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世界遺産の村に、新たな酒蔵をつくる
白川村に希望を醸す、官民連携プロジェクト

CLIENT:白川村役場さま/渡辺酒造店さま

  • 地方創生
  • 岐阜県

人口減少が進む岐阜県白川村。世界遺産の村としての華やかさを持つ一方で、村は「次世代への継承」という大きな壁に直面していました。この課題を打破するために白川村と飛騨地域の酒蔵である渡辺酒造店が連携して、村独自の産業を育てる酒蔵再生プロジェクトが始まりました。

多くの人が関わる官民連携の取り組みだからこそ、酒蔵の建設を目的とするのではなく「酒蔵ができた後の村をどう変えるか」という理念の策定が重要でした。本質的な目的を見つめ直し、対話を重ねることで導き出した「酒蔵を通して実現したいビジョン」とそのプロセスについてお伝えします。

1白川村について

岐阜県白川村。人口1,500名ほどが暮らす小さな村ですが、世界遺産に登録された合掌造り集落や雄大な自然があり、その景観をひと目見ようと、世界中から数多くの人々が訪れます。

何百年もの間、この美しい景観が守られてきた背景には、この土地に息づく「結(ゆい)」という助け合いの精神があります。

冬には数メートルの積雪に見舞われ、険しい山々に囲まれるこの地では、古くから村人同士の相互扶助が欠かせません。象徴的なのは、合掌造りの屋根の葺き替えです。20〜30年ごとに行われるこの作業では100名以上の村民が集まり、力を合わせて伝統の景色を維持し続けてきました。

2白川村の抱える課題

1995年の世界遺産登録以降、来訪者は爆発的に増加し、年間約200万人もの観光客が訪れる一大観光地となった白川村。一見、華やかに見える白川村ですが、その内情は切実です。

かつて1万人近かった人口は、今や1,500人を下回るほどに減少。2023年に白川村で行った調査では、村の子どもたちのうち「大人になったら村に戻りたい」と答えたのは半数以下という結果が出ました。少子高齢化が加速し、これまで「結」で繋いできた風景を将来に残せるのか、村は強い危機感を抱いています。

3解決策とコンセプト:「景色が浮かぶ酒造り」への挑戦

そこで立ち上がったのが、村の1次産業である「米づくり」を起点とした、製造2次)から販売(3次)までを一貫して行う「6次産業化」の構想です。

実は、白川村は知る人ぞ知る米の名産地。白山から湧き出る豊かな水と、豪雪地帯特有の寒暖差、そして農家のたゆまぬ努力により、近年では世界最高米に選ばれるほどの品質を誇っています。

このお米のポテンシャルと水を活かし、村の寒冷な環境を活かして、ここにしかない酒を造りたい。そんな想いを込めて、私たちは一つのコンセプトを掲げました。

 

「白川郷の、景色が浮かぶ酒造り」

 

山から湧き出る美しい水、厳しい豪雪を耐え抜いた米、そして合掌造りの風景。一口飲めば、どこにいても白川村の景色が浮かぶような味わいのお酒を目指します。

4象徴へのこだわり:酒蔵のネーミングとロゴマーク

ブランドの核となる酒蔵のネーミングとロゴマークには、村の未来への願いを込めています。

 

・酒蔵のネーミング:酒蔵の名称となったのは、「白川村の蔵」です。

この村のお酒が広く知れ渡っていく中で、村を離れてしまった人たちにも「自分の村のお酒だ」と誇りに思ってもらいたい、そんな思いを込めて名付けました。

 

​​・酒蔵のロゴマーク:酒蔵のロゴマークは、白川村を流れる水路をイメージしています。

米づくり、集落の暮らし、人と人との繋がり、それらが生まれる根源は、山から湧き出す美しい水。その恵みをお借りして、酒造りへと昇華させていく。村の未来がこの蔵と共に、川の流れのように前進してほしいという願いを込めてデザインしました。

 

5目的を「酒蔵の建設」ではなく「白川村の未来」に置く

このプロジェクトは、白川村役場を中心に、地域内外の多様な事業者・関係企業が参画する官民連携の体制で進められました。

 

酒造りの中心を担うのは、隣接する飛騨市で、酒造りに果てしないこだわりと情熱を持ち、酒の概念を覆すような様々なチャレンジを続けている渡辺酒造店。

他にも、飛騨地域の地域商社である株式会社ヒダカラや、エリアマネジメントや資金調達に強みを持つカンダまちおこし株式会社が参加し、議論を深めていきました。

これらのプレイヤーが連携し、企業の寄付を募る「企業版ふるさと納税」や、個人向けの「クラウドファンディング型ふるさと納税」といった資金調達も並行して進めていきました。

 

ここで忘れてはいけないのは、酒蔵を建てることはあくまで手段に過ぎないということです。大切なのは「酒蔵ができることで、白川村をどんな村にしたいのか」。関わるプレイヤーが多いからこそ、この問いに向き合い、官民の枠を超えて全員の目線を合わせる必要がありました。

そのために、プロジェクトの指針となる「理念」の策定へ踏み出します。

6酒蔵の理念策定:本音で語り合った「村の未来」

理念の策定は、白川村の村長を始め、村民の方々、役場の方々、渡辺酒造店など、様々なプレイヤーを集め、5日間という時間をかけて行われました。

それぞれが意見を出し合い、「酒蔵を起点に白川村がどう変わるべきか」「最終的な白川村のビジョンをどこに置くか」等々を考えていきます。

 

DAY1:白川村 本音サミット

まずは関係者を集め、普段はあまり語り合うことのない本音を打ち明けあう「白川村 本音サミット」を開催しました。

ここで現状の課題を整理しつつ、白川村が目指す未来を描いていきます。対話をその場で図解し、理解を深めるグラフィックファシリテーターゆにこ氏の協力を得て、対話をリアルタイムで可視化することで、村民たちの言葉にならない想いや村の共通の願いが浮き彫りになっていきました。

DAY2:蔵を通じて、どんな“変容”を生むか? 

DAY2以降は、議論のメンバーを絞ってDAY1で可視化された課題を「酒蔵を通じてどう解決していくか」、また「酒蔵ができることによって、白川村がどう変わっていくか」をそれぞれが考え、白川村が変わっていく未来をイメージしていきました。

DAY3:蔵のミッションとはなにか?

DAY3では、「この蔵の存在意義はなにか?」という本質を問い直していきました。

ここで大きな指針となったのが、渡辺酒造店の存在です。渡辺酒造店は、エンタメ経営を理念に掲げ、お客様を楽しませる企画やアイデアが得意な酒蔵です。

 

白川村のらしさを盛り込むだけでなく、渡辺酒造店の強みとの掛け算で村にこれまでにない新しい風を吹かせてほしい。そんな、村長や村民の方々の想いを受けて「楽しさを、醸す。」という使命にたどり着きました。

日本酒を造ることを指す「醸す」という言葉に、一滴の酒に心を込めるように。この村に関わるすべての人々の「楽しさ」を丁寧に醸成していく意志を込めています。

DAY4:ビジョンの可視化

ここからはミッションを象徴する未来のシーン、ビジョンを可視化していきます。

「楽しさを、醸す。」という使命を全うしたとき、村には「職業選択の幅が広がり、若者が誇りを持って帰って来れる」といった具体的な変容が日常となります。

その変容が定着した先で目指すのは、白川村という枠を超えて喜びが循環する未来です。酒蔵を通して世界中から届く「乾杯」の声が、村の誇りとなる姿をビジョンに掲げました。

乾杯は、お祝いのときや、何かが新しく始まるときなど、ポジティブな瞬間に交わされることが多いもの。この酒蔵を起点に、世界中に「乾杯」の輪を広げていくことを目指します。

DAY5:ビジョンマップの作成 

・誰もが自分らしく、「楽しさ」を醸せる村へ

このプロジェクトの真のゴールは、単なる酒蔵の完成ではありません。村民からの「村民のための酒蔵にしてほしい」という切実な願いに応え、酒蔵を起点に村の暮らしそのものをアップデートしていくことにあります。「白川村から、たくさんの”乾杯”を世界に。」というビジョンが実現している未来はどんな未来なのか?それを、具体的な1枚のシーンとして描いていきました。

 

【ビジョンマップのシーンの一例】

◉職業選択の自由と次世代の夢: 

「酒造り」という新たな産業が加わることで、村の子どもたちが「地元でクリエイティブに働く」という選択肢を持てるように。「戻りたくても仕事がない」という状況を打破し、若者が誇りを持って帰ってこられる土壌へ。

 

◉「半農半蔵」と多様なワークスタイル: 

夏は農業、冬は酒造り。あるいは村外から働きに来る人や移住者が、既存のコミュニティに気兼ねなく溶け込み、共に汗を流す。そんな、移住や新しい挑戦を誰もがポジティブに受け入れられる、寛容な村の姿を目指す。

 

◉ジェンダーフリーで開かれた酒蔵: 

白川村初の「女性杜氏」の誕生を見据え、女性も男性も、そして独身の方も、誰もが働きやすい環境へ。性別やライフスタイルを問わず、一人の人間として志を発揮できる「ジェンダーフリーな酒蔵」で、伝統的な村のあり方に新しい風を吹き込む。

▲今回のプロジェクトのビジョンマップ。

白川村の蔵が「楽しさを、醸す」という使命を果たし続けた少し先の未来のビジョンのストーリーを、白川村で暮らす人々や職員、渡辺酒造店の蔵人たちとの対話を通して描きました。

7最初の一歩、クラウドファンディングの成功

ありがたいことに、酒蔵の建設資金を募るクラウドファンディングでも目標金額を上回る支援が全国から寄せられつつあります。ですが、「白川村の蔵プロジェクト」はまだ始まったばかりです。今後とも、村の誇りとなり、様々な方々から愛される酒蔵になれるよう、伴走し続けていきます。

「白川村の蔵」建設発表に合わせて仕込んだクラウドファンディング限定酒「白川村の蔵 2026 COMING SOON」

・「白川郷の、景色が浮かぶ酒造り」に向けて。 

2027年4月の開業を目指して酒蔵の建設が進んでいます。この場所が村の新たな拠点となり、次世代へと続く産業を育てていく。白川村の新しい挑戦にぜひご期待ください。

 

<白川村の蔵 特設サイト>

https://shirakawa-kura.com/

 

<公式Instagram>

https://www.instagram.com/shirakawa_kura/

 

ーーーーーーーーーーー2025年12月に開催された地域創生イベント「ひと・ちいきEXPO」にて、本プロジェクトを紹介する講演が行われました。そのレポート記事もぜひご覧ください。https://localletter.jp/articles/peoplelocalexpo_session2_1/https://localletter.jp/articles/peoplelocalexpo_session2_2/ーーーーーーーーーーー