職者だけの問題ではなく、自社の魅力を伝えきれていない企業側にもあるという観点から、自社の採用BRやコミュニケーションを一度見直してみてはいかがでしょうか。

企業理念が明確でなく、社会への提供価値が正しく伝えられず、求職者の共感を埋められていないことが、実は内定辞退、さらには離職にもつながっているかもしれません。

求職者の共感を得るためには、企業理念に沿った企業独自のストーリーを伝えることが大切です。さらに、理念ストーリーを伝える際は、WHYから伝えるゴールデンサークル理論を意識してみてください。

この記事が内定辞退や離職の増加に悩む経営者や人事担当者にとってお役に立てるものになると幸いです。

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PARADOX創研 メディア編集部
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