社内の承認文化を育てる。日報の上手な活用術をご紹介

日々の業務を報告する「日報」。ところで「日報」と検索すると、検索候補に「だるい」「めんどくさい」「意味ない」などのワードが表示されることを知っていますか?

マネージャーにとっては必要な情報でも、メンバー自身は「書かされている」という認識になり、敬遠する人も多いのが現状です。

しかし日報はきちんと目的を定め、うまく活用すれば、書く側・読む側・企業全体にとっても大きな意味のあるツールとなり得ます。リモートワークが一般的になり、社員同士が直接会うことの少なくなったいま、日報の活用は重要性を増しているのです。

1:日報は何を書き、誰に見せるもの?

多くの企業で当たり前に行われているからこそ、日報には共通した正解のフォーマットがありません。そのため報告する内容やその細かさは、企業ごと、あるいはチームや個人でも異なります。

つまり日報とはどんなものか、ひとによって認識はまちまち。ではどのような内容を、誰に向けて書くのが良いのでしょうか。

1-1:効果を生む日報3つのポイント

企業に多くの効果を生む日報には、3つのポイントがあると私たちは考えます。それは「報告」に加えて、「承認」と「共感」の要素があること。

「報告」は、文字通り業務についての報告です。その日にどのような業務をし、どのような進捗や成果があったか、課題などを記載します。

「承認」とは、肯定し、認めること。人を育てたり、モチベーションを上げるにあたって必要な要素です。

「共感」は、自分もそうだと思えることや、相手の気持ちに寄り添って理解を示すこと。

これらの要素が含まれた日報は、単なる業務の報告を超えて、企業のコミュニケーションや理念浸透の効果を生むことができます。

例えば私たち、ブランディング企業のパラドックスでは、社内独自のSNSを用いて以下のような日報を日々提出しています。

 

「承認」「共感」は、本人の記載する内容だけで完結するのではなく、記載した内容に対する周囲のリアクションで得られるもの。

「承認」を表すのは、気軽な「あいづち」や、企業のクレド(スピリット)を用いた理念浸透にもつながる「スタンプ」。さらにコメントや、日報を読んだことに対する直接的な声がけによって、共感やコミュニケーションを生むことができます。

ここからのお話は、このような日報がなされることを前提に、効果などについてお伝えしていきます。

1-2:日報の共有範囲と方法

毎日の日報をどこまで、どのように共有しているかも、企業によって大きく異なります。共有するツールは、例えば以下のようなものがあります。

・メール

・チャットツール(グループ)

・SNSグループ(Facebookなど)

・社内日報管理システム/社内SNSサービス

共有範囲は、マネージャーとメンバーのみや、チームでの共有、部署や企業全体といった場合があるでしょう。基本的にはチームのチャットグループで共有しつつ、企業内の誰でも見ようと思えば見られる設定にしている場合もあります。

共有方法や範囲は自由ですが、企業のインナーブランディングを数多く請け負ってきた私たちのおすすめは、社内SNSのようなみんなが見られる環境で共有すること。

通常のSNS投稿でも同じですが、不特定多数に向けた投稿にすることで課題や悩みを言いやすかったり、思わぬところから解決策を得られたりといったメリットがあるからです

また他者の目があることで、自分に都合の良いことだけを切り取ったり嘘をついたり、ミスを隠したりすることが難しくなります。

たったひとりのマネージャーだけにメールで送るような場合、信頼関係によって内容が変わってきてしまうこともあるので、できるだけ多くのメンバーに向けて公開するのが良いでしょう。

コラム:なぜ週報ではだめなのか?

書く側も読む側も、毎日のこととなると少し大変な日報。なぜ週単位ではなく、毎日報告する必要があるのでしょうか。それはずばり、ホウ・レン・ソウには「リアルタイム性」が重要だから

人の記憶はどうしても、新しいもののほうが強く印象に残ってしまいますよね。月曜日に学んだことや感じた課題も、金曜日には忘れてしまったり、解決してしまったり。また月曜から金曜までに起きたことを覚えておくのも大変ですし、それをまとめて記載するのも少し面倒です。

毎日新鮮な記憶を、その日のうちに報告しておくことで、書く側も漏れがなく、マネージャーなど読む側もキャッチアップしやすくなります。リアルタイムに報告するために、毎週ではなく毎日行う必要があるんです。

2:なぜ日報は嫌われるのか

冒頭にもご紹介したように、ひとによって「面倒くさい」「意味がない」と感じることもある日報。

書く時間を取られるという面では、誰にとっても少し面倒なものかもしれませんが、意味がないとまで思われてしまうのには理由があります。

2-1:日報を書く目的がわからない

実は多くの場合「そもそもなぜ日報を書かなければいけないのかわからない」と、目的もわからず書かされることへの不満があります。

日報は時間も取られる上に、時には書きたくないことまで書かなければいけないもの。なんのために書いているのかを認識していなければ、書きたくなくなるのも当然です。

この場合はもちろん、事前になんの目的で日報を提出してもらいたいのか、説明できていないことが原因。

日報を提出してもらうことで何を知りたいのか、相手へのメリットは何かを、しっかりと説明しましょう

2-2:マイクロマネジメントをされる

あるケースでは部下に日報を書いてもらう際、「1時間ごとに何をしたか」を記載してもらっていたそうです。部下にとってみれば、監視されているようで気分がよくありませんし、1時間ごとに業務を分けて振り返るのも大変です。

また業務の進捗について必要以上に詳細まで要求したり、記載した内容について逐一指摘したりするケースも。

マネージャーとしては、効率化を図る目的や、よりうまく仕事が進むようアドバイスをする目的があるのかもしれません。しかしこれでは、部下は「自分は信用されていない」と感じ、良好な関係を築きづらくなるでしょう。

2-3:他者と比べられる

日報に記載する内容にもよりますが、他者のものと比較して「他のチームの同期は成果を出しているらしい」「あなたは成果を出せていませんね」など、他者と比べるような発言をされることが嫌だ、という場合もあります。

日報は成果をはかるためのものではありませんし、評価をするためのものでもありません。日報だけで他者と比べて、どちらが優秀か測ることはできません。

それにも関わらず、他者と比較して否定するような発言があれば、日報を書くことが嫌になるのは当然ですよね。

2-4:日報を書く時間がない

日報を書くのも仕事のうち、とわかってはいても、忙しくて日報を書く時間が捻出できないこともあります。もちろん時間だけの問題ではなく、1日を振り返る気力がないことも。

そのような理由で日報を負担に感じているケースでは、もしかすると要求している項目が多いことや、必要以上に時間のかかる項目があるのかもしれません。

項目を見直してみたり、状況によっては書かなくても良い項目をつくるなど、日報にかかる負担を減らしてみましょう。

コラム:日報を定着させるために必要なこと

毎日の日報を滞りなく、負担なく提出してもらうために必要なこと。それは何よりも「心理的安全性」です。

ここでいう心理的安全性とは、日報を書くことで周囲から嫌な反応をされないことや、評価や出世に不利益が出ないと安心できること。日報を書く個人個人が尊重され、内容によって否定されないことです。

逆を言えば、日報を書くことで褒められたり認められたりする、承認の文化としての日報になれば良いのです。

3:それぞれの立場における日報のメリット

日報がメンバーに嫌がられ、良い文化として定着しない一因に、「日報はマネジメントのためだけに書かされている」という認識があります。

うまく活用すれば、日報は全方位に対してメリットのあるもの。ここではどのようなメリットがあるか、立場ごとにご説明します。

3-1:書く側(メンバー)のメリット

マネジメントをする立場ではない、メンバーとして書く側にとってのメリットには以下のようなものがあります。

・1日を振り返ることで抱えている業務や進捗の整理ができる

・自分がどのような仕事に時間を使ったか把握でき、効率化できる

・自分の中での学びに気が付く

・誰かに直接相談しにくい悩みや課題を書くことで周囲から助けをもらえる

・セルフブランディングにつながる

日報は1日の最後に、その日を振り返って書くもの。改めて1日を見直すことで、業務や学びを整理することができます。

また他部署や全社にも公開している日報であれば、そのスペースを用いて自分についてアピールすることができます。例えば興味のある事柄ややってみたいことについて書くことで、意図していてもいなくても「このひとは環境に興味があるんだな」「このひとはゲーム好きなんだ」のように、自分について知ってもらうことができます。

そうしたアピールすることで、興味に関連した仕事にアサインしてもらえたり、共通の趣味を持った見知らぬメンバーと話ができたりすることもあるのです。

3-2:読む側(メンバー)のメリット

本人とそのマネージャーだけではなく、直接関係のないメンバーにも、実は多くのメリットがあります。

・他のメンバーがどのような業務をしているかわかる

・他のメンバーの得意不得意や価値観を知ることができる

・自分になかった視点や学びを得ることができる

・部署横断でのコミュニケーションにつながる

直接仕事をしていなかったり、全く別の案件に関わったりする他のメンバーの日報は、自分の知らない情報の宝庫。

どのような業務でどのような進め方をしているかを知り、それを自らの案件に活かしたり、サポートをお願いしたりすることもできるかもしれません。

また新たな価値観に触れることや、自分では気付かないような学びを得ているメンバーを知ることで、互いに刺激を与え合うこともできます。

単に共通の趣味を見つけて話しかけてみるなど、部署横断でのコミュニケーションの活性化にもつながるでしょう。

3-3:マネージャーのメリット

マネジメントする側にとっては当然、多くのメリットがあります。

・業務の棚卸しが必要なメンバーに気づける

・一人ひとりに聞かなくても業務の進捗がわかる

・メンバーが抱えていそうな課題や悩みに気づける

・メンバーの細かな成長がわかる

毎日日報を投稿することで、些細な変化や成長、SOSに気が付きやすくなります。また1on1などを実施する上でも、事前に情報を把握しておくことで、より時間を有効活用できるでしょう。

3-4:全体へのメリット

全体にとって非常に大きなメリットとなるのが、日報が「蓄積される」こと

似たような案件を担当する際に、かつての日報を振り返って、そのとき行ったことの手順や苦戦したポイントを確認できます。それが自分自身だけではなく、他のメンバーに対しても同様。

日報は長く続ければ続けるほど、ノウハウが蓄積されて、後世に役立つものとなるのです。

4:日報を運用する際の注意ポイント

うまく活用すれば多くのメリットが得られる日報。しかしその運用方法には、いくつか注意していただきたいポイントがあります。

4-1:リアクションの数をステータスにしない

通常のSNSでも、「いいね!」を求めすぎて事実より“盛る”ことや、「いいね!」が少なくて落ち込んでしまうことがありますよね。

もちろん日報に対してリアクションをするのは良いことですが、それが特定のひとに偏るようなことはNGです。特にマネージャーが、成果を出している特定のメンバーだけにばかりスタンプを送るようなことは避けたほうが良いでしょう。

あくまで承認文化として日報が根付くよう、人事やマネージャー陣によるある程度の管理は必要です

4-2:文章の良し悪しを指摘しない

日報制度を始めると時折、驚くほど文章力があって、日報なのに引き込まれてしまうような文を書けるひとがいるもの。しかし一方で人によっては、文章を書いたり要点をまとめたりすることが苦手なこともあります。

正しく内容が伝わらない場合は指摘するのも仕方ありませんが、あまり「読みにくい」「日本語がおかしい」などと言われては、やはりモチベーションは下がってしまいます。

日報を書くこと自体が文章力やまとめの能力向上につながりますから、気長に見守るようにしましょう。

4-3:日報の制度もアップデートしていく

どんな制度も、運用していくうちに不便な点や改善できるポイントが見つかるもの。日報に記載する項目や運用ルールは、定期的に見直してアップデートを図りましょう。

また定期的にアンケートを取るなどして、見る側・読む側からの意見や要望も取り入れることが重要です。

5:最後に

日報は日々の業務をただ報告するだけではなく、使い方によっては多くのメリットをもたらし、企業全体を活性化させることもできます。

いろいろとご説明しましたが、日報を導入することは難しいものではありません。注意すべき点ややってはいけないことだけを把握して、まずは始めてみることをおすすめします。

続けていくうちに、企業それぞれに課題が見つかり、それを改善していくことで、より良い運用の仕方が見つかるはず。

ぜひ日報をうまく活用して、企業の承認文化を育ててくださいね。

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