ストレングスファインダーの目的と個人・企業での活かし方

ストレングスファインダーとは何か。そう聞かれれば答えは明確で、ストレングスファインダーの名のとおり、それぞれの強みを発見・開発していくためのツールです。もう少し補足して言うならば、診断テストを行うことで、個人の強みに変えていける部分を見つけ出し、理解するもの。

……というのは簡単ですが、これを読んでいらっしゃる方は、ストレングスファインダーが何であるかだけではなく、どのように役立つのかや、どう活かしていくものなのかも合わせて、きっと気になっていらっしゃいますよね。

この記事では、ストレングスファインダーの基礎知識から、個人・組織での活用方法、実施する意義などについてを解説していきます。

1:ストレングスファインダーの基礎知識

まずは、大前提。ストレングスファインダーに関する基本的な知識から。5つのQ&Aでサクッと理解しましょう。最初はなんとなくわかれば、OKですよ。

Q. ストレングスファインダーって、何?

A. 個人の持つ、「資質」の「強弱」がわかるもの。

「最上志向」「規律性」「社交性」などなど、人の34の資質を、明らかにします。テストを受けることで、各資質の強弱がわかります。

Q. 資質とは?

A. 才能を構造的・統計的に分類したもの。

ストレングスファインダーには、「資質」の他、「才能」や「強み」といったキーワードも出てきます。ちょっとややこしいですが、このあとの記事にも頻出の単語なのでここはしっかりと読んでください!

区別して知っておきたいストレングスファインダーの用語

 

才能:生まれながらに持つ自然な思考、感情、行動のパターン。たくさんの種類がある。

Ex.)説明するのが上手い。文章を書くのが上手い。話をするのが上手い。

 

資質:「才能」を構造的・統計的にグループ化したもの。無限にあるものではなく、34の資質に分類されている。

Ex.)上記「才能」の例として記載している、説明するのが上手い、文章を書くのが上手い、などの才能はまとめて、「コミュニケーション」にまとめられる。

 

強み:一貫して成果を生み出す能力。「資質」に対して訓練したり開発したりと、投資をすることで得られる。

Ex.)「コミュニケーション」の特性を活かして訓練することで成果を挙げられるようになる。

 

Q. ストレングスファインダーでは、どんな資質についてわかるの?

A. 34種類の資質について、順位が出る。

ストレングスファインダーでわかる資質は、全部で34種類。テストの結果、その人ごと、強く出る資質から順位がわかります。たとえば、1位・分析思考、2位・適応性、3位親密性……といった具合に、34番目まで自分の資質が出せるのです。

(※通常プランでは上位5資質が、オプションをつけることで34すべての資質がわかります。)

大きく、下図のように「実行力の強み」「影響力の強み」「人間関係構築力の強み」「戦略的思考力の強み」の4つに分類がされています。

Q. ストレングスファインダーで資質を知って、どうするの?

A. 強みや弱みを自覚し、目標に向かって活かす。

資質は、手持ちのカードのようなものです。必要なときに、どのカードを使うか。上手な使い方ができるようになります。

たとえば、何かトラブルの対処をするとき闇雲に策を講じるのではなく、「コミュニケーション」と「社交性」が得意な人なら、意識的にその資質を活かせそうな手段を選んでみるといった具合に。

自分の資質を知り、それを訓練することで強みに。反対に、資質は使い方次第では弱みにもなるため、自覚することでマイナスを防ぐことができます。何か目的や目標があるとき、どのように強みを磨くか、どう活かすか、考える際の役に立ちます。

Q. 34の資質の中で、下位にあるものは弱み?

A. 下位=弱み ではない。

資質のうち、上位=強み、下位=弱み、ではありません。上位は無意識でもできること、下位は意識すればできるけど時間がかかること、と意識してみましょう。上位は利き手で文字を書くこと、下位は利き手とは逆の手文字を書くことをイメージしてみてみるといいかも。

弱みというのは、資質を活用できず、あるいは活用の仕方を誤ることで、ネガティブな結果を生み出すことを言います。たとえば、「共感性」の資質が強い人の場合、「人の気持ちがわかる」となれば強みと言えますが、「感情に頼った判断をしてしまう」だと弱みになる、と言った具合です。

2:ストレングスファインダーの活用

ストレングスファインダーについてざっくり理解したところで、どのように活かしていけるものなのかを知っていきましょう。ただ診断をして「当たってる〜!」で終わってしまってはもったいないですよ!

2-1:人それぞれの強みを重視して、弱点を管理するため。

なぜ、ストレングスファインダーをやるのか。答えは、人それぞれにある強みを重視して、弱点を管理するためです。

ここでちょっと「強み」と「成功」の関係の話をしてみます。ストレングスファインダーの生みの親である心理学者ドナルド・クリフトン氏と、ギャラップ社による調査の結果、こんなことがわかりました。

自分の才能を知り、その才能を使用する機会を得た人は、仕事に就いている確率が6倍高いこと。それから、自分の才能を知り、その才能を使用する機会を得た人は、生活の質が向上したと報告する確率が3倍高いこと。そして、自分の強みを使用している人は毎日の生産性が7.8%向上していること。

つまり、自分の強みを理解し適切に発揮している人のほうが、仕事(あるいは何か特定の目的)においては成功に近づきやすいというわけです。

だから、自分の強み(強みとは、資質を訓練して一定の成果が出せるようにしたもののことでしたね)を重視していくことが大切。ポイントは、弱みの克服には重点が置かれていないことです。

強みと弱みがあれば、弱みをカバーしようと考えてしまいがちですが、ストレングスファインダーでは真逆。強みを適切に発揮することを考えます。そして、弱みは克服するのではなく、管理する。弱みを自覚することで、ネガティブな結果へつながることを防ぐ対策がある程度可能になります。

2-2:企業におけるストレングスファインダーの活用事例

ここからは、具体的に企業がどのようにストレングスファインダーを活用しているか。活用事例を見ていきましょう。

■個人のコーチング

まずは、個人が行う例。ストレングスファインダーの最も多い使い方かもしれません。自分で自分のことを知るために、使用します。個人が自分で本を読むなどして行ってもいいですし、企業ではマネージャーがコーチングを行ったり、コーチングの資格を持つスタッフを招いて行う場合もあります。

書籍を購入 or Web上でアクセスコードの購入をしテストを行うと、ある程度の解説が描かれているので、読みながら自分で理解を深めることもできます。

注意したいのは、ここでわかった資質をどのように活かすか。ストレングスファインダーの結果は、たとえば自分自身のやりたいことや、これからやっていくべき仕事の場面での、方針ややり方を考えるために役立てます。これを基に何が向いているか、何をすべきか考えるためのものではありません。

ストレングスファインダーの結果の役立て方

= やりたいことに向かって、どう資質を活かすか考える

≠ 資質を基にやりたいことを考える

 

たとえば、自分の資質で上位に「共感性」があったとき

◯ 次のプロジェクトでは、気持ちの面でサポートする役割を買って出てみよう!

× 共感性が強い人に合う職業って何だろう……?

 

■企業内の新しい部署やプロジェクトのメンバーでやってみる。

これはお互いの資質を共有することで、相互理解につながります。相互理解ができると、日々の業務が円滑にいきますよね。あの人はアレが得意なんだな、これは苦手だったなと、わかっているだけで接し方は変えられます。

それから、新たなチームの中で資質がわかっていると業務の割り振りにも役立てられます。これが得意な人にはこの業務を任せよう。あのプロジェクトではこういう要素が大切だからこの資質を持つ人にサポートで入ってもらおう。……といった活用の仕方があります。

私たちパラドックスでも、ここはとくに実践しているところ。プロジェクトメンバーの選定の際、役割分担などに、その人がどのような資質を持っているのかに注目したチームづくりを行っています。仕事を通じて、弱みの補強は他の人との組み合わせで補い、強みをより生かすことで、チームとしての成果をあげていくことができるのです。

 

■新入社員に受験してもらう。

すでに社内のメンバーが受けている場合には、新入社員にも受けてもらうことが効果的です。配属にあたり参考にできることもありますし、個々人の得意不得意がわかっていれば、マネジメントにも役立てられますね。

 

■企業の「らしさ」がわかる。

これは副次的な効果と言えるものですが、メンバーでストレングスファインダーをやると、ある程度その企業の中での傾向が見えてくることがあります。多い資質はその企業のらしさだったり、企業の強みかもしれません。逆にその企業の中で少数派の資質を持つ人がいれば、その組織に足りないものを補ってくれる人ということになります。

テスト自体は、書籍を購入すれば付属のアクセスコードを入力してWeb上ですぐに受験することができます。書籍ではなく、Webでの申込みも可能ですので、どちらかの方法でテストを受験しましょう。

なお、通常プランでは、上位5資質が。追加オプションで34すべての資質を知ることができます。

コラム:ストレングスファインダーをやってみた。

 

ちょっと脱線しますが、筆者自身がストレングスファインダーを受験したときに感じたことを、ここでちょっと書いてみようかと思います。

 

筆者の上位5つの資質はこんな感じ。

 

 

下位5つがこんな感じでした。

 

 

これを見たとき率直に納得だな〜と思ったのですが(元来ひとりでコツコツ勉強して考えるのが好きなので)、次に思ったのが「いや、これどう活かすん……?」ということでした。

なぜかと言えば、

2章2節でご紹介したとおり、ストレングスファインダーは、基本的に「これからやりたいことに向けて」使うべきものです。ただ、筆者は「これからやりたいこと」がそもそもないタイプなんです。目の前のことをコツコツ頑張って、気付いたら積み上がっているものの方が好き。「何がやりたいの」って聞かれても困るんですよね。

 

だって見て……

 

 

未来志向34番目(最下位)なのよ……?

 

そこで社内にいるコーチングの資格を持つ人に相談しました。未来志向が下位な人って、ストレングスファインダー活かしようがないんですか?と。

たしかに未来志向が弱い人にとっては、やりたいことベースで強みを活かそうとするストレングスファインダーの基本的な使い方は難しいかもね、という話はありつつ。

「そんな使い方もあるのか!」と目から鱗だったアドバイスがあったので、ここでひとつご紹介したいと思います。

 

それが、「諦めがつく」ということです。

 

そう思うと、「じゃあもう社交性は諦めよう!」「未来志向は難しそうだから他の人を頼ろう!」と最初から思い悩むことが減る。自分の得意なもので勝負したり、自分の下位の資質を高く持っている人とチームを組むことでなんとかしようと思えるんですね。無理なもんは無理、と腹をくくって作戦を立てられるんですよ。たしかにこういう点で、組織内の人がみんなテストを受けて結果を共有するのが大事なんだなと思いました。

この点が、個人的には結構面白かったなと。ストレングスファインダー、着目するポイントによって、色んな使い方もあるのだなぁと。意外な使い方を教えてもらったように思いました。

 

脱線終わり。

 

3:ストレングスファインダーを使ってみよう!

ここからは実際にやってみようと思っている人/導入してみたい組織の人向け。どのようにやると高い効果が得られるのか、少しアドバイスをしていきます。

3-1:個人でやってみる場合

まずはWebからor書籍を購入し、アクセスコードを入手して、テストを受験しましょう。

『さあ、才能(じぶん)に目覚めよう ストレングス・ファインダー2.0』(日本経済新聞出版)

テスト後は、書籍の解説をじっくり読むこと。書籍の解説よりも詳しく、Web上では他の資質との関連性も踏まえたレポートが出されるため、そちらもじっくりと読んでみてください。

それからレポートの解説にちょっとしたワークがついているので、実施をしてみてください。資質に思い当たる経験を思い出してみたりするのもいいですし、いま仕事で困っていること、あるいは、今後やりたいことのために、資質がどう活かせそうか考えてみるのも効果的です。

いくつか、私たちが社内の研修で使用しているワークシートの一部をダウンロードできるようにしておきます。ぜひ、参考に使用してみてください。

 

ワークシートのダウンロードはこちら

3-2:企業内で行い、マネジメントに活かす場合

相互理解目的の場合は、組織内で結果を共有し、お互いの得意&苦手を知っておくことが大切です。もちろん、個人の方でご紹介したワークシートをみんなでやってみるのもOK

その際に、やってはダメなふたつのNG事項があるので、ご注意を。ひとつは、決めつけに使わないこと。「やっぱり○○の資質が強い人は▲▲だからダメだね」「ほら、そういうところが○○」といった言い方をしてしまうのはストレングスファインダーの間違った使い方です。

もうひとつは、ストレングスファインダーの結果を、そのまま昇進などに直結をさせないことです。「うちの会社は最上志向の資質を求めているから、そういう人をリーダー職にしよう」といったことはしないようにしましょう。資質はあくまで人それぞれにある強みを重視して、弱点を管理するためのもの、でしたよね。その結果だけをみて、得られる機会を不平等にしてしまうことは、ストレングスファインダーの誤った活用法になってしまいます。

ストレングスファインダーの間違った組織での使い方

・決めつけに使う

・昇進・評価に直結させる

 

たとえばこの結果を基に、マネージャーとメンバーが面談などを行う場合。マネージャーは話を誘導したり、どうすべきか指示したりしないのが大事です。

「○○の資質が弱いからいまのプロジェクト上手くいってないんじゃない?」とマネージャーが決めて、従わせるのはNG。ポイントは結果を基に、あくまで本人に考えさせること。聞く&ガイドするだけにするのが重要です。「結果を見て自分でどう思う?」「どこを活かしたいと思う」と聞いて、考えてもらうようにしましょう。

3-3:外部講師にお願いする

ストレングスファインダーの結果を最大限に高める方法として、コーチングの資格を持っている人の力を借りるという方法もあります。プロを招いて、結果の見方を教えてもらったり、直接相談できるようにするのも、効果が十分に得られる方法だと言えます。そうすることで、自分で解説を読むよりも一段踏み込んだ視点をもらうことができるのです。社内でひとりコーチングの資格を誰かがとることにしている企業もあったりします。

ちなみに、手前味噌ではありますが、弊社パラドックスでも、ストレングスファインダーの認定コーチによる研修を承ることが可能ですので、身近にコーチがいないという方は、いつでもお問い合わせくださいませ!

4:合わせて知っておきたい。他の診断ツールとの比較

○○診断、と呼ばれるものの中で、企業の中で比較的よく実施されているものの比較を行います。そのときどき、何を目的とするかによって、手段を選択することが大切です。

4-1:MBTI診断

MBTIは、4項目×2タイプで16のタイプに分けられる診断。ユング心理学のタイプ論を基調としたものです。

E/I:外向/内向、N/S:直観/感覚、T/F:論理/感情、J/P:判断/知覚 の項目があり、資質が順位で出るストレングスファインダーとは違って、明確にどのタイプかの結果がひとつ出るもの。こちらも、組織内の相互理解などに多く使われています。

4-2:各適職診断

適職診断も多くのものは、タイプを定め、そのタイプと職業の特徴が対応するように合っているものをオススメしてくれるもの。ストレングスファインダーは、やりたいこと、やっていくべきことに向けて、すでにある資質をどう活かしていくか考えるためのものなので、根本的な用途が異なります。

どちらがいい、悪い、ではなく、目的に合わせて、診断を選択することが重要です。

5:まとめ

ストレングスファインダーは、個人の強みを伸ばし、仕事ややりたい未来のことへ向けて生かしていくための診断です。何が向いている、向いていない、と決めつけてしまうものではありません。

それゆえ、個人においての活用だけではなく、組織の中でのチーム編成や人事配置など、その人を理解することで強みを活かし、弱みを補うチームをつくることにおいても活用できるのです。

プロジェクトチームをより最適なチームにするために活かすもよし。入社のタイミングで新入社員全員に受けてもらって、その人ごとの特徴を理解したマネジメントを考えてみるのもよし。「最適」な人材配置や育成方法は、人事と上司による勘と経験のみが重要なのではありません。使えるツールは、使うべし!ツールの特徴を理解し、効果を最大化する導入を考えてみてくださいね。

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