ニーズとシーズとは?マーケティングに欠かせない2つの視点を解説

マーケティングにおける視点として対比されることの多い「ニーズ」と「シーズ」ですが、それぞれの重要性やメリット・デメリットまで深く理解できている方は少ないのではないでしょうか。

簡単に言うと

◎ニーズとは、商品やサービスに対して顧客が求める潜在的な欲求のこと

◎シーズとは、企業サイドが顧客に提供できる、商品の価値や強みのこと

この記事では、2つの言葉を正しく理解するとともに、結局のところ、ニーズとシーズ、どちらを重視すべきなのかという点についても、マーケティング1.0~4.0の歴史を振り返りつつ解説していきます。

先に結論を言ってしまうと、大ヒット商品を生み出したいならば、ニーズもシーズもどちらも念頭に置いた商品開発が必要です。現代ではさらに、ニーズ・シーズだけでなく、ブランディングや売り方も重要視すべきといえます。

ニーズ・シーズの違いを理解し、両立させた商品開発を実現させたいという方は、ぜひ最後までお読みいただき、自社のマーケティング戦略策定にお役立てください。

1:ニーズ・シーズとは何か

ニーズとシーズ、それぞれについて詳しく解説する前に、まずはざっくりと全体像を把握していきましょう。

1-1:ニーズとシーズの違い

ニーズとシーズは、新しい商品やサービスを企画・開発する時の視点マーケティング発想の仕方として使われる言葉で、相反する対照的な考え方となります。

簡単に違いを説明すると、「ニーズ」は顧客が商品に対して求めるもの、「シーズ」は商品の持つ価値や強みといえます。

◎ニーズ(消費者視点)

 顧客が商品やサービスに対して求める、潜在的な欲求

 

◎シーズ(生活者視点)

 企業サイドが顧客に提供できる、商品の価値や強み

なお、「ニーズ」と一緒によく議論される「ウォンツ」は、ニーズよりも具体的な商品やサービスそのものをいいます。

1-2:ニーズ志向とシーズ志向の違い

顧客のニーズを追及して商品やサービスを作ることを「ニーズ志向」、自社の技術やアイデアを武器に新たな商品やサービスを作ることを「シーズ志向」といいます。

◎ニーズ志向

<メリット>
需要があるため売れる可能性が高い

<デメリット>
類似サービスがありがちで、市場を独占しづらい

 

◎シーズ志向

<メリット>
独自の商品やサービスなので、他社と競合しない

<デメリット>
消費者が興味を持たなければ、売上につながらない

なお、「ニーズ志向」「シーズ志向」と似た言葉に「マーケットイン」「プロダクトアウト」という言葉があります。

マーケットインは、顧客のニーズを汲み取って製品開発を行うことを指し、ニーズ志向のモノづくりを意味しています。逆にプロダクトアウトは、企業側が提供したいもの・提供できるものを基準に商品開発することで、シーズ志向の考え方といえます。

商品開発の基礎を知りたい方は「現代社会で本当に愛されるための商品ブランディングの思考法と実践法」の記事もおすすめ

マーケティングを進める時にニーズとシーズどちらかを重視すべきかについては、「5:ニーズとシーズはどちらが重要なのか」の章で詳しく解説します。

2:ニーズとは?ニーズ志向のメリットや事例も紹介

ここからは改めて、「ニーズとは何か」「ニーズ志向とは何か」を深く理解するために、事例やメリット・デメリットを交えながら解説していきます。

2-1:ニーズとは?ニーズ志向とは?

ニーズ(Needs)とは、要求・需要・必要という意味を持つ英単語であり、マーケティング用語として使われる場合には顧客が商品やサービスに対して求める潜在的な欲求を指します。

例えば、「休日にリラックスしたい」「家事でラクをしたい」「カメラより気軽に写真を撮りたい」といった欲求がニーズです。

ニーズと似ている言葉に「ウォンツ」がありますが、ウォンツはより具体的な商品やサービスを指します。例えば先ほどのニーズと対応させると、「ソファが欲しい」「食器洗い機が欲しい」「カメラ付きスマホが欲しい」となります。

◎ニーズ

休日にリラックスしたい
・家事でラクをしたい
・カメラより気軽に写真を撮りたい

 

◎ウォンツ

ソファが欲しい
食器洗い機が欲しい
カメラ付きスマホが欲しい

市場や消費者が欲している潜在的なニーズを起点として商品開発をするアプローチを「ニーズ志向」といいます。

2-2:ニーズ志向で成果が上がったマーケティング事例

出典:ソニー株式会社「商品のあゆみ」

消費者のニーズを掘り起こして大ヒット商品を生み出した事例としては、ソニーのウォークマンが有名です。外で音楽を聴くためには大きなステレオラジカセを持ち出すしかなかった時代、1979年に初代ウォークマン(カセットテープ)は発売されました。コンパクトに音楽を持ち歩けるウォークマンは若者に大ウケし、初回生産分をわずか2カ月で完売した後、6カ月に渡って注文が殺到する人気商品となりました。

パナソニックのパソコン「レッツノート」は、ターゲットニーズにピッタリ合う商品開発を行った結果大成功した事例です。PC市場で後れを取っていたパナソニックは、法人需要に目を付けて、外回りの営業マンをターゲットに絞って開発を行いました。軽さの実現と長時間駆動・耐久性にこだわったノートパソコンを作りました。ターゲットのニーズにしっかり応えたレッツノートは2013年には日本市場のシェアを38%も取る大ヒット商品となりました。

その他、今では当たり前のカメラ機能付きスマートフォンも「カメラを気軽に持ち歩きたい」というニーズ発想を取り入れたものです。現在ではスマートフォンのカメラの高画質・高機能化が進み、アナログカメラは完全に市場シェアを奪われた状態となっています。

2-3:ニーズ志向のメリット

すでに存在している顧客からの需要に応えるニーズ志向は、需要が途切れる心配がないため、売れる可能性が高いというメリットがあります。

また、すでにそのニーズに対応した商品やサービスが世に出ていたとしても、それを超える高機能・低価格のものを出せば、顧客の心を掴むことができます。

2-4:ニーズ志向のデメリット

ニーズ志向のデメリットは、他の企業も顧客のニーズを狙った商品開発を行うため、似たような競合商品がすでに出回っていることが多く、市場を独占することは難しい点です。

場合によってはすでに成熟しきっている市場もあり、こうした場合は他社商品との差別化やアプローチ方法の変更などの工夫が必要です。

3:シーズとは?シーズ志向のメリットや事例も紹介

次に、「シーズ」の意味と「シーズ志向」の特徴・メリット・デメリットを解説していきます。

3-1:シーズとは?シーズ志向とは?

シーズ(Seeds)とは、「種」のことです。企業が持っている「種」、つまり、企業が持つ独自のノウハウや技術力、素材、企画力、アイデアなどを指します。

また、シーズ志向とは、そのシーズを生かして新しい商品やサービスを生み出そうとするアプローチ方法をいいます。自社の技術をどう生かせるかを考えて、市場にまだ存在していない新しい価値を生み出すという考え方です。

3-2:シーズ志向で成果が上がったマーケティング事例

出典:Apple公式サイト

シーズ志向に基づいた事例として有名なのが、Apple社の創設者であるスティーブ・ジョブズが行った商品開発です。

ジョブズは「消費者はニーズを理解していない。こちらから消費者にニーズを教えるのだ」という考えを持っていました。つまり、ニーズに合わせて後追いで商品を開発するのではなく、今までは世の中に無かった画期的な商品を消費者に知ってもらい、「それが欲しかった!」と思わせるモノづくりの姿勢でiPodやiPhone などの大ヒット商品を次々と生み出しました。この場合の「シーズ(種)」は、ジョブズ自身が持つ発想力や開発力です。

この事例では、消費者自身も意識していない潜在的なニーズが、画期的な商品を通じて顕在化したという結果につながりました。結局のところ、いくら「シーズ」の技術や素材が素晴らしくても、そこに顕在的もしくは潜在的なニーズがなければヒットにはつながりません。シーズはニーズありきであることが前提となります。

また、自社の持つ技術力を転用し、従来の分野と違うドメインに進出するマーケティングもシーズ志向といえます。例えば富士フイルムは、主力分野であるカラーフィルム事業が衰退する中で、独自に培ってきた高機能材料や3次元構造化技術をヘルスケア分野に転用しました。現在ではヘルスケア事業は同社の柱になっています。

3-3:シーズ志向のメリット

シーズ志向で生み出された商品やサービスは、今まで市場に存在しない独自の価値を持っているため、うまく顧客のニーズを掴むことができれば大ヒットし、市場を独占できる可能性を秘めています。競合もいないため、価格競争に巻き込まれることもありません。

3-4:シーズ志向のデメリット

シーズ志向のデメリットは、いくら新しい価値を提供するモノを生み出せたとしても、それが顧客のニーズと合致しなければ売り上げにつながりにくいということです。高度な技術を駆使して作られた商品があっても、それが欲しいモノでなければ顧客は見向きもしないでしょう。

シーズ志向で生み出された商品やサービスが売れるためには、顧客の潜在的なニーズを満たすものでなければならないのです。

先ほどの事例で紹介したジョブズの例のようにうまく成功するとは限らないため、ほとんどの企業ではニーズ志向を中心としたマーケティングが行われているのが事実です。

4:マーケティングの歴史とニーズ・シーズの重要性

これまでのマーケティングの歴史を振り返りながら、その時々のニーズ・シーズの重要性について解説していきます。

4-1:マーケティング1.0:シーズが重視された時代

マーケティングという概念が誕生した戦前・戦後(1960年代ぐらいまで)はマーケティング1.0の時代とされています。顧客の需要を満たすだけの供給が間に合っていなかったため、「製品(商品)を大量生産すれば売れる」という時代です。

マーケティング1.0は「製品中心」「製品志向」であり、機能的に価値があるものを作りさえすれば売上が上がる時代で、どちらかというとシーズに重きが置かれていました。次々と革新的な商品やサービスが誕生し、顧客ニーズが掘り起こされた時代です。

4-2:マーケティング2.0:ニーズが重視された時代

マーケティング2.0(1970年~1980年代)では、それまでの製品志向から「顧客志向」に変わりました。作れば売れる時代が終わり供給過多に陥ったマーケティング2.0では、顧客が満足するモノやサービスを作ることが重要でした。まさにニーズ志向の考え方にシフトした時代です。

企業はターゲット・マーケティングに力を入れて、顧客が欲している商品を作るようになりました。

4-3:マーケティング3.0~:その他の要素も重視される時代

マーケティング3.0(1990年~2000年代)は、ますます市場に商品が溢れて、企業間競争が過熱した時代です。「価値志向」と呼ばれるこの時代では、商品やサービスそのもの以外の要素、例えば社会貢献や環境への取り組み、企業のミッション・ビジョン・バリューなどが評価される時代です。

個人の価値観や欲求も多様化したマーケティング3.0以降では、ニーズ・シーズに留まらない新しいアプローチ方法も重要となっています。

米国の経済学者フィリップ・コトラーによると、現在はマーケティング4.0に突入しているとされています。マーケティング4.0で重要なのは「自己実現」であり、製品をただ認知してもらうだけでなく、製品のファンになった顧客自らが周りに推奨する仕組みづくりが大切です。

5:ニーズとシーズはどちらが重要なのか

ニーズ志向とシーズ志向それぞれの特徴・メリット・デメリット、そしてマーケティングの歴史は分かっても、「結局のところ、ニーズ志向とシーズ志向はどちらが重要なの?」と疑問に思う方も多いのではないでしょうか。

結論から言うと、どちらかというとニーズ志向が重要であるものの、できれば両立することが望ましいといえます。その理由を解説していきます。

5-1:ニーズ志向だけでは市場の独占は難しい

シーズ志向のマーケティングは難しさが伴うため、ほとんどの企業ではニーズ志向のマーケティングが行われています。ニーズを起点にすればある程度の売上は見込めるため、ニーズの把握はとても重要です。しかし、ニーズ志向だけでは市場を独占するには至りにくいといえます。

すでにニーズがある市場で勝負するには、どうしても低価格路線を目指すしかありません。中国企業のスマートフォンは低価格・高品質を売りに顧客ニーズを獲得し大ヒットしましたが、ここまでの成功事例を生み出せるのはほんの一握りでしょう。

スティーブ・ジョブズは「グラハム・ベルが電話を発明した時、市場調査をしたと思うかい?」という言葉を残しています。顧客ニーズや市場調査に囚われすぎると、後手に回った無難な商品・サービスしか生まれません。革命的なヒット商品を作りたいならば、自社が提供できるシーズ(技術や素材など)を棚卸して、それを活用した新しい価値を提供することが大切です。

5-2:シーズ志向だけでは売上に直結しにくい

「自社の技術を生かしたモノづくりがしたい」「自社にしかできない価値を提供したい」という視点はとても大事であり、革新的な商品やサービスを生み出す土台となります。しかしながら、そこに顧客のニーズがなければ売上は上がりません

先ほどのシーズ志向の成功事例で紹介したアップルの商品開発の例もそうですが、いくらシーズを生かした素晴らしい商品がこの世に出たとしても、それを消費者が欲しがらなければ全く意味がありません。

つまり、シーズ志向で開発した商品やサービスであっても、顧客の潜在的・顕在的ニーズは必ず必要なのです。自社が提供できるシーズと顧客のニーズをマッチングさせ、新しい価値または他社と差別化できる商品・サービスを見つけることができれば、大ヒット商品を生み出せる可能性があります。

ただし、シーズ志向のマーケティングは、世に出してみないと結果が予想できないため、ハイリスク・ハイリターンであることに注意が必要です。シーズ志向でビジネスを進めるには、資金力や先見性が大切です。

5-3:どちらを起点にする場合もニーズ把握が大切

結論としては、ニーズとシーズどちらを起点とする場合にも、やはり顧客ニーズの把握が大切ということになります。

そして、大きな成功を目指すならば、ニーズとシーズどちらも両立したマーケティングが必要です。

6:まとめ

この記事では、「ニーズとは何か」「シーズとは何か」をメインに、その歴史や「どちらが重要なのか」まで解説してきました。

最後にひとつ付け加えるとすると、確かにニーズもシーズもマーケティングにおいて大切ですが、ニーズ・シーズにばかり囚われるのではなく、どのような売り方をしていくかが重要となります。

マーケティング4.0といわれる現代では、商品そのものだけでなく、企業としてのミッション・ビジョン・バリューも見られています。企業イメージをしっかりと顧客に届けて、価値観を共有し続けることが大切です。

当サイト「Visions(ビジョンズ)」では、コーポレートブランディングや商品ブランディングなど、ブランディングに関わるさまざまな記事を配信しています。気になる方は、ぜひ他の記事もお読みいただければ幸いです。

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