今回お送りするのは、私たちパラドックスが実践する目標の立て方。パラドックスでは毎年、年度始めに各々が目標を立て、1年かけてみんなで目標を達成していきます。この記事では、私たちの中で長らく受け継がれてきた目標達成ノウハウを解説します。
ただ闇雲にタスクを並べるのではなく、ポイントを抑えることで、望む未来へ向けた目標立てが可能になるはずです。一緒に、頑張っていきましょう!
1:向かう先のない目標は失敗する
具体的に目標を立てる作業をする前に、ひとつ、知っておいてほしいことがあります。それは、上手くいく目標と上手くいかない目標は、ハッキリと特徴が分かれるということです。
これまで目標を立てて挫折した経験はありませんか?それは、目標が高すぎるからでも、自分が怠けたからでもありません。そもそも失敗しやすい目標を立ててしまっているのが問題なのです。
目標を達成するために必要なことは、達成する精神力ではありません。目標の立て方が間違っているから、失敗しやすいのです。(絶対に達成できる小さな目標だけを立てましょう、という話ではありません)
1章では、上手くいく目標と上手くいかない目標の違いについて、解説していきます。
1-1:目標の良し悪しを決めるのは、「指針」の有無
達成しやすい目標とは、自分の理想像やありたい姿などの、指針に基づいた目標のこと。反対に失敗しやすい目標とは、指針のない目標です。
身近な例で考えてみましょう。
「今年は5kg痩せる!」といった目標は、どうでしょうか。よくある目標ですよね。しかし実はこれ、失敗しやすい目標なのです。「5kg痩せる」には、そもそもなぜ痩せたいのか、自分がどうあるのが理想かがありません。
必要なのは、「5kg痩せる」のその先です。理想とする体型があるのか、病気なく健康でいたいのか。そもそも痩せるのが目的というよりは健康的な生活スタイルがほしいのかも?なんて、気づくこともあるかもしれません。あくまで大切なのは、あるべき姿を考えることです。痩せる数値は手段でしかないのです。
1-2:BeingとDoingを使い分けてみよう
前の項で挙げた、理想像やありたい姿となる指針と、それに基づいたやるべきこと。どちらも「目標」なのですが、明確に異なるものです。パラドックスでは前者を「Being」、後者を「Doing」と呼んでいます。
Beingは、指針。簡単にいえば、自分がどうありたいかです。すぐに達成できる姿でなく、将来的に目指していきたい理想とも言えます。Beingを設定する具体的な手法は、3章でご紹介します。
Doingは、Beingとは対象的に、具体的な行動やタスクとして表すことができます。比較的短〜中期的に行うこと。毎日のルーティンとなるものもここに含まれるかもしれません。Doingの考え方については、4章で詳しく解説をしていきます。
ポイントは、このふたつの違いを意識して、使い分けることです。自分が立てている目標は、目の前のことだけで終わっていないか。逆に広すぎる理想を掲げすぎて、どんな努力をすべきか迷子になっていないか。BeingとDoingを意識することで、目標立てと、達成の道筋は明確になります。
BeingとDoingの違い
Being:どうありたいか。自分の理想の姿。
Doing:何をするか。比較的短〜中期的な、具体的にやるべき行動やタスク。
2:目標立ては、Beingから始めよ
それではそれぞれ、目標を立ててみましょう……その前に。覚えておいていただきたいことがあります。
目標を立てるには、必ずBeingから始めること。そのBeingをベースに、Doingを考えていく、ということです。
Doingから始めた目標は、それぞれがバラバラになってしまいがちです。○件受注する、週○回自炊する、本を読む、後輩の育成に力を入れる。それ全部やってどうなりたいの?が、見えてこなくなってしまいます。
先に、自分がどうありたいのかを考える。その未来に向かうために、具体的には何をするべきなのかを考える。この順番こそ、目標を立てるのにいちばん重要なポイントです。
3:Being=want×can×must
Beingを形づくるのは、大きく3つの要素。「want/can/must」です。それぞれは、次のようなものになります。
want:やりたいこと。自分がやっていて楽しいこと、好きなこと。
can:できること。他の人より得意なことや嫌じゃないこと。
must:やるべきこと。仕事で期待される役割や人のためになることなど。
自分にとってのwant/can/mustをそれぞれ考えてみましょう。そして、その交点にあるのが、Beingです。
※パラドックスでは、この交点を「Will(意志)/志」と表現しています
おすすめは、want→can→mustの順で埋めることです。自分の好きなこと、身近なことから出発したほうが、比較的描きやすいと思います。(しかしもちろん、自分のやりやすいやり方があればそれでOK)。
紙とペンを用意して、図を埋めるような形で一緒にやってみましょう。
今の自分を客観的に言語化するのが得意な方は、3-1から。自分を言語化するのが苦手だなと感じる方は、先に3-2を読んでみてください。
3-1:いまの自分、から図を埋めてみよう
まずは、want。自分のやりたいことや好きなことを考えてみます。日常生活や趣味の延長、仕事の中で楽しい瞬間から、書き出してみます。
つぎに、can。得意なことを考えてみます。他の人の嫌がる単純作業が実は得意、とか。アイデアを出す仕事ではいつも褒められる、なんてのもいいですね。
この時点で、want×canが見えてきます。ここに見えるのが、自分が楽しめて、かつ、競争力の高いことです。
そこへmustを追加していきます。会社ではこんな役割を任されているとか、もう少し広く、社会や人のためになることだと考えている内容でもいいかもしれません。
want/can/mustの全てが埋まりましたか?そうしたら、その交点にあるものを考えてみましょう。ポイントは、どうあるかが見えること。何になるか(職業名や職種名)、ではありません。抽象的でOKです。ちょっと難しい作業ですが、頑張って言語化します。これが、あなたのBeingです。
※ワークシートは下記よりダウンロードできます。
want:can:must_worksheet
3-2:過去を振り返りwant/can/mustを探す
意外と自分のことを客観的に分析するのは、難しいものです。そんなときは自分の過去の行動や経験、そのときの気持ちを考えてみることで、want/can/mustを見つけていく方法もあります。
図のようなモチベーショングラフを使っていきます。
(記入例)
※ワークシートは下記よりダウンロードできます。
motivation-graph
生まれてからこれまでの、モチベーションを折れ線グラフにしてみます。どんなときが転機だったか、モチベーションが低迷したのはどんな時期だったか、思い出しながら書いてみてください。
それができたら、山の部分と谷の部分へ注目しましょう。上昇・下降のきっかけを考えてみてください。そこで見えてくるものが、転機です。
転機に関して、なぜそれが自分の中で大きな経験なのか、考えてみましょう。人に喜ばれて嬉しかったから?今までにない成果を上げて驚かれたから?それがwantへつながります。
成功も挫折も振り返ってみると、canやmustも見えてきます。どんな強みや特性があったから成功したのか。その経験を大切に思えるのは、自分がどんなものに価値を感じているからなのか、考えてみてください。
<3-1をまだお読みでない方は>
want/can/mustが見えてきたら、そのまま3-1へ。3つの要素の、交点にあるものを言語化し、Beingを設定します。
4:Doingはカテゴリーを分けるのがコツ
Beingを設定できたら、Beingへ向かうため具体的に何をしていくべきか。Doingを考えていきます。
ここでは次のようなシートを使ってみましょう。これはパラドックスの社員が目標立てをする際、実際に使っているシートです。
※ワークシートは下記よりダウンロードできます。
mokuhyo_worksheet
パラドックスでは、大・中・小3つにカテゴリわけをして、シートを埋めています。
大カテゴリは、Beingに向けて今年(あるいは今期)目指すべきことを書いてみます。Beingで掲げた自分と、いまの自分とのギャップを埋めるために、今年することです。1年かけて達成することなので、ある程度抽象的でも大丈夫。3つ、4つ、異なる視点から考えてみましょう。対社外/対社内、インプット/アウトプット、定性的/定量的などです。
中カテゴリには、大カテゴリに書いた目標を、もう少し具体化・細分化します。大カテゴリのDoingを、いくつかに分けてブレイクダウンしたものが中カテゴリです。
最後に小カテゴリ。これは中カテゴリのDoingを、短期的で具体的な行動へ落とし込んだものになります。毎日これをやる、と決めることや、わかりやすい数値目標はここになります。
ここまで来たら、お疲れ様!目標立ては、一旦完成です。
毎日あなたが行うのは、小カテゴリのDoingでOK。それをやっていれば、中カテゴリ大カテゴリのDoing、そしてその先のBeingへ紐付いているため、「何のためにやっているんだっけ?」と迷子になったり嫌になったりすることがありません。「その先」は定期的に思い出しながら、日々のやるべきことを達成していきましょう。
5:目標立て&目標達成を上手に行うためのTips
さてここからは、知っておくと目標立てがしやすくなったり、目標達成に向けた行動がしやすくなったりする、役立つ情報たち。必要に応じて、取り入れてみてください。
5-1:SMARTを意識
これは一般的によく言われることですが、目標設定にはSMARTが大切だとされています。SMARTとは、以下のことの頭文字をとったものです。目標の中でも、Doingに関するものだと考えてみてください。
目標設定のSMART
Specific(具体的に):
明確で具体的な表現と言葉
Measurable(測定可能な):
上司が見ても、本人が見ても、達成/未達成が判断できる
Achievable(達成可能な):
現実的に考えて、到底無理なものにはしない
Related(経営目標に関連した):
仕事の目標であれば、いまの仕事とある程度関連したものを。会社員の方であれば、所属する企業の理念やミッションも意識するとベター
Time-bound(時間制約がある):
いつかは……ではなく、いつまでに何を、と期限を意識する目標に
5-2:大谷翔平選手の曼荼羅
こちらは今回紹介したものとは異なりますが、とても有名な目標管理のためのシート。大谷翔平選手が使用していたと言われる曼荼羅チャートです。よりシンプルにやるべきことを視覚で理解できそうなのが特徴です。
意外と簡単に、Doingのブレイクダウンをすることができそうです。使い方は以下の3段階。
曼荼羅チャートの使い方
① 9×9マスの真ん中に大きな目標を書く(大カテゴリのDoing)
② 真ん中のマスを囲む8マスに、目標のために必要なことを書く(中カテゴリのDoing)
③ 8つの中カテゴリDoingのために必要な具体的行動目標をその外側に書く(小カテゴリのDoing)
5-3:目標は人と共有しよう
目標を誰かと(企業なら組織内で)共有するメリットは、大きくふたつあります。
ひとつは、誰かと一緒に報告し合いながらの方が挫折しにくいから。こちらはイメージしやすいですね。もうひとつは、目標を共有することで、目標に向けたチャンスを組織内で与え合うことができるからです。
自分のやりたいことや得意なこと、やるべきだと考えていることを、誰かに知っておいてもらう。そうすると、「そういえばあの人、こういうのやってみたいと言っていたな」と、チャンスが舞い込んでくるかもしれません。目標に向けた有効な機会をみんなでつくりだすことで、それぞれの目標達成へ向けたスピードは高まっていきます。
5-4:定期的に振り返りをしよう
当たり前ですが、目標は立てて終わりではありません。そして、年の最後に「できた/できなかった」の2択で終わるものでもありません。目標には、振り返ることが大切です。
おすすめの頻度は、月1回。できていることと、できていないことを振り分けます。できていないことは、なぜできていないか原因を探り、必要なことを考えましょう。振り返りの際に、「この目標は適切でない」と気づいた場合には、無理に目標を掲げ続けるのではなく、その時々に合わせて適切な方向転換をしていく判断も有効です。
5-5:使えるツールは使ってみよう
正直なところ、目標管理シートを毎日広げて見返すのって、ちょっと億劫ですよね。
そこで、1日1ページの白紙がある「ほぼ日手帳」のようなものを使ったり、タスク管理アプリを使ってみたり。ルーティンは、カレンダーアプリで毎日決まった時間に設定してしまって、リマインドしてもらうのも手ですね。
目標は目に見えないところにしまっていても、忘れていくものです。日々意識できる形のものを、探してみましょう。
6:最後に、重要ポイントのおさらい
ちょっとやってみようかな、と思ってくださったあなたのために、パラドックスで使用している目標シート(「有言実行シート」と私たちは呼んでいます)をダウンロードできるようにしました。必要に応じて、ぜひ使ってみてください!
※ワークシートは下記よりダウンロードできます。
all_worksheet
そして最後に、大事なポイントのおさらいです。
しっかり目標を立ててありたい自分へ向かっていける、よき2021年にしましょう!
目標の立て方 ポイント
・目標はBeing→Doingの順で考える
・Beingはwant×can×mustから成る、ありたい姿
・DoingはBeingに向かうためにやるべきこと。カテゴリに分けて考える
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