今回は、理念経営の事例として取り上げられることも多いスターバックスについて理念を軸にその経営を紐解いていきたいと考えています。筆者自身も、大学時代をアメリカで過ごしたこともあり、西海岸でも、東海岸でもスターバックスには何度もお邪魔したことがあります。
出展:https://www.huffingtonpost.jp/entry/story_jp_5ec2a47ac5b6e6a278bbc656?utm_hp_ref=jp-sutabaより
店舗の内装や体験の質は同じなんですが店舗ごとに、ちゃんと色があるというか、文化がある。店舗のマネージャーが、企業からの信頼感の上にちゃんとお店を任されているのが伝わってきます。
働いているパートナー(従業員)の方が同じ価値観を持ちながらも自分たちでその場に合わせて最善の方法を考え独自のチームと雰囲気をつくり、それがそのお店の特別感になっている。そんな印象がありました。
おそらく世界中どこでも行きつけのスターバックスがある方にとっては思い当たる節があるのではないでしょうか。これは、会社の状態がいい時も、悪い時もちゃんと理念を掲げて歩んできたスターバックスのDNAであり一番の資産なのかもしれません。
今回は、いくつかの本を頼りにしながらスターバックスの理念経営の歴史を追っていきたいと思います。
1:スターバックスのはじまり
まずは簡単にスターバックスの始まりに迫ってみます。
スターバックス(当時スターバックス・コーヒー・ティー&スパイス)は1971年に文学の教師であったジェリー氏と作家のゴードン氏が設立し、後に歴史の教師であるゼブ氏が加わりコーヒー豆の焙煎を行う会社として誕生しました。
一般的に知られている経営者のハワード・シュルツ氏は実はスターバックスの創業者ではありません。オフィス機器のゼロックス社、家庭雑貨を扱うハマープラスト社をへて1982年にスターバックスに入社しています。
ハワード氏とスターバックスとの最初の出会いは、当時ハワード氏が働いていたハマープラスト社にスターバックスがコーヒーマシンをオーダーしたのがきっかけでした。そこでスターバックスの創立者たちのコーヒーへの情熱に触れ、ハワード氏はスターバックスに転職を決意することになります。
ちなみにハワード氏は、最初あまりに熱意を込めてビジョンを伝えすぎたため一度入社を断られています。
しかし、めげることなく、さらなる説得を重ねてスターバックスに入社をしています。すでにこの頃から、創立者の誰よりもスターバックスのビジョンを描いていたことが伝わってきます。
ハワード氏が入社後、最初に取り組んだことは顧客との絆づくり、つまりコーヒーを通じた体験の創出でした。
きっかけは、視察でイタリアを訪れた際に、街のあちこちにコーヒースタンドがあり人々が行きつけの店でバリスタと会話を楽しみながらエスプレッソを飲んでいるシーンを見て、顧客との絆がスターバックスに圧倒的にかけていることに気づくのです。
「最高のコーヒーをバリスタを通じて顧客に提供することで最高の体験をしてもらう。」
この時点で、現在のスターバックスのビジネスの根幹となる思想が生まれたのです。しかし、当時その考えは創業メンバーからの反対にあい、ハワード氏は、やむなく一度スターバックスを退社します。
そして、1985年に自らイル・ジョルナーレというエスプレッソとコーヒーを提供するコーヒースタンドをオープンさせ見事、軌道にのせるのです。
さらに、そのわずか2年後の1987年には元々所属していたスターバックスの資産を買収。これが、現在のスターバックス・コーポレーションとなるわけです。
出展:https://kigyotv.jp/news/howard-schultz/より
ここまでの話は、一見トントン拍子に進んでいるように見えますが、イル・ジョルナーレ設立時も、スターバックスの買収時にも、資金集めにハワード氏は奔走しながら、たくさんの困難を乗り越えています。
この時点では、明確なミッションとビジョンが言語化されていたわけではありませんが人々にビジョンを語り、一緒に未来を描くことで仲間を集めるという現在のスターバックスにも通じる価値観や文化の片鱗を見ることができます。
2:理念はいつ生まれたか?
スターバックスの経営陣が初めてミッション・ステートメントの言語化に着手したのは、1990年でした。
ハワード氏の狙いは“会社の目的を明確に伝えるために言語化しこれを土台にあらゆる意思決定の適不適を判断する基準を定めること“だったそうです。
そして、このミッション・ステートメントを起点に50人以上の従業員とともに、3ヶ月間をかけて経営戦略策定を行いました。その過程では、様々な仕組みが生まれました。
一つはミッション・レビューという仕組みです。
全従業員にカードを配り、会社の決定がミッション・ステートメントに適していない場合には、ミッション・レビューチームに直接意義を申し伝えることができるというもの。
理念の前に上司部下はなく、平等である。すでに、この時点でハイフラットな組織を目指しているのが分かりますね。
出展:https://www.starbucks.co.jp/recruit/employment/shinsotsu.htmlより
“スターバックス・ミッション・ステートメント(社訓)1990年版”
【使命】
最高級コーヒーの世界一の供給者になると同時に、
われわれの主義・信条において決して妥協することなく
成長することである。
【6つの信条(意思決定の妥当性を判断する基準)】
>働きやすい環境を提供し、社員が互いに尊敬と威厳をもって接する。
>事業運営上の不可欠な要素として多様性を積極的に取り入れる。
>コーヒーの調達・焙煎・流通において、常に最高級のレベルを目指す。
>顧客が心から満足するサービスを提供する。
>地域社会や環境保護に積極的に貢献する。
>将来の繁栄には利益率の向上が不可欠であることを認識する。
参考:「スターバックス成功物語」ハワード・シュルツ、ドリー・ジューンズ・ヤング著 日経BP社刊より
3:顧客と社員の幸せのために
スターバックスでは、1990年にミッションを制定する前から全社員に健康保険を適用するなど、創業以来従業員を大切にしてきましたが、このミッションの策定後は業界に先駆けてストックオプションを発行するなど顧客はもちろんのこと従業員の働きやすさを、より意識するようになりました。
このミッション・ステートメントの社内浸透に大きな役割を果たしたのが1989年に入社をしたハワード・ビーハー氏です。ハワード・ビーハー氏は、ミッションを起点に徹底的に社員や顧客の声を吸い上げ、社内の様々な改革を進めていきました。
全社員が意見を述べることができるオープンフォーラムやメンバーへのバースデーカードを送るという取り組み、従来スターバックスではコーヒーの味を損ねるため使用しなかったノンファットミルクを顧客の要望に応えるため、改良を加えて商品化するなど。たくさんの取り組みをスターバックスの文化として定着させたのには彼の功績がかなり大きいようです。
当時は公式にそのような役割はなかったのですが、理念浸透を推進するリーダー。CCC、チーフ・カスタマー・オフィサーならぬチーフ・クレド・オフィサーの先駆けだったのかもしれません。
参考:「IT’S NOT ABOUT COFFEE」ハワード・ビーハー、ジャネット・ゴールドスタイン著 日経ビジネス人文庫より
【コラム】“サードプレイス”
スターバックスの強みを紹介する際に用いられるキーワード“サードプレイス(第三の場所)”ですが、1987年頃アメリカ全土へ店舗展開する中で、顧客がスターバックスに期待しているものが、どうやらコーヒーだけではないのではないか?とハワード氏が考えて生まれたそうです。
出展:http://www.tucker-construction.com/project-build-blog/starbucks-interior-photos/
“サードプレイスを表す4つのキーワード”
>ロマンチックな味わい
スターバックスのお店で5分10分過ごすと、コーヒーの味と匂いによって、人々は単調な日常から解放され、遥か遠いロマンチックな別世界へ誘われる。
>手の届く贅沢
一般的なブルーワーカーにとって、ドクターが乗るようなメルセデスには乗れないが、一杯2ドルのカプチーノは、オーダーできる。コーヒーの前では、みな平等である。
>オアシス
スターバックスでは日常の喧騒を離れ、一人きりになり、ささやかな逃避行を楽しむことができる。
>普段着の交流
職場とも家庭とも違い、中立的で形式張らない社交の場を担っている。イギリスのパブ、ドイツのビアガーデン、フランスのカフェのような存在である。
つまり、マインドトラベル、平等、一人になる、人とつながる。コーヒーを軸に、一人ひとりのニーズに合わせた場が提供できる。それが顧客にとっての第三の場“サードプレイス”というスターバックスの独自の提供価値につながっていったのだと思います。
さらにこぼれ話ですが、このサードプレイスという発想から誕生したり、逆に廃止になったサービスも数多くあり、一部を取り上げてみたいと思います。
1:WiFiの設置
スターバックスの代名詞ともいえるフリーWiFiもカフェ業界では先駆けでした。かつてサードプレイスを仮想空間で実現するという企画がありゲーム事業を検討したことがあったそうです。しかし、最終的にはコーヒーとの関連性のなさから、ゲーム事業には着手せず、プロセスで検討に上がったネットワーク環境の強化という文脈から、全ての店舗で無料のWiFi の提供が始まったようです。
2:CDの販売
音楽は、コーヒーの味や匂いとともに、人をマインドトラベルに誘う大事な要素ということでスターバックスではCDの販売を行っています。初期には、イタリアンオペラを流していたそうですが、人気が今ひとつで、音楽好きな店長さんがミックスCDの販売を始めたのがきっかけだそうです。(2015年からはデジタル配信のみに切り替えられています)
3:匂いが強い食べ物の禁止
コーヒーの味と匂いは、サードプレイスを実現する上でハワード氏が特にこだわっていたポイントでした。フレーバー付きのコーヒー豆は、機械に味移りがしてしまうため使用しなかったり、顧客からは人気があってもチーズの匂いでコーヒーの匂いを台無しにするホットチーズサンドイッチは、周囲の反対を押し切っても廃止にした経緯があるそうです。
4:スターバックスの低迷と再生
誕生以来、右肩上がりを続けてきたスターバックス。ハワード氏は会長職となり一線を退いていたが、2006年に入ると業績が悪化し始め、2007年には、なんと株価が42%下落してしまう非常事態に見舞われます。
出展:https://www.huffpost.com/entry/starbucks-hires-refugees-europe_n_594a740de4b0177d0b8ad677
2007年以前の10年間で、成長と拡大・発展を目指し、1000軒弱から、一気に13,000軒に店舗を増やしてきました。その成長の過程で、本来大事にすべき価値であったスターバックスの体験の質を低下させ、自らブランドをコモディティ化してしまったのです。その結果、顧客一人が使う費用が急激に下がっていた。それが業績悪化の理由でした。
当時は、下記のような歪みが生じていました。
・効率化のために、自動エスプレッソマシンを導入したため、バリスタとお客様のやりとりが無くなってしまった。
・コーヒーを袋詰めにして、店舗に届けるようにしたため、店舗からコーヒー豆を挽く匂いが消えてしまった。
・規模の効率化を図るために、店舗デザインを簡素化したため、居心地の良さ、サードプレイス感が無くなってしまった。
そこでハワード氏は初心に立ち返り、真のスターバックス体験を取り戻すことで、上記のような歪みを取り除くため、再び第一線に立つことを決意します。
本来、ミッションが組織に本当に浸透していれば、ハワード氏が一線を退いていたとしても、このような事態には陥らなかったのかもしれません。しかし、成長路線を進む中で、本来大事にすべきベースとなる価値観が気づかないうちに薄れていってしまったのです。
会社を引き継いだ経営者が、創業者と同じ想いと情熱を持って理念経営を続けていく難しさは、スターバックスといえどあったようです。
5:会社も、理念も進化する
再びCEOになったハワード氏が最初に行ったことは、全米の店舗を1日閉店してまで実行したバリスタの研修“エスプレッソ・エクセレンス・トレーニング”でした。
スターバックスのコーヒー体験の中核を担う全国13万5千人のバリスタの再教育から始めることで、社内外に改革の本気度とその覚悟を示したのです。
またこのタイミングで、ハワード氏は1990年に作成したミッション・ステートメントを会社の進化に合わせて変えています。
出展:https://kigyotv.jp/news/howard-schultz/より
一般的にはあまり変えることがないミッション・ステートメントですが、成功と失敗という経験を踏まえ、不足があれば、躊躇なく改善していく。自分が信じるビジョンに向かう強固さだけでなく、プロセスにおける柔軟さを兼ね揃えているのが、ハワード氏の本当の強みなのだと思います。
また、今回はこのミッション・ステートメント改定の前に、改革に向かうためのビジョンに加え、ビジョン実現に必要な7つの目標を掲げています。ミッションを踏まえてビジョンを掲げ、実現していくステップを明確にする。ここにハワード氏の考える、スターバックスの理念体系が見えていきます。
順番にご紹介していきましょう。
【私たちの望むもの】
魂を刺激し、育む企業として知られ、世界で最も認められ、
尊敬されるブランドを有する優れた企業であり続ける。
【7つの大きな取り組み(セブン・ビッグ・ムーブズ)】
1、コーヒーの権威としての地位を揺るぎないものにする
2、パートナーとの絆を確立し、彼らに刺激を与える
3、お客様との心の絆を取り戻す
4、海外市場でのシェア拡大を拡大する
(各店舗はそれぞれの地域社会の中心になる)
5、コーヒー豆の倫理的調達や環境保全活動に率先して取り組む
6、スターバックスのコーヒーにふさわしい創造性に富んだ成長を達成するための基盤をつくる
7、持続可能な経済モデルを提供する
これらのビジョン実現に向けたプロセスをアジェンダに、全世界200人のリーダーを集めたグローバルリーダーサミットを開催し、まずはこの改革の担い手となるリーダーたちとビジョンを共有することから始めます。
そして、こちらがその際に発表され、現在も使用されているスターバックスのミッション・ステートメントです。
【スターバックスの使命(ミッション)】
人々の心を豊かで活力あるものにするために
ひとりのお客様、一杯のコーヒー、
そしてひとつのコミュニティから。
ここに書かれた原則を、ぜひ毎日活かしてください。
Our coffee
私たちは常に、最高級の品質を求めています。
最高のコーヒー豆を倫理的に仕入れ、心を込めて焙煎し、
そしてコーヒー生産者の生活をより良いものにすることに情熱を傾けています。
これらすべてにこだわりをもち、追求には終わりがありません。
Our Partners
情熱を持って仕事をする仲間を私たちは「パートナー」と呼んでいます。
多様性を受け入れることで、一人ひとりが輝き、働きやすい環境を創り出します。
常にお互いに尊敬と威厳を持って接します。
そして、この基準を守っていくことを約束します。
Our Customers
心から接すれば、ほんの一瞬であってもお客様とつながり、
笑顔を交わし、感動経験をもたらすことができます。
完璧なコーヒーの提供はもちろん、
それ以上に人と人のつながりを大切にします。
Our Stores
自分の居場所のように感じてもらえれば、そこはお客様にとって、
くつろぎの空間になります。
ゆったりと、時にはスピーディーに、
思い思いの時間を楽しんでもらいましょう。
人とのふれあいを通じて。
Our Neighborhood
常に歓迎されるスターバックスであるために、
全ての店舗がコミュニティーの一員として責任を果たさなければなりません。
そのために、パートナー、お客様、そしてコミュニティーが
ひとつになれるように日々貢献していきます。
私たちの責任と可能性はこれまでにもまして大きくなっていきます。
私たちに期待されていることは、これらすべてをリードしていくことです。
Our Shareholders
これらすべての事柄を実現することにより、共に成功を分かち合えるはずです。
私たちは一つひとつを正しく行い、
スターバックスとともに歩むすべての人々の繁栄を目指していきます。
これからも、いつまでも。
参考:「スターバックス再生物語 Onward」ハワード・シュルツ、ジュアンヌ・ゴードン著 徳間書店より
1990年のミッション・ステートメントと比較してみると、やはり成長という要素は事業戦略(セブン・ビッグ・ムーブズ)に移行され、ミッションではコーヒー体験を軸に人と社会の豊かさを追求していくという意志が感じ取れます。
この10年間での経験を踏まえて、企業を経営していく上で必要な不足していた要素を追加したのだと推測されます。
改めて、にはなりますが、企業の進化に必要であれば、理念を変えることは、素晴らしいチャレンジであり、勇気だと思います。あくまで、理念は会社をよりよくすることが目的であり、理念を変えないことを、目的にしてはいけないですね。
出展:https://www.starbucks.co.jp/recruit/employment/barista.htmlより
6:理念経営
この新しいミッション・ステートメント発表後に、ハワード氏は、事業戦略(セブン・ビッグ・ムーブズ)に沿って大きな改革に挑みます。もちろん、それは前向きなものだけでなく、採算性の低い店舗の閉鎖、それに伴う人員の整理など、苦しい判断を伴うものも含まれていました。
閉鎖を余儀なくされた約600軒の店舗の内、約70%が過去3年間で新規オープンされた店舗であり、明らかに成長戦略の歪みだったことが露呈します。
しかし、まずここにメスを入れなければ、セブン・ビッグ・ムーブズの一歩目でつまずくことになってしまう。社員を大事にし、人と人のつながりを重んじるスターバックスだからこそ、企業として最も困難な選択だった。とハワード氏は語っています。
ハワード氏は、全米からリーダーが集まるリーダーシップフォーラムを重視し、大きな問題は必ず自分の口から直接リーダーに説明するようにしていました。
店舗の閉鎖や人員削減も直接ハワード氏の口から全米のリーダーたちに伝えることで、ビジョン実現のための困難を一緒に考え、ともに解決に取り組んでいくのだというスタンスを大切にしていたのだと思います。
このような改革によって、なんと1年後の2009年にはスターバックスは、再び増益に転じることになります。
出展:https://www.businessinsider.com/starbucks-howard-schultz-2020-run-for-president-2018-6より
下記に新しいミッション・ステートメントとセブン・ビッグ・ムーブズに沿って、2008年以降に実現されたスターバックスの取り組みを簡単にまとめてみました。
コーヒーの権威としての地位を揺るぎないものにする
>パイクプレイス・ローストの販売
スターバックス一号店の名前を記した同社を代表するコーヒーのブランド。また、挽いたコーヒー豆を店舗に配送することはやめ、店舗でドリップ直前に豆を挽くスタイルに戻した。
>マストレーナとクローバーの導入
エスプレッソマシンとコーヒーマシン。バリスタがお客様と目を合わせて会話をしながら、より細かい設定によって様々な好みに対応できるように設計されている。
>バリスタに向けたエスプレッソ研修
>初のインスタントコーヒーの発売
【お客様との心の絆を取り戻す】
>ロイヤルティプログラムの導入
スターバックス念願のメンバーシッププログラム
>マイバックスアイデア・ドットコム
顧客からの提案や嘆願など様々な声が集まるサイト
>ソーシャルメディアの運用
>デジタル事業の立ち上げ
店舗WiFiを用いた独自のコンテンツの配信
>リーン方式の導入
店舗における業務改善
海外市場でのシェア拡大を拡大する(各店舗はそれぞれの地域社会の中心になる)
>スターバックス・コーヒー・インターナショナル
北米以外での海外事業の展開・中国での事業拡大
>新しい店舗デザインとコンセプト
地元地域で調達した材料を用い、地元の職人と作り上げる店舗思想
コーヒー豆の倫理的調達や環境保全活動に率先して取り組む
>フェアトレードの促進
>コーヒー産出国・地域への支援
>店舗のある地域・コミュニティへの奉仕活動
>環境配慮(紙コップやストローの素材開発)
出展:https://athome.starbucks.com/coffees-by-format/whole-bean/
これらは、新ミッション策定後の1年で実施されたものだけではありませんが、ミッションとビジョンの制定により成熟していたかのように見えるスターバックス内にこれだけの改革の余地が生まれ、さらなる成長を生み出していきました。
意義深いミッションを持ちながら、高いビジョンを掲げ、現実とビジョンのギャップを人・組織・文化・事業という多角的なアプローチで埋めていく。
まさに地道に差を積み上げていく。差積化による理念経営の結果が、今のスターバックスのブランドを作り上げていったのだということがよくわかります。
7:まとめ
みなさま、ここまでお付き合いいただき、ありがとうございました。
スターバックスの軌跡、いかがでしたでしょうか。2回に渡るミッション・ステートメントの作成を軸にしながら、スターバックスの成長と再生をまとめてみました。
改めて感じたスターバックスの素晴らしいところは、理念を作って終わりにしてしまうのではなく、理念を起点に経営を始めたことです。さらに、その最初のステップとして、対外的にアピールするのではなくパートナー(従業員)に向けての会話から始めること。パートナーを大切にしているからこその第一歩なのだと思います。
パートナーが自分たちの会社に誇りを持って理念を軸に自らの頭で考え、行動している。だからこそ、冒頭に述べたような特別な体験が、世界のあらゆるスターバックスで体験することができるのでしょう。
しかし、やはり人間の慣れというのは怖いものです。一度できたからといって、放っておけば、あっという間に酸化してしまう。コーヒー豆と同じですね。
ミッション・ステートメントを軸に独自の文化を現在でも常に進化させながら、維持できているスターバックスは、やはり理念経営をする上でベンチマークしていくべき素晴らしい会社なのだと思います。
出展:https://www.starbucks.co.jp/recruit/employment/shinsotsu.html
「スターバックス成功物語」ハワード・シュルツ、ドリー・ジューンズ・ヤング著 日経BP社刊
「IT’S NOT ABOUT COFFEE」ハワード・ビーハー、ジャネット・ゴールドスタイン著 日経ビジネス人文庫
「スターバックス再生物語 Onward」ハワード・シュルツ、ジュアンヌ・ゴードン著 徳間書店
「ミッション」岩田松雄著 アスコム
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