多様な人材とパーパスでつながる。ダイバーシティ採用と人材活用

人材採用や経営において使われる場合、主に「人材の多様性」のことを意味するダイバーシティ(Diversity)。

企業の未来を見据えて、これから多様な人材を採用したい。しかしどうやって取り組むべきか、何が正解なのかがわからない。ダイバーシティという言葉が一般的になって久しい現在ですが、実はそうお悩みの人事の方や経営者の方が多くいます。

ダイバーシティ自体の意味は非常に広義で、企業の取り組みも多種多様、それぞれの目指すゴールも異なるもの。

そこで今回は、企業が成長するためのダイバーシティ推進の足掛かりとなる、採用のお話を中心にご説明していきます。まずはダイバーシティに対する理解を深めていただき、そこから企業が取り組む必要性、採用における重要な考え方をお伝えしていきます。

ぜひこの記事をきっかけに、自社にあったダイバーシティ採用・ダイバーシティ経営について考えてみてください。

1:ダイバーシティ=人材の多様性

ダイバーシティ(Diversity)とは、直訳すると「多様性」のこと。企業経営や採用で用いられる場合は、主に「人材の多様性」を指して使われます。

では「人材の多様性」とは、具体的にどういうことでしょうか。

ダイバーシティという言葉が一気に流行したのは、2010年代。その頃にダイバーシティが意味していたものは、基本的に「女性活躍」「障害者雇用」がメインでした。

しかしダイバーシティという言葉が広く認知され、多くの取り組みもなされるようになった現在。ダイバーシティが指す多様性とは、まさに文字通り“多様”になりました。

性別、障害、国籍、セクシュアリティ、職歴、価値観、ライフスタイル、宗教などなど。目に見えるものからパーソナルな部分まで、あらゆる人材が平等に評価される企業・社会が、ダイバーシティを意味しています。

2:ダイバーシティ推進の必然性

日本企業の現状を考えると、推進が難しく思えるダイバーシティ。そもそもなぜ推進していく必要があるのでしょうか。

そこには大前提として、性別や国籍などさまざまな条件に関わらず、全てのひとが平等に働ける社会であるべきだという意識の高まりがあります。SDGsなど、世界的にも、目指したい社会の姿として意識されており、もはやダイバーシティの推進は必然と言っても過言ではありません。

つまりダイバーシティの推進は、単に企業のメリットを求めて実施するものではないのです。ただ、これまでダイバーシティが強く意識されてこなかった日本の企業では、これから紹介するような背景もあり、具体的なダイバーシティ推進の必要に迫られ、変化せざるを得ない状況になっているのも事実です。

2-1:人材不足

日本が現在、深刻な人材不足に陥っていることはもうご存知ですよね。要因は複雑なので一概には言えませんが、いずれにしても、求める人材を採用することが非常に難しい時代になっています。

そんな状況の中で、旧来的な価値観に基づいて「有名大学を卒業した総合職希望の意欲的で優秀な日本人の学生」のような、誰もが求める人材だけを狙っていたら。実際には採用活動よりも、企業間の取り合いにいかに勝つかという戦略に注力することとなるでしょう。

ここでお伝えしたいのは、だから妥協して求める人材の条件を下げろ、ということではありません。必要なのは「一般的に誰が見ても優秀な学生」を取り合うのではなく、「自社が求める人材」を幅広い目で設定し直すということです。

誰もが欲しがる人材が、どの会社でも素晴らしい活躍を見せる人材とも限りません。これからは大学名や国籍、性別などにとらわれるのではなく、よりフラットな目線で自社にマッチする人材の確保に力を入れるべきなのです。

2-2:ビジネスのグローバル化

少子高齢化の日本において、今後企業が成長するためにはグローバル化が必須。そう言われて久しい現在でも、未だ世界を見据えない日本のビジネスの在り方が度々指摘されています。

グローバル化の第一歩は、新たな海外向けの事業を考案したり、海外に支社をつくったり、外国語が話せる日本人を採用することだけではありません。ましてや海外の方を、外国語要員として採用するなんてことでもありません。

さまざまな国から集められた人材は、みなその国独自の文化や価値観を持ち、それを自社に広めることで新たな視点をもたらしてくれます。

積極的に外国の方々を採用し、グローバルな視点や価値観を取り入れる。それにより新しいビジネスの可能性を見出すこともできますし、まずは自社の人材を用いてスモールスタートで事業を始めることもできるのです。

2-3:イノベーションの行き詰まり

例えば、日本の女性管理職の平均割合は、2021年の7月の調査で8.9%(参考:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000334.000043465.html)。過去最高を更新したものの、他の先進国に比べると、やはりまだまだ低いことが見受けられます。

一方で社会のニーズは多様化している中、大きなイノベーションを生み出すことが難しくなっている、という状況があります。

女性管理職の数字がすべてではありませんが、職場の固定化された人材の属性が、イノベーションに行き詰まりをもたらしていることも考えられます。

男性も女性も、グローバルな人材もLGBTQの人材も、その属性のひとにしかわからない価値観やニーズに気づける、という側面をもっています。

ダイバーシティを推進し、職場で活躍する人材が多様化することは、多くの価値観と視点を取り入れることにつながり、新たなイノベーションを生み出すきっかけになるのではないでしょうか?

3:ダイバーシティ採用の根幹はパーパスへの共感

では実際にダイバーシティを意識して、採用を実施しようと思ったとき。具体的にどのような戦略を立てるべきでしょうか。

説明会を開く大学を増やす、海外向け求人サイトに出稿する、英語の採用サイトを制作する……など、手段はいろいろありますよね。

しかし、ここでまず考えるべきは手段ではありません。

人種や性別、性自認、障害などを持つ人材それぞれには、異なる文化や価値観があるでしょう。ただその上で、ひとつの企業で働く従業員に共通する、共通しているべき価値観があります。それが、パーパスです。

パーパスとは、ひとや企業の「存在意義」のこと。企業においては企業理念であったり、ミッション・ビジョンであったり、言葉はいくつか存在しますが根底は同じ。その企業が何のために存在し、何を為したいのかを言葉にしたものです。

このパーパスに対する共感だけは、属性に関わらず、その企業で働く上で必ず持っているべきものなのです。

パーパスへの共感とは、企業が存在意義として掲げるパーパスと、個人個人が持つパーパスとに重なりがある状態のこと。

企業が目指すゴールに向かって働くことが、自己実現にもつながることを意味しています。

したがって採用においても重要なのは、「企業のパーパスに共感する人材を採用する」ということ。つまりそこには性別や国籍など、属性は一切関係がないということです。

そのような採用活動を行うには、まず企業理念に基づいた人材要件を綿密に設定し、求める人材を明確にする必要があります。

その上で、採用の間口を広げて、これまでリーチすることのなかった層や海外に向けて、発信していく必要があるのです。

従業員の中には、多種多様な人材が入ってくることに対して抵抗を感じる方もいるでしょう。その理由はおそらく、言語や価値観の違いによって、分かり合えないのではないかという不安が大半です。

しかしパーパスへの共感を軸にした採用を行っていれば、どのような方が入社してきても、確実に共通した価値観を持っています。その共通点があることで、ダイバーシティ推進以前から働いていた方々も、多様な人材をより受け入れやすくなるのです。

ダイバーシティの推進のみにとどまらない、本質的な採用活動については以下の記事も参考にしてみてくださいね。

人事なら知っておきたい!同志を集める採用戦略の作り方

採用ブランディングで、企業成長に不可欠な同志を集める

4:採用して終わりじゃない。多様な人材の“活躍”を目指して

「多様な人材」を意味するダイバーシティ。では企業に限った場合、それは多種多様な人材を採用することがゴールでしょうか。

2010年代、ダイバーシティが流行した際、多くの企業がまず取り組んだのは「女性活躍」。極端な例ですが、男性ばかり採用していたのを、女性の採用人数を増やせば良いだけの話だと考える企業が多かったのです。

ではこれが果たして、ダイバーシティへの取り組みと言えるでしょうか。

考えてみてください。これまで男性ばかりが働いていて、女性特有の産休や育休で社員が休んだ経験のほとんどない企業に、突然採用された女性のことを。そしてそこでこれまで働いてきた、男性たちのことを。女性が働きやすい制度や、女性特有の休暇、働き方を受けいれる文化のない企業で、果たして女性は“活躍”できるでしょうか。

ダイバーシティを推進することは、単に多種多様な人材を集めれば良いわけではありません。企業に新たな風を吹かせ、イノベーションを生むには、多種多様な人材に“活躍”してもらうことが重要なポイントです。

ただ採用をするだけで、そこに多様な人材を受け入れる器がなければ、いくら企業理念に共感して入社してきたとしてもうまくはいきません。

人材一人ひとりが安心して働き、それぞれのバックグラウンドを活かしながら“活躍できる”、環境づくりに取り組む必要があるのです。

それは働きやすい制度の設計であったり、既存の従業員へのダイバーシティに関する教育であったり、企業文化そのものの形成し直しであったりさまざまです。本質的にダイバーシティを推進するということは、採用だけにとどまる話ではないのです。

企業理念への共感を軸にして採用を実施することはもちろん、社内への理解浸透や環境の整備をしっかりと行っていきましょう。

“コラム:ダイバーシティ&インクルージョン”

ダイバーシティと合わせて語られることの多い言葉に、「インクルージョン」があります。ときには「ダイバーシティ&インクルージョン」と並列されることも。インクルージョン(inclusion)とは、「包含」「包括」など、直訳では包み込むことを意味していますが、ここでの使われ方は「受容」と考えるとわかりやすいです。

 

ダイバーシティが「多様性」を意味するものとして広がると、先に述べたように、ただ多様な人材を採用するだけで良いと理解する企業も多くありました。しかしそれだけでは、人材の活躍は難しい。多様な人材を採用し、それを「受容」することが大切だという、新たな考え方が必要になったのです。それが、インクルージョン。

 

つまり、ダイバーシティであっても、ダイバーシティ&インクルージョンであっても、本質的には同じ。多種多様な人材が“活躍”できる企業・社会づくりが重要なのです。

5:ダイバーシティ推進企業3例

最後に、実際にダイバーシティを推進する企業を、世界的な有名企業・日本の中小企業を合わせて3社ご紹介します。

ダイバーシティへの取り組みに正解はありません。多種多様な人材を採用し、長く働き続けてもらうために、多種多様な施策が展開されています。

企業理念に共感する人材を集めるのと同様、ダイバーシティの推進方法自体にも、企業理念に基づいた自社らしい施策を実施してくださいね。

5-1:Salesforce

ダイバーシティの推進においては非常に有名なセールスフォース。実は「ダイバーシティ」という言葉ではなく、「Equality(平等)」という言葉を使って多様な人材の受容と活躍を推進しています。

全てのひとが平等な社会の実現を目指して、まずは企業として具体的な数値目標を定め、その結果を公開しています。(2023年までにマイノリティグループ(女性、黒人、ラテンアメリカ系、原住民、多民族、LGBTQ+、障がい者、退役軍人)が米国従業員に占める割合を50%にするなど)

またマイノリティのコミュニティを支援するための従業員主導の組織があり、従業員にはそこでのボランティアのための時間が割り当てられ、活動は労働時間とみなされます。

さらには同一労働同一賃金の推進や、リーダー育成のためのプログラムなど、多様な人材が平等に活躍できる環境の整備に継続的に注力しています。

▼Salesforce「Equality」について詳しくはこちらhttps://www.salesforce.com/jp/company/equality/

5-2:株式会社小坂工務店

青森県にある、従業員数47名(2021年現在)の建設会社、小坂工務店。昭和33年から続く地方企業でありながらダイバーシティの推進に取り組み、経済産業省が発表する2016年度の「新・ダイバーシティ経営企業100選」に選出されました。

人口減少が進む地方都市である青森。小坂工務店もかつては、少子高齢化や業界イメージの悪さから人材不足に陥っている状況でした。

しかし人材不足の中だからこそ、働いてくれる社員の重要性を再認識。男女問わず優秀な人材が長く働き続けられる制度設計に取り組みました。

さまざまな事情で出社してフルタイムで働くことが難しくなった社員のために、在宅勤務を可能にするテレワーク環境の整備や、短時間勤務を導入。さらに現場仕事の後に取れる「リフレッシュ休暇」や「家族とコミュニケーションをとるための休暇」を取り入れ、働きやすい環境を整えていきました。

これらの取り組みが功を奏し、2017年時点で社員43名のうち19名が女性、そのうち管理職が3名、技術者が2名と、業界では稀有な女性活躍企業として成長を見せています。

▼小坂工務店のWebサイトはこちら
https://kosakagc.co.jp/

5-3:大橋運輸株式会社

愛知県で創業60年を超える、従業員数106名(2021年現在)の運輸会社、大橋運輸。2017年に運輸業の中小企業として初めて、「新・ダイバーシティ経営企業100選」に選出され、2020年度にはさらに進化した取り組みを実施した企業として「100選プライム」に選ばれています。

大橋運輸は、障がい者、LGBTQ、外国人、高齢者、子育て社員など、多種多様な人材が働きやすい制度設計に10年以上かけて取り組み、環境整備を行ってきました。

背景にはやはり人材不足がありましたが、同社は「今ここにいる社員の満足度を向上させることが先決」と、従業員満足度の向上から着手。同時に女性・高齢者・外国人・障がい者・LGBTQなど多様な人材を積極的に採用し、活躍できる基盤づくりも実施しています。

同社が掲げるダイバーシティ経営の目的は、単に多様な人材を採用することではなく、多様な人材の活躍によって従来のビジネスモデルからの転換を実現し成長を遂げること。

ダイバーシティ経営を推進してきたことにより、さまざまなバックグラウンドを持った人材の中途入社による新規事業展開や、生前整理・遺品整理事業におけるLGBTQ当事者から依頼増加など、多くの成果が得られ業界で注目を集めています。

▼大橋運輸の「ダイバーシティ&インクルージョン」についてはこちらhttps://www.0084.co.jp/about/diversity/

5-4:事例に共通してみられる“ダイバーシティ推進成功の鍵”

ここでは3つの事例をご紹介しました。それぞれを見比べてみて、共通のポイントがあることに気が付いたでしょうか。

それは「今いる従業員を大切にすること」。

ダイバーシティを推進しよう!といって、例えばまず初めに採用枠にLGBTQ枠を設け、トイレの区別を単なる男女ではなく、「心の性別に従った男女」としてみたらどうなるでしょう。

今いる従業員にはその目的も必要性も受容する知識もなく、最悪の場合は拒否感が生まれ、実際に採用されたLGBTQの方々との分断を生みかねません。

ダイバーシティを推進する際、最初に着手することは、闇雲にさまざまな人材を採用することではありません。まずは今いる従業員に目を向け、今いる従業員の中にある多様性に配慮し、働きやすい環境をつくること。

その上で、より幅広い多様性に目を向け、採用を実施するのがポイントであり、成功している企業の共通点なのです。

6:最後に

人材の多様性を意味するダイバーシティ。ただ人材を採用するだけではなく、多様な人材を受容し、活躍してもらうことでイノベーションを起こす可能性を高めます。

採用において重要なことは、目先の手段ではなく、まずは企業理念に基づいた人材設計。それから採用の間口を広げ、これまでとは異なる層にリーチする必要があるのです。

多様な人材を受け入れるためには、採用だけではなく環境整備も重要です。さまざまな文化や価値観、ときには障害を持った方々がみな働きやすく、既存の従業員も受け入れやすい環境をつくりましょう。

日本企業の未来を見据えると、今後必ず必要になってくるダイバーシティ。目先の採用人数にとらわれず、ぜひ企業理念に基づき、会社にマッチする形で採用活動を実施してくださいね。

 

 

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