コロナをきっかけに、テレワークやリモートワークといった場所にこだわらない働き方が検討されるようになりました。
そんな状況において、
「今後、オフィスはどのように活用すればいいのだろうか?」
「仮にオフィスをリデザインする場合、どのようなコンセプトで行えばいいのだろう?」
「そもそも、オフィスはもういらないのだろうか?」
といったことを考えている方も多いのではないでしょうか。
また一方で、リモートワークによって社員がばらばらで働くようになったことで、
「社員の意思統一までばらばらにならないだろうか。」
「そもそも社員の意思は統一されていたのだろうか。」
といった悩みや不安を改めて感じている方もいらっしゃると思います。
このたびは、ブランディング企業である私たちパラドックスが、今後のオフィスデザインはどのような存在になっていくかを本気で考えてみました。
もちろん職種にもよりますが、「業務を遂行する」という点においては、在宅でも十分可能であることが実証されてきました。「オフィスはもういらない」という選択肢もあると思います。
一方で、単なる「業務遂行」という場所を超えて、会社の「らしさ」を具現化させ、社員の意思を統一したり、関係者にその会社の「らしさ」を体感してもらうという、オフィス空間にしかできないこともあるとも考えています。
これまで約18年間、様々な企業様の企業理念を策定し、ブランディングをお手伝いさせていただく中で、ブランディングとオフィス空間の関係は密接であると感じる機会も多くありました。しっかりコンセプトを持ってデザインされたオフィスは、社員の意識にも変化を及ぼすことも分かってきています。
もし、今後もオフィスを存続させていく方針で、オフィスの価値を最大化させたいと考えている方がいらっしゃいましたら、ぜひ、お読みいただけますと嬉しいです。
この記事では、
・今後のオフィスの在り方
・今後のオフィスに必要なもの
・オフィスデザインによって得られるもの
・オフィスデザインの進め方
・オフィスデザインはどこにお願いするのがいいのか
について、順を追ってお話していきます。
これからのオフィスデザインについて悩んでいる方にとって、少しでも会社の進化に寄与する考え方をお届けできればと思います。
1:オフィス空間は、「仕事をする」以外にどんな価値を持つのか
様々な働き方が登場し、必ずしもオフィスで仕事をする必要がなくなっている昨今。オフィスが持つ一番の価値とはなんでしょうか。
リモートワークで社員が別々の場所で働く機会が増えている現在の状況も鑑みて、考えてみました。
1-1:オフィスは企業のストーリーを伝えるのに適している
オフィスがある意義や価値を考えたとき、最初に出てくるのは、当然「仕事をするため」ではないでしょうか。もちろん、これはゆるぎないオフィスの価値であることは間違いないと思います。
ただ、コロナ禍でより顕著になっている働き方の多様化に伴い、オフィスには「仕事をする」以上の大きな価値が存在すると感じています。
私たちパラドックスでは、オフィスが持つ本質的な価値を「企業のブランドやそのストーリーを伝える場所」なのではないかと考えています。
企業やブランドのストーリーがオフィスに反映されていることで、取引先、顧客といったステークホルダーには、企業のアイデンティティを体感してもらう場所として、社員にはエンゲージメントを高めるための「拠り所」として機能していく。さらに、 社員にとっては「拠り所」になるだけでなく、その企業の「らしさ」に根ざした行動を起こすきっかけにもなるとも推測できます。
たとえば、アドプラットフォームやメディア事業を行っているVOYAGE GROUPでは、オープンでフラットなスタイルで仕事をするという「らしさ」があるので、執務スペースには背の高いパーテーションはなく、会議室もガラス張りの部屋が多く、お互いの働く様子が見えるようにしています。
また、VOYAGE GROUPの各会議室は、経営理念を抽象化し、素材(マテリアル)や表現方法へ落とし込む形で、それを体現しています。具体的には、部屋の壁に設置されたアクリルが全方位で光を吸収し、発信している様子だったり、角度によって様々な色や形に変化して多様であることから、SOUL(創業からの想い)である「360°スゴイ」を表現しています。
他にも、鉄のピースを溶接することで「仲間との繋がり」を表現している部屋があったりと、VOYAGEが大切にしているSOUL(創業時からの想い)とCREED(行動指針/価値観)をオフィス内の会議室や壁で語れるようにしています。
出典:FOCUS(https://focus.voyagegroup.com/post-0007/)(世の中の事例)
あえてリアルな「空間」だからこそ発揮できる価値。それは五感で体験することが可能ということです。
ブランディングで大切なのは、理念に基づく「一貫性」や「統一感」。オフィスデザインの考え方としては、ただ「おしゃれで働きやすい」という観点だけでなく、「会社のビジョン実現に向けてオフィスをどう使うか」「企業のブランディングのためにオフィスをどんな場所とするか」といったコンセプトと合わせて検討することで、オフィスの価値が最大化していくことに繋がると考えています。
2:オフィスデザインにおいて必要なものはコーポレートアイデンティティ(CI)
1章にて、オフィスが持つ本質的な価値は「企業のブランドやそのストーリーを伝える場所」と定義しましたが、ただ闇雲にオフィスをデザインしただけでは、その企業が持つブランドおよびストーリーはおそらく伝わりません。
企業のブランドやそのストーリーをオフィスデザインで伝えるには、その企業のらしさやDNA、存在意義が詰まったコーポレートアイデンティティ(以下、CI)が必要不可欠でしょう。
「なぜ、このオフィスデザインなのか」、「なぜ、このオフィスデザインでないといけないのか」。その企業ならではのCIをいかにオフィスにも織り込むかが、ポイントとなります。
CIとは企業によって微妙に定義やニュアンスが違うこともありますが、私たちパラドックスでは下記の3つの要素を総称してCIとしています。
“コーポレートアイデンティティ(CI)”
マインドアイデンティティ(MI):
マインドアイデンティティとは、企業の存在意義と在り方を言語化したもの。たとえば、ミッション(日々果たすべき使命)やビジョン(実現したい未来)などが、マインドアイデンティティに当たります。
オフィスをつくる前に、自社の使命や向かう未来、らしさや強みを正しく把握しておくことで、オフィスデザインの在り方も大きく変わります。
ビヘイビアアイデンティティ(BI):
ビヘイビアアイデンティティとは、その企業の行動を指します。つまり、ブランドがもっている独自の「らしさ」を体現する行動です。企業を支えるのは、その企業で働く人材がどのように「らしさ」を体現して行動しているかにより大きくブランド価値が変化していきます。
特に最近では、事業を横断した組織改革・活性化、商品の品質管理などの計画立案・実践行動が重視される傾向があります。オフィスデザインにおいても、この「らしさ」を生むための行動を促す空間設計が大切になります。
具体的に、オフィスデザインおよび空間ブランディングにおいては、現状のオフィスの課題を整理しつつ、理念やバリューに沿ったオフィスへのゾーニング設計やムービング設計を念頭にワークショップを行います。オフィス空間を変えることによって「どんなコトづくりが出来るか」を検証することは、その企業ならではの行動を促すための大切な要素となります。
上記のレイアウト図は、ある企業のBefore/Afterです。この企業では、みんなが集まることで生まれるコミュニケーションを大切にしているため、各人の席へ向かう途中に必ずラウンジを通るというゾーニング/ムービング設計がなされています。
ビジュアルアイデンティティ(VI):
ビジュアルアイデンティティとは、その企業の視覚領域を統一する上でかかせないものです。つまり、企業ブランドのロゴやシンボルやブランドカラーなどです。企業を可視化するためにシンボルやロゴを使用したり、制服を使用したりと、VIを中心に企業のイメージを統一することで、社内(社員)が一致団結することができます。
また、外からも認識されやすいため、自然と社員も外を意識する効果も生まれます。オフィスデザインにおけるビジュアルアイデンティティの存在は、上記に加えて空間全体の世界観の演出をするために非常に重要です。その企業らしい世界観の演出が、社内外にとって大切な役割を担っていきます。
空間における世界観の演出のために、視覚・聴覚・触覚・味覚・嗅覚など、五感全てを検証し、その企業ならではの世界観を構築していく必要があります。
これらのCIを起点に、事業展開や社員育成をすることはもちろんのこと、オフィスにもCIを落とし込むことで、より一層組織の結束は強まり、企業のブランディングは強化され、ビジョン実現へと加速することが期待できます。
3:理念ベースにオフィスデザインされている事例
世の中にはすでに企業理念をベースにしたコンセプトをもとにオフィスデザインを行っている会社が多数あります。ここでは、そんな企業の例をいくつかご紹介いたします。理念や企業らしさをどのようにオフィスに落とし込んでいるのか、具体的にイメージしていただければと思います。
<事例①>:Airbnb(世の中の事例)
民泊のシェアリングエコノミー事業で有名なAirbnbは、「暮らすように旅しよう」というステートメントを掲げており、会社にとって重要な価値観となっています。
オフィスは倉庫跡を利用した広々とした建物。そこには、大小たくさんのミーティングルームが用意されているのですが、同じデザインのものはひとつとしてありません。
出典:OFFICE SNAPSHOTS(https://officesnapshots.com/2018/08/08/airbnb-offices-gurgaon/)
各ミーティングルームは実際にAirbnbで掲載されているスペースを再現していて、フロアやエリアごとに「ブエノスアイレス」「京都」「アムステルダム」といった世界の都市をテーマに、色のパターン、材質等でローカルの雰囲気を表現。社員はオフィスにいながら世界中に登録されている物件を味わうことができるとともに、自社の理念を体感することができるようになっています。
この体感こそが、社員の意識を変え、行動を変え、独自の文化が生まれるきっかけを生み出していると考えられます。
<事例②>:adidas(世の中の事例)
有名スポーツブランド“adidas”は、ロシアのモスクワにあるオフィスがとても特徴的です。
全6階の建物のうち、3フロアはオフィス、2フロアはフィットネスセンター、1フロアはプロトレーナーが最新トレーニングプログラムを提供する「adidas Academy」用の施設となっています。
出典:adidas OFFICE SNAPSHOTS(https://officesnapshots.com/2017/01/16/adidas-offices-moscow/)
異なる機能と目的を同時にもつ複合施設というスタイルによって、企業としてアクティブなライフスタイルに注目する姿勢と、スポーツそのものへの愛情を表現。
「スポーツを通じて人々の生活を変えていく」というメッセージを、訪れる人には分かりやすく伝えています。
<事例③>:合同会社DMM(世の中の事例)
動画配信や通信などのネット事業を中心に、近年はアフリカ関連事業など多角的にビジネス展開しているデジタル企業、DMM。
40以上もの事業を展開するDMMでは、「誰もが見たくなる未来。」というコーポレートメッセージを掲げ、「変化と進化」・「成長と拡張」を続けています。
そのため、オフィスは「感度が高い集団」と外部から見られることを重視。「外部からの期待によって、社員の能力を引き上げる」ことを目的としています。たとえば、ステークホルダーが最も目にするエントランスには壁一面のスクリーンを設置し、圧倒的なスケール感を演出。
出典:ゲーテ
また、DMMでは多種多様な人材が集まり、ともに成長し、ともに挑戦するからこそ、多種多様な事業ができるという考えを持っています。
そのため、ゾーニング設計では、わざと回り道をさせる動線を作り、余分に歩くことにより社員同士のコミュニケーションを促進する工夫がなされているようです。
<事例④>:小田急不動産株式会社(パラドックスがお手伝いした事例)
小田急電鉄直系の不動産会社である小田急不動産。
小田急沿線に特化した事業展開を行い、「この街を愛し、ここにしかない人生の景色を描く。」のミッションどおり、沿線に居住するお客様から信頼を獲得し続けています。
そんな小田急不動産のオフィス兼不動産営業所として、2021年にオープンした小田急不動産町田シティ店のコンセプトは、「不動産をつなぐ場」から 「人や土地のストーリーをつなぐ場」へ。
理念を具体的にオフィス兼店舗空間に反映し、街の時をつなぐ店舗として、 街の歴史や特徴がわかるライブラリーを併設しています。理念を反映した空間になったことで、町田の障がい者施設と共創しアート作品の展示を行なったり、 町田市民文学館ことばランドとコラボで展示の機会が生まれたりと、これまでにはなかった出会いが創出されました。
4:理念ベースのオフィスデザインによって得られる効果
その企業の「理念」や「らしさ」といったコンセプトを持ってオフィスをデザインしていくことで、社員の意識を自然なステップで変えることが可能になると考えられます。
このオフィス空間によるステップがうまく作用すると、その企業独自のカルチャーが創出・強化され、やがて同志が集まり・育つ環境になる。
つまり、オフィスのデザインによっても、企業理念の浸透が加速され、それが社外にも伝わることで、採用ブランディングおよび採用力の向上にも効果が期待できるということです。
また、オフィスには、お客様やパートナー会社、求職者といったあらゆるステークホルダーが訪問するというケースがあるかと思います。その際、「どのようなオフィスであるか」ということは、その企業が扱う商品やサービスのブランド力に大きな影響を及ぼします。
たとえば、「チームワークあふれる社会を創る」という理念のもと、グループウェアの開発、販売、運用。チームワーク強化メソッドの開発、販売、提供を行っているサイボウズ株式会社。
サイボウズのオフィスは、実際にとてもひらけた空間に椅子やテーブルが散りばめられており、社員同士の雑談が生まれやすいオフィスとなっています。
オフィスを訪れるあらゆる人が、サイボウズが持っているチームワークやコミュニケーションを大切にしている想いを感じられる工夫となっているようです。
出典:サイボウズコーポレートサイト(https://cybozu.co.jp/company/work-style/)(世の中の事例)
まとめると、下記の図のような流れで、オフィスデザインは企業ブランドの向上に力を発揮すると考えることができます。
5:会社のVision実現を加速させるオフィスデザインの進め方
いよいよオフィスデザイン、作り方に話を移していきます。オフィスづくりは、その順番が非常に大切です。パラドックスでもオフィスデザインおよび空間ブランディングを行っているのですが、主に下記の流れで行います。
【空間コンセプトづくりのフロー】
Step1:プロジェクトチームの結成
Step2:CIの明確化
Step3:コンセプトの言語化とデザインイメージの検討
【BI・VI構築のフロー】
Step4:BI構築セッション
Step5:ブランドパーソナリティの開発
Step6:VI構築セッション
【インテリアデザイン構築/設計・施工のフロー】
Step7:インテリアデザインの構築、施工へ
オフィスは一度作ってしまうと、どうしてもすぐには作り替えられないものです。企業のビジョン実現に向けてしっかりと機能するオフィスデザインとなるよう、これからご説明するフローを、ぜひ参考にしていただければと思います。
【空間コンセプトづくりのフロー】
Step1:プロジェクトチームの結成
企業理念と同じように、オフィスデザインも、経営者やデザイン会社だけで決めてしまうと、社員にとっては「所有感」が生まれず、押し付けのように感じてしまう可能性があります。
そこで、プロジェクト化(各職種や事業部のメンバー、リーダーや経営陣含め20名程度がベスト)することによって、オフィスデザイン検討に関わる人を増やし、より多くのメンバーに「所有感」や「納得感」を生むようにしていきます。
実際に、クライアント様と話をしてみると、「普段働くオフィスを、自分たちが関わり、いいものにしたい!」という声が多いことに気づかされます。
プロジェクトチームが立ち上がったら、Step2へと進みます。Step2以降では、セッション形式で意見を出し合い、自分たちが使うオフィスの在り方から考えていきます。
Stepが進むにつれて、チームメンバーはオフィスができるまでの背景をストーリーで語れるようになります。すると、オフィスは最高の理念浸透の空間になると同時に、クライアント様に自社をプレゼンするのにうってつけの場所にもなります。
Step2:CIの明確化
Step2では、企業のコーポレートアイデンティティ(CI)を再確認していきます。明確なCIがすでに社内にあり、浸透している場合は、すぐにStep3へ進んでください。
一方、もし、自社のCIが曖昧だと感じた場合は、まずオフィスよりCIを固めることを優先してください。2章の繰り返しにはなりますが、CIがないとオフィスのデザインコンセプトが出来上がりません。ここは入念に時間をかけ、チーム内で改めて自社のCIを確認しましょう。
CIの作り方は下記の記事に詳細をまとめてありますので、ご覧いただけますと幸いです。
→「会社のらしさを一発で伝えるコーポレートアイデンティティ(CI)の作り方」
→「企業理念とは?100年続く企業になるために必要な企業理念を徹底解説」
Step3:コンセプトの言語化とデザインイメージの検討
Step2でCIが再確認できたら、オフィスデザインにおけるコンセプトの言語化へと進んでいきます。
コンセプトを決める際は、CIの中でもミッションとビジョンに注目しましょう。「日々自分たちが果たしている使命」や「これからどんなことを成し遂げたいのかという未来」があった上で、オフィスはどういう姿であるべきかを考え、コンセプトを言語化していきましょう。
併せて、コンセプトはやや抽象的なものですので、空間に落とし込んだ際に、どのような「機能」や「デザイン」があればいいかという点も、少しずつ検討していきましょう。また、そのときに、自社の企業カルチャーや社員の働き方も考慮できると、なおよいです。
【BI・VI構築のフロー】
Step4:BI構築セッション
ここでは、2章でご説明したBI(ビヘイビアアイデンティティ)について、深く考察していきます。
具体的には、
「好きなオフィス、嫌いなオフィスの共有」
「自社らしいイベントやサービスは何か?」
「オンラインとオフラインの働き方」
など、いくつかのテーマをディスカッションしていきます。
その中で、利便性や快適性にプラスしてどんなオフィスの在り方、働き方や働きがいを創出できるかを追求することにより、その企業ならではの「コトづくり(ビヘイビア)」を検討していきましょう。
Step5:ブランドパーソナリティの開発
“ブランドパーソナリティ”とは、たとえば「信頼感のある」「先進的な」「ユニークな」といったように、そのブランドのイメージやキャラクターを言語化したものです。“ブランドパーソナリティ”を明確にすることは、Step6でご紹介するVI(ビジュアルアイデンティティ)構築にも関わる部分です。
そして、“ブランドパーソナリティ”やVIはオフィスのデザインにも大きく影響を及ぼすので、このあたりも疎かにせず、取り組んでみてください。
優れたブランドは、“ブランドパーソナリティ”がしっかりと規定され、商品やサービス、店舗、パッケージ、広告など全てのコミュニケーションに一貫性を持たせ、ブランドの目指す世界観を統一しています。
たとえばスターバックスは、「Third Place」という職場でもなく家庭でもない第三の場所という思想をもっています。そこから、リラックスでき、休まる場所を提供するために、「快適」「本格的」「親しみやすい」などのパーソナリティを規定しています。どの店舗を訪れても、緑の看板、こだわりのコーヒー、ゆったりとして緑のある内装、フレンドリーな接客、を感じることができると思います。
“ブランドパーソナリティ”の定め方は、下記の記事内3-1に詳しく記載していますので、併せてご覧ください。
→『「らしさ」を瞬間で伝えるビジュアルアイデンティティ(VI)の基礎知識』
Step6:VI構築セッション
VI構築セッションでは、企業の「らしさ」を視覚から感じてもらうVI(ビジュアルアイデンティティ)を考察していきます。
まずは、Step5で定めたブランドパーソナリティをもとにカラーマップを参照し、ブランドカラーを抽出。
ブランドカラーが決まったら、次にイメージ写真を集め、コラージュして、パーソナリティの視覚化およびビジュアルイメージを検討していきます。
こちらの「ブランドカラー」と「ビジュアルイメージ」の詳細のやり方につきましては、下記の記事内3-2、3-3に記載しております。
→『「らしさ」を瞬間で伝えるビジュアルアイデンティティ(VI)の基礎知識』
ここでは、ブランドカラー、ビジュアルイメージが決まった後、それをオフィスデザインに落とし込む「ブランド・マテリアル」「ブランド・フレグランス」について、詳細にご説明いたします。
“ブランド・マテリアル”
ブランド・マテリアル構築とは、オフィスデザインにおける空間設計や什器などに活用するための「素材」を定めていくことです。
たとえば、下記のように、選んだブランドパーソナリティを象徴するマテリアルが存在します。
また、木材、石材、金属もそれぞれたくさんの種類があり、その企業ブランドらしい素材を選ぶことで空間に統一感が生まれてきます。
これらブランド・マテリアルを検討することは、オフィスだけでなく、店舗の内装やインテリアを考えるのにも役立つので、ぜひ参考にしてみてください。
“ブランド・フレグランス”
ブランド・フレグランスとは、オフィスや店舗で使用する香りのことです。ふと何かの香りを嗅いだ時に、あるシーンを思い出すように、人の嗅覚と記憶は密接に関わっています。
香りには、もちろんブランド力を高める効果もありますが、空気の浄化、殺菌効果、集中力向上、前向きな気持ちにする、といった機能も持ち合わせています。
ブランド・パーソナリティから紐解く自社らしい香りと機能面をかけあわせて、オリジナルな香りを空間に纏わせることも、オフィスデザインにおける大事な要素のひとつです。
【インテリアデザイン構築/設計・施工のフロー】
Step7:インテリアデザインの構築、施工へ
オフィスデザインのコンセプトやそれに基づくデザインイメージが明確になってきたら、いよいよ実際のデザイン設計・施工へと移っていきます。
このフェーズでのポイントはデザインおよび施工会社に、これまで考えてきたことをちゃんと伝えられるかということです。せっかく、CIからコンセプトまでつくってきたのに、ここで想いが伝わらなければ、意味がなくなってしまいます。しっかり言葉にして、オフィスデザインにおける重点を伝えましょう。
パラドックスがオフィスデザインのお手伝いをさせていただく際は、行動を促す新しいゾーニング設計、ビジュアルコラージュを用いたイメージの共有を経て、独自のコトづくりと世界観の演出を創り上げるようにしています。
最終的には、新しいオフィスデザインにおけるシンボリックな空間などをイメージパースにて共有。言語化してきたコンセプトがしっかりと具現化されているかを確認し、施工へと進んでいきます。
6:オフィスデザインは、コンセプトも設計できる会社に依頼すべき
もしも今後、あなたがオフィスデザインをしようと考えたとき、「どこにお願いすればいいのだろう・・?」という素朴な疑問が湧き上がるケースもあると思います。
まず考えられる依頼先としては、「デザイン会社」「設計事務所」「施工会社」などがあげられると思います。もちろん、これらの会社にお願いすることに問題はありませんが、デザインや設計に入る前段階、つまりオフィスデザインのコンセプトを重視してくれるかをよく見極めることがポイントです。
いくら、デザインや設計がおしゃれで最先端なものであったとしても、その企業の理念やらしさがそこに反映されていなければ、オフィスの価値は半減してしまいます。
もし、オフィスデザインにおけるコンセプトの言語化段階にボトルネックを感じた場合は、ブランディング企業やコンサルティング企業に相談をし、コンセプトを完成させるという方法もおすすめです。
7:まとめ
いかがでしたでしょうか。
働き方や働く場所について見直されることが多い中、ブランディング企業として、今後のオフィスデザインの在り方を考えてみました。
私たちが考えた見解は、オフィスは「企業のブランドやそのストーリーを伝える場所」だということ。
つまり、企業やブランドのストーリーがオフィスに反映されていることで、取引先、顧客といったステークホルダーには、企業のアイデンティティを体感してもらう場所として、社員にはエンゲージメントを高めるための「拠り所」や「らしさ」に根ざした行動を起こすきっかけになるということです。
この機に、オフィスデザインを刷新するという方は、プロジェクトチームや理念をベースとしたコンセプトをつくり、オフィスデザインに落とし込んでいくことの大切さを覚えておいていただけますと幸いです。
状況の変化が激しい現在ではありますが、今後もオフィスを存続させていく方針であるならば、あなたのオフィスがその企業のらしさを社内外に届けるものとしても最大限に機能することを願っています。
コメント