リブランディングとは、「再び」の意味を持つ接頭辞「re」+「branding」で表される、つまりブランド再構築のこと。
企業や事業、商品やサービスにおけるリブランディングは、売上低下の打開策として、ターゲットを変えるときに、経営者が交代した際に、あるいは定期的に行います。
加えて、もうひとつ考えたいことがあります。
リブランディングといえば、具体的に何を変えることなのでしょうか?
こんな風に聞いたとき、多くの人の答えとして挙がるのは、「ロゴの変更」や「新しいパッケージの制作」です。見た目を一新して、ブランドとして気分も刷新。
たしかにそのとおりで、「リブランディング 事例」などで検索すれば、周年記念に変更されたロゴやスタイリッシュで今っぽいオシャレな商品パッケージの画像をたくさん目にします。そう、リブランディングは見た目を新しくつくり変えることを含みます。
ただしここで、「じゃあうちも、売上が落ちている商品をイマドキやオシャレなパッケージにしてリブランディングしよう!」となると、どうでしょう。
おそらくそれは、半分正解ですが、半分間違い。「パッケージをオシャレにしよう」は、パッケージリニューアルであって、ブランドの再構築ではないからです。
では一体、リブランディングに必要なこととは、どんなことなのでしょうか。
私たちパラドックスはこれまで様々に、そして多くのお客様と、ブランドそのものをつくったり、すでにあるブランドを時代に合わせて変えていくプロジェクトを行ってきました。今日は、そんな私たちの考える、リブランディングについて。
ただ表面を変えるだけでも、ブランドを丸ごと変えてしまうのでも、リブランディングは上手くはいきません。リブランディングとは何を変えていくことなのか、そして、リブランディングの効果はどんなところに現れるかについても、記事の中で紹介していきます。
1:リブランディングとはブランドの再構築
繰り返しになりますが、「とりあえずオシャレなパッケージに変えよう」ではダメなのです。なぜかといえば、パッケージだけを変え、ブランドの想いや実践していることと通じていなければ、何も伝えられていないのと同じだから。そして、それはおそらく生活者のニーズにも応えていないからです。
もちろん、パッケージが変われば一時的に売上が伸びるかもしれません。しかしそれはおそらく、パッケージそのものの目新しさによるもの。
生活者がその商品を手に取る動機は、商品やブランドに惹かれてではなく、「パッケージのよさ」です。ブランドの考え方を適切に伝えているパッケージでなければブランドそのものは「なんだか見た目だけだったな」とすぐに忘れられてしまいますし、元々の商品のファンは「よくわからないけど変わっちゃったな」と離れていってしまうかもしれません。見た目をよくするだけなら、リブランディングとは呼べません。
1−1:リブランディング=ブランドそのものを考え直すこと
リブランディングとは、ブランドそのものを問い直すことです。
見た目を変えるのではなく、ブランドのあり方そのものを変えていかなくてはなりません。それは、時代に合わせて、顧客に合わせて、社会に合わせて、社内の状況に合わせて。短期間でも社内外の状況は変わりえます。そのときどきの状況に合わせて、自分たちのブランドがどうあるべきかと考えることが、リブランディングなのです。
そんなことを長く続くブランドはどのように実践しているのか、次から具体的な事例をちょっと見ていきましょう。
1−2:とらやにとって大事なのは、お菓子
リブランディングはただ見た目をよくすることではない。たとえば、羊羹でよく知られるとらやについて考えてみましょう。
とらやは2007年に大きなリブランディングを行っています。その際には、もちろん、ロゴもリニューアルとなっており、「とらや」から「TORAYA」へと欧文表記に。ともなってパッケージも変わっていますが、単に見た目の改定が行われたわけではなかったように思われます。
とらやのリブランディングを行ったサン・アドの仕事紹介ページによれば、リブランディングのタイミングで行ったのはロゴやパッケージをまったく新しくすることではなく、それぞれのデザインの「統一」だったとのこと。
とらやでは長い歴史の中で、商品を取り巻くデザインや書式に細かなばらつきが生じており、だからこそ、ただ“今っぽく”するのではなく、これまで築いてきたものを土台に、調整していく。らしさを失うことなく、ブランドの新たな顔つきをつくり出したとされています。
とらやは、2007年から新しくカフェ業態の事業も開始しています。新しいことを始めても、「おいしいお菓子を喜んで召し上がって頂く」という姿勢に変わりはありません。
ただこれまで通りお菓子を売るのではなく、お菓子を楽しんでもらうための場所を新しくつくる。こういった新しいビジネス領域に出ていくことも、リブランディングのやり方のひとつだと考えることができるはずです。
1−3:時代に合わせて味を変える八幡屋礒五郎
さらに、事例をもうひとつ。
誰もがいちどは見たことのある七味のパッケージ、八幡屋礒五郎についても考えてみましょう。
広く知られるあの七味の小さな缶パッケージは過去変えられてきていますが(本当に小さなところ、唐辛子や花の大きさも調整されてるのだとか)、じつは、それ以上に七味の味自体が何度も変えられてきています。
商品そのものを変えるというと、ちょっと驚きかもしれませんね。しかし、時代が変われば生活者の味覚が変わっていくのは当然のこと。いつの時代もそれぞれのお客様に美味しいと感じてもらえるように。
大事なものだからこそ、ひとつのブランドとして確立されたら終わりというわけではなく、味そのものすらも、改良がなされ続けているんですね。
2:リブランディングの成功の秘訣は、Whyは変えず、How・Whatを変えること
ここからは、リブランディングでやるべきことについて、具体的に考えていきましょう。最初に考えたいのは、ブランドの核について明確にすることです。
なぜブランドの核を大切にするかといえば、リブランディングは元々あるブランドの核を大切にするべきだから。真ん中にはどんな考え方があり、何を目指しているのか、何度でも立ち返る必要があるのです。
2−1:ブランドの核を明確にしよう
リブランディングについて、さらに考えを深める前に、ちょっと考え方のフレームとして、「ゴールデンサークル理論」というのを使ってみようと思います。
※ゴールデンサークル理論をすでご存知方は、「2−2:伝えるための起点はWHY」にへどうぞ!
ゴールデンサークルとは、世界の叡智を結集したプレゼンテーションでおなじみ・TEDなどでも紹介された、「物事の本質を説明する際に重要となるフレーム」のこと。Why・How・Whatの3要素で円が構成されています。
なぜここでゴールデンサークル理論を使ってみるかというと、自分たちのブランドを世の中へ伝えていく際に、変えてはいけない重要なことと、変えてはいけないことを整理するため。本質を伝えていくためにやりやすいとされるフレームを使い、思想や事業・サービスをサークルに当てはめて考えてみようと思います。
Whyとは「なぜそうするのか」のこと。
ここでは、「企業の信念や目的、つまりミッションやビジョン」だと考えてみてください。
Howは「どうやるのか」。
企業やブランドの世の中への露出の仕方や、事業・サービスとしてのコミュニケーションの仕方です。
最後にWhatが「何をやるのか」。
企業やブランドの商品・サービスそのもの」としてとらえてください。
“ゴールデンサークル3つの要素”
- Why=なぜやるのか
- How=どうやるのか
- What=何をやるのか
この理論において最重要ポイントは、人はWhyに心を動かされるということ。ブランドを伝えていくために、真ん中におく絶対的なものは、企業やブランドのWhy=ミッション・ビジョンなのです。
2−2:伝えるための起点は、Whyに
何かを伝えるためには、真ん中にあるのは、つねにWhy。HowもWhatも、Whyに従って、考えていくものです。
よくあるたとえですが、Appleは最初から「新しいコンピュータをつくりました、どうですか?(商品=WHATのみ伝えている)」というコミュニケーションをしていないから、人の心を動かすと言われています。
まずThink different.という他とは異なる考え方をすることを掲げ、テクノロジーを介して何百万人という人の生活を変えることを目指していること(何を目的とするか伝える=Why)。
そのために他とは異なる洗練されて感覚的に使え、美しいデザインの製品が必要であることを示す。(どんなことを行うか=How)
その上で、コンピュータをつくりました(商品=What)、ということを伝えている。だから、人は振り向くのだと言われます。しっかりとしたWhyに基づき、それに紐付くHowとWhatを伝えていくことが大切なのです。
“Appleのゴールデン・サークル”
- Why=テクノロジーで何百万人という人の生活を変える
- How=感覚的に使え、洗練された美しいデザインのものが人には必要
- What=コンピュータをつくる
リブランディングにおいてはこのWhy、つまり企業やブランドのミッション・ビジョンは基本的に変えません。
ミッション・ビジョンは変えないまま、その目的を実現することと世の中を照らし合わせたときに、自分たちの立ち位置を問い直すのがリブランディングだと考えてください。
もしそこで根幹となる「Why=企業のミッション・ビジョン」などがフラフラしている……と感じるならば。そこに必要なのはリブランディングではなく、そもそものブランドをつくること。コーポレートブランディングが、急務なのかもしれません。
コーポレートブランディングに関してはこちらの記事でご紹介していますので、併せて、ご覧ください。
→「時を越えて愛されるブランドを構築するために必要な考え方と実践方法」
→「企業のらしさを一発で伝えるコーポレートアイデンティティ(CI)の作り方」
→「企業理念とは?100年続く企業になるために必要な企業理念を徹底解説。」
2−3:変えてもいいのは、HowとWhat
リブランディングを考える上で変えてはいけないのは、Why=ミッション・ビジョンの部分。そこが、ブランドの核となる部分だからです。逆に言えば、HowとWhatは変えてもいいのです。
時代に合わせて、ターゲットに合わせて、ミッション・ビジョンを達成するためには、どんなことを辞めるべきか、始めるべきか、変えるべきか。
そこではもちろん、ブランドの顔つきを変えていくためにパッケージやロゴが変わるかもしれないし、新しく立ち上げる事業や終わらせるべき事業もあるかもしれません。一つひとつ、自分たちの立ち位置を考え、やり方・やることを精査していくのがリブランディングです。
最初に見た、とらやでのリブランディング事例を思い出してみましょう。
とらやは、ロゴが変わっても、カフェ業態を開始しても(=How、What)、美味しい和菓子を届けようとしていること(=Why)は変わっていません。強いブランドは、強いWhyを持ち、その代わり、HowやWhatは柔軟に変えていっているのではないでしょうか。
“リブランディングで変えること、変えないこと”
WHY=変えない。リブランディングの指標
HOW、WHAT=変えてもいい。WHY実現へ向けて柔軟に
3:リブランディングは3ステップ
リブランディングを社内プロジェクトとして行うには、大きく3つのフェーズがあります。
まず始めに、自分たちのことを改めて知り分析するフェーズ。それからその分析を基に、自分たちの目指す未来へ向かうために、新しいブランドをつくるフェーズ。最後に、それらつくったもの、決めたことなどを伝え、浸透させていくフェーズです。
自分の携わっているブランドもリブランディングが必要かも?そう考えている方は、ぜひ参考にしてみてください。
“リブランディング3つのフェーズ”
3−1:分析のフェーズ
・プロジェクトチームをつくろう
・あるべき姿を確認しよう
・現状を分析しよう
3−2:戦略立案のフェーズ
・理想の未来を描こう
・現状と未来のギャップを埋める方法を考えよう
・足りないリソースを知ろう
・ブランドパートナーを設定しよう
3−3:浸透のフェーズ
・内部浸透を優先しよう
・外部浸透はブランドパートナーを基準にしよう
・クリエイティブの統一感を意識しよう
・浸透は段階的にチューニングしよう
3−1:【分析フェーズ】自分たちを知ろう
3-1-1:プロジェクトチームをつくろう
社内でリブランディングを行うにあたり、必要なのはプロジェクトチームをつくることです。企業や商品・サービスの未来を左右する、重要で大きな意義のあるプロジェクトですから、どんな人をプロジェクトメンバーにするのかは大切なポイントとなります。
どんな人をプロジェクトメンバーにするか。それは、ブランドを大切にし、ブランドのためを思って行動と発言をしてくれる人です。熱意を持っている人がいいですね。普段からブランドについて考えているブランドマネージャーかもしれないですし、商品そのものを考えている企画担当者かもしれない。
もちろん、そういった“一見ブランディングの中心にいそうな人”だけではありません。転職してきたばかりの人は外からブランドを眺める視点を持っているでしょうし、店舗で働く若手の方は日々お客様の声に触れて鋭い視点を持っているかもしれないのです。
“プロジェクトチームをつくる際のポイント”
普段からブランドについて考え熱意を持っている人
ブランドにフラットに意見を言える人
(無条件にブランドに肯定的なだけではNG)人数は3−6人
これから経営に携わっていくであろう人
足りないポジションを明確に
職種などは、立場の様々な人を入れる
ブランドづくりには、少数派の意見もとても大切です。ブランドをよく知っている人だけで「いいねいいねー」とやっても、意味がない。様々な角度からブランドを考えることが必要だと考えてみてください。職種や立場が偏らないことも、意識してみていただきたいところです。
どんなことをするかにもよりますが、プロジェクトメンバーは3〜6人程度で構成するのが一般的です。それぞれにきちんと役割があると、人はより積極的にプロジェクトに取り組んでくれるはず。「あなたは社内向けのお知らせや意見の集約をお願いね」「あなたにはデザインの統括を期待したい」と明確にお願いするのがオススメです。
また、チームをつくってみると「足りないポジション」にも気づくこともあるかもしれません。たとえば自社のブランドに関してだけではなく、ブランディングそのものを体系立てて理解し、全体の音頭をとる専門知識とスキルを持った人が社内にいない場合もあるでしょう。
ブランドのメッセージや戦略を考えることまではできるけど、それをデザインなどにアウトプットする人がいない場合もあるでしょう。そういう場合はその時々、期待するスキルを持った外部のパートナーに依頼をするのも大切な選択肢です。
ちなみに、こんなふうに社内のメンバーで自社のブランディングについて考えていくことは、インナーブランディングにもつながっていきます。
3-1-2:自分たちのあるべき姿を確認しよう
チームができたら、自分たちのあるべき姿を再確認します。ブランドのミッション・ビジョンなどがここに当たる部分。
ブランドは何を目的とし、どんなことを達成したいのか。2章でご紹介したゴールデン・サークルの中心「Why」に当てはまる部分を明確にします。
3−1−3:自分たちの現状を分析しよう
ここで分析をすべきなのは、大きくは次の3つです。
社内については、主に社内の人へのインタビューを行います。リブランディングに関してよく言われるのは、「答えはすでに社内にある」ということ。自分たちはどうするべきなのか、どう変わるべきなのか、インタビューを行うことで、実はその答えが見えてくることもあるのです。
インタビューを行うのは5−6人から、多ければ30人ほど。経営者やブランドのトップはもちろん、日々お客様と接しているメンバーに話を聞いたり、取引先から見えていることを聞くのもいいかもしれません。
インタビューで聞くのは、たとえばこんなことです。ブランドや自社の強みや弱み、ブランドのいまの課題、仕事をする上での現場の課題、聞こえてくる気になるお客様やメンバーの声、ブランドをもっとよくするためのアイデア、など。
様々な角度からブランドを見ていくことで、ぼんやりしていたブランド像が、解像度を上げて見えてくるようになるはずです。
社内について=インタビューなど
お客様について=グループインタビューやアンケートなど
競合や社会について=インタビューなど
お客様については、定量・定性のデータがあればその活用を。なければ調査を行います。たとえばweb上でのアンケートやグループインタビュー、ミステリーショッパーなど。数字的なデータとお客様の生の声、双方から、ブランドを分析します。
最後に競合や社会に関してですが、まずは競合の商品やサービスを実際に使って体験してみるといいかもしれません。
あるいはお客様へのインタビューを行う際、競合ブランドについても聞いてみることもできます。商品・サービスそのものはどんな点で異なるのか。それぞれのファンはどんなふうに違うのか。ブランドのメッセージやロゴなどアウトプットはどう異なるのか。そしてそれらは、これまでの時代ごとどのように存在してきたか。様々な視点を考えます。
社内、お客様、競合と社会。それぞれについて、多角的な視点での調査を行うのはとても骨の折れる作業ですが、様々な調査を組み合わせ、設計することで、何をすべきかが見えてきます。
3−2:【戦略立案フェーズ】ブランドを目指す姿に近づけるどうすればいい?
3−2−1 ブランドパートナーを想定しよう
具体的にどんな方法をとるか、何をやっていくか決めていく際、ひとつの指標になるのがブランドパートナーの存在です。ブランドパートナーとは、新しくなったブランドにおける新しいお客様。ど真ん中のターゲットを設定します。それは単純に性別や年齢等の属性ではなく、さらに細かいところまで踏み込んで人となりを想像していきましょう。
好きな音楽は?服はどこで買っていそう?アクセサリーはつける?お金を一番かけるものは何? テキストやビジュアルでわかるものにまとめる作業を、プロジェクトチーム内で行ってみてください。そこで浮かび上がってくる方が、そのブランドにとってのいちばんのお客様です。
ブランドにとっての正しい/正しくないは、「ブランドパートナーはどんな反応をするだろう?」と想像してみることから始まります。
ブランドパートナーについてより詳しく知りたい方は下記の記事もご覧ください。
→「時を越えて愛されるブランドを構築するために必要な考え方と実践方法」
3−2−2:現状と未来像のギャップを埋める戦略立てをしよう
ここから、具体的な戦略を考えていくフェーズに入っていきます。現状分析を行い得られた情報を整理し、未来のありたい姿へ近づくための道筋を描いていきます。具体的には、世の中にすでにあるフレームワークを積極的に活用してみましょう。
たとえばSWOT分析やポジショニングマップ、バリューチェーン分析、など。必要なものは都度変わりますが、使えるものはツールとして積極的に活用するのが吉です。
<たとえばこんな考え方を生かしてみよう>
・SWOT分析
・ポジショニングマップ
・バリューチェーン分析
・ブルーオーシャン戦略(4つのアクションマトリクス)
<こんな記事もご参考に(外部リンク)>
-SWOT分析
→SWOT分析(スウォット分析)とは?考えを整理する考え方を理解しよう【テンプレートあり】
→【図解】SWOT分析とは?ビジネスパーソンなら知っておくべき基本フレームワーク
-ポジショニングマップ
→ポジショニングマップの作り方【9つの成功事例から軸の決め方を紹介】
-バリューチェーン分析
→「バリュー・チェーン分析」の4つのステップ!事業のムダをなくして圧倒的な成長スピードを実現するフレームワーク
→バリューチェーン分析とは?意味や活用方法をストーリーで解説
-ブルーオーシャン戦略
3−2−3:リソースが足りなければ積極的に借りる!
上記分析や戦略立案を行った際に、「でもこれは自分たちでできるのだろうか……」と懸念事項が出てくることもあるでしょう。
単純に必要なスキルを持つ人が社内にいなかったり、やろうとすることのノウハウがなかったり。そのときは、社外から積極的に見つけてくるということも視野に入れてみてください。
イチから人材を育てたり、全てを自分たちで勉強する時間はもったいないですし、できる範囲のことだけをやっていては、せっかく描いた夢も縮小を余儀なくされてしまうかもしれません。
目的はできることをやるのではなく、向かいたい未来へ向かうための手段を考えることです。視野を広く、様々なやり方を意識してみてください。
3−3:【浸透フェーズ】ブランドのリニューアルをお知らせしよう!
ブランドのリニューアルを行ったなら、それを広くお知らせしていく必要があります。浸透のフェーズには大きくふたつの段階があり、ひとつは社内・取引先への内部浸透。もうひとつは社会・お客様への外部浸透です。
3−3−1:浸透はまず内部から
ふたつの浸透の中では、内部浸透が優先されます。社内浸透が非常に重要なのは、ブランドのことを社員が深く理解し、自分の言葉で語れるようにする必要があるから。
営業や接客のときなど、社外へ向けブランドを直接的に語る窓口になるメンバーこそ、ブランドを語る中心者なのです。社内に浸透させ、どこから見ても同じ顔つきで、世の中に出ていかなければなりません。
内部浸透にもやり方がいくつかあります。社内に向けたブランドブックやイベントの実施。行動指針の策定。普段からある社内報などを通じたコミュニケーションも可能ですし、TVCMなど内外含め広く伝えていくようなやり方も可能です。
3−3−2:外部=まずはブランドパートナーを想定してみよう
外部へのコミュニケーションは、基本的にはブランドパートナーを想定してみてください。彼ら・彼女らにはどんな伝え方であれば、新しいブランドが正しく届くだろうかと想像してみることが重要です。ここの手法は、状況により様々。どんな人に、どうやって伝えたいかにより、必要なものは判断しましょう。
3−3−3:クリエイティブは統一感を持って
何度もお伝えしていることではありますが、リブランディング実施の際に、変えてはいけないのはWhyの部分。逆に言えば、HowやWhatは変えてもいいということでした。つまり、ブランドが新しくなれば、ブランドのロゴやサービスのキャッチコピーなどは変えていってもいいのです。
以下に挙げるのは一例ですが、たとえばこんなものが、リブランディングを行った際には新たにつくったり、つくり変えたりする可能性のあるものだと言えます(ここに来てやっとやっと、ロゴやパッケージも出てきますね!)。
ブランドコンセプトコピー
ブランドステートメント
デザインコンセプト
ブランドロゴ
商品パッケージ
名刺や封筒
内外装デザイン
看板やサイン
ユニフォーム
Webサイト
ブランドブックやリーフレット
これらのクリエイティブにおいては、コミュニケーションに統一感を意識してみてください。親しみやすいのか、信頼感があるのか、厳かなのか。いわば、ブランドが語る際の人格のようなもの。トーン&マナーといったり、トーン・オブ・ボイスといったりするものです。
3−3−4:浸透は段階的に、調整しながら
リブランディングは新しいブランドをつくっていくこともパワーのかかることですが、それを浸透させていくことにもかなりの力を入れていく必要があります。社内に伝えていくだけでもすぐに新しいブランドをみんなが理解してくれるとは限りませんし、社外に伝えていく際も、離れていく顧客が出てきてしまうかもしれません。
しかし、リブランディングは、ひとつの施策だけで終われるものではないですし、すべてを一気に行う必要もありません。社内外の反応を見ながら、都度何をすべきかチューニングしていくことを念頭においてみてください。
4:Whyを変えると、新規のブランディングになります
リブランディングを行う際、成果を図るのは難しいことです。何を成功とし、何を失敗とするか、答えはひとつではありません。
難しいけれど、新たなブランドにきちんと生活者がついてきてくれるかということは、とても気になる点でもありますよね。いまはSNSなどもあり、ブランドに対する生活者の意見が簡単に見え、拡散される時代なので、リブランディングによって「変わってしまって残念」「好きでなくなってしまった」と言われてしまうのは避けたいところです。
たとえば過去には、パッケージを変えたことで売上が激減してしまったトロピカーナの事例もありますし、Gapは新しく発表したロゴがSNS上で大変に不評だったため元のロゴに戻すことになってしまった事例も聞きます。
最近の国内では、化粧品ブランドのSHIROが大きくリブランディングを行った際に、パッケージやロゴの変更、価格改定を行ったことに、様々な意見が見られていました。
商品そのものや考え方そのものがいいものであるならば、上手く伝わらなかった事例はとても残念なものとなってしまいます。
ここでは、リブランディング成功と失敗の判断軸について考えていきます。
4−1:成果の出る期間は限定できない
最初のポイントとしては、ブランディングはある程度の期間を設けて効果を考えなければならないということです。
なぜなら、新たなブランドの発表直後に、一時的に売上が上下したり、一部の生活者から賛否両論あるのはよくあることだから。そもそも短期的に結果を出したいならば、奇をてらったものや一時的に目をひくものをつくってしまいがちになり、それはどちらかというと一時的な広告の範疇です。
この記事の最初にお話したような、単に「今っぽくてオシャレなパッケージ」にしてリブランディングと称していることとあまり変わりありません。
本来、リブランディングはブランドや企業を長く続けていくためにやっていくための、その一部。つくって終わりではなく、常に改善を続けていく必要があると考えてみてください。
4−2:指標はブランドパートナーの声
さらにもうひとつのポイントは、効果測定の指標です。こちらも非常に難しい話ではありますが、ブランディングの成功or失敗は、わかりやすくはかることはできません。
もちろん売上やSNSの口コミも指標のひとつではありますが、それだけで判断するのは非常に危険です。たとえば、リブランディングに際して新規事業を始めたからといってそれが売上に直結するとは限らない。
あるいは、リブランディングを行うことでブランドのターゲットを大きく変えた場合は、それまでのターゲット層からある程度の批判や不満の声が出るのは当然のことです。
何かを変えるときにはプラスもマイナスも伴うものであり、目に付きやすいマイナス面だけを見て、“失敗”とするのは早計だと言えるでしょう。
ということは、何でも測れないなら何の効果もわからないし、それならリブランディングする意味もないのでは?なんて思われるかもしれませんね。ここではひとつ、私たちが普段ブランディングのお手伝いをさせていただいているお客様と、大切にしている指標についてお話できればと思います。
その指標とは、ブランドパートナーからの声です。ブランドパートナーは、前述したリブランディングを行う際に設定した、ブランドの本当のターゲットとなる人たちです。
彼ら彼女らに、新しいブランドについてインタビューや座談会を行ってみるのもいいかもしれません。最初は3−6人へ聞いてみることで、ある程度の方向性が見えてくると言われています。
<ブランドパートナーの声=ひとつの成果指標>
・ブランドを広めてくれるのはブランドパートナー
・ブランドパートナーへのグループインタビューの実施
・まずは3−6人聞いてみることで方向性をつかもう
その人たちが評価してくれるなら、そのブランドは大丈夫。ブランドパートナーが新しいファンを連れてきてくれます。
もちろん、ブランドパートナーからの声は、わかりやすく数字でみるのは難しいものです。
だからこそ、自分たちの本当のお客様へ、自分たちの想いが狙ったとおりに届いているか。丁寧に声を汲み取ったり、ブランドパートナーとブランドの関係を都度見直していくなかで、リブランディングの効果は見えてくるのではないでしょうか。
4−3:ブランドの根幹が変われば、それは新規のブランディングになる
ひとつだけ気をつけたいのは、それはブランドの根幹、つまりミッション・ビジョンなどに紐付いていないアウトプットとなってしまったり、いつの間にか根幹を変えてしまっていた場合です。
この場合は、HowやWhatを変えるリブランディングという文脈からは逸れてしまっていますので、リブランディングではなく、まったく別のブランドを新しく立ち上げたという方が正確かもしれません。
5:小さく変え続けることがリブランディング
さて、ここまで読んでいただくともうお気づきかもしれませんが、リブランディングは1度やったら終わり、やればすぐに効果がでる、というものではありません。リブランディングとは、ずっとブランドが続いていくなかの、ひとつのアクションに過ぎないのです。
社内の状況が変われば、ブランドパートナーの世代が変われば、社会全体の考え方が変われば、その都度ブランドも自分たちの立ち位置を問い直し、チューニングをしていく必要があるはずです。
その中で大切なのは、ブランドは育てていくものだという意識です。
ブランディングは、すでにあるものをそのまま使うのではなく、少しずつつくっていく行為。
定期的に、いまやっている事業は自分たちのミッションやビジョンから外れてないだろうかと問い直したり、ブランドパートナーの声を聴いたりと、その時々、自分たちの立ち位置を考えていくこと、それをずっと続けていくことがリブランディングであり、ブランドをつくるということなのです。
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