街中やスマホの中など、私たちが何気なく日常生活を送りながら目にしている広告。その目的はさまざまですが、多くの人に訴求できる広告は商品の宣伝だけでなく、企業のパーパスやありたい姿をわかりやすく消費者に伝えることにも有効な手段となります。
この記事では、企業や商品のブランディングをする際に覚えておきたい「ブランド広告」のつくり方と、実際の事例を合わせてご紹介していきます。
1:「ブランド広告」と一般的な広告の違いは?
「ブランド広告(またはブランディング広告)」とは、その名の通り特定の企業や、商品・サービスなどのブランディング活動を推進するために作成する広告のことです。一番の目的は「企業や商品の価値やブランドイメージを高めること」となりますので、商品の購入や問い合わせといった消費者からの直接的なコンバージョンを狙うものではありません。そのため、ブランド広告は「イメージ広告」と呼ばれることもあります。
一方、消費者からのコンバージョンを目的とした「レスポンス広告」などのように、マーケットに向けて「商品やサービスを販売する」ということに注力した広告は「マーケティング広告」とも言えます。実店舗やデジタル上でもよく見かける、「期間限定〇〇%OFFセール」や「早い者勝ち!モニター募集!」などの広告もこれにあたります。
気をつけたいのは、ブランド広告は「イメージを高めること」を目的として出稿するものであること。もちろん企業や商品のイメージが向上した結果、商品の売上向上が期待できますが、あくまでもそれは副産物であるということは注意が必要です。広告を出稿するというと、どれだけのコンバージョンがあったかが良し悪しの判断基準になりますが、ブランド広告はあくまで直接的に「売る」ためのものではないことを念頭におきましょう。
▼ブランディングとマーケティングの違いについてはこちらの記事をご覧ください。
ブランディングとマーケティング。違いとその関係性をスッキリ解説!
2:ブランド広告をつくるうえで押さえておきたい2つのポイント
続いては、実際にブランド広告をつくるにあたって大切なポイントをご紹介していきます。
ポイント① ターゲットに持ってもらいたいイメージを表現する。
「ブランド広告はイメージ広告である」と前章でも書きましたが、「ブランド」は目に見えるものではありません。あくまで、消費者ひとりひとりの頭の中でつくられるイメージでしかないのです。そのため、ブランド広告を出すにあたり「〇〇というブランドは××である」というイメージをいかに確立させるかが非常に重要になります。
例えば「NIKE」は世界的に有名なスポーツブランドで、スニーカーなどの商品には誰もが知るロゴマークが描かれています。これはブランドを可視化した「ブランドの要素」の一つであり、ブランドそのものではありませんよね。NIKEのロゴが付いた商品が欲しいと消費者が思う背景には、「NIKEはかっこいいブランドである」という、企業によってブランディングされたイメージがあるためです。
消費者に選ばれるために「どんなイメージを持ってもらいたいか」を具体的に持ち、それに沿ったメッセージやクリエイティブとなるよう心がけましょう。
ポイント② 広告は見られないものだという前提に立つ。
大前提として忘れてはいけないのが、「多くの人はそもそも広告に関心がない」ということです。実際に、今日一日で街中やテレビ、スマホの中で見かけた広告の内容をどれくらい思い出せるでしょうか?どんな企業が出した広告だったか、どんな商品だったか、思い出せる人は数少ないと思います。
そのため、出稿する際には「広告は見られないものである」ということを前提に、見た人の記憶に残る広告を目指さなくてはいけません。記憶に残る広告を制作するためには、例えば時節を捉えた切り口や、メッセージ性、企画性などが必要となります。覚えてくれる消費者が増えることで、世間で「このブランドといえば〇〇」というイメージが定着し、ブランドが強化されていきます。
コラム:ブランドは、無形資産である。
米カリフォルニア大学バークレー校ハースビジネススクールのディビッド・アーカー名誉教授が提唱したのが、ブランド・エクイティ(Brand Equity)という概念です。彼は、ブランドのもつ資産価値を次の5要素に分解しています。
2.ブランド認知(ブランドの認知度)
3.知覚品質(消費者が感じるブランドの品質)
4.ブランド連想(ブランドから連想されるイメージ)
5.その他の知的所有権のある無形資産(特許、商標、取引先との関係性など)
上記5つのうち、1〜4は「受け手の頭の中」で形成されるものです。「ブランド力」が強いことで得られるメリットは多くあり、ブランド広告はこれらを強化できる、という意味で有効な手法ではありますが、一方で意図しない伝わり方をしてしまうとブランドを毀損してしまう恐れもあるので、注意が必要です。
3:ブランド広告で伝えるべきは「パーパス」
これまで何度も繰り返している通り、ブランド広告では、消費者が頭の中でつくりあげるイメージがとても重要です。
「あなたの企業・商品に対して、どのようなブランドイメージを持って欲しいですか?」と聞かれて、あなたなら何と答えるでしょうか。また、その答えは社員の間でも共通しているでしょうか。企業が消費者に伝えたいと思っているイメージをきちんと届けるためには、まずは「自分たちがどんなブランドとして見られたいか」を社内で共有できている必要があります。
ここで重要となるのが、企業の存在意義である「パーパス」です。自分たちがなぜ存在し、どのような未来をつくろうとしているのかを物語るパーパスがしっかりとしていれば、自然と消費者に伝わるイメージも統一されるでしょう。昨今は、企業としてどのように社会に貢献していくのかを重要視される時代です。どのような事業をしているかということだけでなく、その先にどのような未来や社会を創ろうとしているのかを伝えることで、人々の共感を呼び、ブランドとして支持されるのです。
▼パーパスの具体的な作り方はこちらの記事をご覧ください。
プロが解説する、パーパス作成のステップとポイント
4:事例紹介
パーパスがブランド広告において重要であることをここまでお伝えしましたが、ここでは実際にパーパスを起点に、消費者にブランドイメージを伝えている広告例をみてみましょう。
「Don’t buy this jacket」patagonia
パタゴニアは「私たちは、故郷である地球を救うためにビジネスを営む」というパーパスを掲げ、環境負荷の少ない製品作りに取り組んでいることはもちろん、売上の1%を地球環境保全の活動に毎年寄付する活動を行うなど、「目的に進む(Going purpose)」企業として知られています。そんなパタゴニアが1年でもっとも商品が売れるブラックフライデーに出したのが『このジャケットを買わないでください(DON’T BUY THIS JACKET』という広告でした。本来であれば最も商品を売りたいはずの日に、あえて真逆のメッセージを打ち出すことで、パーパスに対して本気であることを示したのです。これにより、パタゴニアは地球のサステナビリティを牽引していく企業としてのイメージを消費者に与えました。
「MADE FOR ALL」 FIRST RETAILING/UNIQLO
「服の領域で社会を支えるインフラになる」。これは、2020年にファーストリテイリングのパーパスについて、柳井正社長が語った時の言葉です。これに基づき、ユニクロは“MADE FOR ALL”と銘打ち、国籍・年齢・性別を超えた、あらゆる人のための服であると宣言するブランド広告の展開を行なっています。他にも、“Life Wear”という有名なコンセプトにもあるように、「みんなの日常着(インフラ)であるUNIQLO」のイメージを消費者の中に構築しています。
「We Care More 」POLA
国内大手化粧品メーカであるPOLAは、2015年に企業理念をリニューアルし、「私たちは、美と健康を願う人々および社会の永続的幸福を実現します。」という、目の前の人々だけでなく、その先にある社会にまで視野を広げた理念を掲げました。「We Care More.」は、100周年ビジョンの行動スローガンとして定められました。「妻の荒れた手を治したい」という想いから立ち上げられた会社は、人、社会、そして地球をケアしていく会社へ。「We Care More.」というメッセージにはそういった想いが込められており、現在、この言葉を起点に、国際女性デーやSDGsを題材としたブランド広告を展開し始めています。
以上3つの事例からもわかるように、私たちが何気なく抱くブランドのイメージというのは、企業側の打ち出すブランド戦略により形成される要素が多分にあるのです。自社のブランドイメージを左右する広告を作成する際には、「消費者にどのようなイメージを持たれたいか」を明確にし、形にするようにしましょう。
最後に、私たちパラドックスは、「すべての人や企業は、自分にしかできない世の中への役立ち方がある」と考えています。それを、企画性をもって伝えることはもちろん、その企業だからこそできる「世の中への役立ちかた」を1から言語化することもお手伝いしています。ブランディングをしたい、ブランド広告を制作したい、とお考えの方はぜひお声がけください。
コメント