現代社会で本当に愛されるための商品ブランディングの思考法と実践法

新商品の開発を検討している企業のみなさまへ質問です。

その商品の顧客(ブランドパートナー)は誰ですか?
顧客にとっての推しポイント(価値)は何ですか?
その推しポイントは、自社らしさや思想を体現するものになっていますか?

特に3つ目の質問については、意外と「考えたことがなかった」という方も多いのではないでしょうか。もしそうであれば、それは商品ブランディングをさらに一段階ブラッシュアップできる絶好のチャンスかもしれません。

世の中にすでに商品ブランディングに関するマーケティングやプロモーションといった側面からのアプローチに関する情報はたくさん存在しているので、今回メディア編集部としては、企業や作り手としての思想を起点にした商品ブランディングの組み立て方についてご紹介していきたいと考えています。

もし、まさにこれから新規の商品開発に着手しようとお考えの方がいれば、ぜひ参考にしていただければ幸いです。

それでは、見ていきましょう。

1:作り手の企業らしさを言語化する

前述したように「安い」とか「品質がいい」だけでは、絶対的な差別化にはなりません。それは、あくまで商品の「機能」「特徴」で、程度の差による差別化でしかありません。もっと安く、高品質な商品が登場したら負けてしまいます。

私たちが商品ブランディングを行う際に重要視したいのは、その商品だけじゃなくブランドとして、あるいは企業としての共感を持ってもらえるかどうか。

中長期的な商品ブランディングのためには、企業ブランディングも大切だと考えています。

かつては商品ブランディングと作り手の企業ブランディングは関係がないと言われていました。なので、商品名はよく知っていても、つくっている企業名は知らないというケースがほとんどでした。もちろん、現在でもその傾向は大きくは変わっていません。

しかし、世の中に流通する情報の増加とともに、意図するか、せざるか関係なく、商品周辺の情報も世の中に広まることが増えました。

例えば、老若男女に愛される夏の定番アイスのガリガリ君。商品自体は多くの方が知っていますが、アイスを作っている赤城乳業のことはこれまで知られていませんでした。しかし、商品の値上げの際に、CMを通じて企業としても消費者と直接コミュニケーションをとったことで、一気にその名を広めることになりました。

原料費の高沸による価格アップを消費者と一緒に乗り越えていく。そのためには作り手としての、企業の顔やスタンスを示すことには、大きな意味がありました。

その商品を磨き続けることも大事ですが、企業の理念と紐付いて、その思想にもとづいた提供価値となっているかも一度考えてみてください。企業やブランド全体でみたときと、商品単体で見たときに、同じ思想を持っていることが、ブランドとしては大切。その信頼感がブランドのファンやブランドパートナー獲得につながっていきます。

たとえばApple社の場合で考えてみましょう。Appleは企業≒ブランドですが、「iPhone(商品)は好きだけどApple(企業・ブランド)は全然好きじゃない!」みたいな人にはあまり出会ったことがありませんよね。逆にApple製品全体に通ずる考え方やデザイン全体に共感している人の方がイメージしやすいわけです。

2:商品ブランディングも「企業理念」からスタートする

商品ブランディングにおいて、マーケティングをし、プロモーションによって、商品の価格や機能、体験をアピールする以外で大切なこととは何でしょうか。

それはブランドならではの思想を、すべての施策に一貫させていくこと。ブランドの思想やそこに込めた想いや志を言葉にすることから、ブランディングは始まります。

このブランドならではの思想は、企業理念(ミッション・ビジョン・バリュー)に基づいて考えられるものです。

自分たちの使命を起点に、社会・時代の要請に応え、その商品にしかできない価値提供を考え、磨き続けていく。そうすることで顧客から選ばれ、従業員も誇りに思う商品へ成長していくことができるのです。

逆にいえば、企業理念が何もなければ、長期的に成功する商品ブランディングはかなり難しいとも言えそうです。

どうして商品ブランディングは、企業の理念や思想と紐付いている必要があるの?商品はある程度独立しているものじゃないの?という疑問を抱く方もいるかもしれません。

では、こんな例を想像してみるとどうでしょうか。

使い捨て商品を販売している企業が

「資源を無駄にしない」という理念を掲げている。

 

「女性の自立」を理念に掲げ、美容・健康商品を販売している企業に

女性マネージャーが一人もいない。

 

「ゆったりとした食事の提供」を掲げているにも関わらず

従業員の労働時間が規定を大幅に超えてしまっている企業。

これらは冗談のようですが、実際に世の中にあった実例です。

商品がユーザーに提供している価値と企業が掲げている存在意義が180度異なっていれば、「言ってることと、やってることが違う!」と、誰もが思うはずです。

このようなギャップは、顧客からの信頼を失うだけです。「資源を無駄にしない」と企業が掲げるのならば、商品も「添加物を排除して、あなたの身体に必要なものだけでつくりました」であるべきです。

言動が一致していれば信頼されますし、一致していなければ信頼されない。人も商品・企業も一緒ですね。

そもそも企業理念からつくったほうがいい?と思った方はこちらの記事も

3:商品開発の基礎となる4つの問い

ここでは、商品ブランディングに入る手前の、商品の開発段階で考えるべき4つのステップを紹介していきます。

 

“商品開発の考え方”

①企業の使命とは何か?

②使命を届けるべき真の顧客(ブランドパートナー)は誰か?

③真の顧客(ブランドパートナー)にとっての価値は何か?

④価値を体現する商品とは何か?

企業としての使命があり、それを誰に(どんな顧客に)届けたいかを設定する、するとその顧客へどんなバリューを提供していくかが定まる。理念に紐付く価値の体現が商品となります。

ここでポイントなのは、商品ありきで、既存顧客に売るのではなく、顧客にとって望ましい価値、求めている価値を表現した商品開発すること。(もしくは、最後にチューニングをする。)という順番の方がうまくいくそうです。

ドラッカー氏も、既存の商品を既存の顧客に売るのが一番いけないといっていたそうです。

真の顧客“ブランドパートナー”とは? と思った方はこちらの記事も

4:商品ブランディングのプロセス

さて、いよいよ商品ブランディングの具体的なプロセスについて説明をしていきます。プロセスは大きく2つ、もう少し細かくわけると5つのステップに分かれます。

大きなふたつは、最初にブランドの輪郭をハッキリとさせていくための「アイデンティティ開発」のパート。そのあとに、広告や商品開発などの具体施策につなげていくための「差積化戦略・シンボリック商品・サービス開発」というパートがあります。

 

それぞれのパートはもう少し細かくわかれますが、全体の流れとしては、まずブランドの背景や想いの言語化をするブランドのストーリー化。それから、そのストーリーを実践しやすくするための作業として、キャラクタライズ、そしてシンボライズを行います。

最後に、より具体的なマーケティング施策などに落としていくための差積化戦略と、具体的な商品開発について考えていく工程です。

これらのステップを通じて、ブランドの輪郭が現れ、日々の事業の中で徐々に一貫した顔つきをするものとなっていくはずです。この章では、それぞれの段階に関して詳しい解説を行っていきます。

“商品ブランディングの5ステップ”

①ブランドのストーリー化

 ブランドの背景や想いを言語化する作業

 (→対外的な言葉にすると「ステートメント」)

②ブランドのキャラクタライズ

 ブランドの人格をつくる作業

③ブランドのシンボライズ

 ブランドの人格を可視化する作業

④ブランドの差積化

 小さな活動の積み重ねでブランドの価値を高める作業

⑤シンボリックな商品の開発

 ブランドを象徴するような製品やサービスの開発

3章で述べたように、具体的な商品を作り込んでいくのは、最後の最後!というのが注意したいポイントです。まずはブランドそのものに、ついて考えていきましょう!

4-1:アイデンティティ開発(ブランドのストーリー化)

企業にはミッション・ビジョン・バリューがあり、一方、商品には商品が生まれた背景や歴史、社会の要請などがあります。これらの要素は一見独立しているように見えることもありますが、いずれもつながっていなければならないものです。

企業としての描く未来や使命と、商品の特徴や込められた想いをきちんとつないで行く作業は、ブランドのストーリーを描くということです。ここでは、ブランドストーリーをつくる5つの要素を確認しながら、「ストーリーの言語化」について見ていきます。 

商品ブランドのストーリーづくりに必要なのは、次の5つの要素です。

“商品ブランドのストーリーの5つの要素”

・企業ミッション

 企業が日々果たすべき使命のこと

・企業ビジョン

 企業が実現したい未来のこと

・企業バリュー

 企業が約束している価値・強みのこと

・商品に対する顧客ニーズ

 商品に対して顧客から求められる価値、世の中の抱える課題のこと

・商品に関する自社シーズ

 商品のらしさや強み、価値観のこと

ポイントは1章で説明したように、ただ商品に対するニーズ&シーズだけで考えるのではなく、企業としてのミッション・ビジョン・バリューを踏まえること。企業としての思想と、商品としての思想をつなげることにとても大きな意味があります。

5つの要素を図にしたものが下記です。

企業として、商品を通じて社会をどう変えていきたいかという外側の世界を意識して未来を描く①「ビジョン」と、自社の価値や強みの②「バリュー」、この2つの起点であると同時に、集約された企業の使命である③「ミッション」。

そして、商品に対する顧客や世の中から求められるものが④「顧客ニーズ」であり、商品の持つ価値や強みが⑤「自社シーズ」。

これらを踏まえ、ひとつのことばでつないだ交点に生まれるのがブランドストーリーということになります。

もちろん、このそれぞれのワーディングにも、下準備が要ります。理念の解釈を行ったり、ニーズ・シーズを明確にするための社内へのヒアリングが必要だったり、場合によっては顧客へのインタビューを行うことも。大切な商品の土台をつくる部分です。丁寧ならしさづくりを心がけることをおすすめします。

“ブランドストーリー化の注意点とポイント”

ブランドストーリーは、フィクションを描くものではありません。ここまでご説明させて頂いたように、あくまでファクトやニーズ・シーズを結びつけた「言語化」です。

 

企業と商品の想いをつなげる、顧客ニーズと企業・商品のシーズをつなげるという作業がストーリー化だと捉えてみてください。

 

ですので、ストーリーにする段階では、物語のような演出はしなくても大丈夫です。商品を、よりよく見せようとするために使うものではないことは留意したいポイントです。

 

ストーリーを描ける商品は、そもそも選んだ顧客のニーズに見合う価値を提供できていなければならないということ。また、作り手のビジョンや想いなどの背景が何もない商品は、プロモーションは可能ですが、ブランディングは難しいと考えています。

 

また、よりよいブランドストーリーへブラッシュアップするには、下記の3つを意識してみるとよいと言われています。チェックしてみてくださいね。

①自己完結できるストーリーになっているか?

「他社製品と比べてより優れている」といった比較での強みでなく、自社独自の差別化された強みを語りましょう。

 

②長期間使用できるストーリーか?

今を意識しすぎる内容だと、すぐにストーリーをつくり直さなければならなくなってしまいます。言っていることがコロコロ変われば、顧客からも信用されないもの。数年先の使用にも耐えるか、考えてみましょう。

 

③具体的なストーリーにできているか?

背景や思想を語ろうとすると、どうしても抽象的な想いだけを語りがちになってしまいます。商品の技術や性能など、具体的な成果や効果が理解できるところにまで言及されているかのチェックを忘れずに。

4-2:アイデンティティ開発(キャラクタライズ)

ブランドストーリーを描くことができたら、次に行うべきはブランドのパーソナリティを決めていくこと。

この商品は明るい人?おとなしい人?賢い人?にぎやかな人?そんなふうに商品の性格付けを行う作業です。ここで定めたパーソナリティに基づき、広報物の内容などが定まっていきます。大枠のペルソナを定めておくとスムーズです。

方法としては、人格を想像しながらブランドを表すキーワードを設定していきます。

「誠実で正直」かな〜。でも遊び心もあるな〜。遊び心は、「自由」という単語が近いかな?でも遊ぶときは本気で遊ぶから、「情熱」といったワードでもいいかも?……こんな感じで、たくさん形容できるキーワードを出しながら、取捨選択を行い、最終的にいくつかのキーワードに絞っていきましょう。

4-3:アイデンティティ開発(シンボライズ)

キャラクタライズされたブランドの人格を基にして、その商品を象徴するものを確立していく作業です。ブランドのスローガンをつくったり、ロゴ、イメージビジュアルをつくるようなイメージですね。シンボライズすることで、他社との差別化を行います。

ロゴについてもっと知りたい方はコチラから!

ワードは、すでに抽出されたワードから連想されるものを基調とします。議論を重ねて案出しを行います。スローガンですから、きちんと合言葉になるフレーズにしたいですね。

4-4:差積化戦略

差積化とは、差別化と対比して使われることばで、小さな活動を継続して徐々にブランドの価値を高めていくことです。商品そのものの提供価値に加えて、商品にまつわるコンテンツの価値、ブランドと顧客のつながりの価値によって、ブランド全体の価値を高めていきます。

差積化によるブランドの価値の高め方

 ブランドの価値=

商品の価値+(コンテンツの価値×つながりの価値)

たとえば「他社より圧倒的にディスプレイのきれいなPCです!」というのは、ディスプレイのきれいさで「差別化」していますよね。たしかにそれは商品発売当初は大きな価値となりますが、他社も同じく技術開発を続けていれば同じようにきれいなディスプレイは生まれてくる。段々とその価値は下がっていってしまうのです。

 

一方で、「差積化」は、最初は大きな他社との違いにはなりませんが、ずっと継続して違いを累積していく活動です。

わかりやすい例を出すと、ファンコミュニティの運営などがこれにあたります。最初はただ商品のファンだった顧客が、コミュニティで得られる情報に価値を感じてより強い顧客となったり。コミュニティの顧客同士のつながりができて、ブランドから離れにくくなったり。時間の経過とともに価値が増大していく施策、ととらえるとわかりやすいかもしれません。

差積化のための戦略には3つのポイントがあります。これらを意識して戦略だてができると、より価値を提供できるブランドになっていきます。

差積化戦略 3つのポイント

①労力が徐々に減っていく

活動すればするほど、企業内での仕事が減るようなことが望ましい。徐々にルーティン化できたり、コミュニティ上でブランドのファンが勝手に盛り上がるようになっていくイメージ。

 

②競合が真似しにくくなる

たんなる価格や品質だけでは競合他社が真似できるもので終わってしまいます。顧客との強いつながりなど、真似をするのに大きなコストがかかり真似しにくいものを築いていくのが重要です。

 

③不易流行

ブランドに関しては「いま」の情報発信がされがちですが、数年経っても顧客に新鮮に映るものを大切にしてみてください。それは、創業期の話でも、本質的な発見は10年後に聞いても色褪せない価値があります。

4-4-1:差積化戦略の8パターン

「強みを積み重ねていく」言うのは簡単だけど、そんな簡単に差積化戦略なんて思いつかない! と、不安のよぎった方も心配ご無用です。

差積化戦略には、いくつかの「型」があります。それぞれ、うちのブランドにはどれが合うだろうかと、イメージしながら読み進めていってみてください。

8つのパターンは、2つの軸で分類をすることができます。ひとつめの軸は、「コンテンツの提供価値重視⇔リレーションの提供価値重視」です。前者は商品の思想や裏側にあるものを発信しコンテンツ化することで、商品のブランド価値をより高めるやり方。

後者は、イベントを開催してブランドの企業と顧客のつながりをつくったり、顧客同士のコミュニティをつくったりすることで価値を高めていくやり方です。

もうひとつの軸が、「感性的アプローチ⇔理性的アプローチ」の軸です。感性的アプローチとは、商品にしてもコミュニティをつくるにしても、そこに人の感情や想いを乗せることで価値を高めていくアプローチ方法のこと。商品開発時の逸話を伝えるエピソードをコンテンツにするなどが、わかりやすい例かもしれません。

理性的アプローチは、反対に客観的な事実や、顧客に限らず社会に向けた姿勢によって価値を示していく方法です。商品の価値を科学的な根拠を持って証明するコンテンツや、社会課題への考えなどを示し社会とつながっていくことなどがそれにあたります。

8つのパターンを、4象限に分類してみるとこのような感じ。それぞれについてはこのあともう少し個別に解説を加えていきます。(真ん中にブランドストーリーがあるというのも忘れずに!)

それぞれの特徴は、下記。もっと知りたい!と思った方は、『ブランディングの基本』(日本実業出版社)安原智樹 2014 にもっと詳しい解説が記載されています。参考にしてみてください。

“差積化戦略8パターン”

逸話

企業や顧客の持つユニークなエピソード。商品開発裏話や顧客の体験談など。

 

情景

ブランドの世界観を表現した制作物。ブランドムービーやブランドブックなど。

 

提案

商品が顧客の生活を新たなものにできることを示す理性的なメッセージの発信。商品を使用したレシピ提案や商品の新しい使い方など。

 

証明

商品の優れているポイントを何らか客観的な根拠を用いて示すこと。科学的・定量的な根拠や、権威のある賞など。

 

応接

おもてなしや接客。顧客との接点の中で行われるもの。

 

仲間

ブランドのコミュニティサイトなど、ブランドと顧客、顧客同士、の間で生まれる絆づくり。

 

共創

顧客とともにブランド・商品をつくっていくこと。お客様の声を活かした商品開発など。

 

社会

社会課題へのアプローチやCSR活動など。

これらの手法を活かしながら、具体施策を考案していきます。ここでの判断基準も、どんな理念を誰に届けるか、が重要です。顧客やコミュニケーション課題に合わせて、8つのパターンを選んだり組み合わせたりすることを考えてみてください。

4-5:シンボリックな商品の開発

そして、ここまできて最後にやっと具体的な製品やサービス、事業をつくっていくことが可能になります。ブランドストーリー・提供価値を具現化した商品をつくることで、ブランドがわかりやすくなり、商品自体の提供価値も高まっていくのです。

これらの過程を経たときには、一つひとつの過程がきちんと積み上がり、商品のブランドストーリーが形を現しはじめているはず。もちろんブランドはつくったら終わりではないため、その時々、時代や顧客の変化に合わせてチューニングをしていくこともお忘れなく!

さてここからは、商品ブランディングを事例を通じて紹介していきます。

5:商品ブランディングの事例 <トーシンパートナーズ 投資用マンションZOOM

今回は具体例としてトーシンパートナーズ様の商品である投資用マンション「ZOOM」の事例をご紹介いたします。

トーシンパートナーズ様は、全国の投資家に向け投資用マンション(土地の仕入れ〜設計〜施工〜販売〜管理〜アフターフォロー)を提供している企業。都心の1Kデザイナーズマンションを中心に実績は2001万戸以上、入居率99.7%2019年平均)。何年経過しようとも資産価値が高く、愛されるマンションづくりを目指しています。

今回の事例であるZOOMというマンションブランドは、当時リーマンショックの影響からまさに立ち直ろうとしていた2013年に、これからの時代にあった事業の柱となる商品として構想、開発されました。

このZOOMのプロジェクトにおいて、今回ご紹介したステップに登場するもの(企業の状況や開発する商品によって若干プロセスが異なることがあります)を今回はいくつかご紹介していきます。

<ブランドのアイデンティティ開発>

ここではまず、関連する部署を横断してプロジェクトチームを結成。ただ単にデザインがいい、立地がいいといったモノの価値だけでなく、ZOOMに住むことがかっこよく、ステータスにもなるような、新しいライフスタイルを纏ったストーリーのあるブランドを目指しました。

仕事もプライベートもアクティブで、情報感度が高く、自らの暮らしにこだわりや美意識を持っていて成長意欲が高い、というようなターゲットのペルソナを設定。

続いて、マンションシリーズZOOMの商品化に向け、「onoffも自分らしく輝き、その輝きが増していくような、かっこいい暮らしと、かっこいい日本をつくる」というブランドビジョンやミッション・バリュー等を策定し、ブランド開発を行っていきました。

上記にともない、スローガンやロゴの作成も行いました。

▲ネーミングは「ZOOM」に決定。3つの価値にZOOM(研ぎ澄ます)し、暮らしをZOOM(広げる)するという想いを込める。ロゴも「Z」「O」「M」の組み合わせで空間を形作っている。

▲単なるデザイナーズマンションではなく、ライフスタイルを高めるマンションとして、スローガンを開発。

普遍的な価値を研ぎ澄ますことで、物事の本質を大切にするターゲットに共感いただけるよう、「機能美」と言えるようなマンションブランドを狙いました。

また、スクラップ&ビルドが主流の日本において、永く愛されるということは、資産価値が長きに渡って維持できるということです。投資用に購入されるオーナーさまにとっては利回りの観点から大きな価値になり、「共存共栄の、あしたをつくる」という同社の理念にも合致すると考えました。

<商品(ZOOMという不動産)における具体的なアウトプット>

ZOOMはブランドアイデンティティの中で、“「時代を超えて愛される住まい」と、 「時代を先取るサービス」をつくる。”とも定めています。

時代を超えて愛されるためには、流行に左右されないことも大切です。そのひとつが、壁面が打ち放しのデザイン。ZOOMらしさをつくる上で重要なファクターと位置づけて取り入れています。

またマンションづくりにおいては、バリューで定められている3項目が重視されています。

SAFETYであれば、エントランス・エレベーター・各住戸ドアの3重ロックや万全のセキュリティシステム。SENSEであれば、室内にあえて段差を設けていたり、螺旋の階段があったり。PRACTICALであれば、メゾネットの階段が本棚になっていたり、エントランスの郵便受けにさりげなく手荷物を置く場所が用意されていたり。どうすれば3つのバリューを届けることができるか、常に議論されながら設計・建築にいかされています。

時代を先取るサービスについては、この後の差積化戦略のパートでお話しします。

<差積化戦略>

ブランドの価値を高め続けていく差積化戦略は、マンションを購入するオーナー向けの施策と、賃貸マンションとして入居する人向けの施策の両方を順番に行いました。

まず、オーナー向け施策では、ZOOMならではのストーリーを伝え、価値を可視化するべく、ZOOMの世界観を徹底的に表現したブランドブックやブランドサイトを制作。ブランドムービーの作成も行いました。

地方に住むオーナーは、物件を見ずに購入を決めることもあります。そこで投資用のマンションとして、なぜZOOMがいいのか、ZOOMのコンセプトとともに、物件ごとに異なる魅力を伝えることを大切にするため、新しい物件を販売する時には必ずその物件のパンフレットやWEBを制作しています。

他にも、「会社案内」「はじめてマンションを経営する人のためのノウハウブック」「事例集」なども合わせて作っています。

一方、入居者であるカスタマー向け施策で大切にしたポイントは、「いかにファンになってもらい、選ばれるマンションブランドになるか」という点です。

ハード(物件)は一度建てたら簡単には手を加えられないですが、ソフト面なら常にバージョンアップし続けることができる、という発想から入居者サービスの開発を実施。LIFE DESIGN APARTMENTを標榜するブランドとして、例えば、入居者に向けてライフスタイル情報をお届けするオウンドメディアを開発。他にも、このメディアで紹介されたアートを入居者限定でプレゼントするなど、コンセプトのひとつである「センスを刺激する」活動を続けています。

こうした入居者へのアプローチを通して、よりZOOMのことを知り、ファンになってもらう。つまり、不動産の情報サイトや、街の不動産屋でたまたま出会うのではなく、賃貸顧客ターゲットから「ZOOMに住みたい」と指名される存在をめざしています。

また、入居者の満足度が高まり、その魅力が口コミで広がって予約待ちがでるようなマンションになれば、資産価値は下がりにくく、むしろ高めていくことも可能です。それはオーナーの満足度を高めることにもつながります。事実、「ZOOMに住みたい」と指名でやってくる入居者や新築時よりも家賃が上がった物件も増えています。

さらに、ZOOMのファンになってもらうことから派生して、入居者がZOOMを購入するという新しい流れもつくりました。これはZOOM投資と名付けて、新たなサービスとしてリリースしました。

ZOOMを投資用マンションとして購入することの魅力は、「何もしなくても時間と共に自然と資産形成ができていく」ことです。それは、先行き不透明な世の中において、将来への安心にもつながります。つまり、ZOOM投資によって、資産形成=守りを固めておくことで、自分らしい暮らしを思い切り楽しむことができる。まさにLIFE DESIGN APARTMENTというスローガンを実現するマンションになりつつあります。

<得られた成果>

・販売価格が大幅に向上

・家賃が大幅に向上

ZOOMの入居率は99.8%以上を維持している。

ZOOMに住みたい、と指名での問い合わせも増えている。

ZOOM投資を通じて、入居者からオーナーになる人が増えている。

・グッドデザイン賞をデビュー以来ずっと受賞中(6年間)。

・業界のベンチマークブランドになった。

ZOOMがあるから、という理由で入社する学生が増えている。

ZOOMの商品開発事例に関してもっと詳しく見たい方はコチラから

ZOOMのオウンドメディアに関してもっと詳しく見たい方はコチラから

これらの施策は主には、まずは世界観を理解してもらいつつ、オーナーやカスタマーレビューとのリレーション構築が目的であり、つながった先でブランドや商品を共創していくことが目指されています。

差積化戦略8パターンでいうならば、情景・仲間・共創あたりを組み合わせて応用させているんですね。

6:まとめ

ここまでお付き合いいただきまして、ありがとうございます。

今回は商品(サービス・事業)ブランディングのポイントとプロセスをご紹介してきました。商品にストーリーをというのはよく聞かれる話ではありますが、理念から出発することや、理念と顧客を基に具体的な価値を商品として体現していくことなどのポイントは、意外と見逃しがちな点でもあったのではないでしょうか。

最後にまとめポイントを再掲します。

商品ブランディングの5ステップ

①ブランドのストーリー化

ブランドの背景や想いを言語化する作業

(→対外的な言葉にすると「ステートメント」)

 

②ブランドのキャラクタライズ

ブランドの人格をつくる作業

 

③ブランドのシンボライズ

ブランドの人格を可視化する作業

 

④ブランドの差積化

小さな活動の積み重ねでブランドの価値を高める作業

 

⑤シンボリックな商品の開発

ブランドを象徴するような製品やサービスの開発

商品ブランディングで大切にすべきこと

その商品ならではの考えや思想を言語化し、実践すること。そのために企業理念と根底で通じているべきである。

上記ポイントをイメージしながら、ぜひ愛される企業づくりと、愛される商品づくりに取り組んでみていただければ幸いです。

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