2015年に国連サミットで採択されて以降、多くの企業が取り組むSDGs。一方で、
「企業として取り組むべきとはわかっているけど……」
「CSRやESGと何がちがうのかわからない」
このように感じている方も多いことと思います。しかし日本は以前から、SDGsと同様の価値観で企業運営が行われてきたことをご存知でしょうか。この記事では、SDGsの基本的な知識から、企業が実施するメリット、取り組みを始めるために必要なポイントをご説明します。
SDGsはその内容自体も、そこにつながる歴史も深く、筆者の個人的な感想ですが、調べてみるだけでも非常に面白いものでした。あまり難しく考えず、まずは気軽に読んでいただけると幸いです。
1:SDGs=持続可能な開発目標
SDGsは「Sustainable Development Goals」の頭文字をとったもの。日本語に訳すと、「持続可能な開発目標」。これは日本に限らず、そして企業や個人に限らず、世界的に取り組むべきものとして掲げられているものです。外務省のWebサイトには、以下のように説明されています。
持続可能な開発目標SDGsとは
持続可能な開発目標(SDGs)とは,2001年に策定されたミレニアム開発目標(MDGs)の後継として,2015年9月の国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」にて記載された2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標です。17のゴール・169のターゲットから構成され,地球上の「誰一人取り残さない(leave no one behind)」ことを誓っています。SDGsは発展途上国のみならず,先進国自身が取り組むユニバーサル(普遍的)なものであり,日本としても積極的に取り組んでいます。
※引用元:https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/sdgs/about/index.html
では「持続可能な開発」とはそもそもどういうことで、何のためにやるのか。
ざっくり言うと、“世界的に技術や経済が発展していく中でも、環境や貧困、差別や平等などの問題を置いてきぼりにしないことで、今後もずっとより良く発展を続けられるやり方を考えていきましょう”ということです。
SDGsの前身は、2001年にスタートしたミレニアム開発目標(MDGs)。「極度の貧困と飢餓の撲滅」や「ジェンダー平等推進と女性の地位向上」など、2015年までに達成すべき8つの目標を掲げたものでした。
その成果を踏まえ、内容を見直して2015年からの後継となったのがSDGs。5つの特徴を持ち、2030年を年限とする17の国際目標から成ります。
SDGsの特徴
普遍性:先進国を含め、全ての国が行動
包摂性:人間の安全保障の理念を反映し、「誰一人取り残さない」
参画型:全てのステークホルダーが役割を
統合性:社会・経済・環境に統合的に取り組む
透明性:定期的にフォローアップ
※参考:https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/sdgs/pdf/000270935.pdf
SDGs 17の目標
Goal 1.あらゆる場所のあらゆる形態の貧困を終わらせる
Goal 2.飢餓を終わらせ、食料安全保障及び栄養改善を実現し、持続可能な農業を促進する
Goal 3.あらゆる年齢の全ての人々の健康的な生活を確保し、福祉を促進する
Goal 4.全ての人に包摂的かつ公正な質の高い教育を確保し、生涯学習の機会を促進する
Goal 5.ジェンダー平等を達成し、全ての女性及び女児の能力強化を行う
Goal 6.全ての人々の水と衛生の利用可能性と持続可能な管理を確保する
Goal 7.全ての人々の、安価かつ信頼できる持続可能な近代的エネルギーへのアクセスを確保する
Goal 8.包摂的かつ持続可能な経済成長及び全ての人々の完全かつ生産的な雇用と働きがいのある人間らしい雇用(ディーセント・ワーク)を促進する
Goal 9.強靱(レジリエント)なインフラ構築、包摂的かつ持続可能な産業化の促進及びイノベーションの推進を図る
Goal 10.各国内及び各国間の不平等を是正する
Goal 11.包摂的で安全かつ強靱(レジリエント)で持続可能な都市及び人間居住を実現する
Goal 12.持続可能な生産消費形態を確保する
Goal 13.気候変動及びその影響を軽減するための緊急対策を講じる
Goal 14.持続可能な開発のために海洋・海洋資源を保全し、持続可能な形で利用する
Goal 15.陸域生態系の保護、回復、持続可能な利用の推進、持続可能な森林の経営、砂漠化への対処、並びに土地の劣化の阻止・回復及び生物多様性の損失を阻止する
Goal 16.持続可能な開発のための平和で包摂的な社会を促進し、全ての人々に司法へのアクセスを提供し、あらゆるレベルにおいて効果的で説明責任のある包摂的な制度を構築する
Goal 17.持続可能な開発のための実施手段を強化し、グローバル・パートナーシップを活性化する
※参照:https://www.soumu.go.jp/toukei_toukatsu/index/kokusai/02toukatsu01_04000212.html
17の目標の下には、さらに169の具体的な解消すべき問題点(ターゲット)と、その課題が改善したかを測るのに用いられる232の計測方法(指標)が示されています。
▼169のターゲットと232の指標
英語版:https://unstats.un.org/sdgs/indicators/Global%20Indicator%20Framework%20after%202020%20review_Eng.pdf
日本語版(仮訳):https://www.soumu.go.jp/main_content/000562264.pdf
2:企業とSDGsの関係
2015年の国連サミットで採択された「持続可能な開発目標」であるSDGsは、持続可能でよりよい世界を目指して、世界全体で取り組むべき17の目標のこと。世界的に技術や経済が発展していく中でも、環境や貧困、差別や平等などの問題を置いてきぼりにしないことで、今後もずっとより良く発展を続けられるやり方を目指して行こうというものです。
ここまでを読むと、SDGsは必ずしも企業だけが取り組むべきだと、決められているものではないことがわかったことと思います。むしろSDGsが世界的に取り組むべき課題だとして、それが企業に関係あるのかという疑問がわいてきたかもしれません。
しかし日本においては古くから、SDGsに通ずる考え方で企業経営を行ってきたことをご存じでしょうか。
2-1:SDGsは「三方よし」
日本で古くから用いられてきた考え方で、SDGsに通ずるもの。それは、「三方よし」の精神。「売り手によし、買い手によし、世間によし」といって、商売において企業と消費者が満足するのはもちろんのこと、社会に貢献できてこそだという経営哲学です。
「三方よし」の起源は、現在の滋賀県にあたる近江で活躍していた商人たち。この精神をモットーに、彼らは自らの利益だけを求めることはせず、誠実な商売で信頼を獲得していきました。そうして利益が貯まると、今度は無償で橋をかけたり、学校を建てたりと、世間のためになる活動をしたのです。
この考え方は近江商人が商売を広げるのに伴い全国へと広まり、現在では伊藤忠商事をはじめ、多くの企業の経営理念の根幹となっています。「三方よし」とはまさに、現在における企業のCSR・SDGsの取り組みそのもの。世界的に企業の社会的責任が叫ばれるずっと以前から、日本には社会貢献の文化が根付いていたのです。
ちなみに近江商人の経営手法は「三方よし」の哲学のみならず、マーケティングの視点から見ても、現代に重要な価値観と通ずる部分が多くあります。興味のある方は、ぜひ一度調べてみてください。
2-2:SDGs・CSR・ESGとは
企業におけるSDGsの取り組みと似ているものに、CSRやESGがあります。これら3つの考え方は起点こそ異なりますが、本質的には“企業経営と社会貢献とをつなげる”もの。それぞれ企業としての狙いに合わせて名前は異なりますが、取り組みとしてはほぼ変わらないものと言えます。
CSRは「 Corporate Social Responsibility」、直訳すると「企業の社会的責任」。植林や寄付などの慈善活動と思われがちですが、実際はそれにとどまりません。CSRの取り組みは社会をより良くするために積極的に行う活動すべてを指し、労働環境を良くすることや、製品・サービスの説明責任を果たすことなども含まれます。
欧米におけるCSRの起源は、1920年代の教会を中心として、武器・たばこ・アルコールに関連する企業への投資を控えたことにあると言われています。日本においては、1956年に経済同友会が「経営者の社会的責任の自覚と実践」の決議を公表し、「企業の社会的責任」という考え方が広まり始めました。それ以降、企業の大きな不祥事が発生するたびに議論されてきたのです。
そして2000年頃から、世界規模で地球環境・地球社会に関するサミットなどが実施されるとともに、日本でも様々な法令が成立しました。ちなみに「CSR」の表記が一般的になったのはこの頃。2003年にはリコーを筆頭に、CSR室を創設する企業が相次ぎ、CSRにかかわる多様な法律も成立するのです。
※参考:https://www.nli-research.co.jp/files/topics/38077_ext_18_0.pdf
一方ESGは、「Environment(環境) Social(社会) Governance(ガバナンス)」の頭文字をとったもの。2006年に、当時国際連合事務総長であったコフィー・アナン氏が金融業界に向けて提唱した「責任投資原則(PRI)」の中で、投資判断をする際の観点として登場しました。主に「ESG投資」のように使われます。
これは投資家目線で企業を判断する際に、単なる業績や規模だけでなく、環境への配慮やダイバーシティなどの社会的な取り組み、リスク管理などのガバナンスという3つの観点から評価すること。
経済が発展していく中で、持続可能性への懸念が投資家の中で強まったことから生まれた考え方です。この考え方の広まりを受けて、特に大企業は、自社の社会的な取り組みを一層アピールし始めました。
つまりESGは投資家対策を起点に、CSRは世界的な環境・社会意識の高まりを起点に、企業の社会貢献を重視する世の動きに伴って広まった考え方。これらの考え方よりも後、2015年に誕生したSDGsは、その目的をより広い目線かつ具体的に、社会貢献へ取り組もうとするものだと考えると良いでしょう。
例えばキヤノンでは、「投資家情報」のページの中で、ESGの取り組みを紹介しています。
E・S・Gに分けてそれぞれリンクが貼られており、クリックするとどれもCSR活動のページへとつながっています。
さらにCSR活動のページには、SDGsに関するコンテンツも。
このように企業においては、SDGs・CSR・ESGは名前こそ異なるものの、本質的には同じ社会貢献活動として取り組まれてきたのです。
SDGs(Sustainable Development Goals)=持続可能な開発目標
2015年9月の国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」にて記載された2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標。先進国・発展途上国やあらゆる政府・企業に関わらず、取り組むべき目標として掲げられている。
CSR(Corporate Social Responsibility)=企業の社会的責任
日本においては1956年頃から存在した考え方。2000年頃から世界規模で地球環境・地球社会に関するサミットなどが実施されるとともに、日本でも様々な法令が成立。企業のCSR活動は社会をより良くするために積極的に行う活動すべてを指し、労働環境を良くすることや、製品・サービスの説明責任を果たすことなども含まれる。
ESG(Environment Social Governance)=環境・社会・ガバナンス
2006年にコフィー・アナン氏が金融業界に向けて提唱した「責任投資原則(PRI)」の中で、投資判断をする際の観点として登場。主に「ESG投資」のように使われ、企業への投資判断をする際に、業績や規模だけでなく、環境への配慮やダイバーシティなど社会的な取り組み、リスク管理などのガバナンスという3つの観点から評価すること。SDGsやCSRの実践がESGにつながると言える。
3:企業がSDGsに取り組むメリット
SDGs(あるいはESGやCSR)は社会的に見ても、企業が取り組むべき活動。多少の支出や負担があっても、やるべきと考える方もいるでしょう。しかし実際は、これらの問題解決に向けて取り組むことで、企業が得られるメリットも多いのです。
3-1:投資家へのアピール
前述したESG投資のように、現在では投資家が投資判断をする基準のひとつとして、企業が社会的な取り組みを行っているかどうかが重要視されています。
そもそも投資家が社会課題への取り組みを重視するのは、消費者の意識の高まりを受けてのこと。今後も消費者の意識がますます高まっていくと予想される中で、企業のSDGsに関する取り組みに投資家も一層注目すると考えられます。
海外では特に欧州、北欧・ユーロ圏でESG投資への意識が高く、また欧米ではIRにおいてESGやSDGsについて最初に質問されるほど。今後世界規模で事業を展開していきたい企業にとっては、SDGsは決して無視のできない話題なのです。
3-2:企業ブランドへの貢献
ESG投資の高まりは、そもそも消費者の意識の高まり。ということは、企業がSDGsの課題に真摯に取り組むことは、消費者に対する企業イメージの向上施策になります。
例えば近年、コーヒーなどでよく見かけるようになった「フェアトレード」の商品。これは生産者に対して適切な価格を支払うなど、社会的・環境的な基準を満たして取引された商品であることを示すもの。これまでは生産者に支払う価格が最終的な販売価格から鑑みて非常に低く、貧困や、大量生産のための環境破壊が繰り返されてきた課題を解決するための取り組みです。
このように環境や社会問題の課題を解決する商品の購買は「エシカル(倫理的)消費」と言われ、近年の消費者研究において重要なキーワードとなっています。
企業の商品やサービスを選ぶ基準がただ安いだけではなくなってきた現代。よりSDGsに紐づいた事業運営を行うことで、消費者に選ばれる企業になる必要があるでしょう。
3-3:採用ブランディングへの貢献
現在、企業の若手として働き盛りのミレニアル世代(1980年代序盤から1990年代中盤に生まれた人々)は、デジタルネイティブのみならず、SDGsネイティブであるとも言われています。
以下の図は、世界中のミレニアル世代を対象に、いくつかの課題について「企業が達成すべきこと」「自組織の優先事項」を調査したもの。
▲2018年 デロイト ミレニアル年次調査
https://www2.deloitte.com/content/dam/Deloitte/jp/Documents/about-deloitte/about-deloitte-japan/jp-group-millennial-survey-2018.pdf
これを見るとミレニアル世代は、企業は社会的な貢献をより達成すべきと考えている一方、自らの所属組織ではそれが優先されていないと感じていることがわかります。
企業の働き手として、今後ますます重要な役割を担うミレニアル世代。新たな就職先・転職先として、若い世代に「働きたい」と思われる企業になるためには、SDGsへの取り組みは必須と言えるでしょう。
▼SDGs経営ガイド(経済産業省)
https://www.meti.go.jp/press/2019/05/20190531003/20190531003.html
組織の価値観×社会的意義 =「パーパスブランディング」
企業が消費者や働き手に選ばれるために、「企業ブランディング」や「採用ブランディング」が重要であることは既に知られたこと。では昨今話題となっている、「パーパスブランディング」はご存知でしょうか。
2019年8月19日、アップルやウォルマートなどが所属する財界ロビー団体・ビジネスラウンドテーブルが、「企業の目的に関する声明」という書簡を発表。
その内容は、“株主の顔色を伺いながら利益を追求するのではなく、社会やコミュニティー、働く人々にとっての価値提供を企業経営の目的にすべきである”。この宣言によって企業にとってのパーパス(Purpose)ーーここでは“存在意義”のように使われますーーが注目されることになったのです。
パーパスブランディングは、若年層の働き手や消費者の社会貢献への意識が今後ますます高くなる中で、企業が持続可能な経営を行うために重要な考え方となっています。
詳しくは以下の記事で説明していますので、ぜひご一読ください。
▼パーパスブランディングについて詳しくはこちら
4:SDGsは企業理念に紐づけて取り組む
SDGsに取り組むにあたり、17項目の目標すべての達成を目指す必要はありません。ではどの目標から取り組むべきなのか。最も身近なもの……と考えてしまいそうですが、ここで見るべきは、自社の「企業理念」です。
企業理念の登場が唐突に思える方もいるかもしれませんが、そもそも企業において、企業理念はすべての出発点。新しい事業に取り組む際、社内制度を整える際には、必ず企業理念に照らし合わせる必要があるほど、大切なものです。
SDGs(あるいはESGやCSR)への取り組みを企業理念に基づいて行うことで、消費者やステークホルダーには、ただ企業アピールのためだけにSDGsを利用しているわけではないと理解してもらうことができます。また企業が理念に基づき一貫性を持って事業と社会貢献へ取り組むことは、従業員の満足度やエンゲージメントの向上にもつながります。
一方で、企業理念が存在するものの従業員やステークホルダーに全く浸透していなかったり、理念に沿わない経営を行っていたりして、企業理念が機能していない場合。突然企業理念に沿ってSDGsに取り組もうと言ったところで、「なぜ?」と思われるだけになってしまうこともあります。
そのような場合は、一度企業理念を見直すところから始めることがおすすめ。それを機に現在の企業のあり方を見直し、よりグローバルに活躍することを意識した理念にできれば、今後企業が発展する礎となるでしょう。
既にSDGsに取り組む企業の多くは、企業理念に「持続可能」「社会」「世界の人々」などのワードを取り入れています。実際の取り組みを行う前に、自社の企業理念が持続可能な企業経営につながるものかどうかを、ぜひ一度確かめてみてください。
▼企業理念の策定について詳しくはこちら
企業の根幹を担うミッション ビジョン バリューの意味合いと作り方
ビジョンとは?組織の進む道が定まる実践的なビジョンの知識と作り方。
企業理念とは?100年続く企業になるために必要な企業理念を徹底解説。
5:SDGsに取り組む企業の事例
企業理念に基づいていて、事業につながるSDGsへの取り組み。ゼロベースで考えるだけでは、イメージがわきづらいかもしれませんね。
ここでは、SDGsへの取り組みが高く評価されている企業の、企業理念と取り組み内容をいくつかご紹介します。企業理念と取り組みの関係や、自社の参考にできそうな部分があるかどうかを考えながら、ぜひご覧ください。
5-1:サントリー
水と生きる
企業理念の一番初めに、“約束”として「水と生きる」を掲げるサントリー。それは単なる飲み水としての意味だけではなく、社会に潤いを与える存在となることや、水のように柔軟であり続けることを表しています。
サントリーはその企業理念に基づいて、専門知識を有する外部専門家の協力のもと、ステークホルダーと自社にとっての重要課題を分析。重要度の高い取り組み目標として、4つの課題を特定しました。
サントリーが特定した4つの重要課題
Goal 6.全ての人々の水と衛生の利用可能性と持続可能な管理を確保する
Goal 3.あらゆる年齢の全ての人々の健康的な生活を確保し、福祉を促進する
Goal 12.持続可能な生産消費形態を確保する
Goal 13.気候変動及びその影響を軽減するための緊急対策を講じる
その中でもさらに、約束として掲げる「水と生きる」に最も関連する「Goal 6.全ての人々の水と衛生の利用可能性と持続可能な管理を確保する」に最も注力すると発表しています。
水はすべての人間にとって毎日必要なもの。人の飲み水となる以上に、私たちが食べる全ての動物や植物の成長にも欠かせません。
その水に関わる企業だからこそ、水それ自体やそこから育まれる動植物を通じた人々の健康、提供するためのルートや包装にまで気を配り、サステナブルな消費の形を模索し続けているのですね。
▲引用元:https://mizuiku.suntory.jp/gakko/report/
具体的な取り組みとしては、日本国内における森林やそこに生きる生物の保護。日本および海外での水に関する教育「水育」の実施。自社工場において洗浄・冷却に使用する水の削減など。
詳細な取り組み内容とその結果をWebサイトで公開し、安心と信頼から企業価値を高め続けています。
▼サントリーグループのSDGsに関するWebページはこちら
https://www.suntory.co.jp/company/csr/
5-2:ファンケル
正義感を持って世の中の「不」を解消しよう
化粧品やサプリメントを手掛けるファンケル。この創業理念は、化粧品の品質が悪く、肌トラブルが問題になっていた1980年に「添加物をいっさい使わず、使う人の肌を美しくする本物の化粧品を届けたい」と、ファンケルを創業したときから大切にされている想い。
そしてファンケルは2018年に「サステナブル宣言」を策定しました。
ファンケルグループ「サステナブル宣言」
未来を希望に
ファンケルは「正義感を持って世の中の『不』を解消しよう」という創業理念に基づき、地球環境、社会課題など「未来への不安」に立ち向かい、ステークホルダーとともに「希望」をつくります。
現在と未来に生きる人々の笑顔のために、持続可能な社会を目指します。
「未来への“不”安」を解消することを宣言し、4つの項目へ重点的に取り組む方針を固め、それぞれへの取り組みを進めています。
ファンケル4つの重点テーマと取り組み内容
環境を守る
・太陽光パネル設置などによる温暖化対策
・環境に配慮した包材(FSC認証紙など)、容器、原料の採用を強化
健康に生きる
・新たな勤務制度や休暇制度などの導入による働き方改革の推進
・機能性表示食品の拡大や自社の強みを活かした健康の研究や製品開発
多様性を認め合う
・男女問わない育休の推奨や障害者雇用などのダイバーシティ推進
・視覚障がい者や高齢者のニーズに向けた製品やサービスの開発と提供
ガバナンスの強化
・コンプライアンスの強化として個人情報・営業秘密管理の強化、広告表現の精査
・株主への配当方針を見直し、業績動向に応じた利益配分かつ安定的な配当を実施
メインの事業に大きく関わる「健康に生きる」テーマ以外にも、商品提供時の包装における環境への配慮や、働く人々の多様性への受容、透明性のある経営などを重視するファンケル。
創業理念の「正義感を持って世の中の『不』を解消しよう」に基づき、経営においても「不」を生み出さない取り組みを実施しています。
▼株式会社ファンケルのSDGsに関するWebページはこちら
https://www.fancl.jp/csr/action.html
5-3:味の素
Eat Well, Live Well.
CMでも有名な「Eat Well, Live Well.」をコーポレートスローガンとする味の素。そのスローガンに続いて設定された理念体系では、グループミッションとして「私たちは地球的な視野にたち、“食”と“健康”、そして、明日のよりよい生活に貢献します」と掲げられています。
人が生きる上で欠かせない“食”に関わる企業だからこそ、その提供にあたっては地球全体を意識したサステナブルな視点が必須。企業理念自体に、SDGsの目的と同様の意味が組み込まれています。
▲引用元:https://www.ajinomoto.co.jp/company/jp/activity/environment/eco/seasoning.html
味の素でもサントリーと同様に、理念に基づいた上で、SDGsに紐づくマテリアリティ(重要課題)を設定。マテリアリティは定期的に見直されており、2020年は以下の11項目に対して取り組みを進めることとしました。
味の素グループのマテリアリティ
・食と健康の課題解決への貢献
・生活者のライフスタイルの変化に対する迅速な提案
・製品の安全安心の確保
・多様な人財の活躍
・気候変動への適応とその緩和
・資源循環型社会実現への貢献
・フードロスの低減
・持続可能な原材料調達
・水資源の保全
・ガバナンスの強化
・グローバルな競争激化への備え
これらのマテリアリティへの取り組み内容と、それがSDGsのどのゴールに貢献するかをWebサイトに詳しく掲載し、自社の活動を公開しています。
▼味の素グループのSDGsに関するWebページはこちら
https://www.ajinomoto.co.jp/company/jp/activity/
5-4:パーソル
はたらいて、笑おう。
グループビジョンに「はたらいて、笑おう。」を掲げるパーソルグループ。以下の「サステナビリティ方針」を固めて、SDGsに対して5つの重点課題を設定し、取り組みを行っています。
サステナビリティ方針
パーソルグループでは、経営理念である「雇用の創造」、「人々の成長」、「社会貢献」に基づき、持続可能な社会を目指して、多様なステークホルダーと連携し、社会課題解決に積極的に取り組んでおります。
2030年に向けて、グループビジョン「はたらいて、笑おう。」を実現する事業活動を推進し、SDGs達成へ貢献していきます。
パーソルの取り組む5つのSDGs重点課題
Goal 4.全ての人に包摂的かつ公正な質の高い教育を確保し、生涯学習の機会を促進する
Goal 5.ジェンダー平等を達成し、全ての女性及び女児の能力強化を行う
Goal 8.包摂的かつ持続可能な経済成長及び全ての人々の完全かつ生産的な雇用と働きがいのある人間らしい雇用(ディーセント・ワーク)を促進する
Goal 9.強靱(レジリエント)なインフラ構築、包摂的かつ持続可能な産業化の促進及びイノベーションの推進を図る
Goal 10.各国内及び各国間の不平等を是正する
全ての企業において、最も重要な“働く人”に関わるパーソル。「はたらいて、笑おう。」は、ただ働く本人が幸せになることだけを指すのではなく、誰かが働くことで影響を受ける全ての人が笑える社会を目指しているとも考えられます。
事業を通して適切な人材を提供することで、間接的にSDGsの17の目標全てに貢献できると宣言しているパーソル。自社独自の取り組みだけでなく、事業を誠実に運営することでSDGsに貢献している、サステナブルな企業と言えるでしょう。
▼パーソルのSDGsに関するWebページはこちら
https://www.persol-group.co.jp/sustainability/index.html
5-5:大川印刷
株式会社大川印刷は情報産業の中核として信頼に応える技術力と喜びを分かち合える「ものづくり」の実現を基本理念とする
基本理念に“喜びを分かち合える「ものづくり」の実現”を掲げる大川印刷。1990年代半ばから環境に配慮した経営に取り組み、2005年には本業を通じて社会課題解決を行う「ソーシャルプリンティングカンパニー」というビジョンを掲げています。
▲引用元:https://www.ohkawa-inc.co.jp/2017/10/28/sdgs/
2017年からは本格的にSDGs経営へと舵を切り、それ以降SDGsを経営方針の中核に定めています。
基本理念にある通り、事業を運営することが多くの人にとっての喜びにつながるよう、印刷業に欠かせない用紙やインク、配送に至るまでの環境負荷を年々低減。2020年現在、関東では唯一再生可能エネルギー100%での印刷を達成し、環境経営に努めています。
▼大川印刷のSDGsに関するWebページはこちら
https://www.ohkawa-inc.co.jp/tag/sdgs/
6:最後に
様々な情報を調べていると、SDGsにゼロから取り組むことが難しく思えてしまうかもしれません。しかしSDGsは、これまで日本が伝統的に取り組んできた社会貢献活動と根本は同じ。まずは企業理念と17のゴールを照らし合わせ、自社の理念に沿う項目から始めれば良いのです。
今回ご紹介した以外にも、多くの企業がSDGsへの取り組みを実施しています。外務省のWebサイトでは、17それぞれの目標ごとに、取り組みを行う企業が紹介されています。
これから行う活動の参考に、ぜひ一度ご覧ください。
▼外務省:JAPAN SDGs Action Platform 取組事例
https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/sdgs/case/index.html
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