本や企業のホームページ、最近ではwebニュースでもよく見かける言葉、
ミッション ビジョン バリュー(以下、MVV)。
よく見る言葉ではありますが、ミッションとは具体的にどのような役割なのか、
ビジョンとの違いはあるのか、といった悩みをお持ちではないですか?
ミッション、ビジョンと聞くと、とても似た言葉のように感じるかもしれませんが、
実は明確な違いがあり、それぞれの役割を持っています。
私たち株式会社パラドックスでは、
約18年に渡り業界業種問わずたくさんの企業様のMVVづくりをお手伝いさせていただきましたが、
しっかりとしたMVVを策定することは、企業活動おいてとても重要になると考えています。
なぜなら、MVVは企業の長期的発展には必要不可欠な存在だからです。
MVVが存在しないと組織は存在意義や大目的を見失いやすくなるため、
既存の状態で硬直化し、社会適合性を失ってしまいます。
一方で、しっかりとしたMVVがあると、組織は柔軟に変化し企業はどんどん発展していきます。
<MVVのない企業>
MVVの不在→脱皮姿勢の欠如→組織の硬直化→社会適合性の喪失→市場価値の喪失→収益力の喪失→資金欠乏→倒産
<MVVのある企業>
MVVが存在→変化前提→組織の柔軟化→社会適合力の向上→市場価値の向上→収益力の向上→未来投資→発展
どの会社も、最初からうまくいくようにはできていません。
むしろ、何もしなければ、なくなってしまいます。
実際に、全法人(およそ255万社)のうち、設立5年で85%(217万社)が消滅、
10年以上存続する企業が6.3%、20年以上存続する企業は0.3%というデータがあります。
(データ参照元:法政大学大学院坂本光司研究室と鎌倉投信による「価値のある企業の指標の策定に関わる共同研究会」調査)
せっかく社会貢献性の高いビジネスをしているのにも関わらず、
MVVがなかったがために、企業が進むべき正しい方向に進めなかったらもったいない。
少しでも多くの方にMVVの重要性や正しい意味合い、作り方をお届けしたい。
そんな想いで、今回のコンテンツを制作させていただきました。
今回は、
ミッションやビジョンの意味が曖昧な方
必要性に疑問を感じている方
策定したいけど方法がわからない方
に向けて、私たちのこれまでの経験を元にMVVそれぞれの意味合い、
さらにこれらに追加して考えるべきスピリットとスローガンについて言及した後、
MVVで得られる効果及びMVVのつくり方について触れていきます。
MVVは企業の根幹を担う非常に重要な部分ですが、
この記事を一通りお読みいただければ、
MVVを策定する意義や正しい作り方への理解が深まると思います。
1:ミッション ビジョン バリューの違い
ミッション ビジョン バリューという言葉は様々なシーンで使用されるため、
似たような意味合いに思われることもありますが、実はこの3つは明確に意味が異なります。
このミッション ビジョン バリューは、もともとは有名な経営学者であり、
「マネジメント」の発明者であるピーター・ドラッカーが提唱している考え方。
図にすると下記のように整理することが可能です。
▲ミッション・ビジョン・バリューの図
特にミッション ビジョンは会社の根幹を担う大事な考え方ですので、
正しく理解しないと企業が思わぬ方向に進んでしまうこともあります。
この章にて、それぞれの正しい意味合いをしっかりと理解し、
今後の企業活動にお役立ていただければと思います。
1-1:ミッションとは、日々果たすべき使命
ミッション ビジョン バリュー(以下、MVV)の並びの中で中心にあるのが、ミッションです。
ミッションを一言でいうなら、「日々果たすべき使命」。
過去、現在、未来に渡って日々果たしていることが、ミッションになります。
ミッションはその企業の存在意義でもあるので、かなり重要な意味を持っています。
また、ミッションはどこまで意義深く設定できるかという点が肝になります。
なぜなら、ミッションの視座を高めると、それに伴ってマーケットが広がるからです。
たとえば、スターバックスコーヒーを例に考えてみましょう。
もし、スターバックスの存在意義が「単なるおしゃれなカフェ」だったとしたら、
こんなに世界中に広まらなかったはずです。
スターバックスがアメリカのシアトルで創業した1970年代。アメリカの景気はよかったもののビジネスマンは非常に忙しく、業績を上げないとリストラされてしまう。一方、家庭でも奥さんを大切にしないと訴えられてしまう。当時のアメリカのビジネスマンはなかなかリラックスできる場所がありませんでした。
そんな中、アメリカのビジネス街にできたのがスターバックス。おいしいコーヒーとリラックスできる空間(=THIRD PLACE)によって、ビジネスマンが抱えているプレッシャーを解放していきました。そんな、時代の要請に応えるという思想を持っていたからこそ、全世界に広がっていきました。
参考元:ストーリーとしての競争戦略/東洋経済新報社
こういった事例を見ても、企業およびビジネスの存在意義を高めることが、
マーケットを大きくすることにつながることがわかるかと思います。
1-2:ビジョンとは、実現したい未来
ミッションが「日々果たすべき使命」だったのに対し、
ビジョンは「実現したい未来」と定義することができます。
つまり、日々果たすべき使命を遂行し続けた結果、
どのような未来を実現したいのかということがビジョンになります。
事業形態によって異なりますが、どのくらい先の未来かというと、
だいだい30年〜100年後までをイメージしてもらえるとちょうどいいです。
ビジョンの内容としては、「5年後に売上10億円!」というような内向きの目標よりも、
その企業のお客様や世の中が応援したくなるような未来のワンシーンであることが望ましいです。
たとえば、ECサイト・Webサービスの大手であるAmazonは、
「オンライン上であらゆるものを発見し、購入できる場をつくる」という
ビジョンを掲げていますが、もし仮に、「地球上で一番の売上を達成する」という
ビジョンであったなら、共感し応援するのは難しいのではないでしょうか。
ミッションは企業の存在意義ですので、途中で変更することは基本的にはありませんが、
ビジョンは未来の話ですので、タイミングを見てアップデートをすることも有効です。
たとえば、変化の早いIT企業の場合、10年も経つと市場も大きく変わることがあります。
そのため、5年、10年という短いスパンで、定期的にビジョンを見直すこともあります。
1-3:バリューとは、約束する価値・強み
バリューは、ミッションを日々遂行していくにあたって、
その会社からお客様に提供する価値・強みと定義することができます。
再びスターバックスを例にしてみましょう。
スターバックスでは、以下の4つのバリューを設けています。
-スターバックスのバリュー
「お互いに心から認め合い、誰もが自分の居場所と感じられるような文化をつくります。」
「勇気をもって行動し、現状に満足せず、新しい方法を追い求めます。スターバックスと私たちの成長のために。」
「誠実に向き合い、威厳と尊厳をもって心を通わせる、その瞬間を大切にします。」
「一人ひとりが全力を尽くし、最後まで結果に責任を持ちます。」
参照元:スターバックス公式HP
こちらの例を見ても、バリューがお客様に対して約束する価値であることが分かると思います。
また、バリューを検討する上で、大切なのが誰に向けてのバリューなのかを整理することです。
たとえば、会社のお客様、パートナー様、社員、といった形で、
ステークホルダーを分けて考えると上手に整理することが可能です。
2:ミッション ビジョン バリューだけでは未完成!
第1章でミッション ビジョン バリューを見てきましたが、
十二分に効果を発揮する企業理念ということを考えると、実はMVVの3つでは不十分なのです。
MVVにプラスすべき重要な要素に「スピリット」「スローガン」というものがあります。
スピリットは「大切にすべき精神」であり行動指針のことですが、
せっかくミッション ビジョンを掲げても、社員一人ひとりの行動がそれに伴っていないと、
ミッションを遂行していくことはできません。
また、スローガンは「ブランドの合い言葉」ですが、
ミッションやビジョンが一言で言い表されたスローガンがあることは、
常にその企業がどのような企業なのかを認知し続けることを助けます。
「スピリット」と「スローガン」、この2つが加わると、
それぞれの要素がより有機的に機能し、効果を高めることができます。
図にすると、下記のように整理することができます。
▲MVVSSをひとつにまとめた図。「ミッション=日々果たすべき使命」を中心に、未来軸でビジョン、企業軸でバリュー、個人軸でスピリット、そしてシンボル化したスローガンとなっています。
では、ここで新しく出てきた「スピリット」と「スローガン」について、
詳しくご説明していきます。
2-1:スピリットとは、大切にすべき精神
スピリットは、「大切にすべき精神」と定義することができ、
少し言い換えると、日々大切にする行動指針となります。
ミッション(=日々果たすべき使命)を遂行するにあたって、
日頃からどのようなポリシーや心がけを持って行動するのが望ましいのか、
ビジョンやバリューにも照らし合わせながら、スピリットをつくる必要があります。
また、スピリットは企業がミッションやビジョンを実現するに向けて、
個人がどう行動するかで考えることもありますし、チーム単位で決めることもあります。
これは、あるフィットネススタジオのスピリットです。
ハードながらもエンターテイメント性のあるワークアウトを通じて、
「自信あふれる人生へとリードする。」というミッション、
「心身共に洗練され、チャレンジし続ける人であふれる世界をつくる。」という
ビジョンを掲げており、これらを実現するために8つスピリットが設定されています。
▲フィットネス企業のスピリット。ミッション・ビジョン・バリューを念頭に、それらを実現するための精神となっている。
2-2:スローガンとは、ブランドの合い言葉
ミッション ビジョン バリュー スピリット、
それぞれの言葉を一言で表したのが、スローガンになります。
その企業、ブランドの合い言葉となる存在で、旗印のようなイメージです。
ミッションやビジョンを一言で表現したスローガンがあることは、
その企業がどういった企業で何を目指しているのかということが、
社外にも社内にもすぐに認知してもらうことを可能にします。
また、スローガンを使用するシーンとしては、
ミッションやビジョンの意味合いを象徴的に表す広告的な言葉でもあるので、
CMの最後に流したり、コーポレートロゴの上に表記したりすることも多くあります。
下記の図は様々な企業スローガンの具体例です。
この図を見るとわかる通り、スローガンはどちらかというと、社外向けなのか、社内向けなのか。
また、ミッションよりなのか、ビジョンよりなのか、
という要素でスローガンにする言葉選びも変わってくることがあります。
▲企業のスローガン具体例。スローガンは「社内向けか・社外向けか」「ミッションよりか・ビジョンよりか」で区分することができる。
3:ミッション ビジョン バリュー スピリット スローガン(以下、MVVSS)によって得られる効果
ミッション ビジョン バリュー スピリット スローガンを策定することは企業活動をする上で
非常に有益で、得られる効果はいくつもあります。
ここでは、MVVSSを据える本質的な価値から社内、採用への効果を見ていきたいと思います。
MVVSSの本質的な価値を理解していることは、MVVSSを作る過程でも大切なので、
ぜひ最後までお読みいただければと思います。
3-1:MVVSSの本質的価値
ミッション ビジョン バリュー スピリット スローガンを
策定することの本質的な価値は企業の長寿化です。
たとえば、樹齢1000年の木を想像してみてください。
なぜ、この木は1000年も生き続けられるのでしょうか。
それは、根っこや幹がしっかりしているからです。
企業も同じであり、まずは根幹をしっかりと定義することが大切です。
もちろん、枝や葉も立派な木には不可欠な要素です。
松尾芭蕉の言葉に「不易流行」という言葉がありますが、
「不易」とは変えてはいけないアイデンティティ、つまり木の幹と捉えることができます。
一方、「流行」はその時々に合わせて変えていくべきもの、つまり木の枝や葉になります。
▲「幹、根」が変えてはならない企業の使命や価値観、「葉・花・実」が変えていくべき日々の活動。このふたつをどちらも大切にすることで、長期的利益を得ることができる。
不易と流行のどちらもが大切で、その両方を意識した経営が長期的な利益に結びつくので、
変わらない不易を踏まえた上で、流行は日々PDCAを回していくことが必要です。
ただ、近年は変化スピードが早いがため、流行の部分を追い求めがちです。
しかし、何のためにこの企業は存在しているのか、何のためにこのビジネスを行なっているのか、
という根っこがしっかりと定まっていないと、やがて葉も枯れてしまいます。
MVVSSといった企業の不易となるアイデンティティを言語化することは、
企業活動を長期的視点で見たときにとても重要になってきます。
しっかりとした根を持つ具体例-タイガー魔法瓶
タイガー魔法瓶の創業者は、魔法瓶屋さんで丁稚奉公していていました。まだ小さかったので、ご飯の順番も一番最後。そんな状況の中、彼は故郷で入れてくれた暖かいお茶やご飯が食べたいという想いが、創業につながりました。一方で、現代は共働きが当たり前の時代。母親が外に働きに出ていて、食卓が愛情不足というのが、社会の課題としてあります。そんな時代に、食卓の愛情不足を補っていくのが、母親の愛情を肩代わりするタイガーなのではないか。そんな価値を世の中に広めていくという想いで「温もりあるアイデアで、食卓に新たな常識をつくり続ける」というミッションを掲げています。
参照元:タイガー魔法瓶様へのヒアリングより
3-2:社内への効果
MVVSSを策定することで、その企業が何のために存在しているのか、
どこを目指しているのか、どのような価値を顧客に提供しているのか、
日々の仕事で何を心がければいいのかが明確になります。
そのため、外部からのその企業を見た時の見え方はもちろん、
社内にもとても大きなプラスの変化が生まれます。
社員や業績にどのような効果があるのか、ご説明していきます。
3-2-1:社員への効果
MVVSSを策定することで生まれる社内の変化として一番重要なのが、
会社全員の目指すべき未来がひとつになることです。
よくある例として、経営者の方は魅力的な人が多いこともあり、
社員が経営者を見て仕事をしてしまうということがあります。
悪いことではありませんが、本来は経営者及び企業のアイデンティティである、
ミッション・ビジョンを見て仕事をしなければなりません。
人には寿命があるので、いつかは今の経営者もいなくなってしまいます。
しかし、企業という組織がなくなるわけではありません。
長期的な視点を持って、経営者も社員と同じくフラットに企業のアイデンティティを見つめ、
企業活動を進めていくことが理想です。
そして、みんなの目線の先にある企業の目標が定まると、
日々の全ての仕事においても意識の変化が起こります。
たとえ話として、MVVを提唱した有名経営学者ドラッカーのこんな話があります。
ある教会の建設現場で、全く同じ作業をしている4人のレンガ職人がいました。
あなたは、「何をしているんですか?」と彼らレンガ職人に尋ねました。
すると・・・
一人目は「食べるために仕方なく働いている」と答えました。
二人目は手を休めずに「職人としてレンガの壁をつくっている」と答えました。
三人目は目を輝かせて「国で一番の教会を建てている」と答えました。
最後に、四人目が「私は国民の心のよりどころをつくっている」と答えました。
この話が示すように、働く人の意識レベルをどこにおくかで、仕事のやりがい、
成長のスピードや方向性も大きく変わってくるのです。
3-2-2:業績への効果
上記の章でご説明した通り、全社員レベルでMVVSSが共有されていると、
ひとつひとつの仕事のクオリティは自然と上がっていくので、
それに伴い会社の業績もアップする可能性が高いです。
また、「日々果たすべき使命」や「実現したい未来」が明確になることによって、
業務や事業においての「やるべきこと」「やらない方がいいこと」も判断がつくようになります。
その結果、業務効率が改善されたり、新規事業が立ち上がったりと会社の業績を伸ばす様々な動きが生まれるのです。
3-3:採用への効果
MVVSSを策定すると、社員のモチベーション向上や業績アップだけでなく、
採用面でも効果を発揮します。
現在、採用シーンでは様々な課題があります。
たとえば、
「エントリー数の減少」
「ターゲット学生と出会えない」
「内定辞退率が下がらない」
といったことを感じている人も多いのではないでしょうか。
毎年、変化の波が訪れる採用シーンにおいて、
そのトレンドに乗り遅れないように対応することも、もちろん重要です。
ただ、数年変わらない「軸」、すなわち採用における不動のメッセージを確立できれば、
変化の激しい採用トレンドに必要以上に流されず、その企業らしい採用活動を続けていくことが可能になります。
採用活動は、会社を共に成長させる未来の「同志」を見つける活動です。
その企業がどんなビジネスをしているかというWHATの観点も重要ですが、
この企業がなぜそのビジネスをしているのかというWHYの観点を伝えることも大切なのです。
リクルートの意識調査を見ても、いまの学生の就職先を確定する際の決め手の6位は、
「会社・団体の理念やビジョンが共感できる」となっています。
そういった背景を踏まえても、その企業にしか語れないストーリーを
採用の場でも発信していくことがとても大切ということが言えますが、
そんな採用における不動のメッセージも、
企業としてMVVSSがあってはじめてつくることができるのです。
また、その企業にしか語れないストーリーを元に明確な採用メッセージを
打ち出した採用活動を行うと、例年に比べて母集団は減少する傾向にあります。
最初は、母集団の減少に驚かれるかもしれませんが、心配することはありません。
むしろ、採用メッセージがうまく機能しているということです。
なぜなら、採用メッセージに「その会社にしか言えない独自性」や「その企業が存在する意義」、
「実現したい世界観」が追加されたことにより、
なんとなくエントリーする学生が減っているのです。
その分、数は少なくなった母集団の中に、
いままでよりその企業の価値観に共鳴している未来の同志がたくさんいるはずです。
明確なメッセージを打ち出した採用ブランディングにて、
採用を成功させた事例をひとつご紹介させていただきます。
採用ブランディング事例
企業について:
株式会社マイプリント。
婚礼・年賀の印刷会社さんで、婚礼年賀部門では、日本NO.1のシェアを誇る。
採用における課題感:
・年賀状の投函数の減少により業界的には向かい風。
・若手とベテランの2層で構成されてしまっている。
・働く社員のモチベーションの差がある。
・年賀事業と婚礼事業間での交流が少ない。
・男性社員が集まりにくい。
施策①(コーポレートスローガン策定):
この企業は、ただの印刷会社ではない。年賀・婚礼事業を通じて、日本が大切にすべき人を祝う気持ち、つまり“おめでとう”を交わす文化をつくっていく会社であるということを表す企業スローガン「おめでとうは、日本の文化だ。」を設定。
施策②(コーポレトスローガンを採用メッセージに落とし込む):
社員さんにヒアリングをしてみると、ほとんどが年賀・婚礼という人の人生の節目に関わるめでたい瞬間に関わることへの意義を感じていました。そこで、祝い事を仕事にすることの魅力を伝えるメッセージ「祝いゴトを仕事にしよう。」を策定。メインビジュアルは、オフィス内で正月と結婚式の風景を撮影し、日々の仕事がお客様の祝いごとにつながっていることを表現しました。
結果:
上記のメッセージをコアに採用活動をした結果、例年に比べ採用人数は大幅アップ。
もともと企業への共感値が高い母集団が形成されていたこともあって、辞退者もゼロ。
また、ポテンシャルも高い学生も多く集まりました。
①採用目標人数の達成。辞退者0名。
(昨年採用2名・辞退者8名)
②卒業大学群のレベルが上がり、
先輩社員を上回るポテンシャルを発揮している。
③従来の営業職から経営企画層に切り替えて、
より難易度の高い採用方針に上方修正を行っている。
4:ミッション ビジョン バリュー スピリット スローガンの作り方
MVVSSは、ただ策定すればいいというものではありません。
策定の仕方を間違ってしまうと、
MVVSSをせっかくつくったにも関わらず効果が半減してしまいます。
MVVSSの作り方には色々な方法がありますが、
一番効果を期待できるおすすめの方法は、複数の社員でセッションを行う形式です。
▲セッション風景:お互いの意見を否定せず、活発な議論を意識しましょう。
なぜ、セッション形式が一番いいのか。それは、MVVSSは社員みんなのものであるからです。
たとえば、ディズニーランドには、以下の理念とそれを支える行動指針があります。
-理念
「幸せを提供する」
-行動指針
「安全性、礼儀正しさ、ショー、効率」
この理念や行動指針が会社全員で理解しているからこそ、
現場でキャスト一人ひとりがホスピタリティのある行動ができるのです。
以降の章にて、一番スタンダードある全10ROUNDのセッション内容をご紹介しますので、
効果のあるMVVSSを策定するご参考にしていただければと思います。
4-1:セッションの準備
セッション形式でMVVSSを策定する場合、
まず行うべきことは、セッションに参加するメンバーを決定することです。
このプロジェクトメンバーの構成としては、理念に造詣が深い方を必ず一名いれましょう。
さらに、後々理念を積極的に社内で体現してくれる
伝道師のような存在になってくれそうな方を入れておくことも、
リリース後のことを考えると有効です。
また一方で、すごくいい意見を持っているけれど、理念をつくることに懐疑的な方も入れておくと、
セッション中に合意形成を得ながら進めることができるので、効果的です。
4-2:セッションの内容について
まず、セッションの時間と回数については、
1回のセッションを3時間とし、2週間に1回の割合で10回行うのが効果的です。
「10回もセッションを行うの?」と多く感じるかもしれません。
しかし、会社の根幹を決めるセッションですので、
いろいろな意見が出たり、悩んだりすることも多いので、
MVVSSをしっかりと煮詰まったものにするには
10回のセッションがちょうどいい期間になります。
実際に、10回よりも短い回数でMVVSSの策定を行なった事例もあるのですが、
やはりMVVSSが煮詰まり切らず、セッションに参加した社員さんから、
もっと議論を深めたかったというご意見をいただいたこともありました。
また、セッションとセッションの間を2週間空けることは、
思考を深めたり、前回出たアイデアを
冷静に見つめ直せたりするかなり重要な期間となりますので、
ぜひこのインターバルも大切にしてください。
セッションではポストイットに意見やアイデアを書き出して、
大きなイーゼルパッド(壁などに貼れる大きな紙)や
模造紙に貼ってまとめるなどすると、活発な議論が生まれます。
▲意見やアイデアは各自付箋に貼って発表し合いましょう。付箋はグルーピングしやすいように大きな模造紙などに貼り出していきましょう。
また、建設的に議論が進むように、誰かひとりが司会役としてファシリテーターを務めましょう。
全10回のセッションする内容は下記になります。
<全10ROUNDの流れと内容>
ROUND1:キックオフセッション
ROUND1はMVVSS策定のはじめてのセッションになるので、
まずメンバー全体でこのプロジェクトの目的を共有しあうことが大切です。
「プロジェクト概要・目的」
「理念の意義」
「課題感の共有」
「プロジェクトで出したい成果」
といった内容を話し合うことによって、ゴールを共有し合いましょう。
また、プロジェクトチームの名前を決めることも、チームの一体感を高める上で有効です。
ROUND2:メモリアルワークセッション
ROUND2では、メンバーのメモリワーク(働いてきた中で、一番心に残っている仕事/ターニングポイントになった仕事/いまでの働くモチベーションの源泉になっている仕事)や伝説の仕事(ご自身の仕事以外で、すごい!と感じた仕事)などを発表し合い、その中に共通する「価値観」や「らしさ」を抽出していきます。
このように、その企業らしい「DNA」を紐解いていくことで、ミッションの必然性を高めることができます。
ROUND3:社長インタビュー&らしさ共有セッション
ROUND3では、プロジェクトメンバーによる経営者インタビューを行います。
経営者の生い立ちからスタートし、会社の過去、現在、未来までの歴史を紐解いていきます。
ここでは、過去から時系列でインタビューを進めるのがポイントになります。
「経営者が大切している想い」や「ターニングポイント」、「現在のビジネスコンセプト」、「今後描いていること」などを抽出できるとベストです。
経営者インタビューの中で見つけたその企業の「らしさ」とROUND2で話し合った「らしさ」を比較して、議論を深めていきましょう。
ROUND4:ミッション考察セッション
ROUND4では、MVVSSの最初のひとつ、ミッションを検討していきます。
ROUND2、ROUND3で話し合ったその企業の「らしさ」を踏まえた上で、「本当に好かれたい真の顧客はだれか」「世の中が抱えている課題はなにか」「どのような価値を世の中に提供しているのか」といったことを議論し、「ミッションワード=日々遂行している使命」を考察していきます。
ROUND5:ミッション・バリュー考察セッション
ROUND5の冒頭では、前回のROUND4で話し合ったミッションワードを再検討し、
会社の真ん中に据える言葉として違和感がないかを確認し、暫定的に確定します。
続いて、バリューの検討をしていきます。暫定的に決めたミッションを踏まえて、
お客様やパートナー様にどんな価値の提供を約束できるかを議論します。
バリューは、「重複なく」「抜け漏れなく」「属人的な視点からではなく汎用性の高いもの」かつ各項目のレイヤーが揃っている必要があるため、ある程度抽象度をあげて整理していく必要があります。
ROUND6:バリュー・ビジョン考察セッション
ROUND6の前半では、ROUND5で議論したバリューを再検討していきます。
いきなり文章にするのが難しい場合は、まずバリューになりそうなキーワードを出してみて、
その後精査をしながらまとめていきます。
バリューが確定したら、次はビジョンの策定のフェーズに入ります。
ビジョンを考えるにあたっては、まず未来年表をつくることがとても有効です。
ミッションを日々遂行した結果、10年〜30年後の未来にどのようなことが起こるのか、
「社内」「社外」「世の中」の軸で書き出してみましょう。
未来年表が完成したら、メンバー全員で眺めながら、自社のビジョンとは何かを検討していきます。
ROUND7:ビジョン・スピリット考察セッション
ROUND7の前半では、ROUND6の後半で検討したビジョン案を再検討していきます。
こちらも、いきなり文章にするのが難しい場合は、キーワードや文節ごとに検討し、
適宜入れ替えながらビジョンを練り上げていきましょう。
ROUND7の後半では、スピリットの検討を行います。
スピリットを考えるにあたり、まずは「メンバーのマネジメントで感じている課題」と「普段仕事をする上で大切にしているポリシー」をプロジェクトメンバーで話し合います。
そこに加えて、ROUND2で行なったメモリアルワーク共有やROUND3での経営者インタビューで出てきた「らしさ」も踏まえて、スピリットを考えていきます。
ROUND8:スピリット・スローガン考察セッション
ROUND8の前半では、ROUND7で検討したスピリットの再検討を行います。
過不足や変更したい言葉がないか、精査していきましょう。
スピリットをワーディングする際は、その企業らしさやワクワクする世界観を味付けするとユニークでキャッチーなものに仕上がります。スピリットの数としては、5〜10が適正です。
ROUND8の後半では、スローガンを検討していきます。
これまでに決めてきたミッション ビジョン バリュー スピリットを踏まえて、
コピーライターになったつもりでスローガンを考えてみましょう。
この時に、どちらかというと、社外向きなのか社内向きなのかを考えることも大切です。
ROUND9:スローガン考察セッション
ROUND9では、ROUND8で考えたスローガン案を再検討していきます。
ミッション ビジョン バリュー スピリットと並べて眺めてみたときに、意味のつながりや、関係性などで気になるところはないか、じっくりと検討します。
ROUND10:最終調整
ROUND10では、MVVSSの最終調整を行います。
すべてを並べてみて、言葉ひとつひとつに込めた想いや意味合いを確認していきます。
無事にMVVSSがすべて整ったら、いつどのように社内外ににリリースするかを考えてみましょう。
MVVSSは会社の中心を担うものなので、最初のリリース方法が非常に大切になります。
4-3:効果的なMVVSSのリリース
ROUND10でも少し触れた「MVVSSのリリース方法」について補足します。
10回に及ぶセッションでかなりパワーを使われたと思いますが、
せっかくつくりあげたMVVSSの効果を最大化させるには、
最初のリリースがとても重要になってきます。
リリースの仕方がイマイチだと、社内でしっかり認知されなかったり、
重要性を理解されなかったり、と効果が半減してしまうからです。
リリースのポイントは「アタマだけでなく、ココロに訴えること」。
物事を理解するには、「納得感」を感じてもらうことが大切になりますが、
そのためにはアタマで理解するだけでなく、ココロでもポジティブな印象を持ってもらうことが必要になります。
ただ正論を並べることや、上からの押し付けにならないように、
フラットな目線で五感に訴える伝え方を工夫することが大切です。
具体的なリリースについては、社内と社外に分けてご説明いたします。
- 社内リリースについて
社内リリースにおいて、まず重要なのがリリースの「タイミング」です。
MVVSSができたからといって、突然なんでもない日にいきなりリリースするのは、
みなさんの心の準備ができていないのでおすすめできません。
ベストなタイミングとしては、新しい期の初日や設立記念日、大きな社内イベントがある日など、
その会社にとって特別の日を選ぶとよいでしょう。
社員のみなさんが、新しいことを聞く姿勢が整っていますし、
比較的多くの社員に直に伝えることが可能です。
また、リリース方法としては、MVVSS発表スライドをつくり、
MVVSS策定に関わったメンバーが発表を行うのが非常に効果的です。
「MVVSSの重要性」、「なぜ、MVVSSをつくろうと思ったのか」、
「どのような経緯でこのMVVSSになったのか」、「どのように実践してほしいか」など、
MVVSSを策定してきた10ROUNDのことを振り返りながら、全社員がわかりやすいようにつくりましょう。
また、スライド以外の選択肢として、準備のハードルは上がりますが
リリース動画をつくるというのもおすすめです。
スライドに比べ、より情緒的でココロに訴えるアプローチが可能になります。
動画の構成や伝えるべき内容は、スライドのときの同じです。
- 社外リリースについて
社外リリースにおいても、そのタイミングが重要です。
必ず社内リリースと同時か完了後に、社外リリースを行うようにしましょう。
リリース方法としては、会社HPのNEWS欄にMVVSSを策定した記事を出したり、
企業理念のページをリニューアルしたりすることが効果的です。
また、会社案内などがある場合は、MVVSSを語るページを設けるのもいいでしょう。
4-4:MVVSSをつくる上での注意
セッションでMVVSSを策定するにあたって、いくつか注意すべき点もあります。
より良いMVVSSをつくるために、この章では具体的にどういったことを注意すべきかご紹介します。
4-4-1:メンバーの意見を否定しない
セッション形式では、複数のメンバーで様々なことを議論します。
そのため、多種多様な意見やアイデアが出てきます。
時には、「それは違う!」と否定したくなるような意見もあるかもしれません。
しかし、頭ごなしに否定をしてしまうと、
意見を言いづらい雰囲気になってしまい、議論の活発性が失われてしまいます。
会社のことを議論しMVVSSをつくる上で、正解や不正解はありませんので、
お互いを尊重し合い議論を進めることが大切です。
4-4-2:みんなの合意形成を大切に
MVVSSは誰か一人のものではなく、全社員が日々意識するものであり、会社の根幹です。
そのため、セッションの場では、ひとつひとつの言葉に対して、みんなが所有感を持っていることが大切です。
対話を十分に行い、ひとりが決定するのではなく、
プロジェクトチーム全体で合意形成を築きながら決定していきましょう。
4-4-3:無理に決定しない、妥協しない
MVVSSは一度決めて、社内にリリースしてしまうと、そう簡単に変えることはできません。
そのため、本当にこのMVVSSでいいのか、妥協せず議論することが大切です。
会社の根幹になる大切な部分なので、違和感が残ったまま進めないようにしましょう。
5:まとめ
企業にとって幹となるのが、MVVSS。
最後にもう一度整理をすると、ミッションは「日々果たすべき使命」、
ビジョンは「実現したい未来」、バリューは「約束する価値・強み」と定義することができます。
そこに、スピリット「大切にすべき精神」、スローガン「ブランドの合い言葉」を追加することで、
企業理念として完成された状態になります。
その企業は何のために存在しているのか、そしてどこを目指しているのか、
世の中に提供している価値はなにか、日々どういった精神で働けばいいか。
これらを明確に持っている企業は、理念に沿った様々な事業が展開されますし、
社員のモチベーションも高く、採用においても志を同じくした同志が集まってきます。
100年単位で企業活動をしていこうと思った時、
MVVSSは会社の根幹を担うとても重要な存在になるのです。
コメント
「【ミッション・ビジョン・バリューとは?】企業経営の根幹を担うMVVの重要性」に対する9件のコメント