期初などに行われる「全社キックオフ」。
せっかく全社員の時間をとって実施するなら、社員にとっても会社にとってもメリットのあるイベントにしたいですよね。
しかし現実は前期の業績がつらつらと読まれるだけで、社員も退屈そう……なんて状態に悩んではいませんか?
今回は、そんな「聞くだけ」のキックオフを脱却し、全社員が主体的に「参加する」キックオフの実施方法をお伝えします。
具体的にどのようなコンテンツを実施するか詳しく説明していますので、ぜひじっくりとご覧ください。
1:キックオフとは
本来「キックオフ」とは、サッカーなどのスポーツでプレーの開始を意味するもの。
そこから転じてビジネスにおいては、プロジェクトの開始時にプロジェクトメンバーで、あるいは期初などの区切りに全社で行う、決起集会のようなイベントを指すものとなりました。
明確な定義はありませんが、プロジェクト単位で行うものを主に「キックオフミーティング」、事業年度・半期・四半期の期初などに全社で行うものを「全社キックオフ」あるいは「キックオフイベント」と呼ぶことが多いようです。
その中でも今回は、期初に全社で行うキックオフについてご説明します。
一般的な全社キックオフでは、以下のようなコンテンツを実施することが多いです。
・前期の業績や成果などの発表
・前期に大きな成果をあげたチームや個人の表彰
・今期の方針や数値目標の発表
・懇親会
キックオフにかける時間や規模感は、企業によってさまざま。豪華なホテルやホールで実施する企業もあれば、オンラインで1時間程度の企業もあります。
著名人に講演を依頼したり、若手の従業員の多いベンチャーやIT企業では、ステージ付きのホールを貸し切って、アーティストを呼ぶことも。中には経営層がステージに立って演奏する、なんて企業もあるそうです。
2:全社キックオフ実施の目的
全社でキックオフを実施するのには、主に以下のような目的や意義があります。
・経営戦略と今期の目標や方針を共有し、社員の目線を揃える
・モチベーションの向上
また、企業理念や評価制度のリリースなど、新しい大きな会社の方針発表やスタートとしても有効です。
このような目的がある一方、すでに実施している企業の中では、社員から「キックオフをやる意味がよくわからない」という声があがることがあります。
あるいはキックオフの最中に社員がつまらなさそうにしてたり、寝てしまったり、パソコンを開いて仕事をしたり。実施することが目的になり、本来の目的が見えなくなってしまっていることも多いのです。
この多くは、キックオフにおいて社員が“一方的に聞くだけ”の構図になってしまうことが原因でしょう。
そのようなキックオフにしないため、そして本来の目的を達成するために、私たちは「全社員参加型」の全社キックオフをご提案します。
3:「参加する」全社キックオフの実施方法
全社員参加型キックオフ
1. 前期の成果と今期の目標の共有
2. 前期の表彰
3. グループワーク
(4. 実施する場合は懇親会)
【Point】
・1日かけてオフラインで実施する
・「1.前期の成果と今期の目標の共有」は30分〜1時間となるべく短時間で実施
・メインは「3.グループワーク」におく
3-1:前期の成果と今期の目標の共有
前期の成果と今期の目標の共有は、当然重要なコンテンツです。
とはいえ、長々と数値だけを読み上げるような時間は不要。
あらかじめ資料を作成して共有しておき、質問も先に集めて回答しておけば、全社員が集まった場で時間をとる必要はありません。
本当に全員が集まって実施すべき事柄に時間を割くためにも、ここについてキックオフの当日は軽く説明する程度で済ませられるよう、工夫して実施することを検討してみてください。
3-2:前期の表彰
社員のモチベーションを上げるために、社内表彰は重要な施策のひとつ。キックオフのタイミングでなくても構いませんが、全員が集まるタイミングを活用しない手はありません。
このとき気をつけたいのは、表彰者の部署や役職、チームでの役割や性別、年齢などに偏りがないようにすること。
成果が見えやすい営業部門ばかりが表彰されるため、他の部門はむしろモチベーションを下げてしまう……なんてケースも実際に起こっています。
表彰を行う際は、偏りが出ないよう適正な基準を設けたり、社員数が多い場合は「営業部門」「バックオフィス部門」や「若手部門」「新入社員部門」など、多くの人が対象となるよう工夫してみてください。
3-3:グループワーク
私たちがおすすめするキックオフでは、このグループワーク(ワークショップ)がメインのイベントです。1日かけて実施するキックオフのうち、ほとんどの時間をここにかけます。
一般的にこういったグループワークは、チームビルディングを目的としたものやゲームに近いものなどさまざまですが、今回は「今期のチーム(プロジェクト)理念」をつくるワークショップをおすすめします。
各部署やチーム、あるいはプロジェクト単位でわかれて、多くても10名程度におさまるグループで実施しましょう。
全体的には、以下のような流れで行います。
1:企業理念に紐づける形で、チームが価値を提供する顧客を設定する
2:チームの「価値観」「らしさ」をピックアップ
3:「価値観」「らしさ」と顧客を結びつけ、チームのバリューを考える
4:バリューのワードをブラッシュアップ
5:全社で共有
そもそも企業理念は、以下のような図で成り立っていることが理想的です。
実現したい未来を表す「ビジョン」があり、ビジョン実現のために日々果たすべき使命である「ミッション(パーパス)」。さらにミッション・ビジョンを遂行する中で、企業が社会に提供する価値や約束を「バリュー」、従業員個人個人が守るべき価値観・指針が「クレド(スピリット)」です。
今回のワークショップでは、チームにおける「バリュー」を、チームの理念として考えてもらいます。
ビジョンやミッションをチーム単位で策定するケースもありますが、これらはどうしても曖昧な言葉になりがちで、半年や1年の目標として追うことや、達成されたかどうかを判断することは難しいです。
また行動指針であるクレド(スピリット)は、社員全員にあてはまるようすでに具体化されており、それと矛盾なくチームごとのクレドを作成するのは難易度が高いこと。
その点バリューは、企業理念としてのバリューを踏まえたまま、さらに具体的に落とし込み、事業部やチームごとの個性を出せる部分です。
なのでここでは、他でもないバリューを、チーム理念を考えるテーマにすることをおすすめしています。
▼バリューについて詳しくはこちら
バリューは顧客との約束。ミッション・ビジョンとの違いとは?
※自社の企業理念がビジョン・ミッションという名前でつくられていない場合は、それにあたる部分を適宜当てはめて、この後のワークを進めてください。
3-4:グループワークの流れ
それでは、「今期のチーム(プロジェクト)理念」をつくるワークショップの具体的な流れをご紹介していきます。
0:運営より企業理念の説明をし、理解を深める
企業にとって最も重要であり、全ての活動のもととなるのが企業理念。あらためてその意味を説明し、理解を深めてもらいます。
1:企業理念に紐づける形で、チームが価値を提供する顧客を設定する
チームのバリュー(=チーム理念)を考えるにあたっては、まず「チームにとっての顧客は誰か?」を考える必要があります。
例えば人事であれば社員、あるいは採用への応募者。営業であればクライアント、エンジニアであればエンドユーザーなど。より具体的に、どのような人物が顧客であるかを設定しましょう。
注意していただきたいのはこのとき、ただ単純に「人事なので顧客は社員!」とするのではなく、ビジョンやミッションに紐づけて顧客は誰か?を想像すること。
それによっては、人事であっても顧客はクライアントであったり、エンドユーザーであったりすることもあるはずです。
▼「顧客」の考え方について詳しくはこちら
ブランド力を高めるための本当のロイヤルカスタマーとは?
2:チームの「価値観」「らしさ」をピックアップ
次に自分たちのチームとしての「価値観」や「らしさ」をピックアップしていきましょう。先ほど設定した顧客に関係あるなしに関わらず、自由に自分たちのらしさを考えるのがポイントです。
できるだけ多くの意見がでたほうが良いので、時間を決めてひとりずつ付箋などに書き出してから、それらをまとめるやり方がおすすめです。
他のメンバーが自分たちのチームをどう捉えているかも知ることができ、相互理解も深まります。
3:「価値観」「らしさ」と顧客を結びつけ、チームのバリューを考える
先ほど設定した顧客とチームの価値観・らしさを結びつけ、自分たちが顧客に何を提供できるのか?を考えます。
人事だから、営業だからこうすべき!こういうものを提供すべき!という考え方ではなく、自分たちのチームだからこそ提供できる価値について思考をめぐらせましょう。
自分たちの持っているものをただ提供するのではなく、自分たちの価値やらしさがあれば、こんなものが提供できるはずだ!と、現状より少しレベルの高い提供価値を考えてみてください。
ここではキャッチコピーのような言葉をつくることは考えず、読んで意味の伝わる文章にまとめるところまでにとどめましょう。
4:バリューのワードをブラッシュアップ
「自分たちはこんな価値を提供する」というところまでまとめられたら、チームの理念として覚えやすく、納得感のあるフレーズに落とし込みます。
機知に富んだ言葉遊びは必要ありません。不器用でも納得感のある言葉にまとめてくださいね。
5:全社で共有
全てのチームでバリューが完成したら、それを全社に発表して共有しましょう。
普段関わるチームや、全く関わりのないチームがどんなチームなのか、どんな価値を提供したいと考えているのか知ることで理解が深まり、日頃の仕事のやり方も少し変わってくるはずです。
「SPD」を意識しよう
企業理念に基づいた企業運営ができたか、前期に決めた目標が達成できたか、次の目標を決める前には、このような振り返りを行うことが非常に重要です。
よく「Plan(計画する)・Do(実行する)・See(振り返る)」の頭文字をとってPDSが重要だといわれることがありますが、私たちはこれをあえて「SPD」と呼んでいます。
同じことのようにみえますが、振り返りを次の計画に活かすことこそが、企業運営にとって最も重要なこと。それを意識するために、S→P→Dの順序が大切なのです。
キックオフ全体についてはもちろん、「3-1.前期の成果と今期の目標の共有」「3-2.前期の表彰」「3-3.グループワーク」それぞれについても、前年度はどうだったかを振り返ることからコンテンツ設計をスタートしましょう。
キックオフ内においても、前期はどのような目標を立てたかを振り返り、その目標に基づいて実施された活動で、最も成果をあげたチームや個人を表彰することを忘れないでください。
4:最後に
「聞くだけ」の全社キックオフから、「参加する」キックオフを実施するイメージは湧いてきましたか?
最後に、全社キックオフを実施する際におさえておきたい、全体的なポイントをお伝えします。
まずはじめに、キックオフを実施する目的や、それによって得たいものを社員に向けて説明しましょう。会社側が何をしたいのか、自分にはどんなメリットがあるのかわからない状態で参加してしまうと、参加すること自体が目的となって、会に参加するモチベーションが保てない社員が出てきてしまいます。
また実施をする際には、当日までにあらかじめタイムスケジュールを共有しておきましょう。キックオフ当日は一切仕事を進めなくても大丈夫なよう、各自に調整してほしい旨を伝えるようにしてください。
そして実施のあとは必ず、運営側で振り返りを行いましょう。参加した社員に良かった点や改善点のアンケートをとり、効果を測定することも有効です。
時間も費用もかけて実施するキックオフですから、翌年はより一層効果が出せるよう、改善を繰り返していきましょう。
キックオフ実施の経験が一切なく、どうして良いかわからない。より良いものにしたいけれど、自分たちでは限界がある。と感じる方は、外部のパートナーに依頼をするのもおすすめです。
いつかは自走することを前提にして構いませんので、一度相談してみるのが良いかもしれません。
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