【ファシリテーションとは?】議論の質を高める方法やメリットについて解説!

「議論を深め組織の力を強化させたい」と悩む経営者や担当者も多いのではないでしょうか?

変化が激しい時代だからこそ、従業員一人ひとりの力を引き出し、組織の力を高めていくことが求められています。

組織の力を高めるためには、チームを引っ張るリーダーシップだけなく、チームのポテンシャルを引き出すファシリテーションの役割が重要です。

というのも、実際に、理念を策定するためのセッションや、複数人で施策を考える過程において、ファシリテーションの仕方によりチームがひとつにまとまっていく場面を多く見てきました。それぞれが良いアイデアをもっていても、うまく引き出し、お互いの話を聞いて、全体で最適な結論・道筋を見い出すことができていないと、その先のチームの連携が取りづらくなったり、納得のないまま進めてしまうことで、プロジェクトの進み具合が悪くなったりしてしまいます。

この記事では、ファシリテーションの基本的な知識から役割、メリット、そして議論の質を高め、組織を成長させるために必要なファシリテーションの考え方についてをご紹介します。

組織力に課題を感じている経営者や担当者の方にとって、この記事が少しでも課題解決のヒントになれば幸いです。

1:ファシリテーションとは

会議や研修などで耳にする「ファシリテーション」という言葉ですが、そもそもどのような意味があるのでしょうか?

まずは、「ファシリテーション」の意味や語源、ファシリテーターについて確認していきましょう。

1-1:ファシリテーションの意味

ファシリテーションとは、次のような意味があります。

ファシリテーション(facilitation)

 物事を容易にできるようにすること。簡易化。

 出典元:大辞泉

国語辞典には「物事を容易にできること」と記載されていますが、会議や研修などビジネスにおいては異なる意味で使われています。

一般的なビジネスにおいては、「組織の中や組織間で行われる問題解決に向けた調整を円滑に執り行うこと」を指し、様々な意見をうまく舵取りしながら議論の目的に辿り着けるようにすることが求められるのです。

ファシリテーションの具体的な役割としては、会議などを円滑に進め、成果が挙げられるように「段取り」「進行」「支援」を行うこと。

問題解決に向けた有意義な会議にするためには、ファシリテーターの力が必要になるのです。

ファシリテーターについては、3つ目の項目(1−3)で詳しく解説しています。

1-2:ファシリテーションの語源

続いては、ファシリテーションの語源について押さえておきましょう。

ファシリテーションの語源は、ラテン語の「facilis」であり、「容易にする」「促進する」「手助けする」という意味です。

言葉の意味としては幅が広いですが、ビジネスにおけるマネジメントなどと共通する側面がありますね。

1-3:ファシリテーターとは

会議などを円滑に進めるための段取りなどを行うことを「ファシリテーション」と言いますが、このファシリテーションを担う人のことを「ファシリテーター」と呼びます。

会議における進行役とイメージしてもらえると分かりやすいでしょう。

しかし、ファシリテーターは実際には会議の進行だけではなく、問いを投げかけることで、参加者一人ひとりの考えや意見、アイデアを引き出しながら議論を深め、目的や目標を達成できるようにまとめるという役割も担っています。

ファシリテーターに求められる問いのクオリティなどについては、次の項目で解説しているので、ぜひ参考にしてみてください。

2:ファシリテーターの重要性

続いては「ファシリテーションの重要性」について見ていきましょう。

ここでは、ファシリテーションが求められている背景や、ファシリテーターに求められる問いのクオリティなどについて解説していきます。

2-2:ファシリテーションが求められている背景

ファシリテーションが求められる背景として、複雑化する課題解決のために、組織として、多様な価値観から生まれるアイデアを可能な限り拾い、課題解決に活かそうとする世の中の流れがあります。

ひと昔前では、カリスマ的な1人のリーダーがチームを引っ張るスタイルのリーダーシップが求められていましたが、取り組む課題の高度化・複雑化により、チーム全体をまとめ、幅広い課題解決策を導き出せるようなリーダーシップが求められるようになりました。

多様な価値観を持ったメンバーをチームとしてまとめるためには、様々な価値観の人の意見を聞き、その意見を組み合わせて新しい答えを生み出していくプロセスが必要になります。

このような価値観の多様性の時代に合わせて、組織として成長するためにもファシリテーションが求められているのです。

2-3:ファシリテーターに求められる「問い」のクオリティ

ファシリテーターは、ただ会議を進行するだけではありません。

課題解決や目標を達成するための会議を進行するためには、ファシリテーターの問いのクオリティが重要になるのです。

ファシリテーターは議論の状況・メンバーの反応に合わせて、違った角度からの問いを投げかけるなど、状況に応じた問いかけを臨機応変に駆使することが求められます。

ファシリテーションの即興的な問いかけとして、次の4種類の問いかけを見ていきましょう。

①シンプルクエスチョン:参加者の意見に対する素朴な疑問

②ティーチング・クエスション:参加者に意図的な気づきを与えるためのフィードバック

③コーチング・クエスチョン:参加者の意欲、思考、価値観を引き出すための問いかけ

④フィロソフィカル・クエスチョン:学習テーマをより深めるための探求的な問いかけ

ファシリテーターを担う際には、自分自身の傾向を把握した上で、目的や状況に応じて上記の4種類の問いを使い分けられるようになると良いでしょう。

2-4:ファシリテーションの効果

ファシリテーションによって、会議の生産性の向上やアイデアの創出など様々な効果が期待できます。

ファシリテーションによって期待できる代表的な効果は、次のようなものです。

  • 会議の生産性の向上
  • アイデアの創出
  • 参加メンバーのモチベーション向上

目的やゴールを決めて会議を進めていくので、会議の生産性を向上させることにもつながるでしょう。

それぞれの詳しい効果については、「ファシリテーションのメリット 」の項目(4章)でも詳しく解説しているので、ぜひ参考にしてください。

3:ファシリテーターの役割

先ほどからお伝えしているようにファシリテーターは、会議をただ進行するだけの「司会」ではありません。

メンバーの意見を引き出し、掛け算の効果を生み出し、最終的な合意を得るためには、ファシリテーターには様々なスキルが求められるのです。

ここでは、ファシリテーターの役割に合わせて、求められるスキルについてご紹介します。

3-1:会議やミーティングを円滑に進める

会議やミーティングを円滑に進めるためには、事前準備が大事です。ファシリテーターには、「どのように会議を進めていくのか」というプロセスを考えることが求められます。

会議のプロセスとは、何を目的にするのか、どこをゴールにするのか、誰に参加してもらうのか、などを含みます。

会議の目的やゴール、チームの状態に応じた問題解決のプロセスをいかに事前にイメージして取り組めるかが、会議を円滑に進めるコツになります。

3-2:メンバーの意見を引き出す

会議を円滑に進めるためには、プロセスを考えるだけでは成功しません。

緊張した雰囲気では柔軟な意見やアイデアを引き出すことはできないため、メンバーの間に笑顔が見られるくらい緊張をほぐし、発言しやすい雰囲気を作りましょう。

そして、本題に入ったらメンバーからどんどん意見やアイデアを引き出します。

ファシリテーターは否定せず、しっかり受け止め、発言に込められた意味や思いをさらに引っ張り出すことが必要です。

自由な雰囲気で意見を語り合い、メンバーの相互理解を深められ場づくりのスキルが求められます。

3-3:メンバーの意見を整理する

メンバーからの意見とアイデアが活発に出たら、それらをカテゴリーなどに分類しながら整理していきます。

アイデアの種類だけでなく、レイヤーや粒度、優先順位などを瞬時に判断しながら、カテゴライズしながら、大きな議論の流れを自然に作っていくことが求められます。

会議でよくありがちな手段と目的の混同なども整理をしていくのも大事な役割です。

この整理のためには、メンバーからの意見を整理して論点を絞り込んでいき、構造的に整理するスキルも必要です。

メンバーの意見と論点を見える化するために、ホワイトボードを使って会議を進めるなどの方法もあります。

3-4:意見の合意形成を行う

議論の方向性が見えてきたら、対立する意見をすり合わせ、合意の形成を行います。

全員が納得するまで意見交換を行いますが、様々な意見がすんなり一つにまとまるという状況は難しいでしょう。議論しているうちに、メンバーに感情や諦めが入ってしまい、当初の目的とは違った方向に話が進んでしまうこともあります。

その際は、ゴールを再確認したり、具体的な質問を投げかけて視点を変えることで選択肢を広げたり、反対意見を議論させ合いながら共通点を見出したり、徐々に議論の焦点を絞り、メンバー全員が共通の結論に至るように努めます。

合意の形成はファシリテーターのスキルが問われる部分でもあり、前向きな結論が出ることでチームとしての決断力も高めることができるでしょう。

4:ファシリテーションのメリット

ファシリテーションには、会議の生産性向上やメンバーの意見を引き出すことができる、など様々なメリットがあります。ここでは、ファシリテーションのメリットについてを見ていきましょう。

4-1:納得できる合意を形成できる

通常の会議では、「多数決で決まったけど、少数派の意見も聞いてほしかった」など納得ができない経験をする場面もあるでしょう。

ファシリテーションのメリットとしてあるのは、「納得できる合意を形成すること」です。

ファシリテーターは、メンバー全員の意見を聞いたり、多数派の中から少数派が合意できるところ、できないところを整理して確認しながら進めることで、参加者全員が納得できる合意を形成できるように働きかけていきます。

会議に参加したメンバーの主張を聞きながら、一見相反するように見えるが、実は同じことを言っているなど、言葉尻ではなく、意味尻を見極めながら、未来に向かって、建設的な意見を組み立ていくことで、すべてのメンバー納得できるポイントを見つけ出すことができます。

抽象的で概念的になりすぎたり、最大公約数にならないように、気をつけながら合意形成を図っていきます。

4-2:革新的なアイデアが生まれるきっかけになる

ファシリテーションは、メンバーの中に眠っているアイデアを掘り起こしたり、複数人の意見を合わせて、新しい答えを見つけるきっかけにもなります。

問いを投げかけ、新たな視点で考え、議論を交わすことで、常識や慣習という見えない縛りを外すことにもなり、革新的なアイデアにたどり着くことができうる、というのもファシリテーションのメリットです。

4-3:メンバーのやる気を創出する

ファシリテーションのスキルを身につけることで、すべてのメンバーから効率的に意見を集めることで、会議や議論を短時間で効率的に進めることができます。

短い時間の中でも、ファシリテーションを受けてメンバーが会議内で自分たちの意見や知恵を出し合い、納得できる合意を形成することで、「こうしていこう!」というモチベーション向上にもつながるでしょう。

ファシリテーションは、すでに決まったことを伝達するだけではなく、メンバーのモチベーションを向上させプラスの意識を高めていく効果もあるのです。

5:事例を通してみる、ファシリテーションの流れ

では、次に実際にファシリテーションを行うために必要な準備や具体的な流れについて、事例を通して見ていきましょう。

5-1:ミーティング前の準備

効果的なファシリテーションを行うためには、ミーティング前の事前準備が重要になります。

事前準備のポイントは、下記の内容を設定しておくことです。

  • 目的とゴール設定を明確にする(Why)
  • アジェンダを作成する(What)
  • アジェンダごとのミーティングの進め方を想定する(How)

この中でも特に「目的とゴール設定を明確にする」ことが重要になります。

ゴール設定とは、「どのような状態になれば会議の目的を達成できたと言えるか」です。例えば、解決策などの決定事項に合意することがゴールであれば、「〜に合意した状態」と表現します。

また、上記以外には下記のようなことも準備しておきましょう。

  • 参加メンバーの情報共有
  • 使用するツールの確認と準備
  • 会場の整備や備品の準備
  • フレームワークの準備

ファシリテーションをスムーズに進めるためには、ミーティング中のルールを設定しておくことも大切です。

【ミーティング中のルール】

  • 相手の話を最後まで傾聴する
  • 異なる意見に対して批判をしない
  • わからないことは質問する
  • 時間を守る
  • ミーティング内で話した内容は評価に関係しない

ファシリテーションではメンバーの意見を引き出し、柔軟なアイデアを創出するためには、話しやすい雰囲気を作ることも重要です。

メンバーが発言しやすいように、上記のルールを設定し、周知してから進行するようにしましょう。

5-2:ミーティング中

ミーティング中は、以下の4つのSTEPに沿って問題解決に向けてサポートを行います。

STEP①【導入】ミーティングに参加する態度を形成する

いきなりプログラムの流れなどから開始してしまうと、参加する意義が感じられず、受動的な参加態度になってしまいます。

まずはじっくりと時間をかけて「ミーティングを開催するに至った経緯」などの背景やどんな課題にどのようなアプローチをするためにミーティングを企画したのか、などを丁寧にメンバーに共有しましょう。

アイスブレイクの際に「あなたは〜」「皆さんは〜」といった「二人称の問い」を意識的に投げかけることで、自分ごと化を促すことも重要です。

STEP②【知る】情報共有やメンバー同士の意見交換を促す

導入のステップが終わったら、続いてはファシリテーターやメンバーから知識や情報提供をしたり、メンバー同士の意見交換を促していきます。

ただし、ファシリテーターからの情報提供の際は、長々と講義形式で話をすることは、メンバーの主体性や対話の機会を奪ってしまうため注意が必要です。

配布資料などを活用しながら、簡潔に伝えるように工夫しましょう。

また、メンバー同士の意見交換を促す目的は、参加者に自分ごととして考えてもらうためです。

意見交換を活発化させるためには、ファシリテーター自身が答え方のサンプルとして自己開示することも有効でしょう。

STEP③【創る】新しいアイデアを生み出す

3つ目のステップでは、メンバー間の対話を深めて新しいアイデアを生み出していきます。

今までのステップを活かすために、ファシリテーターは改めて設定した「課題の要件と背景」を明確にして丁寧に説明することが必要です。

ファシリテーターが提示した「問い」を忘れないためにも、2つ目のステップの意見を付箋に記載して残しておくなどの対応も効果的でしょう。

STEP④【まとめ】全体に共有し振り返りを行う

先程のステップによって生まれた新しいアイデアを全体に共有していきます。

この時、ファシリテーターは無理に好意的な意見を伝えようとせず、素直な気持ちで対峙し、疑問点があればその場で投げかけましょう。

メンバーにとっても良いフィードバックになるので、素晴らしいと思ったら素直に「素晴らしい」と伝えるだけでも良いのです。

また、振り返りの時間では、「理解したこと」や「次のアクション」についての話し合いも大切ですが、「わからなくなったこと」にも意識的に問いかけると良いでしょう。

5-3:ミーティング後

ミーティングが終わったあとは、できるだけ早く議事録を作成しましょう。

メンバーの記憶が新鮮なうちに議事録の内容に齟齬がないことを確認するためにも、当日中に共有することが大切です。

また、議事録の作成以外に、次回の会議の課題をまとめたり、決定した事項のプランを実行するなどがあります。

ミーティングによって得られたアイデアを実施し、次回のミーティングで評価できるように進行することで、ファシリテーションのサイクルを作ることができるでしょう。

6:チームを成長させるファシリテーションのポイント

具体的なファシリテーションの進め方について解説しましたが、ここでは、その中でも重要な、チームを成長させるファシリテーションのポイントを見ていきましょう。

6-1:ミーティングの目的をチームに共有する

ファシリテーションを成功させるためには、目的をメンバーに共有しておくことが大切です。

「なぜミーティングを行うのか」「どんな課題を解決するのか」など、具体的に目的を共有しておくことで、同じ方向を向いて話し合いを進めることができます。

チームで問題解決を行う意識を高めるためにも、ミーティングの開始前などに目的をメンバーに共有するようにしましょう。

6-2:チーム内のコミュニケーションを促進させる

ファシリテーションを行うことにより、合意形成ができるなどのメリットがあります。

これらのメリットをより効果的にするためにも、チーム内のコミュニケーションを促進させることが大切です。

チーム内のコミュニケーションが取れておらず、関係性が構築できていない状態では、お互いの価値観を容認したり、役割を明確化することができません。

ファシリテーションの効果を最大化させるためにも、まずはお互いに声を掛け合える関係を構築しておくことが大切になります。

業務とは関係のないテーマであっても、必ず細かくコミュニケーションが取れる場を作るようにしましょう。

6-3:メンバー間の相互理解を深めて意見を発信しやすくする

ファシリテーターの役割として、「発言のしやすい雰囲気を作る」ことなどがありますが、その場の雰囲気作りだけでは良いアイデアや意見を出すことが難しい場合もあるでしょう。

アイデアや考えを発信しやすいチームを作るためには、メンバー間の相互理解を深めておく必要があります。

さらに、柔軟な意見やアイデアを創出するためには、メンバー間での相互理解だけでなく、価値観の違いなどを容認できる関係性を作ることが大切です。

メンバー全員で気づきや学びなどを社内SNSを使って共有したり、日報を出すなどの習慣をつけるなどの方法もあります。

7:まとめ

今回は、議論の質を高め、組織を成長させるファシリテーションの役割やメリット、ファシリテーションについて必要な考え方について、私たちパラドックスの知見を交えながらご紹介しました。

ファシリテーションを行うことは、納得できる合意の形成やメンバーのモチベーション向上など、チームにとってもメリットが大きいです。

しかし、新しいアイデアを創出するためには、ファシリテーターの「問い」のクオリティも重要なポイントになります。

ファシリテーションを組織の成長につなげるためには、チーム間のコミュニケーションや関係性も重要になるので、合わせて取り組むようにしましょう。

この内容が組織力を強化したいと考えている経営者や担当者の皆様にとって、少しでも課題解決のヒントになれば幸いです。

 

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PARADOX創研 メディア編集部
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