ブランドとは?ブランド力強化のために理解すべきブランドの本質。

最近よく耳にする「ブランド戦略」や「ブランディング」といった言葉。ブランドをつくることが、企業の経営に大きく影響を与えるということは、一般的な常識になりつつあります。

「ブランド戦略室」などの新しい部署を立ち上げ、ブランド力強化に重点を置いている企業も多くなってきました。

しかし、そもそも「ブランド」とは一体何なのでしょうか?

18年以上にわたり様々な企業様のブランディングをお手伝いしてきた私たちパラドックスは、「ブランド」=「自分にしかできない世の中への役立ち方の約束」であると考えています。

(いかがでしょう?ピンと来た方も、いまいちよく分からないという方もいらっしゃると思います。詳しくは本章で解説いたします。)

「ブランディングをしてくれるデザイン会社を探しています・・・」

「ブランドのイメージを向上させるために、ロゴを刷新したいのですが・・・」

「ブランド強化のために、会社案内とホームページをつくりたいと考えています・・・」

パラドックスでも、上記のようなお問い合わせをいただくことが非常に多いのですが、最初の打ち合わせでは必ず、「なぜブランディングが必要とお思いですか?」「なぜロゴやホームページをつくろうとしているのですか?」といったことをお聞きします。

それは「ブランドとは何か」をご理解していただいた上で、長期的な目線で本質的なブランドづくりをしていくべきだと考えるからです。

ちなみに、一般的には「ブランド」という言葉の由来は以下と言われています。(諸説あり)

<「ブランド」の言葉の由来>

焼き印を押す意味の「Burned」で、自分の家畜と他人の家畜を間違えないよう、焼き印を押して区別していたことから、「銘柄」「商標」を「brand(ブランド)」と言うようになった。
(【語源由来辞典】より)

ここでは、私たちパラドックスが考える「ブランド」の定義と、「ブランド」がつくられる過程の解説、いくつかの優れたブランドの事例の紹介をしたいと思います。

この記事を最後まで読んでいただければ、「ブランドとは何か」の理解が深まり、あなた自身の会社や事業に当てはめて考えることができるようになるはずです。

1:ブランドを理解するために大切な2つの前提

「ブランドとは何か」をきちんと理解する上で、忘れてはいけない大切な前提が2つあります。まずはその前提をお伝えしておきます。

1-1:<前提1>ブランドは、目に見えるものではない。

一つ目の前提は、ブランドは、目に見えるものではないということ。

「個別の売り手または売り手集団の財やサービスを識別させ、競合する売り手の製品やサービスと区別するための名称、言葉、記号、シンボル、デザイン、あるいはこれらの組み合わせ」

「近代マーケティングの父」とも言われるアメリカの経営学者フィリップ・コトラーは、「ブランド」を上のように定義していますが、名称やシンボル、デザインは、ブランドを目に見える形で表現したものであり、ブランドそのものではありません。

ここで重要になってくるのが、ブランドは無形資産である、という考え方。

アメリカ・カリフォルニア大学の名誉教授であり経営学者のデービッド・A・アーカーは、「ブランド・エクイティ」という考え方を提唱しています。

<ブランド・エクイティ(Brand Equity)>
ブランドのもつ資産価値のことであり、次の5つに要素を分解できる

 

1ブランドロイヤリティ(ブランドへの愛着の度合い)

2ブランド認知(ブランドの認知度)

3知覚品質(消費者が感じるブランドの品質)

4ブランド連想(ブランドから連想されるイメージ)

5その他の知的所有権のある無形資産(特許、商標、取引先との関係性など)

要素1~5はどれも、はっきり目に見えるものではありませんね。ブランドの本質は、目に見えないところにあるのです。

1-2:<前提2>ブランドは、受け手によって形成される。

2つ目の前提は、ブランドは、受け手によって形成されるということです。

ブランドエクイティの要素1~4はすべて、受け手に左右されるものです。ブランドをつくりたい!と意気込んで、ブランド名やキャッチコピー、ロゴマークなどを揃えたとしても、ターゲット(受け手)にブランドとして認識してもらえなかったり、間違って伝わったりすることもあります。受け手がブランドとして認識し、ファンになってもらうまでが、ブランド形成における最初の関門なのです。

2:ブランドとは何か

2つの前提をおさえたところで、いよいよ「ブランド」とは一体何なのか?「ブランド」の明確な定義を見ていきましょう。

2-1:ブランドとは「自分にしかできない世の中への役立ち方の約束」。

ブランドとは「自分にしかできない世の中への役立ち方の約束」です。

世の中に存在するすべての企業や事業、商品・サービスには、それらにしかできない役立ち方(存在意義)があります。その「役立ち方」の「約束」がブランドの本質です。

ブランド=自分にしかできない世の中への役立ち方の約束

2-2:ブランドがつくられる3つの過程

ブランドとは「自分にしかできない世の中への役立ち方の約束」ということがわかったところで、次はブランドがつくられる過程を見ていきましょう。

ブランドづくり、つまりブランディングですね。「世の中への役立ち方の約束」そのものがブランドであるならば、ブランディングは「その約束を言語化し、果たしていくこと」と定義できます。

ブランディング=自分にしかできない世の中への役立ち方の約束を言語化すること。また、その約束を果たしていくこと。

ブランドがつくられる過程を図にすると以下のようになります。
※世の中の長続きしているブランドの多くはこの過程を踏んでおり、運任せではなくしっかりとしたブランドをつくるためにはこの過程がとても重要になってきます。

▲ブランドがつくられる過程は、①「役立ち方の約束」の抽出・言語化 → ②宣言 → ③一気通貫した行為

ブランドがつくられる過程は、①「役立ち方の約束」の抽出・言語化 → ②宣言 → ③一気通貫した行為 です。もっと大きな視点でみると、「差別化」と「差積化」に分けられます。

「差別化」・・・他との違い(自分の優れた点)を見つけ打ち出すこと。

「差積化」・・・差別化したものを時間をかけて積み重ねていくこと。

「差別化」が短期的・一時的なものとすると、「差積化」は長期的な考え方。「差別化」ができていても、「差積化」ができていないブランドは長続きしません。

それでは①②③それぞれの過程について詳しく説明していきます。(説明の中で差別化と差積化についても触れたいと思います。)

わかりやすい例として、洋服のブランドをつくることを仮定して考えてみましょう

2-2-1:①「役立ち方の約束」の抽出・言語化

まずはじめにやるべきは、①「役立ち方の約束」の抽出・言語化です。

「世の中の誰のために、どんな価値を提供するのか」ということを考え、他のブランドにはない価値を言語化します。他との差別化の第一歩であり、ブランドのコンセプトづくり、とも言えます。

今回は、誰のためにどんな洋服をつくるのか、ということですね。例えば「おしゃれな洋服」と一括りに言っても、男性サラリーマン向けなのか、主婦向けなのか、若者向けなのかでかなり違ってきますよね。

仮に男性サラリーマン向けだとしても、フォーマルなスーツなのか、オフィスカジュアルなのか、普段着なのか、おしゃれ着なのかでも変わってきます。

この「誰のために」というターゲット設定は、なるべくターゲットの顔が浮かぶくらいまで狭めていくのが理想です。

今回は、「忙しいサラリーマン向けの、おしゃれな普段着をつくる」という役立ち方の約束にしてみましょう。

ブランドコンセプト:「忙しいサラリーマン向けの、おしゃれな普段着をつくる」

→スーツやフォーマルな格好で仕事を頑張っている人に、つかの間の休日をよりリラックスした良いものにしてもらうためのブランド。

2-2-2:②宣言

「役立ち方の約束」の言語化(=コンセプトづくり)ができたら、次にすべきは、それを②「宣言」することです。自分の中で約束していたことをターゲットに向けて宣言することで、ターゲットに他との違いを印象づけ、より明確な差別化を図ります

今回は、「私たちは、忙しいサラリーマン向けの、おしゃれな普段着をつくります。」ということをターゲットに向けて宣言します。

ターゲットとは、その洋服を買ってほしい人たちのこと。メインターゲットであるサラリーマンだけでなく、その家族(奥さんなど)や恋人、友人などもターゲットに含まれます。

宣言の方法としては、以下のような方法があります。

・プレスリリース(報道機関に向けた告知、発表)

・WEBサイト(ブランドサイト)の公開

・テレビCMや電車内広告などのマス広告での告知

・インターネット広告などのデジタル広告での告知

他にも様々な方法がありますが、今回は下記の3つの方法で宣言することにしましょう。

・電車内広告・・・メインターゲットであるサラリーマンに向けて

・テレビCM・・・メインターゲットの家族や奥さん(主婦)に向けて

・WEBサイトの公開・・・電車内広告やテレビCMを見て検索したときの受け皿として

※ターゲットによって伝える場所や伝え方を変えるのが効果的です。

①「役立ち方の約束」の抽出・言語化と、②その宣言 ができたら、「差別化」ができたということになります。正しく「差別化」ができ、ターゲットが興味を持ってくれたら①②は成功です。

2-2-3:③一気通貫した行為

①②を通して「差別化」ができたら、そのあとにやっていくべきは「差積化」であり、「差積化」においてもっとも大切なのが、③「一気通貫した行為」です。

「私たちは、忙しいサラリーマン向けの、おしゃれな普段着をつくります。」と宣言・約束したからには、その約束を守り続ける必要があります。

商品戦略(開発・販売・販促)はもちろん、店舗拡大などの事業戦略やスタッフの雇用、育成まで、すべての行為が「忙しいサラリーマン向けの、おしゃれな普段着をつくる」ための行為でなくてはなりません。

「忙しいサラリーマン向けの、おしゃれな普段着」というコンセプトを掲げているにも関わらず、ビジネススーツを販売していたり、店舗スタッフがスーツを着ていたりしたら、違和感を抱きますよね?

これは少し極端な話かもしれませんが、どれか一つでも「宣言」にそぐわない行為(違和感)があると信頼を失い、顧客はどんどん遠ざかってしまいます。

この「一気通貫した行為」をどれだけ長く続けられるか、つまり、「差積化」をし続けられるかが、ブランドの寿命に直結するといっていいでしょう。

2-2-4:①②③の3つの過程ができていないと、ブランドは長続きしない!

①「役立ち方」の抽出・言語化がうまくできていない

これは、もう少しシンプルに言うと、「コンセプトが不明確」ということです。本当に自分にしかできない役立ち方なのか、すでに存在するブランドの真似になっていないか。

それらを曖昧にしたままブランドづくりをしていこうとすると、どこかで本来の目的がブレてしまい、長続きするブランドにはなり得ません。

例えば、「こんな商品をつくりたい(提供したい)」というこだわりがないまま「つくった商品がたまたま売れたから」という理由で売り続けていたら、それよりも安くて良い代替品が出てきたとき、それまで売れていた商品を買う人はいなくなってしまいます。

この「役立ち方」の抽出・言語化は、時期が早ければ早いほど、明確であればあるほど良いのですが、途中で軌道修正したり、言語化し直したりすることは可能です。

強いブランドをつくるためには、必ずどこかのタイミングで、「役立ち方」の抽出・言語化をしなければなりません。

②宣言をしていない

いい商品は放っておいても売れる、という考え方もありますが、ブランドのコンセプトをきちんと伝えることで、より多くのコアなファンをつくることができます。

デザインや価格だけでなく、ブランドの想いやこだわりに共感したファンたちは、似たような商品が出たとしても、簡単にそちらに流れることはありません。

きちんと宣言をして顧客に意思を伝え、その宣言通りの行動をしていくことで、顧客との間に信頼を生まれ、強いブランドになっていくのです。

③一気通貫した行為(差積化)ができていない

「役立ち方」の抽出・言語化をして、宣言をして、出だしはうまくいったものの、途中から顧客が離れていってしまう。

実はブランディングにおいて最も注意しなければいけない(意識してやらなければいけない)のがこの「差積化」です。

「差別化」ができても「差積化」ができていないブランドは長続きしません。

「忙しいサラリーマン向けの、おしゃれな普段着」の例以外にも、例えば、「おもてなし」「丁寧な接客」を掲げた洋服店が、店舗開拓が順調に進んでしまったがゆえに、スタッフの採用が間に合わず、接客の質が落ちてしまう。

「女性や家族連れが安心して来られるレストラン」がコンセプトだったはずのチェーン店が、オフィス街に店を構え、居酒屋のようなメニューを売り始める。

最初はこうだったのに、気づけば・・・という事態にならないよう、当初定めた「役立ち方」や「宣言」に沿った判断軸を持ち、その判断軸で物事を判断していくことが重要になります。

※私たちパラドックスは多くのクライアントさまと長期的なお付き合いをさせていただいていますが、それは一緒に伴走しながら「差積化」のサポートをさせていただくためです。

2-3:ブランドの種類は大きく3つ

「ブランドそのもの」の本質は理解できましたでしょうか?次に、ブランドの種類について見ていきます。ブランドは大きく分けて3種類あります。

この定義(分類方法)は、業種によって、また各企業によって異なったり、事業ブランドと商品ブランドの間にはグラデーションがあったりしますが、おおよそこの3つに分かれていると考えていただければOKです。

・商品(サービス)のブランド
・事業ブランド
・企業ブランド

▲「ブランド」は大きく分けて3種類 (ヤマハを例に)
※ヤマハ(株)コーポレートサイトより抜粋し、当メディアが独自に分類・作成したものです。

2-3-1:商品・サービスのブランド

まず1つめは「商品・サービスのブランド」。商品ブランドとは、「その商品(サービス)にしかできない世の中への役立ち方の約束」です。

上の図のように「ヤマハ」を例に出すと、グランドピアノのシリーズである「CXシリーズ」「C Traditionalシリーズ」といったシリーズや商品名が商品・サービスのブランドです。

私たちの身の回りで、直接私たちの役に立っているのが商品ブランドとも言えます。

▲ヤマハの商品ブランド

2-3-2:事業ブランド

次に、「事業ブランド」についてです。事業ブランドは、「その事業でしかできない世の中への役立ち方の約束」です。

ヤマハでいうと、「楽器事業」「音響機器事業」「部品・装置事業」が事業ブランドですが、それぞれに紐づく「ピアノ」「ギター」などの商品カテゴリーも事業ブランドと呼ぶことができます。どこまでを「事業」と捉えるか、どこからを商品と捉えるかで変わってきます。

2-3-3:企業ブランド

最後に、「企業のブランド」です。企業ブランドは、「その企業にしかできない世の中への役立ち方の約束」です。

すべての事業ブランドと商品(サービス)ブランドは、この企業ブランドに紐づいているため、企業ブランドをつくっていくことは、企業の経営(企業の存続)に直結するとても大事なことです。

企業ブランド名とは別に事業ブランド名がある場合もあれば、事業ブランド名と企業ブランド名が同じ場合(特に規模の小さい会社など)もあります。

3:優れたブランドの事例

ブランドについての基礎知識を押さえられたところで、世の中にある、優れたブランドの例をいくつかご紹介したいと思います。

「優れたブランド」とは?

優れたブランド=「差別化」と「差積化」がきちんとできているブランドです。

世の中に数多くのブランドが存在する理由は、それぞれが独自の価値発揮をしているからなのですが、独自性のあるブランドであればあるほど、その価値は高くなります。誰かの真似をするのではなく、誰もやったことのない、誰にも真似されることのないことで世の中に貢献しているブランドが、いいブランドと言えます。

また、ブランドをつくるということは、「約束」をするということなので、「私たちは、〇〇という世の中への役立ち方をします」という約束をし、その約束を長くにわたり果たし続けているブランドが、いいブランドと言えます。

2章の中の「ブランドがつくられる過程」でご説明した①「役立ち方の約束」の抽出・言語化(差別化) → ②宣言(差別化) → ③一気通貫した行為(差積化)に沿って、どのような点が優れているのかを解説していきます。

3-1:ディズニーランド

世界でも日本でも有名で、業界で確固たる地位を確立している優れたブランドの代表例が、ディズニーランドです。

ディズニーランドを運営しているのは株式会社オリエンタルランドですので、ディズニーランドはオリエンタルランドの「事業ブランド」ということになります。(海外のディズニーリゾートを運営しているのは別の会社です)

ディズニーランドは、世の中に様々な遊園地がある中で、「あらゆる世代の人々が楽しめる『ファミリー・エンターテイメント』を提供する。」という自分たちだけの世の中への役立ち方を言語化し、「ようこそ、夢と魔法の王国へ。」という宣言・約束をし、それをパークの作り方やキャストのキャラクター、アトラクションなどに統一した形で反映しています。そして、その姿勢をぶらすことなく続けていることが、ディズニーランドを他にはない唯一のブランドにしています。

①役立ち方の抽出・言語化(差別化)
“あらゆる世代の人々が楽しめる「ファミリー・エンターテイメント」を提供する。

②宣言(差別化)
ようこそ、夢と魔法の王国へ。(1983年「東京ディズニーランド」開園時のキャッチコピー)

③一気通貫した行為(差積化)
以下の文章は、オリエンタルランドのコーポレートサイトより抜粋したものですが、いかに一気通貫した行為ができているかがわかります。

人々の心に夢を呼ぶストーリーをショーに演出し、パーク全体をステージとして、ゲストとキャストが一緒に参加し、体験することができる。これがディズニー・テーマパークの魅力の核となっています。また、従業員がキャスト=出演者と呼ばれる理由もここにあり、ゲストの参加(共演)によってそれぞれのテーマランドのショーも日々新しく完成していくのです。

 

東京ディズニーランドは、シンボルであるシンデレラ城を中心に、パーク内が、冒険や童話、未来など人々に親しみやすいテーマにそって、7つのエリアに分けられています。個々のエリアは“テーマランド”と呼ばれ、アトラクションはもとより、レストラン、ショップ、そして樹木、ベンチやゴミ箱にいたるまで、それぞれのテーマにそって演出され、ひとつのショー・ステージを構成しています。

▲株式会社オリエンタルランド コーポレートサイトより抜粋

実際に行ったことのある方ならお分かりかと思いますが、商品のデザインやショーの演出だけでなく、施設内のあらゆる物(ベンチやゴミ箱にまで)にストーリーを持たせ、「夢と魔法の王国」というアイデンティティを創業以来、徹底的に守り抜いています。

また、「ミッキーは同じ空間(テーマパーク内)に1匹しかいない」というお話を聞いたことがありますか?これも、「夢と魔法の王国」のイメージを損なわないためのこだわりなのです。隙がないですね(笑)。

3-2:スターバックスコーヒー

次に、優れたブランドとしてぜひ紹介したいのが、スターバックスです。

スターバックスの世の中への役立ち方は、「職場でも家庭でもない第3の場所を提供すること」です。アメリカ高度経済成長のころ、オフィスワーカーの男性陣が仕事ではハイプレッシャー・ハイスピードな環境で過ごし、家に帰っても夫や父としての役割があり自分の時間をとれない、という課題を抱えていたときに、職場でも家庭でもない第3の場所として、リラックスできるくつろぎの空間を提供できないか、という発想から、スターバックスは生まれました。この「サード・プレイス」というキーワードを根幹に、店舗づくりやスタッフの接客のルールを統一し、日々「サード・プレイス」としてブランドの目的を果たしています。

①役立ち方の抽出・言語化(差別化)

“(仕事も家庭もあるサラリーマンたちに)職場でも家庭でもない第3の場所を提供する。”

②宣言(差別化)

サード・プレイス (The Third Place)
(正式なキャッチコピーとしては使われていないようですが、「サード・プレイス」の考え方は、当時のスターバックスがカフェビジネスを展開する上では欠かせないビジネスコンセプトにまでなっていました。)

また、スターバックスは「OUR MISSION」を次のように掲げています。

「人々の心を豊かで活力あるものにするために−

ひとりのお客様、一杯のコーヒー、そしてひとつのコミュニティから」

▲スターバックスコーヒージャパン株式会社 コーポレートサイトより抜粋

「第3の場所=サード・プレイス」という言葉は使っていませんが、「人々の心を豊かで活力あるものにする」場所を提供する、という思いが込められています。

③一気通貫した行為(差積化)
「サード・プレイス」、つまり第3の場所を実現するために、コーヒーの味だけでなく、空間、店員の対応など、あらゆる要素にこだわっています。

1杯のコーヒーを通じて会話と笑顔が生まれ人と人とがつながる。

▲スターバックスコーヒージャパン株式会社 コーポレートサイトより抜粋

確かに、スタバの店員さんは皆、手際も愛想も良いですよね。スタバでアルバイトをするということが、学生にとって一つのステータスになっているのも、ブランドとしての大きな強みといえます。

3-3:タイガー魔法瓶

最後に、私たちパラドックスがブランディングをお手伝いさせていただいた例として紹介したいのが、タイガー魔法瓶株式会社です。

タイガー魔法瓶さまは、1923年創業以来、90年以上続く老舗企業ですが、2012年に企業理念を刷新。(パラドックスはその際、理念開発・リリース施策・浸透施策に携わらせていただきました。)

「温もりあるアイデアで、食卓に新たな常識を作り続ける」ことを使命(ミッション)とし、100年・200年と成長を続ける企業を目指しています。

①役立ち方の抽出・言語化(差別化)

“温もりあるアイデアで、食卓に新たな常識を作り続ける。

②宣言(差別化)

“食卓に、温もりの魔法を。

創業の原点である魔法瓶という製品は、その名のとおり温度を保つ機能だけでなく、飲む人の心をなごませるお母さんの温もりのが込められた魔法の道具としてその役割を果たしてきたことを再認識し、上記の合言葉(スローガン)を含めた企業理念をコーポレートサイト等でリリースしました。

③一気通貫した行為(差積化)
“温もりあるアイデアで、食卓に新たな常識を作り続ける。という使命(ミッション)をもとに、目指す未来(ビジョン)と大切にする価値(バリュー)を定め、社員の行動指針(クレド)も作成。

新商品の開発、発売はすべてこれらの企業理念に基づいており、社員たちも皆、行動指針に則った行動を心がけています。

4:まとめ

ブランドとは何か、ブランドをつくっていく上で何が大切か、お分りいただけたでしょうか?

最後にもう一度繰り返させていただきますが、「ブランド」とは、「自分にしかできない世の中への役立ち方の約束」です。

これを念頭に置きつつ、これから会社のブランド力を強化していきたい方、新しい事業を始めようとしている方は、「自分(その会社や事業)にしかできない世の中への役立ち方を考える」→「宣言」→「一気通貫した行為」という順番でブランドの構想を固めてみてはいかがでしょうか?

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