株式会社パラドックス

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社長交代をきっかけに
新たな理念を仕組みに落とし込む、
長期的な目線での組織づくり

CLIENT:株式会社 パワーソリューションズさま

  • コーポレートブランディング
  • 東京都

2002年創業。金融機関向けの業務効率化コンサルティング及びシステム開発を主軸に、現場密着のサービスで成長を遂げてきたIT企業です。創業以来初めてとなる社長交代が起きた2021年。事業承継を機に自分たちの思想を具現化し、より長期的な目線での組織づくりへ向かうため、ブランディングが始まりました。

1ブランディングの背景

パワーソリューションズが特化してきたのは、同社の社員が「ラストワンマイル領域」と呼ぶ、お客さまの“あと一歩”の解決です。大手IT企業が提供する汎用業務パッケージやITサービスではカバーしきれない、あともう一歩ITで何とかしたいとお客さまが思われている領域。そこをパワーソリューションズが「埋める」という独自のビジネススタイルは、大手の汎用パッケージ開発企業やお客さまのニーズを捉え、ご紹介が重なる形で顧客を増やしてきました。

 

同社の成長を支えるもう一つの特徴は、MD制度(※MDとはマネージングディレクターの略。ビジネス部門の部門長のこと)を採用している点です。これは収支の管理をそれぞれのMDが率いる部署単位で行い、部署の売上実績や利益と連動してインセンティブを決める仕組みのこと。自分の出した成果を報酬を通して実感でき、高い裁量も持てることから、社員のエンゲージメントの向上に大きく寄与し続けてきました。

 

そんな同社がブランディングに踏み切ったきっかけは、社長交代に伴う事業承継でした。2021年、社長が創業者の佐藤氏から創業初期のメンバーである高橋氏に交代。佐藤氏のカリスマ性に惹かれて入社した社員も多い同社が、さらなる進化のために目指したのは、経営者がリードするだけではなく、組織全体で長期的にお客様に価値提供できる組織。そのために理念を策定したいというご要望をいただきました。

中でも強いニーズとしてあったのは、同社が理念の言語化の先にマネジメントポリシーの策定や制度改定までも見据えており、こうした改革に長期で共に取り組める企業を探してたことでした。理念を実態にまで落とし込む、一連の過程の伴走者。そんな役割を弊社にご期待いただき、プロジェクトがスタートしました。

2理念策定プロジェクトの実施

社長ヒアリングで課題を整理したのち、社員向けのセッション(DAY1-11)を2022年5月より開始しました。セッションには会長、社長、本部長、そしてMDから総勢15名が参加しました。

 

セッションの前半(DAY1-5)では、メモリアルワークの共有や自分たちの顧客の考察、世の中の課題の考察などを実施。自分たちが社会に提供している価値を、3チームに分かれて議論しながら深掘りしていきました。

ミッションのワード決定のカギになったのは、自分たちの「真の顧客」を考察する際、とあるチームから「答えがない。というのも、ベンダーではなくパートナーとしてビジネスできる顧客であれば、それ以上自分たちとしてお客さんを選んでいる意識がないから」と声があがったことでした。これまでのパワーソリューションズは、主に金融機関・投資会社向けのシステム開発を中心に展開してきていました。一方で、近年は金融以外にも顧客が広がり始めています。その点を考慮しながら「真の顧客」の深掘りを続けた結果、徐々に「自分たちは限定的な顧客・業界ではなく、広く価値提供していくべきではないか」という意見へと収束。最終的にミッションは「あらゆるラストワンマイルにITで立ち向かう。」に決定し、冒頭の「あらゆる」という言葉の中に、顧客の業種を広げていく意思が明確に示されました。

また、バリューには創業当時から大切にしてきた「まごころ」を軸に、お客さまの想いやビジネスの実態を深く理解して業務に取り掛かり、手を尽くしてやり遂げることを価値として抽出しました。

▲「ラストワンマイル」という、パワーソリューションズの中で使われてきた特徴的な言葉を使い、同社らしさを表現。

▲創業時から大切にし続けてきた、顧客に向き合う姿勢を言語化したバリュー。

セッションの後半(DAY6-11)ではビジョン、スピリット、スローガンを考察。ミッションを続けた先にどんな世の中が実現するかを想像しながら言葉を出していきました。

 

ビジョンを検討する時に議論になったのは、「ラストワンマイルの解消を続けた先には、果たしてラストワンマイルのない世界が待っているのか?」という点。考察を重ねてたどり着いたのは、「人がより良い未来を求める限り、ラストワンマイルは無くならない」という答えでした。だとすれば自分たちが目指すのは、様々な「目標までのあと一歩」を埋めた結果として、「誰もが次のチャレンジのできる」世界なのではないか。ここからビジョンは「誰もが新たな一歩を踏み出せる社会」に決定。そのほか、スピリット、スローガンも一語一語検討の末に編まれていきました。

2022年12月、すべての理念策定が終了。決定した理念は社内イベントでリリースし、ポスターやスローガンをあしらったモバイルバッテリーなどを作成して配布しました。

3理念の浸透施策

策定した理念を、絵に描いた餅で終わらせないように、育成の仕組みや人事制度、マネジメントなど組織の実態に落とし込むことを目指し、インナーブランディング施策を企画・実施しました。

 

3-1. 社内大学Next Mile University(通称ネクスト大学)の設立

ミッションに掲げた「立ち向かう」を実現するためには、社員一人ひとりが挑戦し、成長できる環境が必要です。そのために、バリューに掲げたスキルやスタンスを整理し、講座化した社内大学を開設しました。名称は、次の挑戦に一歩踏み出すための大学であることからNext Mile Universityに決定。2023年1月よりβ版としてスタートさせ、社内外の講師による講座と e-ラーニングを掛け合わせた多様な学びを提供しています。

▲社内大学Next Mile Universityのコンセプトとロゴマーク

3-2. 社長による理念研修キャラバン

社内大学の一環として、各回10~15名を集めながら草の根的に高橋忠郎社長が理念の背景を伝えていく活動を行っています。高橋社長のフレンドリーなお人柄を表現した「ただろを酒場」(「ただろを」とは社長のファーストネームである「ただろう」をもじったもの)というロゴをつくり、飲みながらフランクに話す場をつくりました。

 

▲社長による理念研修キャラバン「ただろを酒場」のロゴマーク

3-3. 人事考課の調整

ブランディングプロジェクトと同時期に人事考課の改定が進んでいたため、考課項目の編集をバリューに基づいて調整。言い回し等も、理念の文脈の中で表現できるよう統一を図りました。

4マネジメントポリシーの策定プロジェクト

新たな理念を、さらに組織の中で実態化するためには、マネジメントの改革が重要なポイントでした。組織の中心的存在であるMDたちでチームを組み、理念に沿ったマネジメントポリシーを言語化するプロジェクトが行われました。

 

DAY1-3の発散フェーズではMD20〜30名で様々な視点からの意見を出し合い、DAY4-8の集約フェーズでは5名の主要メンバーがポリシーを言葉に落とし込んでいきました。 理念を実現するための「ありたい組織」を明確化し、描いた組織像を実現するために「育成の指針」や「評価の指針」を言語化しました。

 

5プロジェクトの効果と今後の展開

理念の決定から1年あまりを経て、現在、徐々に組織内に理念が浸透しつつあります。

今後は評価や報酬、採用など様々な人事制度の改定を通じ、日々の仕事と理念の紐づきを高められるよう組織改革を図っていく予定です。パラドックスはこれからもパワーソリューションズ様の新たな一歩に寄り添い、成長を支援してまいります。

 

代表取締役社長 高橋忠郎 様

理念を策定してから一年余りが経ちます。
「社員たちには社長である私に忠誠を尽くしてもらう必要はない。しかし会社のミッションには忠誠を尽くしてほしい」と思ったことから今回のプロジェクトは始まりました。振り返れば、毎回のセッション終了後は社員たちが「疲れた〜!」と声をあげていたほど、普段使わない脳を刺激される日々でした。パラドックスさんに依頼して良かったのはまさにその点。私たちの中からは出てこないハッとする問いを第三者の立場から投げかけていただいたからこそ、新鮮な思考が開かれ、堂々巡りでない議論を進められたのだと思います。また、同じ問いに真剣に向き合った経営陣同士の結束力が強まったことも、非常に重要な成果でした。
理念が明確に言語化されたことから、私自身の経営の判断軸もより明確になったと感じます。たとえば「この仕事を受けるべきかどうか。金融系ならなんでもいいのか、利益が出ればなんでもいいのか?」こうしたことで過去には悩むこともありましたが、今は理念に沿って判断ができ、普段の仕事においても「この仕事はなんのラストワンマイルを解消しているのだろう?」と意識することが増えています。今後はバリューに掲げた「手を尽くす」により力を入れ、古い制度や既存業務からの脱却を図り、私たち自身の新しい一歩を踏み出していきたいと思っています。