「トップダウンとボトムアップって、どういう意味だろう」
「それぞれ、どういう違いがあるんだろう」
「うちの会社には、どっちがフィットするんだろう」
この記事にたどり着いたということは、上記のような疑問をお持ちなのではないでしょうか。
会社経営の意思決定スタイルとして用いられる「トップダウン」と「ボトムアップ」。
よく比較されるこの2つの言葉。どちらが自社に合っているか、と議論されがちですが、それぞれメリットとデメリットが存在するため、一概にどちらが正しいとは言い切れません。トップダウン・ボトムアップのどちらか一方に偏るのではなく、両者を組み合わせて意思決定をしていくことが何よりも大切です。
理由は単純明快。組織の状況や場面によって、適している意思決定スタイルが異なるからです。組織の方針や目標、目的、価値観などの意思決定はトップダウンが適していますが、それらを実行するための具体的な進め方や実現方法などの意思決定はボトムアップが適していることがほとんど。
では、トップダウンとボトムアップを組み合わせて意思決定をするとは、一体どういうことなのでしょうか。
[STEP1]経営者が「トップダウン」で変化の必要性を訴える
[STEP2]現場社員が「ボトムアップ 」で社内の課題を解決するプロジェクトに取り組む
[STEP3]最終的に現場から上がってきたものを「トップダウン」で決定する
※こちらについては、2章で詳しくお伝えします
この記事では、トップダウン・ボトムアップの違いや活用方法だけではなく、両者をどのように組み合わせると、より組織の成長や活性化につながるか、具体的な進め方までご紹介していきます。経営者・事業責任者の方は、ぜひ参考にしてみてください。
1:トップダウン・ボトムアップの違い
企業経営の意思決定の方法には、社長や会長、役員など個人による「トップダウン」と、現場社員などチームの合意形成による「ボトムアップ」の2種類があります。
皆さんは、この2つの意思決定スタイルについてどのように解釈していますか。具体的な活用方法の話に入る前に、まずはトップダウン・ボトムアップの定義についてご紹介します。
1-1:トップダウンとは?
トップダウンは、日本語で「上意下達」と表現されます。企業のトップが発言権・決定権を持ち、トップが決めたことを現場の社員に向けて指示する運営方式です。
トップダウン=独裁的に判断し、物事を推し進めるワンマン経営、などと否定的な見方をされることもありますが、既成概念を壊して進んでいくカリスマ経営者が見事に業績を向上させた、という成功事例は、海外はもとより、国内の企業を見渡しても珍しいことではありません。
【メリット】
・迅速な経営判断と伝達、実行が可能
企業としての意思がスピーディーに決定され、すぐに動くことができる。
・組織がより一体化する
経営層と現場に信頼関係がある場合、全体が一体となって進むことができる。
・社内のリソースを集約できる
経営層や各部署のトップに優秀な人材を配置させ、組織を機能させることができる。
【デメリット】
・指示待ち社員が発生する
トップの判断に依存し、指示がないと完全に機能しなくなってしまう。
・現場の声が届きにくい
上から下に情報が流れる組織のため、現場の出来事に対して判断が遅れてしまう。
・現場の不満が募りやすい
経営層と現場の信頼関係が希薄な場合、意思決定に不満を覚える人が出てしまう。
・経営者交代で不安が生まれる
トップのカリスマ性が強く、次期経営者に対して社員が不安を抱いてしまう。
トップダウンは、生産性を上げる組織・チームに向いている手法で、日本では長らく製造業を中心に活用されてきました。日本人の勤勉さや企業へのロイヤリティの高さから、トップダウンによって経済成長を遂げてきた歴史が日本にはあるのですが、近年、急速なグローバル化やデジタル化によって、生産性を追い求める従来のスタイルでは競争に勝てないという問題も起こってきています。
1-2:ボトムアップとは?
ボトムアップは、日本語で「下意上達」と表現されます。できるだけ現場に裁量を与えて、現場から生まれるアイデアや意見を経営層が集約することで組織を動かす運営方式です。
【メリット】
・現場の変化に気づきやすい
風通しがいい組織ゆえに、現場の気づきや変化などが経営層に伝わりやすい。
・社員の主体性が育まれる
現場の意見が通りやすいため、会社をより良くしていくという意識が醸成される。
・斬新なアイデアが生まれる
多様な人から意見が出るため、アイデアやイノベーションが誕生する可能性が高い。
【デメリット】
・社員の能力に左右される
現場の判断が適切でない場合、間違った方向に進んでしまう。
・企業の一貫性を保てなくなる
現場にはさまざまな価値観を持つ人がいるため、企業経営にブレが生じやすい。
・意思決定が遅くなる
現場の意見をまとめ、それを組織運営に反映するには時間と労力がかかってしまう。
ボトムアップは、現場の声を積極的に吸い上げ、それをもとに経営の意思決定をするため、現場に寄り添った組織運営ができるという特徴があります。一方で、現場に裁量権を持たせるため、当然のことながら、現場にいる一人ひとりに高い意識と能力が求められる側面もあります。
ちなみに最近では、トップダウンとボトムアップのいいとこ取りをした「ミドルアップダウン」という手法もあります。ミドルアップダウンは、トップと現場の間に位置するミドルマネジメント層が両者のハブとなり、会社の舵取りとして重要な役割を果たします。
1-3:トップダウン・ボトムアップに適した組織・ステージ・場面
次に、トップダウンとボトムアップの具体的な活用方法についてお話します。それぞれの意思決定スタイルが有効なのは、どういった状況なのでしょうか。
1-3-1:トップダウンが適しているケース
◎トップダウンに適している組織・ステージ
・社長にカリスマ性がある企業
・ベンチャー企業(特にアーリーベンチャーステージのベンチャー企業)
・商品やサービスが単一でマニュアル化できる企業
◎トップダウンに適している場面
・急成長のチャンスが目の前に迫っている時
・会社の危機や多くの人命がかかる緊急時
トップダウンは、良くも悪くも経営者・経営陣の能力に左右されるため、経営陣の経営能力が高く、現場のことを深く理解していると、うまくいくケースが多いです。
特に多いのが、創業社長の会社。創業社長のほとんどは、現場で培った経験をもとに組織を作り上げているので、現場のことを隅々まで理解した上で意思決定ができ、間違うケースが少ないです。
また、単一商品・単一サービスを展開している組織では、マニュアル化した仕組みを整え、一気にマーケットを広げていく時に有効です。日本では長らく生産性を追求してきた製造業の他、外食・コンビニなどのチェーン展開やフランチャイズ戦略が、これに該当します。
1-3-2:ボトムアップが適しているケース
◎ボトムアップに適している組織・ステージ
・幅広い事業を展開している企業
・専門性の高い業界やサービスを営んでいる企業
・次世代の経営人材を育てたい企業
◎ボトムアップに適している場面
・会社が成長局面に入っている時
・現場の判断が重要になる時
・予算やスケジュールに比較的余裕がある時
事業が多岐に渡る場合や専門性が高く現場の判断や調整が多い企業は、ボトムアップが良いとされています。また、創業して間もない組織がトップダウンを続けていると、次世代の経営人材が育ちにくいので、経営人材の育成を見据えた時にはボトムアップに移行していくケースが多いです。
さらに、組織は成長するにつれて扱うべき課題が多くなります。そうなると、トップのキャパシティが成長のボトルネックになってきます。このような状況に陥る前に、トップはミドルマネジメント層に権限を移譲して、ボトムアップで意思決定ができる体制にしていく必要があります。
よく「トップダウン」と「ボトムアップ」の意思決定のどちらが優れているかなど二元論的な議論を耳にしますが、上記で紹介したように、どちらにもメリットとデメリットが存在します。一概にどちらが良いとは言い切ません。
2:トップダウンとボトムアップは組み合わせよう
トップダウン・ボトムアップのどちらか一方に偏るのではなく、両者のいい部分を取り入れながら意思決定することが大切です。
理由は先ほどもお伝えした通り、組織の状況や場面によって適している意思決定スタイルが違うからです。
2-1:トップダウンとボトムアップを組み合わせたトップダウンデモクラシー
経営の意思決定で重要なのは、トップダウン・ボトムアップのメリットとデメリットを正しく理解し、組織の状況や場面に応じて使い分けることです。
このトップダウンとボトムアップの2つの意思決定スタイルを組み合わせることを、「トップダウンデモクラシー」と呼びます。これは下図の3つのステップで意思決定する考え方です。
とはいえ、相反する2つの意思決定スタイルを組み合わせると聞いても、なかなかイメージが湧かないと思います。
ここで、一つの例をご紹介します。
たとえば、経営者が「トップダウン」で組織変化の必要性を訴え、現場に危機感を持たせ、多くの社員を巻き込んで社内の課題を解決するプロジェクトを発足するとします。そのプロジェクトに各部門のさまざまな立場の社員が集まり、それぞれの役割を果たしながら「ボトムアップ」によって課題解決に取り組み、最終的には現場から上がってきた意見をトップが集約し、経営の意思決定として再び「トップダウン」で反映する方法です。
最終的に意思決定をするのは、経営者。ただし、経営者がトップダウンで一方的な価値観を現場に下ろすのではなく、まずは現場の人たちの意見を集め、それに対して経営者の視点で取捨選択をし、決断をしていく。これにより、それまで関わりのなかった現場の人同士がつながったり、意見交換によって化学反応が生まれたり、「自分たちも意見を出した」という経営に対する参加意識の醸成につながったりするわけです。
ではなぜ、このようなトップダウンとボトムアップを組み合わせた意思決定スタイル「トップダウンデモクラシー」を採用するべきなのでしょうか。
1章で少し触れましたが、近年、世界経済は急速にグローバル化・デジタル化が進み、市場は急激な変化を遂げています。その変化は日本においても進んでいて、既存のビジネスモデルの崩壊・再構築が始まり、ビジネス界の新陳代謝はどんどん加速しています。これまでのように現場の社員が自ら設定した目標や実現手段は、企業のゴールと一致しなくなりました。
日本の経済が成長から成熟にシフトした現代において、企業や組織は、これまでのように同じものを効率よく「生産する組織」から、新しいものを生み出す「創造する組織」へ進化することが求められています。
今こそ、トップダウンとボトムアップを組み合わせた「トップダウンデモクラシー」の考えに則って、「創造する組織」へと進化するチャンスです。組織のコミュニケーションを活発にし、血の巡りをよくすることで、時代の変化に対応できる柔軟な組織になっていきましょう。
2-2:組織の創造を阻む5つの滞り
従来の日本企業に多かった「生産する組織」が、新しいことを生み出す「創造する組織」へと進化を遂げようとする時、それを妨げるものがあります。こちらも併せてご紹介します。
組織の創造を阻む5つの滞り
1)内製の壁
自前主義を貫く組織によくある障壁で、これは機密情報などのガードが固くなる一方、社外とのコラボレーションに多くのコストがかかります。結果的に社員が外の世界に関心を持たず、内向きになり硬直化が進んでいきます。
2)縦割り組織の壁(サイロの壁)
縦割りの組織構造によく見られる壁です。上長の上長のさらに上長の合意を得るという果てしないゴールに向かうため、調整コストが大きく、結果として他部門と連携する機会を奪います。
3)ミドルマネジメントの岩盤
これは中間管理職でよく起きることで、経営層から下りてくる指令と、メンバーからの突き上げ、そして横からの部門間調整で疲弊してしまっている状態。これでは新しいリソースを活用した新規事業や戦略構想は難しく、現状維持に流れてしまいます。
4)事業部長の岩盤
自分の事業領域に専念しなければならず、破壊と創造による新規モデルの提案に時間を割くことができません。実現できそうなこと以外は本人のところで切り捨てられるため、イノベーションを起こすようなアイデアがトップのところまで上がってくることはほとんどありません。
5)理念の形骸化
企業には理念が存在するものの、その多くは時間が経つにつれて共感できないものになっています。創業家出身ではない経営者は、理念を刷新することもできず、結果的に自社らしくないプロジェクトが次々と立ち上がってしまいます。
引用:「ひとりの妄想で未来は変わる VISION DRIVEN INNOVATION」内「創造と革新を求められるイントレプレナーに必要な接木力」<2019年>より
上記の5項目を見て「うちの会社だ」と思った方も多いのではないでしょうか。それはまさに、組織が硬直化している状態です。
こうした事態を改善するには、「トップダウンデモクラシー」の考え方を活用した取り組みを実施することが効果的です。それについては、次の章で詳しくご紹介します。
3:トップダウンとボトムアップの両立文化を育むために理念構築・浸透に目を向けるべき3つの理由
組織の成長・活性化を促すには、組織全体のコミュニケーションを活発にし、血の巡りをよくすることが大切。そこで私たちがトップダウンデモクラシーの取り組みとしてお勧めするのが「企業理念の構築・浸透」です。
組織の成長・活性化をするために企業理念の構築?浸透?と思う方もいるかもしれませんが、企業理念は企業に所属している全員に関係のある事柄。組織に所属している以上、誰もがなにかしらの意見を持っており、課題感を持っているからです。「別に意見なんかない」という方も中にはいるかもしれませんが、それも立派な意見の一つです。
組織横断のプロジェクトを発足するにあたり、数十年前につくられた理念を、このタイミングで見直してみてはいかがでしょうか。もしくは既存の理念を軸にした、バリュー・クレドづくりを行うことも一つの手です。
▼クレドのつくり方を知りたい方はこちらの記事も
クレドとは?社員共通の価値観を示す、クレドのつくり方と浸透策
では、具体的に組織を横断した「理念構築・策定プロジェクト」をすることで、どのようなメリットがあるのか見ていきましょう。
3-1:自社の存在価値が顕在化する
時間が経ち、共感されなくなってしまった理念を、あらゆる角度から見直すことで、自分たちが提供すべき本来の価値が見えてくるようになります。自社独自の存在価値を明確にできるようになれば、同時に選ばれるための自社ブランドが確立し、社内外に約束・宣言できます。
新しい価値が生まれるということは、顧客からこれまで以上の評価が得られるということでもあります。これまで同じもの、同じことしか発注されなかった状況から、「こういうこと、できますか?」と相談が来る可能性が高まります。理念構築が、企業の伸び代を見つけることになるというわけです。
3-2:社員が会社に愛着を持つようになる
経営陣だけで理念を決めてトップダウンで下ろすのではなく、全社員が理念構築のプロセスに関わり、日頃から課題に感じていることをシェアし、解決に向けて話し合いをすることで、社員が会社のことを自分ごととして捉えるようになります。
たとえ自分の意見が採用されなくても、「自分も発言して、意思決定に加わった」と参加意識を高めることが、結果的に個人と会社の存在目的や存在意義の紐付けになるのです。
標語のように掲げられていた理念とは違い、理念構築に携わったことで社員自身に所有感が生まれ、社内の共通言語として活かせる場面が増えます。たとえばマネジメントのシーンでは、理念を体現した行動や結果に対して褒め合うことで、承認文化の醸成につながり、組織がどんどん活性していくのです。
3-3:エバンジェリスト・次世代リーダーが生まれる
理念は、策定しただけでは十分な効果を発揮しません。社員一人ひとりが新しい理念・価値観を自分のものとして持ち歩けるようになるまで、相当な時間を要します。
そこで重要になるのが、理念を体現する強い意志を持ち、社内に浸透させていく人物。エバンジェリスト(伝道師)の存在です。
エバンジェリストが理念を正しく伝え、それにまつわるエピソードを語り継ぐことで、それを聞いた社員が感化され、新たなエバンジェリストが誕生する。そんな好循環を生むことも狙いの一つです。
そういう意味でも、理念策定時には、理念浸透のことまで考えて、各部署のキーパーソンを巻き込んで、エバンジェリストを育てる必要があります。
また、経営層や幹部候補だけが集まって話をするのではなく、人望があり、社内への影響力が大きな一般社員・ミドルマネジメントを加えながら理念構築を行うことも大切。それが次世代のリーダーの育成、ひいては企業全体の新陳代謝にもつながっていきます。
4:トップダウンとボトムアップを両立した取り組みの進め方
企業理念をテーマにした「組織横断プロジェクト」ですが、ただプロジェクトを立ち上げて実施すればいいというものではありません。闇雲にプロジェクトを立ち上げ、進めてしまうと、組織の成長・活性化どころか、組織が混乱してしまう可能性もあります。
そこでこの章では、組織横断プロジェクトにおける会議体の決定、人選、進め方についてご説明していきます。ぜひ参考にしていただければと思います。
4-1:会議体の決定
これまで数々の企業様で組織横断プロジェクトを手がけてきた私たちの経験からすると、組織の規模によって、その誕生の仕方が違うように思います。
◎1〜100名の組織:経営層&プロジェクトチーム
従業員数100名ぐらいであれば、おそらく経営層の方たちが組織の活性について問題視されているのではないでしょうか。企業のトップが危機感を抱いているケースは、先ほどご紹介した「トップダウンデモクラシー」の考え方を、そのまま活用することができます。
企業のトップが変化の必要性を訴え、現場に危機感を持たせ、多くの社員を巻き込んでプロジェクトチームを発足。その後、現場から上がってきた意見をトップが集約し、経営の意思決定に反映していきます。
◎100名以上の組織:プロジェクトチーム&経営層&分科会
一方、従業員数100名を超える組織になると、現場の社員の方が直接顧客やマーケットに接している分、危機感を感じていることが多い傾向にあります。
たとえば、経営企画室やコーポレート・コミュニケーション部など、経営に近いミドルマネジメント層が手動でプロジェクトチームを発足し、経営層を動かし、プロジェクトを推進していくことはよくあります。
※経営層を動かした後は、「トップダウンデモクラシー」の考え方に則って進めていきます。
また、従業員数が多い組織の場合は、理念策定と理念浸透をシームレスにしていくために、より慎重に人数と時間をかけて、理念をつくる過程からメンバーを巻き込む必要があります。
具体的には、プロジェクトチームの他に、リリースチーム、採用チーム、事業開発チーム、広報チーム、浸透チームなどの分科会をつくり、理念策定後の理念経営をそれぞれのチームが担っていきます。
4-2:人選
プロジェクトチームは、5~6人程度で構成するのが一般的です。発案者である経営層やミドルマネジメント層だけで固めるのではなく、できるだけ多様な部門と立場の方を起用し、社内でも特定の価値観を持つ人に偏らないことが大切。全社の意見を反映できる、そんな構成が望ましいです。
メンバー構成のポイント
・社内である程度の決定権を持つ人
・理念の策定に前向きな人
・会社の理念について深く理解している人
・客観的に会社のことを分析できる人
・理念策定に懐疑的な人
「理念策定に懐疑的な人」とありますが、あえてこういった厄介者とされる方をメンバーに加えた方が議論は活発になります。これまで200社以上の理念策定を手掛けてきた私たちの経験からすると、ネガティブな意見を持っている方は、組織のことを真剣に考えているからこそ、現状に甘んじずネガティブな反応を示します。裏を返せば、その分、組織をいい方向に変えたいという想いやポジティブな意見を持っているということです。
また、先ほどもお伝えしましたが、プロジェクトメンバーはそのまま理念浸透のエバンジェリストになることも考慮してアテンドすることが大切。社内におけるリーダーシップや信頼、人望で選ぶこともポイントです。「この人の言うことなら、信じてやってみよう!」と他の社員に思ってもらえることが、後々、理念浸透のフェーズで効いてきます。
4-3:プロジェクトの進め方
会議体を決め、プロジェクトチームの人選ができたら準備は万端。プロジェクトの大きな流れの一例としては、次のような進め方があります。
1)プロジェクトチームがインデックスと成果を決める
2)プロジェクトチームがインデックスと成果を経営層と握る
3)プロジェクトチームが分科会チームを招集
4)プロジェクトチームが分科会チームから意見を吸い上げ、戻す
5)プロジェクトチームが素案を作成
6)プロジェクトチームが分科会チームと素案を修正
7)プロジェクトチームが素案を経営層と修正
8)プロジェクトチームが最終案を作成
9)プロジェクトチームが最終案を分科会と一緒に全社へリリース
理念リリース後は、プロジェクトチームのメンバーは、それぞれが再び採用チーム、事業開発チーム、広報チーム、浸透チームなどの分科会に分かれて、理念を起点にした理念経営の一端を担っていくことが求められます。
分科会の進め方としては、最初に年間のコミットメントを決め、月1回の定例会を行いながら、それぞれの状況をシェアしながら進めていくことが望ましいです。
理念浸透パートに入っていく段階では、新たなメンバーを巻き込み、評価基準の改定や新たに表彰制度をつくるなどを通して、理念の実現に向かって進んでいきます。
ぜひ、組織横断プロジェクトで実践した「組織の活性化」の流れを意識して、理念浸透フェーズでも、新しい組織の雰囲気や文化をつくっていってください。
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5:まとめ
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
トップダウンとボトムアップの違いとその活用方法、両者を組み合わせた「トップダウンデモクラシー」という考え方をご紹介しましたが、いかがでしたでしょうか。
トップダウンとボトムアップに優劣はありません。それぞれの特徴をきちんと理解し、その上で、業界や組織のステージ・状況に合わせて、適している意思決定スタイルを選ぶといいでしょう。
ただ、組織を運営していると、どちらかだけを活用してもうまくいかないケースも出てくると思います。そういった組織の多様化や対応力、柔軟性が求められた時は、トップダウンとボトムアップの両者を組み合わせたトップダウンデモクラシーの考え方も視野に入れてみてください。
この記事が、皆さんの組織の成長・活性化を促す一助になれば幸いです。
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