パーパス作成のステップと、押さえておくべきポイントを解説!

ビジネスシーンにおいて、最近では特に「パーパス」という言葉を耳にする機会が増えたのではないでしょうか。世の中で「パーパス」への関心が高まるにつれ、企業にも変化が現れ始めています。弊社にも多く寄せられる声として、「これまではミッション・ビジョンを掲げていたがパーパスに変えるべきか?」といったご相談や、「パーパスをつくりたい」というご依頼をいただくようになりました。

中には「企業経営にはミッション・ビジョンではなく、パーパスこそが必要だ」とする本やメディアもあります。しかし、パーパスとは「企業の存在意義」のことであり、これは決して新しい概念ではありません。実は、ミッション・ビジョンとほとんど同じ概念であると私たちは考えています。

この記事では、これまで280社以上の理念策定に携わってきた経験から、企業がパーパス策定をする上で大切なポイントやステップをご紹介していきます。

1:パーパスとは。ミッション・ビジョンとの違いは?

上記の通り、パーパスとミッション・ビジョンは近しいものであると考えますが、それぞれどういう意味なのかを確認してみましょう。

まず「パーパス」とは、企業としての存在意義のことです。企業独自の強みを活かして、どのように社会に対して価値を提供できるか。社会的な意義と、企業としてのありたい姿が重なるポイントにあるものです。

一方、ミッション・ビジョンはというと、ミッションが社会において日々果たすべき「使命」、ビジョンがそのミッションを果たしていくことで「実現したい未来の社会」のことです。このとおりにミッション・ビジョンが定められていれば向かうべき方向性は決まっていますので、あらためてパーパスをつくる必要は本来ありません

しかし、最近では「ミッション・ビジョンは古い。パーパスをつくるべきである」という意見も多く聞きます。これは、多くの企業が定めているミッションやビジョンが社会に果たすべき「使命」や「実現したい未来」ではなく、「自分たちのありたい姿」「自分たちがなりたい姿」というように、自分たちを主語とした言葉になってしまっていることもあるからではないかと私たちは考えます。自社のミッションやビジョンに社会的な視点が不足していると感じる場合には、そこを改めるという方法もありますので、そちらは後ほどご紹介していきます。

パーパスという言葉が流行っているからという理由だけでつくるのでは、意味がありません。まずは、現在の自社の理念をしっかりと見直して、足りない視点があるのであればつくり直すことを検討してみましょう。

2:パーパス作成のステップ

ここからは、実際にパーパスを作成するステップを説明していきます。パーパスを策定するにあたり重要になるのが、SEEDS(らしさ)とNEEDS(社会課題や時代の要請)という二つの観点、そしてストーリー性です。なぜ自分たちがそのパーパスを掲げるのか。社員が「WHY」の部分を理解し、共感を得られるような形で言語化する必要があります。

Step1SEEDSの検討

はじめにやるべきことはSEEDSの確認です。創業からの自社の歴史を紐解き、自社の価値観や強み、これまで企業として発揮してきた存在意義を再確認します。具体的には、以下のポイントに着目するといいでしょう。

1:創業のきっかけや、創業者の会社設立までの背景。

2:会社が成長したタイミングや、壁にぶつかったタイミング。

3:現場で語り継がれている伝説の仕事や、メモリアルな仕事。

4:お客様にとって、自分たちはどういう存在だったのか、というこれまでの存在意義。

1と2は創業者や経営者から、3は現場で活躍されている方に聞くといいでしょう。4については、お客様に直接聞いてみることをオススメします。

さまざまな角度から過去のターニングポイントを振り返ることで、会社にとって重要な価値観のヒントや、経営の判断基準が見えてきます。それを考察することで、自社らしさを確認することができるのです。

Step2NEEDSの検討

続いてNEEDSについて考えます。NEEDSには「顧客から」と「社会から」という2つのニーズがあります。

はじめに考えるべきは、「顧客からのニーズ」です。自分たちはこれまでどのような顧客に求められてきて、これからはどのような顧客に求められたいのか。それを考える上で重要なのが、「顧客を絞る」こと。一つの企業がすべての人を等しく幸せにするのは不可能であり、だからこそ、自分たちが大切にすべき顧客をしっかりと見極める必要があります。それを明確にする問いとして、「あえて好かれたい顧客」「あえて嫌われたい顧客」を考えてみるといいでしょう。顧客が絞れたら、次は「好かれたい顧客」はどんなニーズを持っていて、そこに対して自社ではどのような価値を提供できるのかを考えましょう。

顧客からのニーズが見えたところで、「社会からのニーズ」も検討しましょう。今、社会が抱えている課題を注意深く考察しながら、その中で「自社で解決できる可能性のある課題」を見つけ出すことが重要です。その課題にこそ、社会のなかであなたの会社に担うべき役割のヒントがあるはずです。

Step3:SEEDSとNEEDSの接点にあるパーパスとストーリーを言語化

SEEDSとNEEDSが明確になったら、その接点にあるパーパスを言語化します。「企業として大切にすべき価値観と強み」と、そんな会社だからこそ「解決すべき社会課題」が重なる接点に着目することで、「会社が存在する意味」、つまりパーパスに到達するはずです。

もうひとつ重要なことが、ストーリーを紡ぐこと。パーパスはそれ自体だけでは存在し得ず、その背景にはここまで説明してきたようにSEEDNEEDSがあります。未来は常に、過去から現在の延長線上にあり、だからこそそれを一本のストーリーにするつもりで言語化することが重要なのです。

3:パーパスの言語化で押さえておきたい6つのポイント

ここまでで言語化のプロセスはおわかりいただけたかと思います。

最後に、言語化する上で注意したい6つのポイントをおさえておきましょう。

 SEEDS(らしさ、強み)とNEEDS(社会・時代・顧客からの要請)を的確に踏まえているか
松下幸之助氏の有名な言葉にあるように「企業は社会の公器」であり、社会のニーズがあって初めて意味を持つものです。自分たちは社会に何を求められているのか、どんな客層が求めているのかを見極めて、社会から選ばれる企業であるための視点が重要です。一方で、求められることに応えるばかりでなく、自分たちらしさ、独自性も必要です。企業として積み上げてきた歴史をしっかりと振り返り、自分たちにしかできないことを明確にしましょう。

パーパスに新しい意味や意義が含まれているか
パーパスは企業を支える人々に向けた、重要なメッセージとなります。顧客にとっては商品の購入理由となり、社員にとっては働く理由となり、株主にとっては投資の判断材料になる。伝わりやすいパーパスにすることはもちろん大切ですが、未来まで見据えた上で、「見たままではない意味」を持たせる必要があります。

「見たままではない意味」とはどういうことか。すこし説明しましょう。

たとえば、DXを生業としている企業の場合、「DXによって社会に貢献する」は「見たまま」です。その企業にとって、DXはあくまでも手段であって、目的ではないはず。「DXによって社会に貢献する」ことで、社会にどんな価値を生み出したいのか。どんな未来を実現したいのか。そのように、DXを行ったその先にある意味や意義を深く思考し、パーパスに据えなくてはなりません。10年、20年と時を経ても意義を失わず、社員が大切にしたいと思える言葉を選びましょう。

人に話したくなるような、心を動かすストーリーになっているか
先述の通り、パーパスを策定するにあたりストーリー性は大切なポイントになります。パーパスをもとに会社について語る際、人間の本質に根差した、誰かに思わず話したくなるような心を動かすストーリーになっているでしょうか。自社にしか語れないものであり、さらに社会的な意義も深いものであれば、聞いた人は必然的に誰かに話したくなってしまうものです。

卓越性と差別性が明確になっているか
ブランディングとは、突き詰めれば自社らしさや強みを極限まで「尖らせる」ことです。自社を表現するために選んだ言葉が「尖って」いるかどうかを判断するには、「卓越性」と「差別性」をキーワードにするといいでしょう。自社がこれまで培ってきたものを踏まえた卓越性が表現されているか。他社には同じことが言えないよう差別化できているか。この問答を繰り返しながら、言葉を研ぎ澄ましていきましょう。

変化を起こすための戦略性があるか
パーパスは掲げただけでは、会社は何も変わりません。実際に、経営の中に落とし込んで初めて意味を持つものです。ゆえに掲げた言葉そのものが、会社を変化させ、進化させられる可能性を含んでいるかどうかは非常に重要です。現状を言い表すだけの言葉ではなく、事業や組織にポジティブな変化をもたらす「予感」があるかどうか確認しましょう。

独自の世界観が築けているか
パーパスブランディングを行う際には、パーパスを起点とした独自の世界観を作ることが重要となります。選ぶ言葉やビジュアルによって自社ならではの強い世界観を築き、社会でのポジショニングを明確にすることを意識しましょう。

4:まとめ

ここまで、パーパスのつくり方についてご紹介してきました。新たにパーパスをつくろうとしている方も、すでにあるものに磨きをかけたいと思っている方も、これらを参考にパーパスの策定を行ってみてください。「流行っているから」ということを理由にせず、あらためて自社への認識を深め、強みを活かしながら、社会に貢献できるようなあり方を見つけましょう。

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