「もっと従業員のモチベーションを高めたい」「従業員にとって良い風土づくりに取り組みたい」と考える経営者や人事担当の方も多いのではないでしょうか?
従業員のモチベーションや働きやすい風土づくりは、企業にとって業績に関わる部分になるので、しっかり取り組みたいですよね。
では、従業員のモチベーションや良い風土づくりを行なっていくためには、具体的にどうすれば良いのでしょうか?
約18年以上、様々な企業の風土づくりの一環であるインナーブランディングなどに携わってきた私たちパラドックスでは、「インナーブランディングは、マズローの欲求を下から満たしていくことが大事」だと考えています。
マズローの欲求とは、人間の欲求を5段階で構成されていることを示した説であり、一番下の生理的欲求から上に向かってクリアすることで、最終的に自己実現に達するという理論です。
今回は、企業のインナーブランディングの参考にしたい「マズローの欲求5段解説を活用した考え方」について、私たちパラドックスの経験・考えをもとに解説します。
経営者や担当者の方にとって課題解決のヒントになれば幸いです。
1:マズローの欲求5段階説とは
マズローの欲求5段階説とは、アメリカの心理学者であるアブラハム・マズローによって考案された人間の欲求を5段階のピラミッド構造で表す心理学理論です。
人間の欲求は「生理的欲求」、「安全の欲求」、「社会的欲求」、「承認欲求」、「自己実現欲求」の五段階に分けることができ、それぞれの欲求が積み重なって1つのピラミッドを構成しています。
最下層の「生理的欲求」から、一段づつ欲求を満たしていくことで、最終的には最高位の「自己実現」に向かっていくという理論になっています。
それぞれの欲求の内容については、次の項目で詳細をご説明しますので、続いてマズローについて見ていきましょう。
マズローについて
アブラハム・ハロルド・マズローは、アメリカ合衆国の心理学者です。
ユダヤ系ロシア人移民の長男としてニューヨーク・ブルックリンで1908年に誕生しました。
大学で心理学を学び以後心理学者として研究を重ね、1943年に「人間の同期に関する理論」の中で、欲求5段階説を発表。従来の心理学では避けてきた、より人間的なものの研究に道を開いた重要な人物としても知られています。
マズローの欲求5段階説は心理学のみならず、経営学、看護学など他の分野でも言及されている考え方です。
2:5つの欲求の意味と内容
マズローの欲求5段階説は、下層の生理的欲求から上に向かってピラミッド状の序列になっていることが特徴です。
では、それぞれの欲求の意味と内容について見ていきましょう。
①生理的欲求
②安全の欲求
③社会的欲求
④承認欲求
⑤自己実現欲求
①生理的欲求
生理的欲求とは、「生きていくために必要な基本的・本能的な欲求」のことです。
人間の本能である「食欲」「睡眠欲」「排泄欲」などが当てはまり、これらの活動が満たされなければ生命維持が不可能になります。
一般的な動物がこのレベルを超えることはありませんが、人間がこの階層に留まる状況は一般的ではないでしょう。ただ、例えば仕事が夜遅くまで続くことが常になっており、睡眠が十分にとれていない、食事がとれない、という状態になってしまっている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
次の階層に進むために、まずは最下層の「生理的欲求」が満たされる必要があるので、上記のような状態はいますぐにでも、解決したいところですね。
②安全の欲求
安全の欲求とは、「心身ともに健康でかつ経済的にも安定した暮らしをしたい欲求」です。
身の危険を感じる状況から脱して、少しでも安心できる環境で暮らしたいという欲求につながります。
成長発達段階にある幼児は、この欲求が顕著に見られますが、大人になるにつれて自然と次の段階へと欲求が昇華されるでしょう。
③社会的欲求
社会的欲求は、「友人や家庭、会社から受け入れられたい」という欲求のことです。
集団への帰属や愛情を求める欲求であり、「帰属欲求」とも表現されます。
この欲求が満たされない状態が続くと、孤独感や社会的不安を感じやすくなり、鬱に陥るケースもあるのです。
人間には何らかの社会や集団に所属して安心感を得たいという欲求があり、自分を受け入れてくれる親密な他者の存在が不可欠だと言えるでしょう。
④承認欲求
承認欲求は、「他者から尊敬されたい、認められたい」という欲求こと。
地位を求める「出世欲」もこの欲求に当てはまり、③までの外的な欲求ではなく、内側の心の欲求を満たしたいという考えに変わります。
承認欲求を獲得することは、行動のモチベーションになり、自分のポテンシャルへ気づくきっかけや、成長の原動力になっていきます。
承認欲求には、低位と高位の2つに分類されます。
- 低位の承認欲求:他人からの賞賛や注目、尊敬によって満たされる
- 高位の承認欲求:自己尊重や意識づけ、自立性を得ることで満たされる
低位は他人からの賞賛などによって満たされるレベルのことですが、高位のレベルになると他人からの評価よりも自分自身の評価を重視する傾向になります。
この承認欲求が満たされず妨害されると、劣等感や無力感などの感情が生じます。
⑤自己実現の欲求
自己実現の欲求は、「自分の世界観や人生観に基づいて『あるべき自分』になりたいと願う欲求」のことです。
自分にしかできないことを成し遂げたい、自分らしく生きていきたいという欲求であり、理想の自己イメージと一致していることを指します。
マズローの欲求5段階説の中の最高位であり、この欲求だけは今までの段階の欲求とは質的に異なり、①〜④を満たすことで実現が可能とされているのです。
“第6の欲求が存在する?”
マズローの欲求5段階説では、①〜⑤までの欲求がメインになっていますが、実は6つ目の欲求があると言われています。
これは、マズローが晩年発表したものであり、「自己超越」と呼ばれる段階です。
「自己超越」は、見返りを求めず、ただ目的達成のために没頭することを指し、他社や社会など自分の外にあるものに対して貢献したい欲求のこと。
マズローいわく、このレベルに達するのは全人類の2%ほどと言われており、この領域に達するケースは非常に稀だとされています。
3:マズローの5段階欲求と企業の組織の風土づくりの考え方
マズローの5段階欲求の考え方は、企業の組織の風土づくりに参考にしていきたい考え方でもあります。
「インナーブランディング」「風土づくり」と聞くと、会社側から従業員に対して、理念を浸透させていくことが思い浮かぶ方も多いかと思います。しかし、会社側が従業員に対していくら熱心に理念を伝えたところで、従業員のほうで受け入れる体制が整っていなければ浸透していきません。
また、理念が浸透していても、従業員の欲求が満たされておらず、不満ばかりが募ってしまっている状態では、どこかで無理が生じてしまいます。組織の風土を見直すためには、この5段階欲求について、自分たちの立ち位置・状態を確認しておくことも大切です。
ここでは、マズローの5段階欲求を活用した私たちパラドックスの考える風土づくりについてご紹介します。
その前に、インナーブランディングについて詳しく知りたい方は、こちらの記事もどうぞ。
3-1:低次の欲求から順番に満たしていくことが大事
企業の風土づくりは「インナーブランディング」の一環に当たりますが、従業員に理念を伝えるだけでは企業理念の理解や従業員自らが行動に移せるようになるわけではありません。
インナーブランディングの理想の形は、企業理念及び会社の志(ミッション)を従業員一人ひとりが理解し、個人の自己実現と重ねていくことです。
これを実現するためには、まずはマズローの欲求5段階説の下層から満たしていく必要があります。
まずは、従業員一人ひとりが自分自身の安心・安全を感じ、社会的欲求(=帰属欲求)を満たす環境の中で信頼感が持てていることが重要です。
この環境が整わなければ、他人のことまで気を配ることはできず、人のアドバイスなどを受け入れる状態になりません。
これは「心のコップ理論」と言われ、下を向いたコップに水が入らないことと同じで、むやみに「企業理念だ!」といっても受け入れてもらうことができないのです。
マズローの欲求5段階説のように、生理的欲求→安全の欲求→社会的欲求→承認欲求が満たされることで、はじめて心のコップは上向きになり、自己実現へと向かうことが可能になります。
3-2:組織の風土作りに大きく関わる①〜④を満たす取り組み
先程の項目でもお伝えした通り、組織の風土づくりにはマズローの欲求5段階説の①〜④の部分が大きく関連しています。
それぞれの欲求段階に応じた取り組みを行うことで、次のステップに進むことが可能です。
まずは、自分たちの組織が①〜④のどこにいるのかを知り、その段階に合わせた風土づくりに取り組んでいきましょう。
①生理的欲求を満たすための取り組み
例えば、残業で長く働くことが評価される環境ではなく、メリハリをつけて働く取り組みに対して褒められる雰囲気を定着させるなど、健康を守る取り組みによって生理的欲求を満たすことにつながるでしょう。
食事と睡眠をしっかりとる呼びかけだけでなく、理念の中に社員の心と体の健康を守る言葉を入れることで、社員がお互いに呼びかける行動も風土づくりでは有効な方法です。
②安全の欲求を満たすための取り組み
マズローの欲求の中では、物理的な安心や安全にフォーカスしていますが、組織としての秩序やわかりやすい制度による安心感も重要になります。
例えば、手前味噌ではありますが、私たちパラドックスでは、理念を実行している人が評価される仕組みがあり、評価シートも理念をもとにわかりやすく項目立てられていることが特徴です。
パラドックスの使命である「志の実現に貢献する」という言葉を分解して、必要な姿勢やスキルを細かく項目に分け、それらを満たしているかで評価が決まります。
このような評価方法を取ることで上司による評価に個人差が出ることがなく、納得度の高い評価ができるのです。
③社会的欲求を満たすための取り組み
帰属欲求とも言われる段階ですが、企業中では特に社員の孤立に注意が必要です。
チーム体制が整っていても実際は孤立してしまっている場合もあるため、メンターなどを設けて、お互いの信頼関係が強くなっていくように、定期的にコミュニケーションがとれる時間を設けるなどの取り組みも求められるでしょう。
また、経営者層との関わりとしては、話し合う機会を設けることはもちろん、他にも日報や社内ラジオなどを通して、上の立場の人間が、「自分たちのありたい姿」を社員に向けて発信し続けることで、従業員側にも「自分たちのことを気にかけてくれている」との安心感にもつながります。
上の立場からの発信は風土づくりを行う上でも重要な取り組みになり、組織全体の意識づくりにも影響するでしょう。
④承認欲求を満たすための取り組み
組織に属することで出てくる承認欲求ですが、むやみに褒めることが正解ではありません。企業理念と価値観に沿って承認することが大切です。
企業が向かっている方向のベクトルと個人の努力のベクトルが揃ったことを承認することで、双方のベクトルが進み、同じ方向に進むことができます。
パラドックスでは、自分の強みややりたいことといった自己分析の結果を組織内で共有し、互いに強みを活かし合う方法を考えたり、日報の中で各記事に対して上司部下関係なく、互いに承認や応援を送り合ったりする制度を導入しています。そのときにも、企業理念の中のこのスピリットを実践できているね、など、理念に沿った褒めを心がけており、企業の推奨する行動と個人の行動の接点を感じられるようにしています。
また、メンバーのことを褒め合うことで、お互いの成長になり、生産性の向上にもつながります。
ここまでお話してきたように、会社全体で欲求を満たすための取り組みを行えるといいですね。
3-3:「自己実現の欲求」は組織と個人のミッション・ビジョンに重なりがあることが大切
ここまでマズローの欲求5段階説と風土づくりについてご紹介してきましたが、まずは組織の立ち位置を把握することが大切です。
忘れてはいけないことは、マズローの欲求5段階説は、下の階層から満たしていくことが前提。
いきなり高次の欲求から満たそうとせず、一つずつ丁寧に進めていくことで、最高位の「自己実現」に辿り着くことができます。
自己実現の欲求は、組織のミッション・ビジョンと個人のミッション・ビジョンが同じ方向を向いていることが大切になります。
同じ方向を向くためには、①〜④のレベルを順番に満たし、従業員の心のコップが上を向いている状態を作り出すことが重要です。
組織のミッション・ビジョンについて詳しく知りたい方は、こちらの記事もどうぞ。
4:まとめ
今回は、企業のインナーブランディングの参考にしたい「マズローの欲求5段解説を活用した考え方」について、私たちパラドックスの経験・考えをもとに解説してきました。
インナーブランディングは理念を覚えさせたり、行動を強制させるものではありません。
マズローの欲求5段階を満たすことで、従業員と企業の自己実現につながるのです。
この記事の内容が、企業の風土づくり、インナーブランディングを強化したいと考えている経営者や人事担当の方にとって、役に立つ内容になると幸いです。
自己肯定が大切だと気付きました。
自分を大切にする事で周りを大切にできる、そんな原点に立ち返ることができました。
ありがとうございます^ ^
自分の内面を良く見つめられたと感じました。
自分を大切にする事で周りの人が幸せになる、それは笑顔で過ごしたいと言う目標に繋がりますね。
ありがとうございます^ ^