成長できる会社の選び方を、3つのタイプから読み解きます。

「今の会社が嫌だ!というわけではないけれど、今のままで良いのかわからない」
「もっと成長につながる会社があるような気がしている」
「将来的に起業を考え始めたので、転職したほうが良いのではないか」

就職して数年経つと、誰しも一度は転職を考えるもの。

より深い学びのため、やりたいことを実現するため。
やりたいことを探すため。

理由はさまざまですが、「もっと成長したい」という思いは多くの方に共通しています。

では、もっと成長するための転職において、必要な条件とは何なのでしょうか。
この記事では、過去3度の転職を経験した筆者から

・あなたにとっての「成長できる」とはどういうことか
・持続的に成長する会社とは何か
・そもそも転職に必要な会社選びの基本条件

についてご紹介します。
これらの条件を掛け合わせて、理想的な転職先を探してみてください。

 

1:あなたにとって「成長できる」とは?

「大企業は古い体質でだめだ、ベンチャーで若いうちからバリバリ働いた方が成長できる!」

こんな言葉を聞いたことはありませんか?
では、ベンチャー企業に入れば、大企業に行くよりも必ず成長につながるのでしょうか。

成長できる環境とは、誰にとっても同じではありません。どんな人でも入社するだけで、望む通りに成長できる会社なんて存在しませんよね。

大切なのは、自分がどうなりたいのか。そのためにはどのような成長が必要で、その成長を実現できるのはどんな会社か。と、筋道立てて考えることが重要です。

とはいえ、この答えは千差万別。ここでは、自分がどうなりたいのかを明確化するための、考え方をご紹介します。

これは、「ゴールデンサークル」というもの。世界の叡智を結集したプレゼンテーションでおなじみ・TEDでも紹介された、「物事の本質を説明する際に重要となるフレーム」のことです。

・Why=なぜやるのか
・How=どうやるのか
・What=何をやるのか

例えば、動物好きの筆者の場合。常々思っている「全てのペット動物を幸せにしたい」をWhyとしても、How, Whatには以下のようにいくつもの答えがあります。

EX1)

・Why=全てのペット動物を幸せにしたい
・How=保護動物が新しい家族を見つける手伝いをする
・What=里親募集サイトに掲載されている動物をまとめて見られるWebサービスをつくる

→価格比較サイトなどのWebサービスを行う企業へ入社し、新規サービスを立ち上げる

EX2)

・Why=全てのペット動物を幸せにしたい
・How=ペットを飼うためにより厳しい条件を設ける
・What=ペット購入に関する法律を整備する

→国会議員になり、ペット関連の法改正を行う

このように、WhyーHowーWhatにあてはめて、自らの実現したいことやそのための手段を考えてみると、人によって答えはさまざま。もし、「成長できる環境へ行きたい!」という思いが漠然としていると感じたら、まずは自分にとってのWhyを考えてみてください。

自分にとって本当のWhyを見つけるためには、まず自分が思うWhyの事柄について、さらに「なぜ?」の問いを6回繰り返すと答えが深まると言われています。それでもWhyを見つけることが難しいと感じたら、改めて自己分析をしてみることもおすすめ。今一度初心に立ち返り、自分を見つめ直してみましょう。

▼自己分析のやりかたはこちら
「就活を始める前に知っておきたい!企業人事から見た自己分析の目的とやり方。」
http://visions-media.jp/column/jikobunseki/

自分自身の根幹に関わるWhyは人の数だけありますが、そこからつながるHowやWhat、つまり成長の方向性や手段については、ある程度カテゴライズが可能です。

ここからは、3つの成長の方向性に合わせて、どのような企業に行けば良いのかをご紹介します。もちろん、この通りである必要はありません。こんな風に考えれば良いのか、と、転職先を考えるためのヒントにしてみてください。

1-1:自分を高めたい!リーダー型

「将来的に起業したい」
「経営視点を身に付けたい」

このような目標がある方は、難しい仕事に挑戦してそれをクリアしたり、自分の視点や立場を一段高いところにおいて物事に取り組んで得られるような成長を求めているタイプ。

起業したい事業を行う会社や、理想的な会社像を思い浮かべ、それと近い職場を探しましょう。あるいは、「この人みたいになりたい」という経営者のいる会社へ行くのも良いでしょう。

また、起業のために足りないことが経営の知識なのか、リーダーシップなのか、営業力なのか。さらにその中でもどんな経営、リーダーシップ、営業力なのかなどによっても、答えはさまざまです。

経営の知識が足りないのであれば、堅実な経営や革新的な経営、チームでの経営など、学びたい経営を行っている会社へ。

リーダーシップを学びたければ、ひとりでみんなを引っ張るカリスマ経営者なのか、メンバーの力をうまく借りる経営者なのかによって変わります。

営業力を得たいのであれば、それが出資者を募るためなのか、取引先を増やすためなのかにもよるでしょう。

ここでも、Whyを考える際のように、何度も「なぜ?」「どんな?」「それってつまりどういうこと?」を繰り返して、自分の求めるものについて深めることが必要です。

1-2:自分を広げたい!ゼネラリスト型

「いろいろなことを経験したい」
「何でもできるようになりたい」

こう思う方は、仕事の量や種類をこなすことで、視野を広げる・経験の幅をもつ、といった成長を求めているタイプ。このタイプの方は、さまざまな職種を経験できる企業を選びましょう。

どの職種についてもある程度できるようになりたいのなら、部署の立ち上げに関わるポジションの募集よりも、既にしっかりと運営されている部署のある会社が良いでしょう。例えば大企業で、定期的なローテーションによって複数部門で働ける会社などです。

あるいは、必要に迫られて必死に勉強し、苦労しながらもスピード感を持って身に付けたいタイプの方もいるでしょう。そのような方は、少人数のベンチャー企業で、ひとりで複数の役割をこなす必要のあるポジションが良いかもしれません。

この場合にひとつ注意していただきたいのは、いろいろなことに浅く手を出しすぎて、「何もできない人」になってしまわないこと。どの分野もある程度の深度まで極めないことには、応用の力が身につきません。

1-3:自分を深めたい!スペシャリスト型

「手に職をつけたい」
「どこの会社でも通用する専門的な能力を身に付けたい」

このような方は、苦境や修羅場も乗り越えながら、ひとつのことを極めていく成長を求めるタイプ。専門職・スペシャリストとして成長・活躍できる場が好ましいでしょう。その職種に強く、異動のない会社を探しましょう。大企業かベンチャー企業かについては、あまり気にする必要はありません。

気をつけたいのは、同じことだけをやり続ける会社を選んでしまわないこと。同じ作業を繰り返すことで、ミスが減ったりこなすスピードが早くなったりはするでしょうが、それは本質的な成長とは言えません。

どんな職種でも、考え方や技術は常に新しく生まれ続けています。それらを取り入れて、仕事内容自体がアップデートされていかなければ、どこでも通用する専門家になることは難しいでしょう。それぞれの会社の特色をよく見て、よりマッチするところを見つけてください。

2:持続的に成長する会社の共通点

転職での会社選びにおいては、自分が成長できる条件だけでなく、その会社自体に成長の余地があるかどうかを確認しましょう。主観的な条件だけで転職してしまうと、せっかく転職してもすぐに倒産してしまったり、望んだ条件に合わなくなってしまうことがあるためです。

ただ一方で、例えば「ゼロから人事組織をつくりあげたい」「組織改革により会社を立て直したい」という経験をするための転職であれば、あえて体制の整わない会社を選ぶこともあるでしょう。そのような場合は、もちろん以下の条件にあてはまっていなくとも構いません。

ここでは、自らの成長につながる条件が整った上で、今後成長する会社に転職したい場合に確認しておきたいポイントをご紹介します。

2-0:企業理念

成長する会社の条件をお話しする前に、大前提として会社に必要なものがあります。それは、企業理念。企業理念は、企業の存在意義とあり方を言語化したものです。

・その企業が何のために存在しているのか
・どこに向かって企業活動をしているのか
・その企業の強みはなんなのか
・日々どういったことを心がけているのか

このような事柄をわかりやすく言語化したもので、企業活動の意思決定の軸および判断基準となります。企業によって多少異なりますが、主に以下ような要素が含まれています。

ビジョン:実現したい未来
ミッション:日々果たすべき使命
バリュー:約束する価値・強み
スピリット(クレド):大切にすべき精神・行動指針
スローガン:上記理念をシンボル化した合言葉

例えば新しいビジネスを始める際。利益が出るか否かだけではなく、そのビジネスが企業理念の実現につながるかが判断の指標となるのです。

一人ひとりのビジネスパーソンと同様、一つひとつの企業にも、実現したい目標があります。むしろ企業理念やそれに相当する考えがなければ、それは単にお金儲けのためだけに存在しているということ。そのような企業には、守るべき価値観や行動の軸がないため、従業員は何に向かって努力しているのかがわからなくなってしまいます。また、企業理念があまりにも現実とかけ離れている場合にも、同様の注意が必要です。

もし企業理念がはっきりと言語化されていない場合でも、選考を進める中で、企業理念に相当するような確固たる軸があるかを確認しましょう。

▼企業理念について詳しくはこちら
「企業理念とは?100年続く企業になるために必要な企業理念を徹底解説」
https://prdx.co.jp/visions-prdx/kigyo-rinen-toha

2-1:オンリーワン発想

例えばPCを購入する際、MacかWindowsかで迷う方は多いのではないでしょうか。しかしMacはAppleのみが製造しているのに対して、Windowsを製造している会社はさまざま。にもかかわらず、この2択になっているのです。

考えてみると、Windowsの製品は機能にほぼ変わりがなく、価格競争になってしまっています。一方で、Macは独自の機能とデザインを追求し、オンリーワンの製品として地位を確立しているのです。

さらにこの独自性の追求を通して、Apple社はもはや製品だけではなく、企業として唯一無二の存在となっています。

このように、その会社が提供する商品やサービスにおいて、他の会社が真似できないポイントやその会社ならではの発想・視点があるか。さらには企業自体が、オンリーワンのものとして確立されているかに注目してみましょう。

2-2:チャレンジ精神

これは、“その会社が現状に満足せず、常により良くなろうとしているか”ということ。常に同じ商品、同じビジネスをやり続けるのではなく、新しいことにチャレンジしているかどうかです。

2-0でお話しした通り、企業にはそれぞれ理念があり、その理念を実現するために事業があります。まだ見ぬ理想の未来であるビジョンを実現するためには、常にチャレンジを続け、ビジネスをアップデートしていく必要があるのは当然のこと。

例えば前項でMacの例を出したApple社。マイクロコンピューターから始まり、iMac、iPhone、iPad、Apple Watchなどのデバイスのみならず、サブスクリプションサービスのApple Musicまで。常に変化を続けています。

これも「テクノロジーを介して何百万人もの人の生活を変える」というビジョンの実現に向かって、チャレンジをし続けているからこその変化。

もしチャレンジの結果、新規事業から撤退していたとしても、正しい経営判断をなせる会社だという見方もできるでしょう。

2-3:常識にとらわれない姿勢

これは世の中の常識や慣習にとらわれず、より良い常識をつくろうとしているかどうかということ。

独自の存在意義を持ち、オンリーワンな発想でビジネスを行っていると、必ずぶつかるのが常識の壁です。これまでにないことを始めると必ず、非難を浴びることもあるでしょう。そのような困難に直面した際に折れるのではなく、常識にとらわれない姿勢で、さらに進化を遂げられるかが重要になるのです。

本当にいい商品やサービスであれば、これまでの常識とは異なっていても、徐々に認められていくはず。賞賛してくれる人や同志との出会いを推進力にして、前に進んでいる会社なのかを見極めましょう。

3:やりがい、成長だけじゃダメ!会社選びの基本条件

ひとが働くうえで最も大切なのは、心身の健康が保たれていること。

自分が成長でき、今後も成長していく会社がわかったとしても、それだけで転職先は決められません。福利厚生や給与、企業カルチャーなどの条件を無視すると、

「仕事内容はすごく理想的だったけれど、給与が低すぎて生活が成り立たない」
「社長はすごく尊敬できるけど、直属の上司とうまくいかない」

なんてことも起こりえます。

自分が達成したいことが実現できるのかと同時に、心身ともに健康的に働ける条件も考え、ハード面・ソフト面/定性的・定量的と多面的に会社を見てみる。そして、それらの条件に優先順位をつけた上で、自分にふさわしい転職先を慎重に決断しましょう。

3-1:制度や環境面で気にしておきたい条件について

●オフィス環境

近年、採用サイトにお洒落なオフィスの写真が載っている会社が多いことからも、オフィスの環境が重視されていることがわかります。

業務内容によっては、1日の大半を過ごすことになるオフィスですから、住居や寝具のように重要なのは当然。机や椅子などの備品や、デスクが固定かフリーアドレスかなど、自分にとって働きやすいオフィス環境かを確認しましょう。

余談ですが、キッチンスペースの清潔さや、デスク周りの整理整頓具合などから、良くも悪くもその会社らしさが見えてくることも……。

●勤務時間/時間外手当

長時間労働を改善し、生産性の高い働き方が意識されるようになってきた現在。

会社の制度も過渡期にあり、勤務時間・残業時間については企業によって大きく異なります。全体としては残業の少ない企業でも、一部の部署だけは忙しいなんてことも。面接だけでは把握できない場合、入社したら同僚になる社員との面談を設定してもらうなどして、実態を掴むことも時には必要です。

また時間外手当についても、残業した分が支払われるのか、みなし残業なのか、裁量労働制なのかは必ず確認しましょう。

もちろん基本的には雇用契約書に明記されていますが、中には実態が伴わないものも。例えば「給与には40時間分の固定残業代を含む(超過分は支給)」とされていても、そもそも勤怠管理がされておらず、実際には40時間以上働いても時間外手当が支払われないというケースも多くあります。

●福利厚生

健康保険や厚生年金保険、雇用保険などは、法定福利といって企業が必ず負担しなければならないもの。これがあることは当然として、その他の福利厚生にどのようなものがあるかを見ておきしょう。

福利厚生は、会社が社員を大切に思っているかどうかの証人を大切にする文化のある会社が良いと考えている方は、福利厚生を確認してみると良いでしょう。特別な福利厚生があるから良い会社とは限りませんが、社員のより充実した生活や将来を思う制度があることは、ひとつの判断基準になります。

●企業カルチャー

ひとそれぞれの性格があるように、企業にも性格のようなもの、つまり企業カルチャーがあります。

ガツガツしているのか、穏やかなのか。褒め合うのか、批評し合うのか。このカルチャーがマッチしていないと、運動部に突然投げ込まれた文化部のように、またはその逆のように、居心地の悪い状況になってしまいます。

「ベンチャーマインド」はよく使われる言葉ですが、これひとつとっても「常に新しいことを求め続ける」ことを指すのか、「とにかくがむしゃらに頑張る」ことを指すのかで企業カルチャーは変わってきます。

また、企業カルチャーが理念から落とし込まれているかも重要なポイント。例えば「仲間に貢献しよう」というスピリット(大切にすべき精神・行動指針)があるにも関わらず、実態は完全個人主義で働く人が多いなど、企業理念が形骸化している場合。

3-2でお話しするように、理念に共感して入社したとしても、その理念が機能していないためミスマッチとなります。

さらに「人を大切にする」会社かどうかも、企業カルチャーから判断できることのひとつ。入社を決める前にできるだけ多くの社員と話したり、会社が発信する情報から読み取ったりして、企業カルチャーが自分に合うかを見極めましょう。

●評価制度

特に創業年数の浅い企業では、評価に関する基準が曖昧な場合があります。評価制度がないにも関わらず、「完全実力主義」と銘打つところも少なくありません。

評価制度は、昇給や賞与に関わる重要な部分。具体的な数値設定があるかどうか、評価者の主観だけで判断されないかについて、可能な限り確認しましょう。

●従業員満足度調査の試み

福利厚生の整備も含みますが、会社として従業員満足度の向上に取り組んでいるかどうかは、近年会社選びにおいて重要なポイント。真摯に従業員のことを思う会社が働きやすいことはもちろん、従業員満足度の向上は、巡り巡って会社の業績を向上させることもわかっています。

またこのような取り組みを行う組織が社内にあることは、会社への要望を吸い上げ、検討してくれる機関があるということ。不満を抱えてしまったときや、改善の提案をしたいときに相談する窓口となります。

3-2:理念への共感も大切な条件

2-0でお話しした、企業理念。

入社を決めるにあたって、ただその会社に企業理念があれば良いのではありません。大切なのは、その理念に共感できるか、自分自身のWhyと紐づいているかどうかです。

理念に共感しないまま働いていると、次第に「何のために働いているのか」がわからなくなってしまいます。

会社が掲げる理念を実現するためには、さまざまな手段があります。それはときに、あまりやりたいとは思えないことかもしれません。その際、理念に共感して入社していれば「これも理念実現のためには必要なことだ」と納得して行動することもできます。しかし理念に共感していなければ、「なぜこんなことをやらなければならないのか?」と不満を持つのも当然。

どんなに他の条件が良くても、理念への共感がなければ長くは働けません。その会社のミッション・ビジョン・バリューなどをよく理解し、共感できるかを確かめてから転職を決めることをおすすめします。

4:最後に

もっと成長するために、転職をしたい!と思った時。必要なのは、

・自分のWhyを持つこと
・それを叶えるためのHow-Whatを探すこと
・How-Whatを満たせる環境を見つけること
・現実的に譲れない条件を定めること

これらがあやふやなままに転職してしまうと、ミスマッチとなり、転職を繰り返すことになります。

特に新卒での入社に比べると、転職では既に就労経験があるため、会社を見る目が厳しくなりがち。マッチしない企業に転職してしまうと、余計に不満を抱えてしまいます。さらなるステップアップのためではなく、不満解消のための転職は少ないに越したことはありません。

また、Why-How-Whatや譲れない条件を考えたとき、転職以外の選択肢が出てくることもあるでしょう。いまの会社に残ったり、起業したり、学校に通ったり。どの選択をするとしても、自分のやりたいことや将来を本質的に考えられていれば、間違いではありません。

今後の人生を大きく左右するかもしれない転職の機会。じっくり考えて、後悔のない判断をできるように応援しています。

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