特に変化の激しい現代社会。どの企業も「変化」の必要性が出てきたり、より強固な「独自性」が必要になったりしているのではないでしょうか。
実際に世の中を見回してみると、
・これまで進出していなかった別の業界にもビジネス展開をしたり
・自社らしい対外的見え方を強化したり
と各企業の策を日々垣間見ることができます。
ブランディング企業である私たちパラドックスにも、変化の方向性や独自性の強化に関するご相談は年々増えているように感じます。
そんな状況において、私たちがいつもお話しているのが「ミッション」の重要性です。現在、企業内に明確な「ミッション」がないという方は、この記事を読んで早急に「ミッション」の策定をご検討いただきたいと思います。
記事の本文内でも詳しくご説明いたしますが、「ミッション」とは、「企業の存在意義、果たすべき使命、あるべき姿」です。
企業のブランド力を向上させていく上で、「Being」と「Doing」という考え方があります。「Doing」とは、上記のように日々のマーケットに合わせ、トライ&エラーを繰り返し、その時代にふさわしいことを行うことです。(目的と手段でいうところの手段です。)
一方、「Being」は、ミッションの部分。つまり、「企業の存在意義、果たすべき使命、ありたい姿」です。ここは時代や世の中が変化しても、変えてはならない思想になります。(目的と手段でいうところの目的です。)
たしかに変化の激しい時代です。数ヶ月で世の中が一変してしまうこともあります。ただ、ミッションなくして、闇雲な「Doing」だけを行ってしまうと、そもそもの企業の存在意義が揺らいでしまいます。
存在意義が揺らいでしまうと、独自性のある商品・サービスが生まれなくなったり、社員の働くモチベーションが下がってしまったり・・、最終的には会社経営そのものが揺らいでしまうこともあります。これでは本末転倒ですよね。
このコンテンツでは、
・ミッションと基本理念やビジョンとの関係性
・ミッションを持つことによるご利益
・ミッションの作り方
を順にお話していきます。
企業の経営活動の軸になるミッションが、みなさまの企業活動において少しでもお役に立てますと幸いです。
1:ミッションとは?
ミッションを経営活動に活かしていくにあたり、まずは、ミッションの意味合いを正しく理解することが必要です。具体例もご紹介しますので、ミッションのニュアンスを正確に掴んでいただければと思います。
1-1:ミッションとは、「日々果たすべき使命」。
ミッションを一言でいうなら、「日々果たすべき使命」となります。記事の冒頭でも触れたように、「企業の存在意義」、「企業のあるべき姿」、「企業の志」と考えても問題ありません。
つまり、「なぜその企業はそのビジネスをしているのか?」という、企業活動の根幹に当たる部分がミッションということです。
先ほどは、「Being(目的)」と「Doing(手段)」の話を出し、ミッションは「Being(目的)」だとお伝えしました。
ここではミッションをより深く理解していただくために、もう1つ「ゴールデンサークル」という考え方を紹介させていただきます。
ゴールデンサークルとは、イギリスの組織コンサルタントであり作家のサイモン・シネック氏がTEDで語った理論です。
これによると人に何かしらの情報を伝え、行動を促したい時に、「Why・How・What」という構成要素が存在し、「Why」から伝え始めることが重要だとしています。つまり、人は「何をしているか」ではなく、「なぜ、それをしているか」に心を動かされるという理論です。
ゴールデンサークルを企業に当てはめてると、
「Why(なぜそれをやっているのか?)」=「ミッション」であり「Being」
「How(それをどうやっているのか)/What(商品・サービス)」=「Doing」
とすることができます。
Whyが明確で強固であればあるほど、How/Whatもその企業らしい整合性のとれたものになりますし、対世の中への伝える時も企業の本質的な部分が届きやすいということになります。
つまり、「変化の方向性と軸」としても「独自性を強化する軸」としても、力を発揮するのがミッションなのです。
1-2:良いミッションに見られる4つのポイント
ミッションは重要ですが、ただ存在すればいいというわけではありません。ミッションにもある程度、良し悪しがあります。
良いミッションとは、その会社の存在意義を明確に示すだけでなく、会社、社員、社会を繋ぐものでもあります。また、それに加えて、私たちが良いと思うミッションには、以下の4つのポイントがあります。
<Point1>:企業が活動するマーケットの範囲が広がっているか
ミッションをどれだけ意義深くできるか。これが、ミッションづくりにおいてとても重要になります。なぜなら、目的のレイヤーが高ければ高いほど、それに伴ってマーケットも広がっていくという利点があるからです。
マーケットが広がるということは、つまり「企業の長期的繁栄」と「より多くの社会課題の解決」に繋がるということです。
たとえば、わかりやすい例でいいますと、スターバックスがあげられます。
スターバックスがアメリカのシアトルで創業した1970年代。アメリカの景気はよかったもののビジネスマンは非常に忙しく、業績を上げないとリストラされてしまう。一方、家庭でも奥さんを大切にしないと訴えられてしまう。当時のアメリカのビジネスマンはなかなかリラックスできる場所がありませんでした。
そんな中、アメリカのビジネス街にできたのがスターバックス。おいしいコーヒーとリラックスできる空間(=THIRD PLACEという思想)によって、ビジネスマンが抱えているプレッシャーを解放していきました。そんな、時代の要請に応えるという思想を持っていたからこそ、全世界に広がっていきました。
参考元:ストーリーとしての競争戦略/東洋経済新報社
いかがでしょうか。ミッションをどこに設定するかによって、どこで勝負するかも変わってきます。結果的に、マーケットが広がり日々の仕事や事業計画にも変化が出てくるのです。
<Point2>:社員の働く誇りを高め、成長を促進させているか
優れたミッションは、その会社で働く社員にも作用します。有名な経済学者ドラッガーの話に、下記の一説があります。
ある教会の建設現場で、全く同じ作業をしている4人のレンガ職人がいました。あなたは、「何をしているんですか?」と彼らレンガ職人に尋ねました。すると・・、一人目は「食べるために仕方なく働いている」と答えました。二人目は手を休めずに「職人としてレンガの壁をつくっている」と答えました。三人目は目を輝かせて「国で一番の教会を建てている」と答えました。最後に、四人目が「私は国民の心のよりどころをつくっている」と答えました。
出典:
もしも、ミッションがない会社の場合、その会社の社員はいつまでも食べるために仕方なく働くかもしれません。
しかし、上記の例のような「国民の心のよりどころをつくっている」というミッションがあればどうでしょうか。仕事にやりがいや誇りが感じられ、それに伴い成長スピードも上がることが考えられます。
このように、ミッションの質が働く人の意識レベルに大きく変わってくるのです。
<Point3>:経営者よりも上位にミッションが存在しているか
会社のトップである経営者。特に創業者はカリスマ性のある人も多く、みんなが経営者を見て仕事をしているというケースもあると思います。
しかし、本当の理想形は経営者そのものではなく、経営者のアイデンティティから生成されたミッションを経営者自身も含めてみんなが見ている状態です。
人が経営している以上、どんな企業にも事業承継のタイミングが訪れます。そんな時でも、普段から揺るぎない価値観を全員で見据えた経営ができていれば、これまで通りの状態を保つことができ、会社に長期的な繁栄をもたらします。
※事業承継については下記の記事も併せてご覧ください。
→『二代目社長が見落としがち!?「事業承継」の本質をズバリ解説。』
<Point4>:回復力(レジリエンス)があるか
企業には、世の中の動きに合わせて常に事業を生み、進化させていく必要がありますが、時には事業を取捨選択する場面や事業に失敗してしまうこともあるでしょう。
そんな時にもミッションは力を発揮します。たとえば、これから始めたい事業案が複数あった場合、儲かりそう、成功しそうという判断軸もありますが、自社の使命としてモチベーション高く継続できるか、つまりその企業のミッションと照らしてやるべきか否かを決めることが非常に大切です。
また、たとえ事業で失敗してしまった場合でも、ミッションがあれば、その企業の存在意義が消えるわけではありません。もう一度、存在意義と照らして、その企業がやるべきことを始められるでしょう。こういった企業を回復力(レジリエンス)が高いと言います。
1-3:良いミッションを持つ企業の例
良いミッションとは、「日々果たすべき使命」「企業の存在意義」「在り方」がわかりやすく明確に記されており、結果的にマーケットが広がったり、社員の成長が促進されていたり、経営者の上に存在できているものです。
そんな良いミッションをイメージしやすくするために、編集部にて良いと思われるミッションをいくつか集めてみました。
【株式会社FABRIC TOKYO】
自分らしいビジネスウェアを通じて
働く楽しさを届けるオープンなプラットフォーム
【株式会社プログリット】
世界で自由に活躍できる人を増やす
【株式会社Schoo】
世の中から卒業をなくす
いかがでしょうか。
ここにあげたミッションは、どれも「日々果たすべき使命」が明確に伝わってくると思います。
上記の企業には私も実際に取材に伺ったことがあるのですが、どの企業も会話の節々から社員様が誇りを持って働いていることを感じることができました。
→上記の企業についての詳しい情報は下記の記事からもご覧いただけます。どの企業もミッションがしっかりしているからこその、独自性や発展を感じることができます。
>株式会社FABRIC TOKYO
>株式会社プログリット
>株式会社Schoo
2:ミッションは会社の起点となる
呼び方は会社によってそれぞれですが、多くの会社にはミッションの他にも
・バリュー
・理念
・社是
といったような近いニュアンスの言葉があると思います。
私たちパラドックスでは、ミッションは会社の軸であると同時に、上記のようなビジョンやバリューといった理念周りにおける言葉の起点でもあると考えています。
ここでは、他の言葉との関係性を説明しつつ、ミッションの意味合いをさらに深めていきます。
2-1:ビジョンもバリューもミッションから考える
「ビジョン」と「バリュー」は、コーポレートサイトの理念ページにも記載されていることが多く、よく見かける言葉かと思います。
・ビジョン:実現したい未来
・バリュー:約束する価値・強み
私たちは、ビジョンとバリューを上記のように定義しています。
そうした時、ビジョンである実現したい未来は、ミッションである日々の使命を地道に積み重ねてやっとたどり着けるものとなります。
そして、使命を積み重ねて実現したい未来に向かう過程で、顧客や世の中に提供している価値や強みがバリューということになります。
つまり、ビジョンとバリューを作る際は、ミッションありきでスタートすることが大切になります。
一方、「ビジョン経営」という言葉もありますが、「なぜ、ビジョン(未来)起点ではいけないのか?」と疑問を持った方もいるかもしれません。
たしかに、ビジョン(未来)からミッションを考えることもできるのですが、最初にビジョンを策定すると、想定される未来がある種無限に広がってしまうので、今ここで決める未来が果たしてその企業にとって必ずしも目指すべき未来なのか、やや不明確になってしまうのです。
そこで、いま果たすべき使命であるミッションからビジョン(未来)を考えることで、その未来に必然性を与えているのです。
2-2:スピリット(行動指針)やスローガンもミッションから考える
また、ビジョンやバリューの他にも「スピリット・クレド・行動指針」や「(企業)スローガン」といった言葉を見かけるケースも多いと思います。これらの言葉は、下記のように定義しています。
スピリット:大切にすべき精神
スローガン:企業・ブランドの合言葉
スピリットはミッションを日々積み重ね、実現したい未来に向かっていく過程で大切にすべき精神や行動の指針。スローガンは、企業の使命や目指している未来をマーケットや顧客、世の中に端的に宣言していく合言葉です。
つまり、「スピリット・クレド・行動指針」や「(企業)スローガン」を作る際も、ミッションを起点に考えていく必要があるということになります。
※ちなみに、ミッションと2-1の「ビジョン」「バリュー」、2-2の「スピリット」「スローガン」の5 つの要素を合わせて企業理念と呼んでいます。詳細は下記の記事よりご覧ください。
→『企業理念とは?100年続く企業になるために必要な企業理念を徹底解説』
2-3:基本理念とミッションの関係
基本理念とは、「創業の精神」や「価値観」といったものになります。たとえば、「三方よし」「利他の精神」などがあげられます。
この「基本理念」とミッションやビジョンといった「企業理念」は、言葉が似ていることもあり混同してしまうことがあるので、改めて違いをご説明いたします。
基本理念:
基本理念は、「創業の精神」「価値観」とご説明した通り、企業における最も源流でのあり方を示す言葉です。そのため、長期に渡って存在し、影響を及ぼし続ける言葉になります。
ミッション:
一方のミッションも企業の存在意義を表した言葉ですが、基本理念に比べて、ややビジネス的な側面を含み、競争優位の厳選を明確化したものになります。
企業に存在する言葉や考え方の中で、あくまでミッションが一番中心に存在することは変わりません。ただ、ミッションの土台には基本理念というベースがあるというイメージになります。
3:ミッションを策定する3つのメリット
ミッションをつくるメリットには、1-2で触れたような「マーケットの広がり」「社員の成長」「スムーズな事業承継」もあります。
しかし、それだけではありません。ミッションを策定することで得られるメリットは他にもたくさん存在します。
3-1:経営の指針となり、必然的な未来が描ける
世の中にある課題を解決し、人々の生活を豊かにしていくために、企業は常に事業を安定的に継続し、時には新しい事業を行うことも求められます。
しかし、事業の廃棄、継続、開始は思いつきや時代の流れだけで決断していいものではありません。せっかくの決断であっても、トレンドに振り回され、自社らしさが消えてしまっては本来の意図とは違ってしまうと思います。
ミッションがあればビジョン(実現したい未来)が描けます。そして、その未来はミッションを日々積み重ねた先にある、その企業にしか成し得ない必然的な未来です。
この決断は自社らしいか。自社の使命に合っているか。実現したい未来に近づいているか。こういったミッションが起点となった指針で経営をしていくことが、結果的には、10年、50年、100年と世の中に価値を発揮し続け、長期的に存続していくことに繋がります。
3-2:商品・サービスブランディングの起点になる
企業そのものだけでなく、企業が扱う商品・サービスを見ても、ミッションのメリットが確実にあります。
テクノロジーの進化に伴い、情報が溢れる現代社会。人々の嗜好も多様化し、マーケットの変化もこれまで以上に激しくなっています。
つまり、製品の良さをただ列挙するだけでは、コモディティ化が進む現代において多くの競争相手の中から選んでもらうのは難しい状況です。
ミッションによってその企業にしか言えない「日々果たすべき使命」を明確にすることの大切さを説明してきましたが、同じように世の中から選ばれる商品やサービスになるには、「社会・時代の課題・要請」に応えるその商品にしか言えない使命やストーリーが必要なのです。
おそらくこの記事をご覧のみなさんも、スペックや値段よりもその企業の考え方や姿勢、ストーリーなどで選んでいるモノやサービスが少なからずあると思います。
ミッションを出発点に商品・サービスの考えや思想を言語化していくこと。そしてここにもうひとつ、そのミッションおよび商品・サービスを誰に届けるべきか、という顧客を考えることが肝です。
自分たちが愛されたい理想の顧客を「ブランドパートナー」と呼びますが、このブランドパートナーの人たちに好かれるためにも、ミッションと商品・サービスを結びつけた情報発信が必須となります。
Q2 われわれの顧客は誰か?
Q3 顧客にとっての価値は何か?
Q4 われわれの成果は何か?
Q5 われわれの計画(事業)は何か?
上記の「ドラッカーの5の質問」を見ても、使命→顧客→価値→成果→計画の順番で考えることが大切だとわかります。
3-3:採用のコンセプトが明確になり、同志が集まる
採用シーンでは様々な課題が存在します。
たとえば
「エントリー数の減少」
「ターゲット学生と出会えない」
「内定辞退率が下がらない」
「採用活動に多くの予算を使えない」
といったことを感じている人も多いのではないでしょうか。
毎年、変化の波が訪れる採用シーンにおいて、そのトレンドに乗り遅れないように対応することも、もちろん大切です。ただ、数年変わらない「軸」、すなわち採用における不動のメッセージを確立できれば、変化の激しい採用トレンドに必要以上に流されず、その企業らしい採用活動を続けていくことが可能になります。
そもそも採用活動とは、会社を共に成長させる未来の「同志」を見つける活動。その企業がどんなビジネスをしているかというDoingの観点も重要ですが、この企業がなぜそのビジネスをしているのかというBeing(=目的)の観点、つまりミッションに込められている使命や想いを伝えることも大切であり、それは求職者の心を動かします。
実際に、リクルートの意識調査を見ても、いまの学生の就職先を確定する際の決め手の6位は、「会社・団体の理念やビジョンが共感できる」となっています。
3-4:投資家などあらゆるステークホルダーから価値の高い会社だと思われる
実は現在、投資家が投資先を見極める際、その企業のミッションが以前にも増して注目されています。
というのも、2019年8月19日アップルやウォルマートなどの米国のトップ企業が所属する財界ロビー団体であるビジネスラウンドテーブルが「企業の目的に関する声明」を発表したのです。
これは、「企業の社会的責任は利益を増やすことにある」としている「株主資本主義」から、全てのステークホルダーへの配慮を目指す「ステークホルダー資本主義」へ移行すべきという主張になります。
さらにその後、世界最大の資産運用会社ブラックロックのラリー・フィンクCEOは、その年の取引先CEOに宛てた手紙で、企業にとってのパーパス(≒ミッション)の重要性を説き、企業のパーパス(≒ミッション)は、利益を達成するために必要な活力であり、投資における判断基準のひとつになるだろうと述べています。
つまり、これから先の経済社会においては、その企業が存在する意義をミッションとして掲げることが、株主の理解や共感を得ると共に、ある種の責任にもなっていくことが予想されます。
4:ミッションと併せて考えたいミッションストーリー
ミッション策定時にセットで考えたいものに、具体的なストーリーでミッションを語る「ミッションストーリー」というものがあります。このミッションストーリーを併せて策定すると、ミッションがより機能的になっていきます。
4-1:ミッションを具体的にイメージするミッションストーリー
ミッションワードは、長くても2行くらいにまとめられるのが一般的です。もちろん、ミッション単体だけを読んでも、その企業の存在意義が明確にわかることが大事ですが、時にはもっと具体的にストーリーで語りたいシーンもあるかと思います。
そんな時に、用意しておくといいのが「ミッションストーリー」です。
ミッションストーリーとは、企業の日々果たすべき使命であるミッションを、より具体的にらしさや世界観と合わせてストーリーで表したものです。
このミッションストーリーを用意しておくことで、たとえば、下記のようなメリットが考えられます。
・会社案内のオープニングに掲載
・営業時の自社説明
・新入社員研修の冒頭でのお話
など
これら、あらゆるシーンや場所で社員によって語られるミッションの話が統一化されることは、企業のブランディング観点からも非常に重要と言えます。
まずはミッションを完成させた後、ミッション策定のプロセスやこれまでの会社の歴史を振り返りながら、自分たちの存在意義をひとつのストーリーにしていきましょう。
4-2:ミッションストーリーの具体例
ミッションワードと合わせてストーリーを用意することで、より具体的にその企業の使命やミッションが描く世界観をイメージしやすくしている企業の例を集めてみました。
【株式会社FABRIC TOKYO】
自分らしいビジネスウェアを通じて
働く楽しさを届けるオープンなプラットフォーム
私たちはアパレル事業を行っています。しかし、私たちは洋服を提供しているのではありません。私たちは自分たち自身を「働く楽しさを探求する企業」と定義し、それをオープンなプラットフォームを創造することで、成し遂げようと考えています。
目指すのは、古く非効率となってしまっている旧来から続くアパレル業界の仕組みを、テクノロジーによって現代社会に最適化することです。ものづくりや流通を透明化・効率化し、販売方法を革新することで実現できる私たちならではの仕組み、それがオープンなプラットフォームです。
【株式会社プログリット】
世界で自由に活躍できる人を増やす
世の中には自らの可能性を活かしきれていない人がたくさんいます。本当は世界で活躍したいのに、スキル不足が原因で諦めてしまっていたり、自分に自信が持てず一歩を踏み出せなかったり。
英語が話せないというだけで70億人とのコミュニケーションや世界で仕事をするということを捨てるのは、あまりにも勿体ないと考えています。プログリットはサービスを通じてあらゆる方々にスキルや自信を提供し、一人でも多くの方が世界で自由に活躍できるよう後押しします。
【株式会社Schoo】
世の中から卒業をなくす
人は学ぶことで生きる知恵を身につけ、技術を革新させ、進化してきました。「学び」には終わりはなく、学び続けることで社会が抱えている課題の解決速度が圧倒的に加速します。一方で、時間や場所、コスト、モチベーションなど、「学び」の障壁となるものは私たちの身の回りに溢れています。これらの障壁を取り除くことで、すべての人が学び続けられる世界、つまり、すべての人の卒業をなくすことがSchooの使命です。このミッションに伴い、学校を表す英単語”SCHOOL”の「終わりの”L”をなくす」ことで、Schooという社名は生まれました。
いかがでしょうか。仮に、上記3つの会社が何をやっている会社か知らなかったとしても、このミッションとストーリーを読めば、どのような使命を持ち、どういった分野で躍進しているのかがお分りいただけたと思います。
対社外にも社内にも、こういったミッションおよびストーリーを日々発信していることは、やはり企業の軸をブレさせず、らしさを強めながらビジョンに向かって歩むことを助けてくれます。
5:ミッションを軸に経営している企業の例
ミッションを軸に経営をするということは、つまり自社の存在意義に忠実に経営をするということです。すると、自然とその企業のらしさやその企業にしか提供できない価値が、誰の目から見ても明らかになるものです。
実際にどのような企業がミッションを軸にした経営を実践しているのか、見てみましょう。
パタゴニアのミッションを軸にした経営
パタゴニアは、イヴォン・シュイナード氏が1973年にアメリカ・カリフォルニア州で立ち上げた、アウトドアのウェアや用品を取り扱うブランド。明確な思想を掲げているため、消費者の中で好き嫌いが大きく別れながらも、アメリカをはじめ日本や世界中でも熱狂的なファンを集めています。
パタゴニアは創業当時から、クライミングやアウトドア製品の製造業の会社でありながら、そのクライミングやアウトドアによって環境破壊をもたらしてしまうというジレンマを感じていたといいます。
*パタゴニア創業者、イヴォン・シュイナード氏
画像参照:「https://www.huffingtonpost.jp/entry/patagonia-food-provision_jp_5d099e1ae4b06ad4d2580dbf」より
そんな中、1991年に「最高の商品を作り、環境に与える不必要な悪影響を最小限に抑える。そして、ビジネスを手段として環境危機に警鐘を鳴らし、解決に向けて実行する」というミッションを策定。
そこには、「お金を儲けて、そのお金で地球保全に貢献するだけでは物足りない。人が長く使える、高品質で環境にも優しい商品を自社で作り、そのビジネスモデルやノウハウを広めることで、業界の常識を内側から変えていきたい。」というパタゴニアの想いが込められています。
下記は一部ではありますが、ミッションのもと実際のアクションも多く生まれています。
・1994年から自分たちの事業に関する「環境レポート」を発行開始。バリューチェーン・製造工程を吟味し、改善できることを発掘しては、仕組み上で反映していきました。
・1996年、綿で作られたスポーツウェアを全てオーガニックコットンに切り替えました。その他の素材や製造工程にも大きくメスを入れ、環境への配慮を高めました。
・本社を始め、パタゴニアの店舗のほとんどは古い建物をリノベーションして再利用。自社がもつ建物では、エネルギー消費量も60%削減を実現しました。OIA(Outdoor Industry Association)とともにHigg Indexという指標を作り、アウトドア衣服・フットウェア業界のサステナブルな製造基準を設定。
現在は、2019年に「私たちは、故郷である地球を救うためにビジネスを営む」というミッションにアップデートされ、さらなる進化をとげています。
※パタゴニアの理念経営の詳細は、下記の記事にもまとめてあります。
→『海外にも「理念企業」があった。パタゴニアの進化から見えた、挑戦と葛藤とは?』
6:ミッションの作り方
最後にミッションの作り方について、ご説明いたします。
誰が作るか?
ミッションは会社の中核を担うものですが、だからといって、社長や経営陣だけで考えて決定していいかというと、それはあまりおすすめできません。
ミッションとは、会社に存在するだけでなく、そこで働く一人ひとりの心に宿って初めて意味を為すものです。
つまり、ミッションを策定するタイミングからなるべく社員を巻き込み、所有感や納得度を持ってもらうことが重要になるのです。
どのように作るか?
ミッションはその企業の使命ですので、答えはその会社の中や歴史にあります。創業のストーリー、これまで歩んできた中でのメモリアルな瞬間、どんなときも大事にしてきたこと、などを紐解いていくことで、必ずミッションの種は見つかるでしょう。
ただ、自分たちだけでこの振り返りの作業を行っていると、自分たちのこと故に、客観的に自社の「らしさ」や「強み」に気づけなかったり、判断することができないケースもあります。
また、最後にミッションワードおよびストーリーとして仕上げていく際は、言葉を綺麗に整える必要性も出てきます。
上記のようなニーズを感じた際は、ブランディング会社の力を借りることもひとつの選択肢になるでしょう。
作り方の詳細はこちら!
ミッション作りにおける詳細は、下記の記事の4章にまとめてあります。ステップ分けして、詳細に書いておりますので、ぜひ、ご参考にしていただけますと幸いです。
→『企業の根幹を担うミッション ビジョン バリューの意味合いと作り方』
7:まとめ
いかがでしたでしょうか。
最後にもう一度、大事なところを振り返ります。
まず、ミッションとは「日々果たすべき使命」であり、企業のBeing、不易を担う部分です。他にもビジョンやバリュー、などいろいろな言葉がありますが、それらの軸になるのもミッションです。
ミッションを中心とした経営を行うことで、
・商品・サービスもブランディングされる
・採用において同志が集まってくる
・投資家などから価値が高いと思われる
といった利点があります。
冒頭にもお話いたしましたが、たった数ヶ月で世の中が激変してしまう時代だからこそ、柔軟に変化できる部分と絶対に変わらない軸のバランスがより大事になっていくでしょう。
本記事でお話した「ミッション」がみなさまの経営に少しでも役立てることを願っています。
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