リファラル採用とは、従業員の友人や知人を紹介してもらう採用手法のことであり、自社のメンバーがリクルーターとなることで採用後も企業とのミスマッチが起こりにくく、定着率の向上も期待できる採用手法として注目されています。
効率的に採用が行えるというメリットもありますが、このリファラル採用を成功させるためには、社内の協力が必要不可欠になります。
約18年以上にわたり、様々な企業の採用ブランディングに携わってきた私たちパラドックスでは、協力体制をつくり、リファラル採用を成功させるためには、「企業のミッション・ビジョンをもとにしたコミュニケーションを図ること」が大切であると考えています。リクルーターになってもらう従業員一人ひとりに、企業理念や採用戦略の理解・共感をしてもらうことが、積極的な協力や、ミスマッチの減少につながります。
この記事では、リファラル採用を成功させるためのポイントを私たちパラドックスの考えを交えながら、詳しくご紹介します。
リファラル採用をすでに導入している、これから導入を検討している経営者や担当者の方にとって、今回の内容が少しでもお役に立てると幸いです。
1:リファラル採用とは
「リファラル採用」とは、従業員に人材を紹介してもらう採用手法のことです。
リファラル(referral)には、「紹介」「推薦」などの意味があり、「採用、求人」を意味するリクルーティング(recruiting)を掛け合わせて、「リファラルリクルーティング」と呼ばれることもあります。
日本では馴染みが少ない採用手法ですが、アメリカなどではGoogleやFacebookなどのIT企業で導入されており、日本ではビズリーチやメルカリなどのベンチャー企業で導入しているところも多いです。
この採用手法では、従業員に「自分の会社を紹介したい」と思ってもらえるか、が重要になります。
リファラル採用の概要が分かったところで、リファラル採用の特徴とよく似た「縁故採用」の違いについて見ていきましょう。
1-1:リファラル採用の特徴
リファラル採用の特徴は、血縁関係のある方や親族だけでなく、知り合いや友人を自身の企業に紹介するという点。
そして、求人広告を出稿して応募者を待つ採用スタイルとは異なり、従業員全員がリクルーターとなることが特徴です。
紹介者を通して会社への理解を深められるため、採用後もギャップを感じにくく、紹介者が職場にいることで早く馴染めて定着につながりやすいこともメリットです。
1-2:リファラル採用と縁故採用の違い
社員からの紹介と聞いて「縁故採用」をイメージされる方もいるでしょう。
縁故採用はリファラル採用とは別物であり、「採用を前提とした特別な選考があるか」という点で異なります。
リファラル採用と縁故採用の違いは、次の通りです。
- リファラル採用:採用することが前提ではなく、他の採用手法と同じ選考で採用可否を判断する
- 縁故採用:採用することが前提となり、特別な採用選考のステップを設けている
縁故採用は立場を利用した紹介が多く、血縁や親族を自身の会社に紹介する採用手法のことです。
採用することが前提となるため、特別な採用の選考のステップが設けられています。
リファラル採用は、従業員から見て、自社の風土に合うか、必要なスキルを持っているか、などの見立てを経て、紹介者を推薦するのに対し、縁故採用は血縁などの繋がりが重要視される点で違いがあるのです。
2:リファラル採用が注目されている背景
従業員がリクルーターとなるリファラル採用ですが、なぜ注目が高まっているのでしょうか?
リファラル採用が注目されている理由には、以下のような企業の状況・思いが背景にあります。
- 採用競争の激化により人材確保ができない
- ミスマッチによる早期離職の高さ
- 採用コストを削減したい
- 従業員の定着率を向上させたい
採用競争の激化により、求人募集を出しても自社が求めるスキルを持つ人材と出会える可能性が低くなっています。
「待ちの採用」では人材確保ができず、「自ら探しに行く」という攻めの採用である「ダイレクトリクルーティング」の必要性を考え、その一環として導入していることも考えられるでしょう。
また、せっかく採用をしてもミスマッチによる早期退職なども見られるため、自社に合った人材を採用したいとの思いも背景としてあります。
リファラル採用は、ミスマッチによる早期離職をしない人材を採用することで、上記の問題を解決できる採用手法として、多くの企業でも注目されているのです。
3:リファラル採用の3つのメリット
入社後のミスマッチによる早期離職を防げるなど、企業にとってもメリットが大きい「リファラル採用」。
具体的には、以下のようなメリットがあります。
“リファラル採用のメリット
- 採用コストの削減につながる
- 転職市場外の人材も採用できる
- ミスマッチ採用と早期離職の減少
上記の3つのメリットについて、詳しく見ていきましょう。
3-1:採用コストの削減につながる
1つ目のメリットは、「採用コストの削減につながる」ことです。
採用手法には様々なものがありますが、採用コストの相場は以下の通り。
- 求人広告掲載:1人あたり30万円〜
- 人材紹介エージェントの利用:1人あたり100万円〜
求人広告や人材紹介エージェントを利用した場合、数十万円以上のコストがかかります。
さらに、内部コストとして求人広告や人材紹介担当者との打ち合わせ、会社説明会、選考活動なども必要になるでしょう。
しかし、リファラル採用の場合は、従業員が紹介者を紹介するため、採用活動にかかる費用は0円とすることも可能です。
紹介者へのインセンティブを支払う場合であっても、求人広告や人材紹介エージェントと比較すると大幅に削減することができます。
3-2:転職市場外の人材も採用できる
2つ目のメリットは、「転職市場外の人材も採用できる」こと。
リファラル採用では、従業員が一緒に働きたい知人や友人に声をかけるため、転職活動をしていない人も対象となります。
そのため、転職サイトや人材紹介エージェントではアプローチできない優秀な人材にもアプローチが可能になるのです。
すぐに転職する意向がない人に対しても定期的に接触をして、自社の魅力を伝え続けることで、転職を考えたタイミングで自社の選考を受けてもらえるなど、潜在層へのアプローチもできます。
3-3:ミスマッチ採用と早期離職の減少
3つ目は、「ミスマッチ採用と早期離職の減少」が挙げられます。
リファラル採用では、すでに働いてる従業員からの紹介となるため、入社後も会社に馴染みやすい状況が期待できます。
また、従業員から話を聞き、会社への理解を深めた状態で入社することで、ミスマッチが起こりにくく、早期離職しない人材を採用することが可能です。
4:リファラル採用の3つのデメリット
採用コストの削減など企業にとってメリットが大きいリファラル採用ですが、注意すべきデメリットもあります。
リファラル採用を効果的に進めるためにも、以下の3つのデメリットを理解しておくことが必要です。
“リファラル採用の3つのデメリット”
- 採用までに時間がかかる
- 不採用時にケアが必要
- インセンティブ目的の紹介の場合がある
それぞれのデメリットを見ていきましょう。
4-1:採用までに時間がかかる
デメリットの1つ目は、「採用までに時間がかかること」です。
転職中の人だけでなく、潜在層にもアプローチができるリファラル採用ですが、転職潜在層の場合は入社までに時間がかかることもあります。
優秀で良い人材を口説くためには年単位で時間がかかるケースもあるため、すぐに即戦力を採用したい場合には不向きでしょう。
4-2:不採用時にはケアが必要
2つ目のデメリットは、従業員が紹介した紹介者が不採用になった時の対応です。
リファラル採用は、採用を前提とした縁故採用とは異なり、通常の選考ステップを踏むため、選考中に不採用になることもあります。
紹介者は自社の従業員と個人的な関わりを持っているため、不採用をきっかけに従業員との関係が悪化する可能性も考えられるでしょう。
一方的に不採用を通知するのではなく、不採用の理由を提示したり、その後のケアを意識しながら対応していくことが求められます。
4-3:インセンティブ目的の紹介の場合がある
3つ目は、インセンティブ目的の紹介の場合があることです。
リファラル採用の報酬(インセンティブ)を設定している場合は、設定金額を考えることが必要です。
報酬金額と、優秀な人材を紹介してくれる従業員のモチベーションは比例せず、むしろ、インセンティブを目的とした紹介や、自社にマッチしない人の応募が増加することがあります。
インセンティブを設定する場合は、適切な報酬設計を行うこと。そして、5章・6章でも詳しくお伝えしますが、そもそも会社への愛着や、企業理念・リファラル採用に対する理解・共感を、従業員に持ってもらうことが大切です。
5:リファラル採用で失敗しないための3つのポイント
リファラル採用を成功させるためには、従業員に「自分の会社を紹介したい」と思ってもらい、行動してもらうことが必要になります。
人事や会社だけではなく、リクルーターとなる従業員が行動しやすい環境を作っていくことが大切です。
リファラル採用で失敗しないためのポイントは、以下の3点。
“リファラル採用で失敗しないための3つのポイント”
- 従業員のエンゲージメントを高める
- 紹介に対しての負荷を軽減する
- リファラル採用活動の認知度向上
それぞれの内容について、詳しく見ていきましょう。
5-1:従業員のエンゲージメントを高める
リファラル採用は、従業員に「自分の会社を紹介したい」と思ってもらうことが重要であり、従業員のエンゲージメントを高めることが必要です。
エンゲージメントとは、従業員の会社に対する愛着心や思い入れのこと。
従業員の会社に対する愛着心を高めることで、居心地の良さだけでなく、自発的に企業に貢献したいという意欲につながり、リファラル採用の促進にもなるでしょう。
6章でもお伝えしますが、インナーブランディングがしっかりとできている企業では、ミッション・ビジョンと仕事の紐付けがもできているため、従業員のエンゲージメントも高く、リファラル採用がしやすいとも言えるかもしれません。
※インナーブランディングについて知りたい方はこちら
リモートワークでも社員の意思統一をするために!インナーブランディングによる企業文化の作り方
5-2:紹介に対しての負荷を軽減する
リファラル採用の手法を導入しただけでは、紹介者が増えるわけではありません。
従業員からすると「紹介した人が不採用になったら気まずい」「転職を勧めることに責任が持てない」などの不安があります。
また、「どうやって声をかけたら良いのか分からない」などの疑問もあるでしょう。
企業側から一方的に「紹介してください」とお願いするのではなく、従業員の紹介に対する負担を軽減する取り組みも必要です。
例えば、いきなり選考はせず、まずは紹介者との関係性を築くための時間を設けたり、従業員が紹介しやすいようにテンプレ化したメッセージを用意したり、物理的にも心理的な負担を軽減することに作用します。
下記のような取り組みも従業員の負担を軽減できる方法として有効です。
- 会社の魅力が簡単に伝えられるようにパンフレットや動画を準備する
- 紹介方法をレクチャーする
- 面接の日程調整は人事で行い、従業員は紹介のみに注力できるようにする
- まずは、ハードルの低い採用イベントへの集客を促す
一方、「紹介」することに対してプレッシャーを感じる従業員もいるため、まずは「紹介」ではなく採用イベントなどの「集客」を目的とするなど、従業員が気軽に声をかけられるような施策を考えることも必要です。
5-3:リファラル採用活動の認知度向上
会社内でリファラル採用を導入してから、従業員の間に浸透するまでは時間を要します。
企業の中には、「リファラル採用を始めました」と告知をして終了してしまうところもありますが、継続的に発信することが大切です。
紹介者の進捗やどんな人材を求めているのか、など情報を見える化して発信することで、従業員に対してリファラル採用活動の認知度を向上させることができます。
社内報や社内SNS、コーポレートサイト、スタッフブログなど、情報発信できるものを使って、リファラル採用を行なっていることをアピールし続けましょう。
リファラル採用で優秀な人材獲得に成功した社員を評価する表彰制度なども効果的です。
6:リファラル採用を成功に近づける、社内コミュニケーションのあり方
ここまで、リファラル採用について解説してきましたが、リファラル採用を成功させるためには社内協力が不可欠になります。
従業員のエンゲージメントの向上やリファラル採用の認知度を上げる取り組みも大切ですが、従業員一人ひとりがリクルーターとしての意識を持って取り組むことが重要です。
社内の協力体制については、私たちパラドックスでも採用戦略を実現する上で大切にしている部分でもあるため、詳しく解説していきます。
6-1:企業のミッション・ビジョンをもとにした採用戦略を伝える
冒頭から何度もお伝えしていますが、リファラル採用を成功させるためには、従業員一人ひとりに「紹介したい」と思ってもらうことが重要です。
ただ「紹介する」だけでは、企業側が求めるスキルを持った人材が集まらない場合もあるため、採用戦略を伝えておく必要があります。
そのときに、採用の目的や求める人材だけではなく、企業の核となるミッション・ビジョンをもとに採用戦略をつくり、その内容をしっかりと伝えて、すり合わせておくことが大切です。
具体的には、経営ビジョンを実現する事業計画達成に必要な人材についてなどがあります。
紹介する従業員側にとっても「なんのために、どのような人材を採用するのか」という共通認識は重要になります。
※採用戦略について詳しく知りたい方はこちら
人事なら知っておきたい!会社を進化させる同志を集める採用戦略の作り方
※ミッション・ビジョンについて詳しく知りたい方はこちら
企業の根幹を担うミッション ビジョン バリューの意味合いと作り方
6-2:人事と従業員の協力体制をつくっておく
従業員一人ひとりが「人事」であるという認識でリファラル採用に取り組んでもらうためには、お願いするだけではなく、人事と従業員が協力できる体制が必要です。
そのためにも、人事は、採用戦略や採用の意義深さを伝えるとともに、どこを人事がサポートするのか、どこを従業員にお願いするのか、役割を明確に設定するようにしましょう。不明点が出てきたときなど、お互いに、気軽にコミュニケーションがとれる協力体制をつくっておくことが大切です。
候補者探しを行う従業員と人事が、ともに「採用=同志探し」と捉えて、前向きなコミュニケーションが取れる状態になっていると、リファラル採用の成功につながっていきます。
7:まとめ
今回は、日本でも注目が高まっている採用手法である「リファラル採用」についてご紹介しました。
リファラル採用を成功させるためには、従業員に「自分の会社を紹介したい」と思ってもらうことが重要になります。
そのためにも、企業のミッション・ビジョンをもとにした採用戦略を丁寧に伝え、人事と従業員の間でコミュニケーションをとり、協力できる体制を整えることが大切です。
この記事が、リファラル採用に取り組む企業の経営者や担当者の方にとって、少しでもお役に立てると幸いです。
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