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「この街」とともに歩む
無二の不動産ブランドの確立へ。
小田急の仲介トータルブランディングプロジェクト。

CLIENT:小田急不動産仲介営業部さま

  • 理念構築
  • 企業ブランディング
  • カスタマーブランディング
  • 東京都・神奈川県

小田急不動産株式会社は、1964年に創業。小田急電鉄直系の不動産会社として、小田急沿線に特化した事業展開で、沿線に居住するお客様から信頼を獲得し続けてきました。クライアントである、仲介営業部様は、小田急不動産の中でも、分譲業・賃貸業と並ぶ主軸となる事業の一つです。今回は、2019年から、2年半におよぶトータルブランディングについて、河村取締役(同社取締役 仲介事業本部 仲介営業部長)とご担当者の山尾様(同社仲介事業本部 仲介営業部 営業企画グループ サブリーダー)のお二人にお伺いしたお話を交えつつ、ご紹介いたします。

#1. ご依頼のきっかけと課題感

河村取締役:

私が12年ぶりに仲介営業に戻ることになったのが、2019年。当時の仲介業は成長が鈍化し、赤字の状態が続いていました。そんな状況下において、まず何をやろうかと考えた時に、事業部の目標、みんなが目指すべき頂が売上目標しかない。営業会社ですから当然ではあるのですが、いくら売上を上げろと言っても、お客様の支持がなければそれは叶いません。そこで、まずは初心に立ち返り、「私たちの存在意義は何なのか」「私たちはこの世の中にどのような価値を提供していくのか」「世の中には競合会社がたくさんある中、どうしたら小田急不動産を選んでいただけるのか」をみんなと一緒に考え、この事業の存在意義や大切にすべき価値観、小田急の仲介が進むべき方向を示す旗を立てるべきだなと。そして、全員が同じベクトルに向かって仕事を行う。その結果として売上・利益がついてくると考えました。
正直言って、最初は自分たちでやろうと考えていました。でも、パラドックスさんにお話をお伺いして、プロジェクトの参加人数も20名くらいを想定していましたので、これは数々のプロジェクトを導いてこられたパラドックスさんにお願いした方が良いなと考え、ご依頼させていただきました。

 

河村取締役はじめ、キーマンへのヒアリングを重ねた結果「優位性の確立」「社員間での意識の乖離」「自社のアイデンティティとは?」という、大きく3つの課題が浮かんでまいりました。

 

上記の課題を整理した上で「小田急不動産 仲介営業部は世の中にどのような価値を提供していくのか?」を言語化していくために、ミッション・バリュー・スピリットの策定からスタート。プロジェクト参加メンバーは、河村取締役自らが16店舗(当時)に赴き、直接理念の必要性を説いてまわり、最終的に21名が集まりました。

▲河村取締役

#2. プロジェクトの内容

2年半にわたる(現在もブランディングは継続中)トータルブランディングプロジェクトは大きく4つのフェーズに分けられます。

 

PHASE1:理念構築

PHASE2:風土改革

PHASE3:既存事業の進化

PHASE4:象徴サービス開発(現在進行中/2021年12月時点)

 

PHASE1が完了した後、PHASE2・PHASE3を同時進行で進めていき、社内・社外への浸透活動を相互に推進していきました。現在はPHASE4の象徴サービス開発をメインとして、引き続き、PHASE2・PHASE3を適宜伴走させていただいております。

#2-1.プロジェクトの内容 / PHASE1:理念構築

PHASE1は下記の内容で進めていきました。

①理念策定セッション(約5ヶ月/全8回実施)
②VI策定
③リリースイベント

 

セッションを通じて、ミッション・バリュー・スピリットを言語化。策定したミッションを広めてくために、VI策定やリリースイベントを行うことで、今後の会社の指針を表明しました。

 

① 理念策定セッション
事前にメンバー全員に15分程度の電話ヒアリングを実施。メンバーの感じる課題感や今回のプロジェクトへの期待をお伺いしました。その後、全8回のセッションを以下の流れで実施しております。

 

<DAY1-3>らしさ・DNAの抽出

メモリアルワークや伝説の仕事の共有、取締役へのインタビューを通じて、大切にしてきた価値観やらしさを考察。抽出された価値観の中から、特に重要だと思うものを個々が選びとり、MVSの基としていきました。

<DAY4-5>ミッション・バリュー考察

抽出された言葉をもとに、ミッションワード案について議論。また、お客様に提供する価値(バリュー)について探っていきました。

<DAY6-7>ミッション・バリュー・スピリットの再考・策定

メンバーの皆さまから出てきた案をもとにミッションを再考。ストーリーと併せて「らしさ」のある新ミッションを考えました。

<DAY8>ワークセッション

具体的なお客様のペルソナを設定した上で、策定したミッションをもとに、どんな価値を提供できるかをグループごとに考察。グラフィックファシリテーターのやまざきゆにこ氏のご協力のもと、小田急不動産仲介営業部の価値の広がりを描き、未来への期待感とともにセッションを終えました。

▲策定した理念図。

セッションを振り返り、河村取締役と山尾様からもコメントをいただきました。

 

河村取締役:

セッションメンバーには店長、営業パーソン、庶務とすべての職種から、そして年齢構成も入社1年目から大ベテランまでと幅広い年代から選抜しました。正直言って、セッションをスタートしてしばらくの間は、店長や営業パーソンの大部分には、「こんなことして、数字につながるのかよ」という疑問があったかと思います。
「研修」という言葉もよく出てきていたなと。「やらされ感」があったんじゃないかと思います。でも、セッションメンバーはいい意味でも、悪い意味でも影響力の大きい人間が集まりましたので、彼らが同じ方向を向いてくれれば、プロジェクトが大きく推進されるだろうと期待をしていました。しかし、DAY4くらいまでは、カオスでした。出口が見えないというか。ところが、DAY5くらいに、局面の変化を感じたときがありました。メンバーの1人が「小田急の街に対する愛、それはどこにも負けない」と言ったときから、雰囲気が変わったなと。きっと普段からその想いはあったのだと思います。ただ、口に出すのが気恥ずかしいとか、口に出したときに、周りからどんな反応があるのか、恐れがあったのかもしれません。「そんなこと言っても数字は上がらない」「それよりもまずは案内」などと言われるかもしれないと。確かに数字を上げるためには日々の活動は必要なことではありますが、それを何のためにやるのか。理念策定前は、数字のためにやる、だったと感じていました。

 

山尾様:

果たして上手くいくか、と思っていた矢先に「小田急の街が好き」というキーワードが出まして。潮目が変わり、まとまり出しました。私も立ち会いながら、何を強みにするのか不安がありましたが、メンバーの皆さんが議論の末に着地したものを聞いたとき「これでいいんだ、これをとことん強みにしないといけない」とすぐに腹落ちしました。灯台下暗しではありませんが、大事なものは目の前にあったなと。普段は口にされないだけで、皆さん熱い想いを持っているんだと実感があり、なんだか嬉しかったです。

 

② VI策定

理念に紐づいた小田急不動産仲介営業部のVIを制作。地域に根ざし、成長していく木と、お客様の人生の景色が集まり、ハートの形になる葉をモチーフとし、街への愛と人生の景色を描く意志を表現しました。木の幹は、小田急不動産の強みでもある、小田急沿線の路線図の形をもとにしています。VIを中心に、理念図を配置したポスターも各店舗へ配布、掲載しました。

▲制作した小田急の仲介事業部VI。

▲VIと理念図を組み合わせたポスター。各店舗に配布し、掲載。

③リリースイベント

策定したミッションを仲介営業部全社員に発表するリリースイベントを企画、実施いたしました。当日は、会場に入るまでに小田急沿線の「愛おしい景色」をパネルにして展示。ミッションを体感できる仕掛けとしました。また、事前にお客様へインタビューを行い、動画を制作。お客様からの言葉に、涙ぐむメンバーも見られました。

▲会場までの道のりには、小田急沿線の「愛おしい景色」を配置いたしました。

▲当日は、河村取締役より、理念と今後の方針の発表をいただきました。

#2-2.プロジェクトの内容 / PHASE2:風土改革

PHASE2は下記の内容を実施いたしました。

① 理念ワークブック制作

② マネジメント層向けの理念研修

③褒め達活動の実施(Visionsでの活動)

④同志サーベイの実施

⑤若手向け研修(若手LABO)の実施

 

ミッション・バリュー・スピリットを社内に浸透させていく施策を継続的に多方面から実施。風土改革→仕組み化→習慣化を行うことで、数字が絶対軸であった文化にも変化があらわれていきました。

 

① 理念ワークブック制作

ミッション・バリュー・スピリットをより深く理解し、自身の志、日々の仕事と接続して考えるための理念ワークブック『One life』を制作いたしました。

▲MVSの説明に加えて、自身の志をどう考えていくべきなのか、ガイドしています。

② マネジメント層向けの理念研修

マネジメント層に向けて、理念について考えるワークショップ『こころざし勉強会』『MUST・WANT・CAN研修』を実施。『こころざし勉強会』では、他社事例を参考に、ミッションの重要性や普段の仕事にどう紐づけて考えるべきかを学んでいただきました。『MUST・WANT・CAN研修』では、店舗ごとにグループに分かれ、研修を実施。理念を実現するために、メンバーの特性をどのように活かして、店舗をマネジメントすべきかをワークショップ形式で考えていきました。

 

③ 褒め達活動の実施(Visionsでの活動)

弊社開発の社内活性コミュニケーションツール『Visions』を導入。社内で褒める文化を醸成していくために『1WEEK1GOOD』という承認の取り組みを始めました。最初は、褒め慣れておらず、照れていたメンバーの皆さんでしたが、徐々に「直接、部下のことを褒めたい」という声もあがるなど、意識変容のきっかけとなりました。

▲社内活性コミュニケーションツール『Visions』を利用し、承認文化を醸成。

④ 同志サーベイの実施

企業と社員の「同志度(企業と個人がどの程度、志の接点で働けているか(=叶えあっているか)という独自の基準)」を測定するパラドックス独自のサーベイを実施。価値観・強み・自己実現という3つの観点から、相互の認知度・共感度・貢献度を測定し、現状の課題感を把握した上で、インナーブランディングの戦略を設計し、施策を行いました。

 

 

⑤ 若手向け研修(若手LABO)の実施

同志サーベイの結果も踏まえ、若手向けのワークショップ『若手LABO』を実施。店舗を超えて、若手の横のつながりを醸成し、自分がどう小田急不動産仲介営業部のブランドづくりに関わっていけるかを考える機会としました。

 

風土改革の施策について、河村取締役よりコメントをいただきました。

 

河村取締役:
インナーの施策として、若手LABOやVisionsを実施できたことがよかったなと。特に、若い人たちが、理念と同じ方向に向かって仕事をしていることを実感しています。この施策を通して変わったのか、それとももともとそういう素養を持っていたメンバーが表現しやすくなったのかはわかりませんが、施策の前後で大きく変化を感じる部分ですね。一緒になってやってくれる若手の存在に気付けましたし、私が考えていることを伝えられる機会ができたことも、すごくよかったなと感じています。理念という軸ができたことで、その軸に沿った施策を打ち出しやすくなりましたし、聞いている方も受け止めやすくなったかなと。一生懸命参加してくれている方々も多いので、いまの良い業績にも直結していると感じています。施策によって、みんなで話し合ったり、想いを伝えあえる状況ができました。

#2-3.プロジェクトの内容 / PHASE3:既存事業の進化

PHASE3はPHASE2と同時並行で、下記の内容を実施いたしました。

① まちまちストーリーズ発行
② 営業パンフレットの刷新
③ サービスサイト『CONOMACHI』にリニューアル
④ ブランドサイト『town』オープン
⑤ 理念を軸にした、フラッグシップ店舗オープン

 

理念に紐づき「この街のプロ」であることをお客様にメッセージしていきました。独自の立ち位置を明確にしたことで、お客様や地域企業からも期待以上の反響、良い評判があり、独自のファン層が形成され始めています。

 

① まちまちストーリーズ発行
小田急沿線の街を舞台にしたフィクションの短編集『まちまちストーリーズ』を発行。小田急グループの会員2万3000名に配布するとともに、店舗でも無料配布を行い、一般層へも周知。顧客・関係者より、大きな反響をいただきました。

また、冊子だけでなく、関わった店舗や団体を特集するドキュメントムービーとして『まちまちムービー』を制作。本誌はフィクション、ムービーはノンフィクションとして、街への取り組みや想いを語っていただきました。小田急電鉄のトレインチャンネルとしても公開し、広くプロジェクトを周知するきっかけとなりました。制作時はコロナ禍でもあったため、来店が難しいことも考え、特設サイトも制作。まちまち本文とまちまちムービーを全編公開し、WEBでも楽しんでいただくコンテンツにいたしました。街ごとに、ポスターも制作。エピソードにちなんだイラストに街を象徴するキャッチコピーを添え、見かけた人の印象に残る展開を意識いたしました。

 

『2021日本BtoB広告賞』では『まちまちポスター』が、経済産業大臣賞を受賞。(企業カタログ部門にて『まちまちストーリーズ』金賞、企業ポスター部門にて『まちまちポスター』金賞も受賞)各業界メディアに取り上げていただくとともに、地域メディアからもお問い合わせをいただきました。
*くわしい内容・成果は、こちらも併せてご覧くださいませ。

②営業ツールの刷新(営業パンフレット・買い顧客用ミニパンフレット制作)

営業パンフレットを刷新。お客様に出演していただく、営業社員との対談を中心コンテンツとした人肌感のある「らしい」冊子に。また、住まいのご購入を検討されているお客様に向け、住まい選びのコツを伝えるミニパンフレットも制作。オリジナルキャラクター『オダーフ』が格言を交えながら伝えてくる仕立てにし、顧客の緊張を和らげるほっこりした雰囲気で仕上げました。

▲営業用パンフレットも人肌や誠実さが伝わる「らしい」仕様に。

▲買い顧客用のミニパンフレット。

③ サービスサイト『CONOMACHI』にリニューアル
物件検索用WEBサイトをサービスサイト『CONOMACHI』としてリニューアルし、従来の不動産検索にはない『ライフプラン検索』を開発。理念に紐付き、物件的な価値ではなく、情緒的な価値から物件を検索する、という新しい価値観を不動産検索に取り入れました。リニューアル後、WEBサイトからの問い合わせが大幅に増加する成果にもつながっています。

*くわしい内容・成果は、こちらも併せてご覧くださいませ。

 

④ ブランドサイト『town』オープン
街と人の間にある物語を紐解いていくWEBとして、ブランドサイト『town』をオープン。理念を軸にしたコンテンツでは、作家・三浦しをんさんの特集や街に根付いた店舗や団体へインタビュー。BtoBの関係性を構築したことで、townの出演団体が自主的に『まちまちストーリーズ』を配布してくださる動きにもつながっています。また、お客様と営業社員の対談では、お客様の「ここにしかない景色」に着目することで、バリューを訴求。また、お客様からWEBへの出演要望をいただくなど、リピーター・紹介へとつながる関係性づくりにもつながっています。
*くわしい内容・成果は、こちらもご覧くださいませ。

⑤ 理念を軸にした、フラッグシップ店舗オープン
コンセプトは「不動産をつなぐ場」から「人や土地のストーリーをつなぐ場」へ。理念を、具体的に店舗空間に反映したモデル店舗として、町田店の空間ブランディングを行いました。町田障害者就労継続支援施設クラフト工房LaMano様と共創し、アート作品を展示。町田市民文学館ことばランド様ともコラボし、街の歴史や特徴がわかる“この街ライブラリー” も設計、町田ゼルビア様からユニフォームの寄贈もいただき、さまざまな方向で街と理念を感じられる店舗となっています。オープンに伴うニュースリリースは、パラドックス内PR担当が内容を検討し、リリース記事を制作。日経電子版に取り上げられたほか、独自記事も制作され、注目を集めました。

既存事業の進化について、山尾様よりコメントをいただきました。

 

山尾様:
『まちまちストーリーズ』や『town』は、象徴ツールとして、お客様の反応も高リアクションをいただいているので大変ありがたいです。「感動しました」「もっと読みたい」など、好意的な声をたくさんいただいています。地域の方との協業も、未来に向けて大きな資産になると感じています。自主的に『まちまち』を配ってくれる団体の方やWEBで紹介したいという話をいただくのも、今までにはなかったことなので、驚きですね。あと、サービスサイトからの問い合わせが増加し、特に購入相談からの問い合わせ件数で、大きな効果を出しています。今までは「いい物件がなかったから、もう見なくていいや」と思われていたのが「いい物件はなかったけど、この人たちに聞いてみよう(会員登録してみよう)」になっており、成果を感じています。

▲左:山尾様、右:河村取締役

#3.今後の展望と一連のプロジェクトを振り返って

理念がつくられ、何を目指していくか、中・外に語れる状態になった小田急不動産仲介営業部様。現在もブランディング伴走をさせていただきつつ、PHASE4である、理念象徴サービスの開発にともに動いています。

 

最後に、河村取締役より一連のプロジェクトを振り返ってメッセージと今後の展望について、お話しいただきました。

 

河村取締役:
最初は「こんなことをやって何の意味があるんだ」という声がある中で、一つ一つ店舗を巡って語り掛けた中で始まったプロジェクト。理念策定後、店長の面談を行った際には、ちゃんと理念活動をやってくれている店長がいました。他社から転職している営業社員も多いため、昔は理念活動と言っても「我々にそれを求めるんですか?」と言われることもありました。でも、徐々に理念の重要性を理解するようになり、自ら街の歴史の本を買って勉強するなど、ミッションを推進していく上で、自分からお客様に語れるような努力をしている。恥ずかしがって表には出さない人も多いけれど、そういう人たちが増えていることを感じています。また、仲介営業部の風土が褒める文化に変わっていくのを見て、仲介営業部に倣おうという雰囲気を会社全体からも感じており、良い変化を生み出せていると感じています。今後は社員がもっと本音を言える環境をつくれたら。パラドックスさんから差積化というお話も伺いましたが、我々は本当にお客様から支持されているんだと実感できる状況をより作り出していくことで、インナーをさらに加速させていきたいと考えています。引き続き、よろしくお願いいたします。

 

今後も、パラドックスが伴走させていただきながら、小田急不動産仲介営業部さまが、唯一無二の不動産ブランドとなることを願っています。

*一連の取り組みは『PR Times STORY』でも記事化しておりますので、よろしければ併せてご覧くださいませ。