「社内外に出していく会社のメッセージに統一感がない」
「ロゴやコーポレートカラーがしっくりきていない」
「会社やサービスのブランドがぼやっとしている」
ブランディング企業である私たちパラドックスにも、
実際に上記のような悩みをお持ちのお問い合わせを数多くいただくのですが、
もしも、こんな悩みを現在お持ちでしたら、
コーポレートアイデンティティ(CI)の策定を検討してみることが非常におすすめです。
コーポレートアイデンティティというと、
企業理念やロゴを思い浮かべる方も多いかもしれませんが、
実は「コーポレートアイデンティティ=企業理念・ロゴ」ではありません。
正確にいうと、コーポレートアイデンティティの一部に
企業理念やロゴがあるというのが正しいです。
詳しくは2章でご説明いたしますが、
コーポレートアイデンティティは
マインドの要素(企業理念)
ビジュアルの要素(ロゴやコーポレートカラー)
ビヘイビアの要素(社員の行動)
の3つから成り立っています。
世の中を見渡した時にすぐに思いつくブランド力のある企業は、
どこでも同じことを語り、商品や店舗、webサイトも同じ世界観で展開され、
社員の行動にも一貫性があるはずです。
一貫性をもって企業活動しているからこそ、
結果的にブランド力のある企業になっているとも言えます。
たとえば、スターバックスを考えてみてください。
“スターバックスの例”
スターバックスは、設立当初シアトルで単なるおしゃれなカフェではなく、
忙しいビジネスパーソンのために、オフィスでも、家庭でもなく、
リラックスできる第3の場所づくり“サードプレイス”というキーワードを掲げていました。
現在でも、ゆったりとくつろげるソファがあり、
音が立たない紙コップが使用され、店員さんがとてもフレンドリーなのは
どの店舗を訪れても感じられるスターバックスらしさですよね。
また、緑を基調にしたロゴや木のぬくもりを感じられる外観はどの街に行っても、
すぐにスターバックスだと認識できるはずです。
こんな企業としての一貫性を築く基礎になっているのが、
コーポレートアイデンティティ(CI)なのです。
この度は、最初に挙げたような課題をお持ちの
企業様の一助になれればと思い、この記事を執筆しました。
記事が読み終わるころには、コーポレートアイデンティティと
その重要性の理解が深まり、策定に向けて動き出せるようになれますと嬉しいです。
どうぞ、最後までよろしくお願いします。
1:コーポレートアイデンティティは、企業の不易となる志
企業活動のあらゆる側面に一貫性をもたせ、
ブランド力を向上させていくために絶対に必要なのが
コーポレートアイデンティティ(CI)です。
俳人である松尾芭蕉の考え方に「不易流行」というものがあります。
・不易とは、時代の新古を超越して普変なるもの(木に例えると幹)
・流行とは、その時々に応じて変化してゆくもの(木に例えると枝葉)
を表しており、
「普遍の真理を知らなければ基礎が確立せず、
変化を知らなければ新たな進展がない」という意味です。
つまり、不易も流行も両方を大切にするべきという教えなのですが、
それはビジネスの世界でも同じだとパラドックスは考えています。
不易流行を企業に置き換えて考えてみると、
・不易とは、変えてはならない企業の使命や価値観、らしさ
・流行とは、変えていくべき日々の活動
とすることができます。
近年は世の中の変化が激しいこともあって、
つい流行の改善に終始してしまいがちです。
しかし、不易の部分もそれと同じくらい重視すべきであり、
その不易に当たるのがコーポレートアイデンティティとなるのです。
パラドックスでは、すべての組織には生まれた意味があると信じており、
その企業の使命や価値観、らしさがコーポレートアイデンティティとなることから、
コーポレートアイデンティティのことをその企業の「志」とも呼んでいます。
もし、この記事をお読みのみなさんの企業に
コーポレートアイデンティティが存在しない、
あるいは存在するが機能していないという場合は、
すぐにコーポレートアイデンティティの策定および見直しを
することを強くおすすめします。
2:コーポレートアイデンティティは、MI・VI・BIから成り立っている。
コーポレートアイデンティティ(CI)は、
・マインドアイデンティティ(MI)
・ビジュアルアイデンティティ(VI)
・ビヘイビアアイデンティティ(BI)
の3つのアイデンティティから成り立っています。
簡単にいうと、心・見た目・行動のアイデンティティとなりますが、
このうちひとつでも欠けてしまうと完全なコーポレートアイデンティティとは言うことができません。
たとえば、本当にかっこいい人というのは、
考え方(心)・身だしなみ(見た目)・振る舞い(行動)のすべてがかっこよく、
さらにいつ見てもかっこよさにムラがないはずです。
いくら服装だけがかっこよくても、ポイ捨てをしていたら、かっこよく思えませんよね。
コーポレートアイデンティティもこれと一緒で、
MI・VI・BI3つのアイデンティティが、
全てそして常に存在し、機能していることが重要です。
では、各アイデンティティがどういったものなのか、具体例も交えてご説明してきます。
※具体例はデザイナーズブランドのユーズドセレクトショップ「RAGTAG」で
知られる株式会社ティンパンアレイの事例になります。
2-1:マインドアイデンティティとは、企業理念。
マインドアイデンティティ(MI)とは、
「企業の存在意義とあり方を言語化したもの」、
つまり企業理念がこれに当たります。
・その企業が何のために存在しているのか。
・どこに向かって企業活動をしているのか。
・その企業の強みはなんなのか?
・日々どういったことを心がけているのか。
このような、その企業の思想や使命、志といった根本の考え方・あり方の特徴を
言語化したものが企業理念であり、マインドアイデンティティとなります。
マインドアイデンティティおよび企業理念は、
下記の5つの要素から構成されています。
・ミッション(日々果たすべき使命)
・ビジョン(実現したい未来)
・バリュー(約束する価値・強み)
・スピリット(大切にすべき精神)
・スローガン(ブランドの合い言葉)
ただ、企業のHPや会社案内などで企業理念のページを見ると、
企業理念としてひとつの文言しか載っていない場合があると思います。
これは、ミッションやビジョンだけを企業理念としている掲載しているケースがほとんどです。
もちろん、HPにミッション ビジョン バリュー スピリット スローガンの
すべてを掲載する必要はありませんが、
社内ではこの5つの要素がしっかりと存在していることが大切です。
“ミッション ビジョン バリュー スピリット スローガンについて”
ミッション:
ミッション ビジョン バリューの並びの中で中心にあるのが、ミッションです。
ミッションを一言でいうなら、「日々果たすべき使命」。
過去、現在、未来に渡って日々果たしていることが、ミッションになります。
ビジョンとは:
ビジョンとは、ミッションを日々遂行することで企業として
辿り着きたい「実現したい未来」であり、自分たちが目指している未来の姿です。
自社だけの未来ではなく、自らのビジネスを通じてどのような社会を
実現させたいかという社会的意義や価値貢献といった「世の中との接点」を持ったものです。
バリューとは:
バリューとは、その企業やブランドがマーケットやお客様に提供している、
そのブランドにしか生み出せない独自の価値や強みのことです。
スピリットとは:
スピリットとは、ミッション・ビジョン・バリューを実現するため、
組織に属する一人ひとりが日々どう考え、どう行動すべきか、
という心がけや行動の指針を表したものです。
スピリットは、「行動指針」「クレド」と言い換えられる場合もあります。
スローガンとは:
スローガンとは、その企業・ブランドのミッションやビジョンを
マーケットやお客様に向けて、「らしさ」をふまえながら、
分かりやすく伝えるための合い言葉になります。
- 株式会社ティンパンアレイのマインドアイデンティティ
株式会社ティンパンアレイが運営するデザイナーズブランドのユーズドセレクトショップ「RAGTAG」の生まれは、
高級ブティックにて商品を眺める女子高生が「私たちには高くて買えない」とつぶやく声を聞いたことがきっかけ。なんとかして、彼女たちにその服を着てほしい。いいものが手頃な価格で買えたら、喜ぶ人がたくさんいるはず。こうした強い想いから、下記のミッション、ビジョン、スローガンがつくられています。▲ミッション・ビジョン
▲スローガン
マインドアイデンティティおよび企業理念、
そして「ミッション ビジョン バリュー スピリット スローガン」につきましては、
下記の記事にも詳しく記載していますので、併せてご覧ください。
「企業理念とは?100年続く企業になるために必要な企業理念を徹底解説。」
「企業の根幹を担うミッション ビション バリューの意味合いと作り方」
2-2:ビジュアルアイデンティティとは、言語化されたMIの可視化。
ビジュアルアイデンティティ(VI)とは、
言語化された理念やブランドアイデンティティを最適なデザインに落とし込み、
webやパンフレットなどの各種広告物、空間やユニフォームなど、
一貫した世界観でメッセージを伝え続けることです。
視覚的な世界観が一貫していることによっても、
企業や商品・サービスの目指すべき姿を社内外に効率的、効果的に認知・浸透させ、
そのブランドを世の中に確立することができるが可能になってきます。
人間が物事を判断している五感の割合も、
視覚が一番高く87%、聴覚が7%、触覚が3%、嗅覚2%、味覚1%
というデータも出ています。
そして、「VI」こそが視覚情報にあたります。
ビジュアルアイデンティティ(VI)を策定する上でポイントになることは、
センスや感性に捉われないことです。ビジュアルアイデンティティは、
デザイン的な要素もあるので、どうしてもセンスや感性を重視してしまいがちですが、
実はとてもシステマチックなものなのです。
なぜなら、企業にはそれぞれマインドアイデンティティで規定したような
「らしさ(ブランドパーソナリティ)」がありますし、
そもそも人々には色や形から抱くイメージにも共通した感覚があるからです。
たとえば、みなさんは「情熱的」という言葉から何色を想像しますか?
おそらく、「赤」や「オレンジ」といった暖色系のカラーではないでしょうか。
他にも、「冷たい」という言葉からは「青」といった寒色系のカラーを、
また、「茶」「黒」といったカラーからは、「大人っぽさ」「高級感」など
を連想できるのではないでしょうか。
このように、多くの人々にメッセージを伝えるシーンでは、
その企業の「らしさ(先進的・ユニーク・信頼感があるなど)」と
人々に共通している「心理学的な感覚(情熱的は赤色・クールは青色など)」に
則したビジュアルアイデンティティが必要になるのです。
また、策定したビジュアルアイデンティティは
あらゆるところで統一して使用することが大切です。
たとえば、企業HP、パンフレット、名刺、封筒など
その企業から出されるあらゆるものに、同じカラー・フォントを
使用し世界観を統一しましょう。
そうすることで、ビジュアル面から企業の
アイデンティティを高めていくことが可能になります。
- 株式会社ティンパンアレイのビジュアルアイデンティティ
株式会社ティンパンアレイには、下記のコーポレートロゴがあります。
ティンパンアレイは、ただのブランド古着屋ではありません。本当に価値のある「いい服・もの」をずっと長くファッションを愛する人々の中で繋ぎ、循環させていくことを大切にしています。
そのため、コーポレートロゴは循環の円・メビウスの輪をモチーフにした全音符になっています。なぜ、全音符かというと、音符の中で一番長く続く音であることと、創業者をはじめ音楽が好きな社員が多いため。また、このロゴは黄金比と黄金角が取り入れられており、ティンパンアレイが大切にしている自然で不易な古びない美しさがロゴにも詰まっています。
また、カラーはクールでもありカジュアルでもある青色を使用しており、サービス・採用サイトやパンフレットなどあらゆる場所でキーカラーとして展開されています。
▲コーポレートサイト
▲採用パンフレット
ビジュアルアイデンティティ(VI)についての詳細は、
下記の記事にも記載しておりますので、併せてご覧ください。
2-3:ビヘイビアアイデンティティ(BI)は、社員の一貫された行動
ビヘイビアアイデンティティとは、
社員やスタッフがマインドアイデンティティに基づいて、
その企業らしい一貫した行動を、日々の仕事やマネジメントといった
あらゆるところで行い続けることで生まれる行動のアイデンティティです。
ディズニーリゾートのスタッフさんを思い浮かべていただけると、
イメージしやすいと思います。
ディズニーリゾートには、以下のマインドアイデンティティが存在します。
-理念(=ミッション)
「幸せを提供する」
-行動指針(=スピリット)
「安全性、礼儀正しさ、ショー、効率」
ディズニーリゾートでは、上記のスピリットが
しっかりと行動にまで落としこまれているため、
どのスタッフさんも笑顔でホスピタリティに溢れ、
「いってらっしゃい!」と挨拶してくれますよね。
ただ、この素晴らしいディズニーリゾートの接客も1日では
アイデンティティとまではなりません。ゲストに夢のひとときを
とことん楽しんでもらうためのディズニーリゾートらしい一貫した行動を
全スタッフが長い間継続して行っているからこそ、
揺るぎのないアイデンティティになっているのです。
ディズニーリゾートの例のように、ビヘイビアアイデンティティは、
マインドアイデンティティ(特にスピリット)が、社員やスタッフの行動に紐づくことで生まれます。
この紐づくというのがポイントです。マインドアイデンティティが
企業内にただ存在しているだけでなく、
しっかりと社員一人ひとりに浸透している状態が大切になります。
- 株式会社ティンパンアレイ のビヘイビアアイデンティティ
- 「わたしたちの使命は、ファッションを通して一人ひとりの願いを叶え続けることです。」というミッションと、「おしゃれになることをあきらめない世の中。」というビジョンの実現に向けた日々の行動の精神として、下記のスピリットがあります。
実際にRAGTAGのお店を訪れると、接客してくれる店員さんも服をお買取りしてくれるバイヤーさんも、とても相手目線の接客をしてくださります。たとえば、お買い取りに来たお客様に、いまその服を売ることが得策ではないと判断した場合は、売らないほうがいいですよと提案してくれるみたいです。また、ECサイトにおいても、相手目線で傷の表記なのがちゃんと見やすく表示されており、オフライン・オンライン問わず一貫した行動を感じることができます。
スピリットにつきましては、
下記の記事にも詳細がありますので併せてお読みいただけますと、
より理解が深まると思います。
「企業の根幹を担うミッション ビション バリューの意味合いと作り方」
ここまでいかがでしたでしょうか。
コーポレートアイデンティティ(CI)とは、
・マインドアイデンティティ(MI)
・ビジュアルアイデンティティ(VI)
・ビヘイビアアイデンティティ(BI)
からできており、どの要素も非常に大切なのです。
3:CIを策定すべき5つ理由
コーポレートアイデンティティ(CI)を策定すべき理由は複数ありますが、
そのどれもが企業活動において非常に重要です。
3-1:360°どこから見られても、企業の見え方に一貫性が生まれる。
インターネットの進化やSNSの登場によって、
企業は360°あらゆる角度から見られる時代となりました。
それはつまり、嘘をつけないということです。
ある一部分だけの見え方をとびきり良くしても、
その他の部分がずさんだと信用は積み重なっていきません。
たとえば、お店の雰囲気もよく、料理が美味しかったとしても、
店員さんの不適切な行為がSNSに掲載されていたら、
もうそのお店に行きたくなくなってしまいますよね。
コーポレートアイデンティティ、
つまりマインド(心)もビジュアル(見た目)もビヘイビア(行動)の全てを
魅力的に揃えて、企業としての人格をきちんと明確にしておくことで、
どこから見てもその企業の良さやらしさを一貫性を持って認識してもらうことが可能になるのです。
3-2:企業のらしさが差積化され、強固なブランドになってゆく。
企業自体およびその企業が出している商品やサービスの
ブランド構築で欠かすことができないのが、ブランドの差積化です。
似ている言葉に差別化というのがありますが、こちらはすぐにイメージできると思います。
いわゆる、他ブランドとの違いや有利なポイントをつくり、際立たせていくことです。
もちろん、ブランドの立ち上げ期には重要なのですが、
人々に認知され、真似をされることで、徐々に一般化していく傾向になります。
そこで、多くの人たちから長く愛されるブランドになるために
必要なのが差積化という考え方になります。
差積化とは、継続的にそのブランド独自の価値を提供し続ける活動であり、
中長期的に付加価値を積み上げていきます。
これにより、その企業以外の替えが効かない熱狂的なファンが増えますし、
競合も真似をすることが難しくなるのです。
ただ、先ほどのスターバックスの例を思い出していただきたいのですが、
積み上げていくその企業独自の価値も、
コーポレートアイデンティティがあって初めてできるものなのです。
3-3:企業価値の安定供給および企業の長寿化
コーポレートアイデンティティを策定すべき理由の3つ目は、
「世の中の課題を解決する」「人々の生活を豊かにする」といった
その企業が世の中へ提供している価値を安定的に供給し続けることを可能にすること、
およびその結果としての企業の長寿化です。
コーポレートアイデンティティは、
その企業が10年、50年、100年と世の中に価値を発揮し続け、
存続していくために必須となります。
たとえば、樹齢1000年の木を想像してみてください。
なぜ、この木は1000年も生き続けられるのでしょうか。
それは、根っこや幹がしっかりしているからです。企業も同じであり、
まずは根幹をしっかりと定義することが大切なのです。
1章の不易流行でご説明した通り、不易と流行のどちらもが大切で、
その両方を意識した経営が長期的な利益に結びつきます。
そのため、変わらない不易を踏まえた上で、流行は日々PDCAを回していくことが必要です。
現代では、流行の部分に重きを置きがちですが、
何のためにこの企業は存在しているのか、何のためにこのビジネスを行っているのか、
という根っこがしっかりと定まっていないと、やがて葉も枯れてしまいます。
マインド、ビジュアル、ビヘイビアという企業の不易となる
3つアイデンティティを明確にすることは、
企業活動を長期的視点で見たときにとても重要になってくるのです。
3-4:社員の共通の行き先が生まれ、企業の進化が生まれる。
コーポレートアイデンティティを策定する理由の4つ目は、
企業理念が社員共通の行き先になるという点です。
マインドアイデンティティの5つの要素である
ミッション(日々果たすべき使命)とビジョン(実現したい未来)が、
特にこの役割を担っています。
企業活動においては、日々、様々な社員が様々な仕事をし、
時には新しい事業が生まれることもあると思いますが、
一人ひとりの社員の中でいまやっているこの業務が、
結果的にどこに辿り着くのかをイメージできているか否かは、
成果に大きな違いが出てきます。
たとえば、「甲子園で優勝しよう!」と掲げていない野球チームが
実際に甲子園で優勝することが有りえないのと一緒です。
この場合の「甲子園で優勝しよう!」とは、部員みんなの共通の行き先になっているのです。
企業で考えてみましょう。
たとえば、Appleには「テクノロジーを介して何百万人もの人の生活を変える。」
という全員共通の行き先があるので、新しいテクノロジーを駆使したデバイスやサービスが
次々と出てきて、人々の生活に変革をもたらしているのです。
コーポレートアイデンティティがある会社とない会社では、
一人ひとりの仕事や組織のあり方に大きな違いがでてきます。
コーポレートアイデンティティが存在しない組織は存在意義や大目的を
見失いやすくなるため、既存の状態で硬直化し、社会適合性を失ってしまいます。
一方で、しっかりとした企業理念があると、組織は柔軟に変化し企業はどんどん発展していきます。
みんなが共通して目指している行き先があると、
行き方は複数あるかもしれないですが、必ずたどり着くことができ、企業の進化に寄与するのです。
3-5:その企業を愛してくれるファンが増える。
みなさんは、ゴールデンサークル理論をご存知でしょうか?
イギリスの組織コンサルタントであり作家のサイモン・シネック氏が
TEDで語ったのがゴールデンサークル理論なのですが、
これによると人に何かしらの情報を伝え、行動を促したい時に、
「Why・How・What」という構成要素が存在し、
「Why」から伝え始めることの重要性を説いています。
つまり、人は「何をしているか」ではなく、
「なぜ、それをしているか」に心を動かされるという理論です。
ゴールデンサークルを企業に当てはめて考えると、
自社のことを誰かに話すとき、提供している具体的な商品やサービスから語りがちですが、
それは「what」の部分から語っているということになります。
そうではなく、その企業がどうして存在していて、どういう世界をお客様に見せるのか、
という「why」から伝えることが重要です。
そんな企業のwhyの部分を担っているのがコーポレートアイデンティティになるのです。
実際に、iPhoneを使っている人は、もちろん製品自体に魅力を感じていると思いますが、
Appleやスティーブジョブスの考え方や企業理念といった、
AppleのWhyに共感している人も多いのではないでしょうか。
企業のwhyが伝わると、その企業やブランドの価値を共に創り、
一緒に育ててくれるようなブランドパートナーが増えていくのです。
ブランドパートナーについては
「時を超えて愛されるブランドを構築するために必要な考え方と実践方法」
の記事にもまとめてありますので、併せてご覧ください。
4:コーポレートアイデンティティの作り方
コーポレートアイデンティティ(CI)を策定する際は、
マインドアイデンティティ(MI)からつくりはじめるのがベストです。
なぜなら、コーポレートアイデンティティの中でも、
マインドアイデンティティは心の部分だけあって核となるからです。
マインドアイデンティティを策定したら、
ビジュアルアイデンティティとビヘイビアアイデンティティは
平行してつくっても問題ありません。
特にビヘイビアアイデンティティはマインドアイデンティティが社員に浸透し、
行動にあらわれるまで一年単位で時間がかかるので、早めに着手することがおすすめです。
4-1:マインドアイデンティティの作り方
マインドアイデンティティをつくるということは、
ミッション(日々果たすべき使命)、ビジョン(実現したい未来)、
バリュー(約束する価値・強み)、スピリット(大切にすべき精神)、
スローガン(ブランドの合い言葉)をつくるということです。
ただ、ミッション ビジョン バリュー スピリット スローガンは
闇雲に策定すればいいというものではありません。
しっかりと準備し、正しい方法で策定しないと、効果を得ることはできません。
私たちパラドックスがおすすめする企業理念の策定方法は、
複数の社員でセッションを行う形式です。
なぜ、セッション形式が一番いいのか。
それは、マインドアイデンティティは社員みんなのものであるからです。
社員のみなさんが、出来上がったマインドアイデンティティに
ちゃんと所有感を持てるように、みんなでたくさんの議論をしながらつくることが大切になります。
具体的なセッションの準備および一番スタンダードな10ROUNDで行うセッション形式については、
「企業の根幹を担うミッション ビジョン バリューの意味合いと作り方」の
4章にまとめてありますので、ぜひこちらをご覧ください。
4-2:ビジュアルアイデンティティの作り方
ビジュアルアイデンティティもマインドアイデンティティと同じく、
複数の社員でセッションを行うことがおすすめです。
ビジュアルアイデンティティのセッションは5ROUNDで実施するケースが多いです。
ビジュアルアイデンティティの作成は、基本的に下記の流れで進めていきます。
・パーソナリティの考察:
マインドアイデンティティをもとに、企業や商品、サービスが持つパーソナリティ(言語化されたイメージなど)、を考察していきます。
・カラーの考察:
カラーマップを使用しながら、パーソナリティを表すカラーを検討していきます。
・ビジュアルイメージの考察:
様々なイメージ写真を使用しながら、パーソナリティを視覚化していきます。
・推奨フォントの考察:
フォントサンプルを使用しながら、パーソナリティに合う推奨フォントを検討していきます。
・デザインイメージの考察:
各ツールなどに展開した場合のイメージなどを検討していきます。
また、ビジュアルアイデンティティを策定するときに、
必ずロゴを刷新する必要はありません。
ロゴはそのままで、コーポレートカラー周りだけを刷新することも可能です。
ビジュアルアイデンティティの作り方の詳細は、下記の記事にもありますので、併せてご覧ください!
→『「らしさ」を瞬間で伝えるビジュアルアイデンティティ(VI)の基礎知識』
4-3:ビヘイビアアイデンティティの作り方
ビヘイビアアイデンティティはつくるということは、
つまりマインドアイデンティティを社員にしっかりと浸透している状態をつくるということです。
マインドアイデンティティの中には、
社員の行動指針にもなるスピリットがありますが、
ただ存在するだけでは、社員の行動にそのスピリットは現れず、
ビヘイビアアイデンティティは形成されていきません。
社員一人ひとりの行動、日々の仕事の判断基準、マネジメント、
あらゆるところにスピリットがあって、
徐々にビヘイビアアイデンティティは出来上がっていくのです。
そのためには、スピリットをミッション ビジョン バリュー スローガンと
合わせて社員がしっかり「理解・共感→実感→実践」できるように浸透を行うことが大切です。
マインドアイデンティティの浸透については、
インナーブランディングの記事で詳細を書いておりますので、ぜひ、ご覧ください。
まとめ:「心」「見た目」「行動」、すべてを一貫させることが唯一無二のブランドを作り出す
コーポレートアイデンティティについて、もう一度整理をしてみましょう。
コーポレートアイデンティティは
・マインドアイデンティティ(心)
・ビジュアルアイデンティティ(見た目)
・ビヘイビアアイデンティティ(行動)の
3つアイデンティティからできていて、その全てを明確に策定することが大切です。
マインドアイデンティティはミッション・ビジョン・バリュー・スピリット・スローガンの策定。
ビジュアルアイデンティティはマインドアイデンティティで
策定したパーソナリティからカラー・フォント・デザインイメージを検討。
ビヘイビアアイデンティティはマインドアイデンティティの社内浸透を行い、
行動にそれが現れるようにしましょう。
そして、企業は360°あらゆる角度から見られています。
コーポレートアイデンティティはつくって終わりにせず、
社内・社外・採用へとあらゆる企業活動に落とし込んでいきましょう。
世の中の人が、その企業の商品・サービスを見ても、社員の行動を見ても、
採用説明会を見ても、どれしもにその企業のストーリーやらしさが
反映された一貫したコミュニケージョンを感じ取ったときに、
信用は蓄積され、揺るぎないブランドへと成長していくのです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
ぜひ、みなさまの企業のコーポレートアイデンティティ策定や
見直しに少しでもお役に立てますと嬉しいです。
コメント
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