株式会社パラドックス

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理念策定、ネーミング、象徴サービスの開発まで。
事業統合に伴うブランディングプロジェクト

CLIENT:長谷工シニアウェルデザインさま

  • コーポレートブランディング
  • カスタマーブランディング
  • 東京都

「都市と人間の最適な生活環境を創造し、社会に貢献する。」を企業理念に、様々な事業を展開する長谷工グループ。高齢化社会を見据え、1980年代よりいち早くシニア向け住宅を運営してきたグループ内の2つの事業会社は、それぞれがシニア業界の草分けともいえる存在でした。今回のブランディングプロジェクトでは、その2つのシニア事業再編統合に際し、理念の策定から施設ブランドの整理・象徴サービスの開発まで、トータルで伴走させていただきました。

1ご依頼の背景

2020年、長谷工グループでは特長の異なる2つの事業会社を統合するにあたり、共通の理念をつくる必要がありました。30年前の事業開始当初は、高齢者施設のパイオニアとして特長を打ち出すまでもなく経営は順調そのもの。しかし今や全国には数多くの高齢者住宅や施設が存在し、大きく変わった事業環境の中で改めて、より「自社らしさ」を明示したいという声が年々高まってきていたからです。

「統合した全社を率いる力を持った理念の策定を」。今回のプロジェクトは、そんな強い思いを持ったご担当者さまの発信に経営層が応える形で動き出し、パラドックスへのご依頼へとつながりました。

2 理念(ミッション・ビジョン・サービス方針)の策定

理念策定のフェーズでは、役員一人ひとりへのインタビューを行ったのち、長谷工グループが運営する全国の高齢者住宅や介護施設の施設長やリーダーたち17名を集めたセッションを実施しました。施設ごとに文化が大きく異なり、ご入居者・ご利用者との接し方にも差がある中、それでも共通する価値観を見出していく作業。「自分たちは何を大切にして働いてきたのか」を問う議論は何度も行きつ戻りつ、視点を変えながら進められました。

徐々に浮かんできたのが「距離感」というキーワードでした。職員とご入居者・ご利用者との距離感は、職員それぞれが培ってきたもの。しかし、それこそが現場で最も心を砕いて成熟させてきた、サービスの核心であるとの納得に皆が辿り着きました。

「距離感」を「間」と言い換え、企業理念は「心地いい「間」をデザインする。」、サービス方針は<空間><時間><仲間>という3つの「間」の質を高めていくことに決定。さらにこの理念策定が進む傍らで、介護に特化したシニア向け住宅を運営する「センチュリーライフ」、地域の拠点になる、元気なときから住めるシニア向け住宅を運営する「生活科学運営」の2社は2021年10月1日に「長谷工シニアウェルデザイン」として統合を発表します。企業のビジョンは「「歳を重ねる」ことを、誰もが楽しめる社会。」と掲げられました。

▲長谷工シニアウェルデザインの理念として2021年10月1日に発表

▲事業統合に伴い、コーポレートサイトと採用サイトの制作をしました

3サービスコンセプト開発と施設ブランド整理

理念やビジョンを受けてサービスコンセプトを開発するフェーズでは、セッションに参加するメンバーを拡大し、より現場に近い社員や本社の社員も含めて議論を行いました。

具体的にどのようなサービスで「「歳を重ねる」ことを、誰もが楽しめる社会。」の実現につなげていくのか。幾つになっても「自分らしくいられる」ことが大切だという認識を共有しながら、議論になったのは、そのためには何が必要かという点でした。

さまざまな意見を重ね、「自分らしくいられる」ためには、①心身の健康②自分時間③ときめきという3つの要素が必要であると定義しました。それをご入居者に提供していくためのサービスコンセプトとしてまとめたのが「自分らしくいられるための“ウェルサークル”」です。また、住空間をつくり続ける長谷工グループとして、心地いい環境を提供するために設けたものが「美の基準」です。

 

▲サービスコンセプト「ウェルサークル」

▲ハード面からソフト面まで、10項目に分けられた”美の基準”

さらにこれまであった6つの施設ブランドをサービス特長別に再整理し、3ブランドにまとめました。

4象徴サービスの開発

次の段階として、サービスコンセプトである「ウェルサークル」を体現した、具体的でわかりやすいサービスを通して社内外に理念を浸透させることを目的に、象徴サービスの開発に取り組みました。

どんなサービスが良いか、どんなサービスなら「自分たちらしい」か。多くの意見が出された中で、「ぜひともやりたい!と思えること」「実現可能なこと」で絞った結果、2つの象徴サービスが誕生しました。

 

①高齢者のための笑い学

「笑う」ということを通じて老化遅延を目指すのが「高齢者のための笑い学」です。

2022年4月から、福島県立医科大学の大平哲也主任教授とともに「笑い学」の研究をスタート。大平先生は、これまで笑い等のポジティブな心理的介入のもたらす生活習慣病予防の効果を研究してこられています。今回の共同研究では、まず複数の施設で、笑うことが心身の機能にどのような影響をもたらすかの数値データを回収しました。エビデンスを得ながら「笑いヨガ」のプログラムを自社開発し、ご入居者・ご利用者への提供を始めています。

(※)「笑いヨガ」とは、インド発祥の健康体操。笑うことが心身に与える健康効果を、身体を動かしながら享受するエクササイズです。

▲笑いヨガをリードする「笑いヨガ講師」の職員さん

▲笑いヨガに参加するご入居者の皆さん

 

参加されているご入居者から、「大きく体を動かすと気持ちが良い」「気分が明るくなる」と前向きな感想をいただいている「笑いヨガ」。ストレスの軽減によるものか、ポジティブな発言が増えていると感じているスタッフもいるそうです。また、健康にも確かな効果が表れていることがデータで実証され始めています。

 

②オリジナルラジオ番組の制作・配信

夜中にうまく寝付けなかったり、妙に早くに目が覚めたり。ご高齢者が持て余してしまう時間を、より楽しく過ごしていただきたくて始まったのが、各施設の中で聴けるオリジナルラジオ番組です。ご入居者の思い出ソングの投稿やインタビューといったコミュニケーションを中心に据えた内容で、企画からパーソナリティまで本社のラジオ編集チームが担当しています。

 

サービスコンセプトにある「自分時間」の充実と、自分自身がラジオの共演者になるという「ときめき」を提供するコンテンツとして位置づけられる「長谷工シニアウェルラジオ」。現在定期的な配信を続けており、リスナーのご入居者からも大変好評だそうです。

 

▲象徴サービスを紹介するWEB CMを制作しました。(2023年7月下旬よりWEB CM配信予定)

2021年4月にプロジェクトを開始して約2年。理念を体現した2つの象徴サービスの開発をもって一区切りとなった今回のブランディングですが、現在もパラドックスではさまざまな施策の伴走を続けております。今後も「長谷工らしさ」が成長していく過程に寄り添い、サポートをしてまいります。

専務執行役員 見目 久美子 様

ホテルライクな暮らしを提供したいと考える会社と、地域に共存する自分の家のような住まいを提供したいと考える会社。この全く理念の異なる2つの事業会社に果たして共通点はあるのか、そもそも、自分たちがこれまで提供してきたサービスの根本は何なのか。そんなことを議論しながらできたのが「心地いい『間』をデザインする。」という理念でした。世の中の望まない孤立をなくし、安心で居心地の良い暮らしをしてもらいたいという思いが言葉になって完成したとき、実は2つの会社が目指すものは一緒だったんだということに改めて気が付きました。
この理念は、今はまだ一生懸命背中を押し、一緒に手を携えて歩き始めたところですが、いずれは自分の足で歩き出し、やがて一人ひとりが自分の言葉で語れるものに成長することと思います。その時に本当の意味で、私たちが望む社会に一歩近づけるのではないかと思っています。