「期待していたメンバーが辞めてしまう」
「メンバーのモチベーションが上がらない」
「チームに活気がない」
「最近の若手と会話が通じない」
そんな悩みを抱えている、人事担当やマネジメント職の方も多いのではないでしょうか。
長年マネジメントに従事しているベテラン社員でも、最近のメンバーとうまく信頼を育めないと悩んでいる方の声も多く聞きます。
チームで成果を出すために、
みんな一生懸命に働いてくれているのに、成果がなかなか上がらないのは何故か?
その要因は社会的な背景はもちろん企業やチームの数だけあるとは思いますが、最近は、チームマネジメントを変えるきっかけとして1on1ミーティングを導入する企業も増えてきています。
「1on1なんて、少し前に聞いたことあるけど、単なる雑談タイムでしょ」
と勘違いされていた方もいるようですが、シリコンバレーの海外企業や日本の大手企業でも1on1で成果を出しているところが見られ始めました。
この記事を読まれているチーム改革、組織改革を考える立場の方も、おそらく1on1ミーティングを始めようかとお考えの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
優秀な人材確保が厳しくなり続ける昨今の企業内では、たとえリモート環境の中でも、一人ひとりを深く理解したマネジメントを行い、人を活かしきることがマネージャーの必須要件になってきています。
この記事では、1on1ミーティングについて、目的や内容、具体的な取り組み方、実施する上で気をつけたい点などを詳しくご紹介します。
1on1は聞いたことがあるけど、具体的にどうやればいいかわからないという方や、自分のチームに導入したいというマネジメント職の方なども、ぜひ参考にしてみてください。
1:1on1ミーティングとは
1on1ミーティング(以下1on1)とは、人材育成を目的として上司とメンバーが1対1で行う定期的な対話(面談)のことです。評価に関する面談とは違ってメンバーの目標や業務管理だけではなく、メンバーが仕事を通じて得た体験や課題、悩みを上司と共有します。
1on1の頻度は月に1回~週に1回といった定期的なペースで行うことが多く、時間は約30分程度に設定している企業が多いようです。上司はその内容にフィードバックをして、メンバーの成長を促します。
一般的な面談も双方のコミュニケーションは同じですが、大きな違いは「メンバーのための時間」であることと、「短いサイクルで定期的に実施する」ところにあります。
1-1:1on1のメリット、デメリットについて
1on1ミーティングを行うと具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか。
1on1ミーティングが成功した場合に、期待できるメリット
・メンバーやチームの課題を理解、解決できる
・上司とメンバーの信頼関係が深まる
・メンバーそれぞれに合ったキャリア開発を支援できる
・メンバーや職場全体のモチベーションが向上する
・メンバーが成長し、主体的に動けるようになる
・離職率の低下、定着率の向上につながる
・評価や仕事に対する納得度が増す
・上司のマネジメントに関してフィードバックを得られる
相互理解が進んでチーム力が増すことは容易に想像できますよね。メンバーが今、何を求めているのか、どんな成長を目指しているのか、どんなことに価値観を持っているのかなどを、上司や組織が詳しく理解することで、その人が生き生きとパフォーマンスを発揮できる環境をつくることができ、組織全体のモチベーションが高く維持され、離職率も減らすことができます。
では逆にデメリットとしてはどんなことがあるか見てみましょう。
1on1ミーティングがうまくいかなかった場合のデメリット
・ミーティングに担当人数分の時間がかかる
・成果が数値化しにくい
・上司のコミュニケーションスキルが求められる
・単なる雑談で終わってしまう
・うまくやらないと、逆に信頼関係が崩れてしまう
・効果が現れるまで時間がかかる
以上のように、デメリットもありますが、メンバーの成長がチームの成長であり、組織の生命線だとすれば、ここに時間が取れないからと言って1on1を導入しないという理由の組織やチームはマネジメントを放棄していると言われても仕方ありません。「忙しい」「面倒くさい」「苦手」だと思われる上司の方こそ、まずは、一人ひとりの社員と真剣に向き合う覚悟が必要だと思います。
1-2:なぜ今、導入企業が増えるのか?
そもそもなぜ、近年1on1の導入企業が増えているのでしょうか。
社会の変化や、価値観の違いなど以下のような要因が考えられます。
1on1ミーティングの企業導入が増えている主な要因
・働き方の社会問題化によって管理業務が強化されている
・心の病を抱える人が増加している
・転職、退職しやすい環境になっている。
・納得感がないと動かない社員が増加している。
・人による幸福感が多様化している。
・職場での飲み会などのコミュニケーション機会が減っている。
・パワハラ、モラハラなどのケアが厳しくなっている。
など
1on1が求められる背景の要因の一つは、少子化に起因し、日本全体の人材が不足する中で、社員のエンゲージメントや満足度を高めることが企業に必要になってきたことがあります。
個人や取り巻く環境が複雑化していること、転職しやすい社会、さらには、リモート環境など働き方の多様化などの理由により、個人と企業の目的が一致することが社員には求められる時代になっています。
上司は組織の代表として、個人の事情をより理解し、答えを出すことが大切になってきました。組織と個人の関係性も、今までのようなメンバーに指示を与えるトップダウンの主従関係から、お互いがフラットな関係で共生する時代に変わり、業務をスムーズに行う上で個人の事情を詳しく把握する必要が出てきていると思います。
もう一つは、VUCA時代(※)と言われるような急速な社会変化により、より先が見えにくい未来になっていることでしょう。これまでは過去の経験に基づいてある程度、上司が正解を示すことができましたが、今では上司ですらその正解がわからないという状況が多くあります。
また、ネットの普及であらゆる情報が瞬時に大量にリーチできることで、上司に教えてもらう関係から、お互いに教え合い、共有しながら次の一手を考えることが多くなったこともあるのかもしれません。
クライアントとのやりとりも、今はLINEやslack、chatworkなど個別メッセンジャーを使うことも日常的になり、昔のように電話で話す部下の声を上司が聞く機会が少なくなったこともあります。メンバーのメールに上司へのccがついていても、上司がその全容を把握しづらくなっているのが実際のところだと思います。
働く価値観の違いも大きな要因の一つです。今の仕事が自分とどう関わるのかの納得感がモチベーションにつながる人が多くなっており、自分の好きなことや好きな環境で働きたいという価値観の変化も1on1が求められる要因になっていると考えられます。
※VUCAの時代とは、Volatility(変動性・不安定さ)、Uncertainty(不確実性・不確定さ)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性・不明確さ)の頭文字をとった言葉で、先の見えない、混沌とした現代社会を指す言葉です。
1-3:ヤフーの導入事例
世界の最先端企業が集まるシリコンバレーでは、1on1の文化は古く、企業では当たり前の存在になっています。グーグル社でも毎週30分〜1時間の1on1を実施していますし、1on1を組織戦略上で重要な位置づけにしたのはインテル社が最初だと言われています。元々、人種や宗教、価値観が異なるお国柄から1on1の重要性を重んじてきたことが背景として考えられますが、日本に古くからある「暗黙の了解」「阿吽の呼吸」という文化も今では、機能しなくなリ、個人の考え方も多様になり、上司・メンバーを問わずに、お互い尊重し合う社会になってきたことが1on1導入の背景にあると考えられます。
国内では、2012年からヤフーなどが1on1ミーティングを開始したことを耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか。それ以後、日本でも1on1を導入する企業が増え続けています。ヤフーの人材育成の基本方針は「社員の才能と情熱を解き放つ」と定めていて、この手段として1on1が導入されています。それでも導入期は社長ですら、当時は懐疑的で仕方なくはじめたと語っていますので、やりながら、少しずつ制度化しながらその企業にあった1on1文化を築いているということが実情でしょう。
ヤフーをはじめ、人材育成のトレンドとしても1on1を導入する企業は増えていますが、いざ導入してみたものの、効果が見えない、どのように進めるのが正解かわからないといった悩みも多く聞かれます。まずは1on1の目的やメリットなど知るところから始めていきましょう。
2:1on1の第一目的は「メンバーの成長」
1on1の目的は端的に言えば、「部下の成長促進」です。メンバーの現状や悩みに上司が寄り添い、メンバーの能力を最大限に引き出す育成のためのミーティングです。ですから、1on1が終わった後に、メンバーが「話してよかった」「この時間があってよかった」と感じてもらうことが第一のゴールです。メンバーの成長に加えて、「離職防止」や「業務成果の向上」も1on1の大切な目的です。
3:具体的な進め方について
実際に1on1はどのように行えば良いでしょうか。
「具体的に何を話せばいいのかわからない」
「一人ひとり内容が違うから、実際にどう進めたら良いかわからない」
との悩みも多く聞きます。
ここでは、1on1の進め方や話すテーマの例などを紹介します。
3-1:1on1の流れについて
1on1を行う流れについて具体的な5つのステップで紹介します。
①メンバーに目的と実施を伝える
いきなり1on1を行うと言われても、メンバーは何を話せば良いのか、評価にどう繋がるのかと不安な気持ちになってしまうことも。また時間確保するだけで面倒と思われて反発を招くこともあります。1on1は「メンバーのための時間」であることを事前にしっかりと伝えることが大切です。
②定期的な日時を設定する
基本的にはメンバーに日時設定をしてもらうのが理想的ですが、お互いがリラックスして話せる時間に設定しましょう。やり始めは、どうしても優先度が低くなりがちなので、定期的な日時を決めて優先度を高くすることが重要です。
③テーマをメンバーに決めてもらう
当日に話すテーマを事前、または当日までにメンバーに決めておいてもらいます。
上司が決めてしまえば、せっかくの本音で話せる時間だとしても、メンバーはやらされ感を持って臨んでしまいます。メンバーが話したいことに上司が寄り添う形で、お互いがフラットな関係になるように目指しましょう。
④1on1を実施して、内容を記録する
当日はメンバーのテーマに沿って1on1を実施します。一度話した内容は、振り返りができるように上司がメモしておくか、お互いが見える状態で共有メモを作りながらでも良いでしょう。
⑤振り返り、次回のテーマを決める
1on1の最後には、今日話したことをお互い振り返って改めて共通認識として持っておくようにします。次回のテーマも最後に決めておくことで、継続的な実施につながりやすくなります。
1on1の効果をすぐに感じることはありませんが、継続することで普段のコミュニケーションの量と質が変わることを実感できるはず。何か問題が起こった場合にすぐに対処できることも1on1のメリットと言えるでしょう。
3-2:具体的なテーマ&質問事例
実際に1on1をやろうと思っても「何を聞けば良いかわからない」という方も多いと思います。仕事やキャリア、プライベートなことなど具体的なテーマをまずは決めてから1on1に臨むと良いでしょう。あくまでもテーマ設定はメンバーが決めることで、主体的なミーティングになると思います。
具体的なテーマ&質問例
<仕事について>
・今の仕事で課題だと思うこと、行き詰まっていることはある?
・もっと効率的に働くために自分(上司)ができることは?
<組織・チームについて>
・チームで課題だと思うことは?
・改善できることは何だと思う?
・上司(メンバー)に何か要望は?
・人間関係でトラブルはある?
・どうすればチームワークが良くなると思う?
<目標について>
・いまどんな目標がある?
・目標達成するために取り組んでいることは?
・目標を達成する上で障害はある?
・自分評価するなら今どれくらい?
・仕事を進める中で何を手に入れたい?
<キャリアについて>
・強み(弱み)と思っていることは?
・一番得意だと思うことは?
・自分が成長する上で課題に感じていることは?
・これからどんな仕事にチャレンジしたい?
・どんな仕事にやりがいを感じる?
・キャリアビジョンはどんなものを描いている?
・スペシャリストとマネージャーのどちらに興味がある?
<プライベートについて>
・最近の趣味は、興味のあるもの、ハマっているものは?
・好きなもの(食べ物・スポーツ・TV番組など)は?
・最近買ってよかったものは?
・今欲しいと思っているものは?
・週末はどんなことをして過ごしてる?
・最近、興味のあることは?
・こだわっているものはある?
<心身の健康チェック>
・最近、夜は眠れてる?
・よく食べられてる?
・週末は休めてる?
・仕事量、自分のキャパは多すぎない?
・ストレスを感じていることはある?
・仕事の悩みを相談できてる?
<モチベーションについて>
・仕事で不安に思っていることはある?
・どんな時にモチベーションが上がる(下がる)?
・仕事で面白いと思っていることは?
・どんなことに自信がある?
ビル・キャンベルの「トップ5」
シリコンバレーの経営者に絶大な信頼を得ていた「1兆ドルコーチ」の本でも有名になった伝説のリーダー、ビル・キャンベル。彼の1on1ミーティングは、相手の家族など仕事以外の話をしてから「君のトップ5は何だ」と聞くことだったと言います。相手の時間と労力を、どう優先づけしているのかを知るためです。
また、グーグル社の経営セミナーでは、1on1はそれぞれがボードに自分のリストを書き、二人同時に手札を見せ合うように教えたそうです。
二人の何が共通しているのかをお互いが確認でき、それらのトピックをもれなく取り上げることができるのだと言っています。また、二人のリストを一つにまとめることで、優先順位の練習にもなると考えていました。
ビルは1on1についても周到にコミュニケーションの準備を行っていたと語られています。
お互いが大切にしている共通項を見つけるという1on1も良い方法かもしれません。共通項という点では個人対個人はもちろん、組織と個人についても大切な取り組みです。
この章では、お互いの共感度を高めるためのテーマを紹介しましたが、1on1を継続していけば、上司が今まで知り得なかった様々な声が聞こえてくることでしょう。そしてその声や要望をまとめ上げるためには、組織の方にもしっかりとした軸が必要になります。
私たちパラドックスでは、個人が実現したい志をそれぞれ掲げ、その実現に向けて上司が寄り添いながらサポートする形での1on1ミーティングを行っています。
「有言実行シート」と呼ぶ個人の成長戦略を記したシートを全社員が共有しながら、CAN-WANT-MUSTのフレームから組織と個人の志を叶えるべく自由で活発な意見交換を週に1回、メンバーひとりに対して30分〜1時間程度の時間を設けて取り組んでいます。
組織やチームの状況にもよりますが、せっかく設けた1on1の時間をより実りのあるものにするために、メンバーと上司が共有できるオリジナルの1on1シートなどを作成して、お互いに意識共有しながら行うこともおすすめです。
CAN-WANT-MUSTのフレームから個人目標を明確にする成長戦略シート
3-3:より効果的な1on1にするには
さらに、効果的な1on1にするための工夫を紹介します。いかにメンバーの真の声を引き出すかを考えながら、参考にしてみてください。
①空間を演出する
例えば、これからの可能性や未来のことを話すのであれば、天井が高く、広い空間だと話が広がりやすいこともあります。またメンバーの悩みのついて傾聴するときは、逆に狭くて落ち着きのある空間が良いかも知れません。1on1をオフィス以外のカフェで行う人もいれば、散歩しながら行う人もいます。いつも同じ場所で行う必要はありません。可能であれば、目的に合わせて空間を演出しても良いでしょう。
②お菓子を用意する
気軽に食べられるものがあるだけで、アイスブレイクが早くなる効果があり、雰囲気も和やかになります。毎回違うお菓子を用意してみると、メンバーとの距離感も近くなるかもしれません。
③独自のネーミングにする
単に「1on1ミーティング」と呼ぶよりも、もっとラクな気持ちで参加できるネーミングにすることも効果があります。自動車メーカーのホンダも大勢が集まる創造会議を「ワイガヤ会議」にしたのは有名な話。「定例1on1」よりも「ワイガヤ」と名付けた方がより楽しい雰囲気を作り出すことができるでしょう。実際には「脱線ミーティング」「ざっくばらんMTG」「つぶやきミーティング」などと名付けて行う企業もあります。
4:やってはいけない1on1
何となくわかったつもりでも、いざ、1on1をやり始めた頃は誰でも慣れるまでに時間がかかるものです。ここでは初めて1on1を行う上司が陥りがちなポイントを紹介します。
最初からパーフェクトに行うことは難しいと思いますので、実際にやりながら以下の点を気をつけて、ブラッシュアップを続けていくことをお勧めします。と言っても、最初から全てをクリアしようと上司が意識しすぎると、ぎこちない1on1になってしまうので、あくまでも参考程度に、頭の片隅に置いてラクな気持ちで取り組むと良いでしょう。
4-1:上司からの一方通行になっている
1on1で大切なのは、「メンバーに十分に話をしてもらうこと」です。よくありがちなのが、上司からのアドバイスの場になってしまい、メンバーの話を聞くつもりが、結局は上司の話で終わってしまったというケースがよくあります。くれぐれもメンバーの話を傾聴ように心がけましょう。相手の本音や主体的に話をしてもらう傾聴のポイントは以下のものがあります。
部下の本音を引き出す「傾聴」のポイント
・相手の気持ちを丁寧に汲み取ることを心がける。(善悪、好き嫌いで判断しない)
・相手の言葉を必ず口に出して反復する
・相手の言葉を、言い換えて会話に盛り込む
・「もっと詳しく聞かせてもらえる?」など話の続きを上手に促す
・相手が沈黙した時は、じっくりと観察して待つ
・相手はどうしたいのかを確認してその思考の方向にゆっくりと導く
・相手が主体的に行っている事柄に着目して聞く
4-2:途中で話を切ってしまう
メンバーが話している途中で、「それはこうなんじゃないか」などと自分の意見を被せて話を切るのはNG。メンバーを理解したいという思いはわかりますが、まずはメンバーの話を聞くことだけに集中しましょう。メンバーは話すことで自分の考えを明瞭化でき、自己理解も深まります。じっくりと話を聞くことで、1on1を「メンバーの時間」にすることが大事です。
4-3:先に上司の考えを伝えてしまう
メンバーが詳しく語る前に結論づけて、「それは〇〇が悪い(良い)からだ」と先に上司の考えを伝えると、それ以上、メンバーから話ができなくなるケースがあります。1on1は評価面談ではないので、良し悪しの判断ではなく、メンバーの思いや考えを深めることを意識して傾聴しましょう。
4-4:否定=NGと受け取られている
もしメンバーの考えとは違う思いを持っていた場合の否定の仕方にも注意が必要です。上手に否定しないと、いつの間にか上司依存になり、メンバーは考えなくなります。あくまでも、1on1での否定はNGではなく、お互いの思いをフラットに伝え合いながら信頼関係を築くことが求められます。
4-5:自分の経験を自慢してしまう
メンバーの悩みについて、ついつい自分の経験談を語り出す上司っていますよね。メンバーからすると、その時代や当時の状況と今は違うし、参考にならないと思っているかも知れません。1on1は上司の武勇伝を聞く時間ではないのです。メンバーの悩みに寄り添うことを心がけましょう。
4-6:行動案を先に示してしまう
メンバーのこれからの行動について、自身の考えが出てくる前に、上司が良かれと思って「こうやれば?」とアドバイスすることにも注意が必要です。先に行動案を伝えてしまえば、結局は上司の答えで動いてしまうことになりがちです。できる限りメンバー自身の口から答えが出てくるように、少し待ってあげる余裕があれば、良いコミュニケーションになります。
5:オンラインでの1on1
昨今のコロナ禍によってオンライン業務も格段に増えました。通常1on1は対面(顔が見える形式)で行いますが、リモートワークによってオンラインで行う機会も多くなると思います。オンラインでの1on1の特徴やオフラインとの違いを考えてみたいと思います。
5-1:話す内容を事前共有しておく
オンラインに切替える場合は、話し辛いと感じる上司の方も多いかと思います。リモートワーク中にいきなり1on1で上司と接するとメンバーも緊張して何が始まるのか不安に思う人もいます。オンラインでは特に、当日に話すことを事前にお互い確認しておくことで、会話もスムースに進み、話すべき内容に集中することができるようになります。
具体的には、メンバーの方から当日話したいことや相談事項を上司に事前共有します。上司は当日までに必ず目を通し、話すことを考えておきましょう。それにより、オンラインでの1on1がより効率よく行えます。
5-2:お互いの顔を見て、感情を読み取る
オンラインの1on1ミーティングでは、お互いに顔を見せ合いながら行いましょう。オフラインでの対面と同じく、相手の表情から言葉には出てこない細かな感情も分かることがあり、単に画面に向かって話すよりも相互理解が深まります。
5-3:メモを共有する
1on1終了後に、話した内容を振り返るために、お互いが見える形で必ずメモを残すようにしましょう。ミーティング中にメモを共有しながら進めると、お互いの認識のズレも少なくなるはずです。
5-4:相槌や頷きを意識的に大きく
オンラインでは表情や相手の空気感が読み取りづらく、メンバーが話に上司がどう反応するのかも気になるものです。できるだけ話を傾聴しながら、相槌や頷きを少し大げさに行うことを心がけましょう。
5-5:音声のみの1on1もリラックス効果あり
先ほど、お互いの顔を見合わせてと述べましたが、企業によっては、あえて画面オフで通話のみの1on1を行うところも。よりリラックスした状態で、部下の本音を引き出したいという狙いがあるようです。また、メンバーが気軽に参加できる仕立てにすることで、継続的に実施し続けられるというメリットもあります。
いずれにしても、部署や組織が取り組みやすい1on1を作り上げることが大切です。
6:さいごに
1on1ミーティングは、上司の問いかけから始まるメンバーの「内省」の場です。上司との対話ですが、実はメンバーは自分との対話を行います。「8つの習慣」の著者、コヴィー博士は、自分自身が心から何をしたいのか。その心の声に耳を貸していくことがリーダーシップであると言っています。
1on1というきっかけから、メンバーのための時間を定期的に設けることで、より質の高いチームコミュニケーションの実現とより高いチームパフォーマンスにつながるよう、ぜひご自身の組織にも1on1を活用してみてください。
また、私たちパラドックスでは組織と個人がどれほど共感性があるのかを調査する「同志度サーベイ」という社内アンケートも行っています。組織全体の同志度を知り、社内活性化のヒントにもなりますので、興味のある方は、一度お問い合わせをいただければと思います。
<参考>
世古詞一.シリコンバレー式 最強の育て方 人材マネジメントの新しい常識
本間浩輔.ヤフーの1on1 部下を成長させるコミュニケーションの技法
松丘啓司.1on1マネジメント どこでも通用するマネージャーになるためのピープルマネジメント講座
エリック・シュミット、ジョナサン・ローゼンバーグ、アラン・イーグル.一兆ドルコーチ シリコンバレーのレジェンド ビル・キャンベルの成功の教え
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