まちに新たなにぎわいをつくろう。
行政のメッセージを、地域みんなが語れるメッセージに。
CLIENT:名古屋市 住宅都市局さま
- 地方創生
- 愛知県
令和8年2月、名古屋市で新たに運行がスタートしたSRT(Smart Roadway Transit)は、都心部の回遊性や地上のにぎわいを拡大するため、まちづくりと一体となった新たな路面公共交通システムです。先進技術による快適な乗り心地やスムーズな乗降、車内でまちの情報を発信するなど新しい移動体験を提供しています。
今後、路線の拡大が予定されているSRTですが、最初に運行をスタートしたのが、名古屋駅と栄を結ぶ広小路(ひろこうじ)通。名古屋市の河川の代名詞とも言える「堀川」の景色や、個性あふれる様々なお店が立ち並ぶメインストリートでありながら、近年は利便性の高い地下鉄の利用に押され、沿道の企業やお店が活性化しづらいという悩みを抱えていました。このSRT事業は、「名古屋市住宅都市局」が所管となっており、まちに新たなにぎわいをつくることを目的として、平成31年から検討が進められてきました。
1課題と背景
先述の通り「SRT」の目的は、ただ交通手段を増やすことではありません。しかしながら「すでに地下鉄やバスがあるのに、新しい交通手段をつくる必要があるのか?」といった声が上がってくることも予想されました。本来の目的が正しく伝わらず、ただの路線バスだと捉えられるという、事業に対する懸念の声を払拭したい。むしろ、まちのにぎわいをともにつくっていく仲間を増やしたい。仲間が集まることで、どんどんまちの魅力が磨かれ、増えていく。そんな未来を実現するために、市民やステークホルダーとの認識のズレをなくし、さらには巻き込むため、みんなのコミュニケーションの軸となる言葉「コミュニケーション・コンセプト」の策定をパラドックスが提案しました。
2部署をまたいだヒアリング:SRTを通じて広小路通をどうしていきたいか?
まずは、SRTに携わる名古屋市役所の職員へアンケートやヒアリングを実施しました。
・SRT運行開始後の「グッドシナリオ」と「バッドシナリオ」は?
・既存の交通システムにはないSRTの価値とは?
・SRTは、地域のどんな要請に応えていける乗り物ですか?
といった質問を通じて、SRTがどんな価値を生み出すのか、SRTが運行することによって実現したいまちの姿などを見える化していきました。

◉SRTの価値
・まちと調和した魅力的な景観の創出
・まちづくり局である住宅都市局が事業主体
・新鮮な気持ちでもう一回街を見てほしい
・広小路通が目的地になるきっかけがほしい
・単なる移動手段ではない、まちづくりへの作用
・収益じゃなく街の魅力や変化で価値を測ってほしい
◉SRTによって実現したいまちの姿
・イベント時だけでなく日常的な賑わいが欲しい
・沿線の人たちが元気になるものにしたい
・普段は目的地にしない場所でも一旦降りてみよう
3見えてきたのは「あるもの」に目を向けることの大切さ
「SRTの価値」「SRTの存在意義」を見直していく過程で、SRTが日本中の各地域に提唱すべき「まちづくりのあるべき姿」も見えてきました。日本の各地域ではすでに「スクラップ&ビルド」の限界がおとずれており、新しい建物をつくり続けることでまちを進化させるこれまでのスタイルでは立ち行きません。
そこでSRTは、ないものねだりをするのではなく「まちに“あるもの”にあらためて目を向けること」「まちの魅力を再発見」することの大切さや「その地域らしさ」に光を当てることの大切さを伝える存在になれるという気づきもありました。SRTでまちを回遊すると、新鮮な気持ちであらためてまちを見つめ直すことができる。そこで、名古屋を再発見し、誇りや愛着が生まれていく。SRTは「名古屋らしさを見つけてほしい、味わってほしい」という名古屋市の願いが込もった乗り物であることを、市民やステークホルダーに伝えていきたいという答えに辿り着きました。
4コミュニケーション・コンセプト「まちをめぐる、いい予感。」
SRTの真の価値は「移動」ではなく、まちと人との「ふれあい」を増やすことです。SRTがまちをめぐっていくことで、その周辺に人と人、人とお店、人と企業のふれあいが増え、回遊が増え、にぎわいが増えていく。そんな期待を感じさせる乗り物としてみんなに愛されたい。さらに、周辺のお店や企業は、まちの魅力をさらに磨こうと挑戦する。そして、まちに活気が生まれる。そんな未来をもたらす乗り物として「まちをめぐる、いい予感。」というコンセプトで、市民やステークホルダーとコミュニケーションを図っていくことになりました。
また、地下鉄やバスのように5分おきや10分おきに運行するものではなく、1時間に1本という不便さを逆手にとるコミュニケーションで「まちでSRTを見かけたら、なにかいいことがあるかも」といった楽しみを感じてもらえたら、という狙いも込めています。
5「いい予感」を期待させるキービジュアルの制作
SRTの目的や価値を視覚的に伝えていくためのキービジュアルも制作。洗練されたデザインの車体のまわりに、名古屋を感じさせる建物や景色、そして人の賑わいがうまれている未来の姿をビジュアルに落とし込みました。このビジュアルは、市の広報誌「広報なごや」の表紙や新聞広告、名古屋市の各公共施設や公共交通機関、私鉄の交通広告などでも展開されました。


▲「広報なごや(令和8年2月号)」1〜3面にてSRTの巻頭大特集。スローガンに込めた想いや広小路通の楽しみ方を紹介いただきました。

▲名鉄名古屋のホームやバス停にキービジュアルを掲出
6「にぎわいを生む乗り物」として、運行がスタート。
運行が始まると、「新たな交通手段」という切り口だけでなく、本来の目的である「まちづくりの装置・降りて回遊してもらうための乗り物」として受け止められたこともあり、いいスタートを切ることができました。ニュースやSNS等でもポジティブに取り上げられ、大きな話題を呼びました。今後も路線の拡大を進めていく上で、市民の理解や沿線の事業者の協力は必要不可欠です。現在は、さまざまなプロモーションやキャンペーンの実施とともに、イベント等をつうじて「期待」をカタチにする取り組みが進んでいます。

▲SRTの運行スタートは大いに盛り上がりを見せました





