組織の方向性を緻密に揃える。「チーム理念」をつくろう

企業理念は充分に浸透しているけれど、社員一人ひとりが企業理念を体現している状態には今一歩足りない。チーム(事業部)として、もっと緻密に目線を揃えていきたい。

組織が成熟してくると、このような課題が芽生えてきませんか?

このような状況におすすめなのが、「チーム理念」の策定。

企業理念だけでは曖昧で理解しにくい部分を、よりチームや事業部の日々の仕事に紐づけて落とし込むことで、納得感を持って理念を体現できるようになります。

策定の過程は、チームビルディングにもつながりますよ。

1:企業理念の意義と課題

企業運営において最も重要なのが、企業理念。何のために企業が存在していて、何を目指して活動するのかを明確に言語化したものです。企業理念を全社員に浸透させることで、社員は自らの仕事の意義を理解すると共に、進むべき方向へ足並みを揃えることができます。

もし現状企業理念がない、あるいは浸透していない状態であれば、最優先で理念策定と理念浸透に取り組むことが必要です。

 

▼理想的な企業理念の全体像

一方ですでに企業理念が浸透している企業の中には、別の課題を感じている方もいるのではないでしょうか。

企業理念を表す言葉は、企業全体の方向性や目的を示すためのものになり、事業部が多岐にわたる大企業などでは、どうしても曖昧な表現になりがち。クレド(スピリット)のような個人の行動指針は具体的であるものの、ミッションやビジョン、バリューについては、社員一人ひとりが自分自身とリンクさせるには難しい場合もあります。

特に人事などのバックオフィスのように、ある意味で社員が顧客となる部署や、エンジニアのようにクライアントと直接の関わりがない部署では、企業理念を理解し共感していても、実際の自分の仕事とは企業理念が遠く感じてしまうことが多いです。

企業理念と日々の業務がリンクしないと、企業理念に基づいてつくられた評価基準についても、自分の仕事がどうつながってくるのかがわかりづらくなりますよね。

このような課題を解決するために、「チーム理念」の策定をご提案します。

2:チーム理念とは

チーム(事業部)理念とは、その名の通り、事業部やチーム単位で掲げる理念のこと。当然企業理念を基にしつつ、より事業部にマッチするように、内容を練り直したものです。

イメージするならば、企業理念が「ビルをつくろう!」であるとすると、事業部理念は「基礎をつくろう」であったり、「窓の形を考えよう」であったり。ビルをつくるという目的に向けて、より具体的に事業部としては何をするかを示すためのものです。

企業理念をより具体的な言葉で落とし込むことで、チームとして目指すべき方向がより一層明確になります。事業部全体での共通理解が深まり、仕事も進めやすくなるでしょう。

チーム理念があっても、公開している企業はほとんどないので、一例として関連会社間での企業理念をご紹介します。

大手楽器メーカーのヤマハと、そこから分離する形で設立された、バイクで有名なヤマハ発動機。これらの企業理念とブランドメッセージは、以下のようになっています。

 

ヤマハ株式会社

 

【企業理念】

感動を・ともに・創る
私たちは、音・音楽を原点に培った技術と感性で、
新たな感動と豊かな文化を世界の人々とともに創りつづけます

 

 

【ブランドプロミス】

MAKE WAVES
内なる思いを自分なりに表現して周りにインパクトを与え、日々の積み重ねによって成長し、より広い世界と響き合う。“Wave”とは、そのために、自ら新たな一歩を踏み出す時に感じるワクワクと心震える状態を表しています。

 

ヤマハ発動機株式会社

 

【企業目的】

感動創造企業
世界の人々に新たな感動と豊かな生活を提供する
人々の夢を知恵と情熱で実現し、つねに「次の感動」を期待される企業
それが、感動創造企業・ヤマハ発動機である。

 

【ブランドスローガン】

Revs your Heart
Rev — エンジンの回転を上げるように。
心躍る瞬間、そして最高の経験を、YAMAHAと出会うすべての人へ届けたい。
私たちヤマハ発動機は、イノベーションへの情熱を胸に、お客様の期待を超える感動の創造に挑戦しつづけます。

企業理念(企業目的)に共通する「感動」や「創造」、そしてブランドプロミス(スローガン)に共通するのは、「心が震える」「心が踊る」という言葉。

また「新たな感動と豊かな文化」や、「技術と感性」「知恵と情熱」など、同じ言葉や似たような表現を用いながら、それぞれの企業の特徴や目指すものを表しています。

このように、自社の事業内容に合わせて言い換えたり、異なる言葉を使いながらも、本質的には同じものを目指していることが分かります。

関連企業間で理念を自社に合うようブレイクダウンしている例を取り上げましたが、チーム理念も同様に、自社の企業理念を本質としながら、事業部の特徴に合わせて言葉や表現を変えていきます。

3:チーム理念のつくりかた

ではここからは、実際にチーム理念を策定する際の方法についてご紹介します。

3-1:チーム理念の項目

まず企業理念に基づいて策定するチーム理念には、2パターンあります。

ミッション・ビジョン・バリュー(クレド)を全て策定する

ミッション・ビジョン・バリュー・クレドなどから成る企業理念すべてを、より事業部やチームに寄り添ったものにしたい場合や、継続的なチームビルディングとしての効果も得たい場合は、これら全てを策定するのが良いでしょう。

企業理念の中で、行動指針(クレド/スピリット)に関しては、そもそも個人軸での具体的な行動を表したものです。この項目については、企業理念のものと矛盾なく、事業部に合わせたものをつくるのが難しい場合がありますので、無理に策定せず統一することをおすすめします。

このパターンでチーム理念を策定する場合は、以下の順番で策定を進めていきます。

①ミッション
②バリュー
③ビジョン
(④クレド/スピリット)

まずは自分たちの存在意義を明らかにします(ミッション)。その後、自分たちが誰のために何を提供するのかを明確にしましょう(バリュー)。それらが揃ったところで、未来はどうなっていれば良いかを考えます(ビジョン)。必要であればその後、ミッション・ビジョンの実現に向けた行動指針(クレド/スピリット)を決めましょう。

バリューだけを策定する

企業理念の浸透や共感は概ねできている中で、チームとしてもう少し精緻に足並みを揃えたいという場合や、チーム意識を高めたい場合は、企業理念の中で「バリュー」のみを事業部理念として策定するのがおすすめです。

具体的なつくり方の部分で詳述しますが、バリューは、「自分たちの顧客は誰か?」を考えることから始まります。営業ならクライアント、マーケティングはクライアントあるいは営業部門、人事は社員あるいは採用候補者など。会社全体にとっての顧客(例えばエンドユーザー)と、事業部やチーム、プロジェクトにおける顧客は異なることが多いのです。

企業理念を踏まえ、さらに具体的に落とし込み、事業部やチームごとの個性を出しやすい項目ですし、組織全体で足並みを揃える上で重要な部分です。

事業部全体では組織の人数が多すぎる場合は、企業理念→事業部理念→◯◯課理念→◯◯チーム理念のように必要なだけ適宜細分化していくのも良いでしょう。

事業部全体ではミッション・ビジョン・バリュー(・クレド)を策定し、チームごとにさらにバリューのみを策定する、というような方法も良いかもしれません。もととなる企業理念とズレが生じてしまったら本末転倒ですから、企業理念との一貫性を保ちながら、1段階ずつ具体性が高まるように作成を行うよう注意していきましょう。

3-2:策定の手順

具体的なチーム理念の策定は、以下のような手順で行います。

①チーム理念をつくる目的をメンバーに共有する
②企業理念の意味・意義の共有と説明を行い、理解を深める
③企業理念に紐づける形で、チームが価値を提供する顧客を設定する
④チームの「らしさ」「価値観」のキーワードをできるだけ多く出す
⑤キーワードを精査する
⑥策定の順番にしたがって言葉を検討する

詳細な手順については、以下の記事にある企業理念のつくり方と同様ですので、参考にしてください。

企業の根幹を担うミッション ビジョン バリューの意味合いと作り方

4:最後に

チーム理念をつくることは、企業が掲げている理念を実現するため、チームが提供する価値は何か社員の目線が揃うことで日々の業務を進めやすくするだけではなく、その過程はチームビルディングにもつながります。

また企業理念が策定された状態で入社した人材が、主体的に理念をつくる体験を通して、企業理念や企業全体への理解を深めるきっかけにもなるでしょう。

自分自身が所属するチームだけで実施するのももちろん良いですが、キックオフのタイミングなどで全社的に実施するのもおすすめです。

以下の記事も参考にしつつ、自社にあったやり方で取り入れてみてください。

「聞くだけ」ではなく「参加する」全社キックオフの実施方法をご紹介!

 

 

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