あらゆる情報をweb上で取得するようになった現在、企業による採用コミュニケーションでは採用サイトの存在が非常に重要になっています。
ただ、一方で、
「情報がすぐに古くなってしまう」
「2、3年ごとにリニューアルするのが大変」
「会社の様子をリアルタイムで発信したいが、サイトの更新に時間がかかる」
といった、採用サイトに関する悩みを感じている方もいらっしゃるのではないでしょうか。実際、私たち株式会社パラドックスにも上記のようなお悩みを持ったお問い合わせをいただくことが多くあります。
あらゆる採用コミュニケーションの受け皿にもなる採用サイトは、採用活動においてもちろん必要不可欠な存在。そこにどうすれば、上記の弱点を克服できるのか。
そのひとつの答えが、採用サイトに“情報の発信” と“積み重ね”の要素を付け加える「採用オウンドメディア」という形です。
筆者である私もパラドックスのディレクターとして、当メディアを含め、いくつかのオウンドメディアの設計や運営に携わってきました。
その経験を踏まえても、オウンドメディアのいいところを採用サイトに組み込むことで、上記で上げた「更新性の低さ」や「リニューアルの必要性」といったことを補えると実感しています。
「企業が目指す未来を実現するための同志集め」という採用サイトの目的はそのままに、採用オウンドメディアとして企業の情報をどんどん積み重ねていくことで、採用におけるブランド力は強化され、その企業と本当に合う人たちが集まることにつながるでしょう。
今回の記事では、採用オウンドメディアにおける
必要性
効能
事例
作り方
注意するポイント
について徹底的に解説していきます。
これまでの採用活動に行き詰まりを感じている方や中長期的に攻めた採用活動を行っていきたい方は、ぜひご覧いただけますと嬉しいです。
※採用ブランディングの詳細はこちらよりご覧いただけます。
→「企業の成長に必要不可欠な同志が集まる「採用ブランディング」を徹底解説。」
※通常の採用サイトの詳細はこちらよりご覧いただけます。
→「母集団の質が上がる!本当に合う仲間が集まる採用サイトの作り方」
1:なぜ、採用オウンドメディアが増えているのか
一昔前までは、採用オウンドメディアを持っている企業はありませんでした。しかし、最近では通常の採用サイトはもちろん、リアルタイムな情報を独自でどんどん更新していくことができる採用オウンドメディアを持つ企業が増えてきています。
一体、なぜでしょうか。
理由は大きく2つ。「マス媒体の弱体化」と「メディアの民主化」によるものだと考えられます。この2つ背景を知っておくと、オウンドメディアにおける価値の本質が理解しやすくなります。
1-1:マス媒体の弱体化
2000年初頭ぐらいまでは、テレビや新聞に代表されるようないわゆるマス・マーケティングが大きな影響力を持っていました。
そこでは、情報の加工や発信タイミングの選択を情報の送り手側が行うことが可能です。一方、受け手側は他に情報源があるわけでもなく、情報の送り手と受け手に一定の格差がありました。
しかし、最近ではテクノロジーの進化により、マスにとらわれないあらゆる情報が世の中にあふれています。好きなところから、好きな情報を取得できることが可能になり、受発信者における情報の格差は崩れていきました。
当然こういった状況においては、不特定多数に向けて発信された情報はあまり見てもらえないですし、信頼もされません。特にパーソナル性の強い採用におけるコミュニケーションなら、なおさら難しいものになります。
1-2:メディアの民主化
いま、ご説明したようにインターネットやテクノロジーの進化がすると、これまでテレビや新聞の専売特許であった情報の発信が、一企業でも一個人でもできるようになりました。これがメディアの民主化です。
誰もが発信者となった世界では、とにかく情報があふれかえっています。その数を数値に表すと35ZB(ZB:ゼタバイト。1ZB=世界中の浜辺の砂の数)と言われています。
そんな状況の中、これまでと同じ情報発信をしていても、本当に狙った相手に情報を届けることは簡単ではありません。それにも関わらず、特に採用においては、ピンポイントで情報を届ける必要があります。
改めて、企業自身が“自社らしさ”をしっかり理解し、自らの手でメディアを持ち、スピーディーに情報を扱っていくことが、情報を届ける上で非常に大切です。
このような「マス媒体の弱体化」、「メディアの民主化」による世の中の変化により、自社でしっかりと採用力の向上を目指すべく、オウンドメディアを持つ企業が増えているのです。
1-3:データで見る採用オウンドメディアの効果
採用オウンドメディアを導入したことで、本当に効果があるのかと気になる方も多いかと思います。
たしかに、オウンドメディアとなると日常的に運用も必要ですし、ある程度のパワーやリソースはかかりますから、効能は気になりますよね。
2019年下旬にIndeedが実施したオウンドメディアリクルーティングについての調査がありますので、こちらを参考に紹介いたします。
<オウンドメディアの情報は求職者に届いているのか>
1-2でお話したように35ZBというとてつもない情報量の中で、採用オウンドメディアの情報はちゃんと求職者へ届いているのかという点ですが、こちらの調査では約8割以上の求職者が、就職および転職活動時にオウンドメディアを閲覧したというデータが出ています。
<採用オウンドメディアを導入したことで、応募者数・採用者数は増加するのか>
採用における効果として一番分かりやすくかつ重要にもなる点である応募者数と採用者数。
こちらは、採用オウンドメディアを導入している企業の約87%が、「応募者が増えていると感じている」と答えています。同時に約83%の企業が「採用者も増えていると感じている」と答えています。
採用オウンドメディアを導入していない企業の約40%も、「応募者が増えていると感じている」と答えているので、採用オウンドメディア以外にも様々な要因が起因していると思いますが、採用オウンドメディアによる効果はとても大きいと推測することができます。
<採用オウンドメディアによるミスマッチは起こらないか>
採用オウンドメディアによってミスマッチを防ぐことができるかという点は、採用の質を考える上で気になるポイントだと思います。
こちらは、採用オウンドメディアを導入している企業の約68%が「入社後の定着率が高いと思う」と答えています。非導入企業による「入社後の定着率が高いと思う」との回答は約21%となっています。
採用オウンドメディアがあることで、求職者はその企業の仕事内容だけでなく、企業理念、雰囲気、価値観、らしさといった、より温度感の高い情報を取得することができるので、このようなデータが出ていると考えられます。
2:採用オウンドメディアの効果
上記1-3のデータにあるように、採用オウンドメディアはその企業の採用ブランド力を向上させることで、様々な採用課題を解決に導いてくれます。
しかし、効果が期待できるのは採用面だけではありません。採用オウンドメディアは、メディアを運用する過程で、コーポレートブランディングや企業理念の浸透といったインナーブランディング、さらには商品・サービスブランディングにも効果を発揮するのです。
各方面、どのような効果があるのか、ひとつずつ見ていきましょう。
2-1:採用ブランド力の向上
採用オウンドメディアでは、通常の採用サイトにはないたくさんのメリットを得ることができますが、その最大のメリットは「独自の情報発信」と「情報の積み重ね」にあります。
なぜなら、この「独自の情報発信」と「情報の積み重ね」こそが、その企業の採用ブランド力を高め、求職者の信頼に大きな影響を及ぼすからです。
みなさんは、差積化という言葉を聞いたことがありますでしょうか?
差積化とは、主にブランディングの文脈で使われる言葉で、「継続的にその企業やブランドの独自の価値を提供し続ける活動であり、中長期的に付加価値を積み上げていくこと」を意味します。
似ている言葉に差別化がありますが、こちらはいわゆる他との違いや有利なポイントをつくり、際立たせていくことです。
ただ、差別化はありとあらゆる企業、商品、サービスが毎日のように登場する現代社会においては、そもそも大きな違いを生むことができなかったり、真似をされたり、と徐々にコモディティ化する傾向にあります。
これは採用活動および採用サイトづくりにも同じことが言えます。つまり、採用競合との差別化を意識して数年おきに一から作り替えるのではなく、同じサイトに採用コンセプトに基づいた独自の新情報をどんどん積み重ねていくという差積化の考え方でサイトを運用する方が、より強固なブランドが築かれていくことに繋がるのです。
また、常時あらゆる情報の発信と積み重ねを行うことが可能なため、
新卒採用サイト、中途採用サイトなど、サイトを個々に分ける必要がなくなる。
特に中途採用に見られる通年採用にも対応ができる。
という強みもあります。
2-2:企業ブランド力の向上
採用活動を通じて、その企業に本当に合う同志に集まってもらうためには、企業のミッションやビジョン、企業理念に基づいた独自のストーリーを語ることが必要です。
そのため、採用オウンドメディアの軸にはその企業のミッションや実現したい未来であるビジョンをひとつのストーリーとして据えるようにしましょう。
その上で、採用オウンドメディアを運用すると、自分たちのアイデンティティを軸にした情報発信ができ、それらが資産としてストックされていきます。
最終的には、自社の良さを自分たちで見つけ、外部リソースに頼ることなく、自社ブランディングを推進できるようになるのです。
2-3:インナーブランディング(理念浸透)の促進
企業もある程度の規模感になると、他部署の様子がわかりづらくなったり、一体感が薄れていったりする場合があります。
実際に、社員数が増えるうちに、会社の理念やらしさを大切にした仕事が減ってしまっている、と感じている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そのようなシーンにおいて、採用オウンドメディアはインナーブランディング(理念浸透)を促進させる効果を発揮します。
採用オウンドメディアの運用面で一番大切なことは、コンテンツを継続的にアップすることです。
コンテンツをアップし続けるということは、社員自ら企業のアイデンティティに基づいてコンテンツを企画、制作していくことになります。
すると、社員一人ひとりが自分のいる企業のらしさや価値観を認知、共感し、日々の仕事においても実践できるようになります。
採用オウンドメディアでは、様々な社員を巻き込むことで多様なコンテンツが生まれていきますので、それだけ企業のアイデンティティに改めて触れる人は多くなり、インナーブランディング(理念浸透)の促進に繋がるのです。
2-4:商品・サービスブランド力の強化
採用オウンドメディアには、その企業が扱う商品やサービスに関するコンテンツも掲載されることでしょう。
その際は、ただその商品の機能に触れるだけでなく、その商品の背景にある作り手の想いやストーリーを発信していくことを心がけてみてください。
似たような機能や価格の商品・サービスがあふれる現代においては、その商品・サービスにしか語れない独自の思想やストーリーが、人の心を大きく動かす要因となります。
また、コンテンツマーケティングの視点も取り入れ、ユーザーが潜在的に抱えている悩みに、どのような解決策を提示できるのかという仕立てにすることで、採用オウンドメディアでありながら、新たな顧客との出会いを創出する可能性も期待できます。
3:成功している採用オウンドメディア事例
採用オウンドメディアを導入している企業はまだそこまで多くはありませんが、すでに導入している企業は着実に運用を続け、成果もだしています。
また、大手、中小、ベンチャー関係なく、様々な規模感の企業が採用オウンドメディアの運用を日々実践しています。いくつか実際の例をご紹介していきます。
<事例1>:メルカン(他社事例)
出典:https://mercan.mercari.com/
株式会社メルカリのオウンドメディア“mercan(メルカン)”は、「メルカリの人を伝える」をコンセプトに、グループ内で活躍するメンバーや会社内で起きていることを記事や動画といった様々なコンテンツを通して発信しています。
人を軸にしつつもその内容は多様で、プロダクトのつくり手の想いに迫ったインタビューやサービスリリース時のイベントレポートなど、メルカリの今がリアルタイムで分かるようになっています。
また、メルカリの「新たな価値を生みだす世界的なマーケットプレイスを創る」というミッションとも紐づけられており、メルカリで働こうと考えている人は“mercan”を通してメルカリのことを深く知ることができるようになっています。
<事例2>UB JOURNAL(他社事例)
出典:https://journal.uzabase.com/
経済情報メディア“Newspicks”などで知られる株式会社ユーザベースは、「UB Journal」というオウンドメディアを運営しています。
UB Journalでは、各事業によってコンテンツがセグメントされており、どのような想いやこだわりを持って仕事をしているのか、また何に挑戦しているのかといったことが、各人によって語られるという内容になっています。
また、社内のカルチャーや若手が登場するコンテンツなど、ユーザベースで働くことをイメージできるようにもなっています。
UB Journalの説明に「挑戦する人を後押しするコーポレートメディア」とあるように、採用ブランドも企業ブランドも共に向上させるオウンドメディアとして機能しています。
<事例3>THE BAKE MAGAZINE(他社事例)
出典:https://bake-jp.com/magazine/
『お菓子を、進化させる。」というミッションをかかげ、「BAKE チーズタルト」「ZAKUZAKU」「RINGO」など、原材料にこだわり、手間をかけたお菓子を生み出している株式会社BAKEでは、『THE BAKE MAGAZINE』というオウンドメディアを運営しています。
ここには、単純な「商品説明」といったものはなく、各商品における開発秘話やこだわりのインタビュー記事、パートナー企業のストーリーなど、掲載されています。
また、接客、開発、工場、コーポレート、などBAKEにいる様々な人の働く様子がわかるコンテンツも多数用意されており、会社のビジョンに向けて各メンバーがどのような日々を過ごしているのかが掴みやすくなっています。
エントリーへの導線もわかりやすく、気になったらすぐに採用詳細を確認できるように設計されています。
4:採用オウンドメディアづくりと運用のポイント
採用オウンドメディアを持つ企業が増えている背景やその効果についてお話をしてきましたが、採用オウンドメディアはただ作れば効果が出るというわけではありません。
むしろ、ただ闇雲に制作、運用してしまうと、パワーがかかった割に効果が出ないという悲しい結果を招いてしまうこともあります。
ここでは、失敗しない採用オウンドメディアをポイントを一からご説明をしていきますので、読み飛ばさずに、ぜひひとつずつ実践していただければと思います。
<Point1>:コーポレートアイデンティティを構築
採用オウンドメディアおよびコンテンツを作るにあたって、かならず必要となる大事な軸があります。それが、コーポレートアイデンティティです。
企業によってはミッション・ビジョン、企業理念と名称で存在しているかもしれません。
採用においても、事業においても、機能面では大きな違いがなくなってきている現代においては、その企業にしか語ることのできないストーリーや存在意義、つまりコーポレートアイデンティティに基づいて話をすることが、採用・企業ブランド力向上に非常に大切です。
すでにコーポレートアイデンティティが確立されている企業は問題ありませんが、もし自社のアイデンティティが曖昧であったり、古くなっていたり、そもそもなかったという場合は、ぜひ、そこから考えてみることをおすすめします。
※パラドックスが考えるコーポレートアイデンティティについては下記の記事からもご覧いただけます。
→「会社のらしさを一発で伝えるコーポレートアイデンティティ(CI)の作り方」
<Point2>:コーポレートアイデンティティを軸にコンテンツを制作
コーポレートアイデンティティが固まったら、サイト全体およびコンテンツを設計、制作していきましょう。パラドックスでは下記の5つの要素を持ったコーポレートアイデンティティを推奨しております。
ミッション:日々果たすべき使命
ビジョン:実現したい未来
バリュー:約束する価値・強み
スピリット:大切にすべき精神
スローガン:ブランドの合言葉
それぞれの要素を採用オウンドメディアに落とし込んでいきましょう。
採用オウンドメディアのど真ん中となるコンセプトやトップに表示させるコピーは、ミッション(日々果たすべき使命)やビジョン(実現したい未来)から抽出することをおすすめします。
また、コンテンツでも同様に5つの要素を意識しながら、採用候補者に向けてその企業が仕事を通じて世の中に提供している価値やそこに込めた人の想いを届けていきましょう。
“コンテンツの切り口:CIと掛け合わせる7つの要素”
- 事業内容・ビジネスモデル:商品・サービスの特徴
- 仕事内容:働き方、仕事内容の特徴
- 人的魅力:働く人におけるキャラクターの特徴
- 組織・風土:企業文化における特徴
- 会社基盤:知名度、企業規模、売上・利益といった特徴
- 施設・環境:施設やオフィスといったハード面、勤務地などの特徴
- 給与・福利厚生:給与・福利厚生における特徴
<番外篇>:コンテンツ制作のコツ
オウンドメディアにおけるコンテンツというと、イメージとしてあげられるものにSEOのテクニック的なスキルがあると思います。
たとえば、
キーワードをたくさん入れた方がいい
投稿時間は19時ごろがいい
画像は多用した方がいい
親近感の湧く表現の方がいい
などです。
もちろん、上記のようなことを意識するのも大切ですが、優先度でいうと2番目くらいにしておくのが望ましいです。
“良質なコンテンツとは”
コンテンツマーケティングで有名な株式会社Lucyが運営するバズ部というオウンドメディアでは、良質なコンテンツを『ユーザーが120%満足し生活の質を劇的に向上させるコンテンツ』と定義しています。
120%の満足とは、ユーザーの中で顕在化しているニーズだけでなく、「そう!これが知りたかった!」と思えるような潜在ニーズまでを届けられるかどうか。また、生活の質の向上は、ユーザーの短期的な幸せではなく、長期的な視点でユーザーの幸福が考えられているかということです。
つまり、採用オウンドメディアの場合も、求職者が本当に知りたい情報をわかりやすく届けられているだろうか、求職者の幸せを願って作られたコンテンツだろうか、という点を確かめながらコンテンツ制作を行ってみてください。
<Point3>:運用を続ける
Step2である程度コンテンツを決めたら、あとは根気よく運用を続けていきましょう。採用オウンドメディアの成功の可否を左右するのは、コンテンツの質と量に他なりません。
まず、量の側面から言いますと、月に4本以上記事をアップすることを目標にしてみてください。だいたい週に一記事のペースです。
一般的なコンテンツマーケティングの観点では、効果を生むオウンドメディアとしてある程度の認知を確立するためには、約100本のコンテンツが必要だと言われています。100本という目標を1年で達成する想定にした場合は月に8本をアップということになります。
ただ、採用オウンドメディアに関して言えば、やみくもにPV数を伸ばすことよりも、その企業に本当に合う仲間に少しでも会社のことを知ってもらい、応募してもらうことの方が大切です。ですので、無理なくコンスタントに続けられる量でスタートするようにしましょう、
一方の質についてですが、頑張って週一ペースでコンテンツをアップできたとしても、コンテンツ自体が良くないと人が集まるメディアにはなりません。質につきましては、上記の番外編でもお伝えしたように、ユーザーが120%満足できるように、潜在ニーズまで深く考えてコンテンツを作ることを意識してみてください。
理想で言いますと、社内外へのコミュニケーション全般を担う専門チームを社内で立ち上げ、自社運営していく状態が出来上がることが非常に望ましいです。
<Point4>:エントリーに繋げる(CTA)
採用オウンドメディアで成果をあげるためには、コンテンツのアップに合わせて、エントリーへの導線強化を行っていくことも大切です。
たとえば、
トップページやグローバルメニューにエントリーのボタンをわかりやすく表示する。
各コンテンツの記事下にCTA(Call To Action:読み終えた人に次の行動を促す場所)を設けてエントリーに繋げる。CTAは、たとえば職種ごとに作る。
出典:https://mercan.mercari.com/
※株式会社メルカリのオウンドメディア”mercan”では、記事の最後に関連する求人情報が掲載されています。
このような導線を改善、改修を繰り返しながら運用を行い、エントリーへの流入を高めていきましょう。また、1年ほど運用した後に、エントリーの数を分析することで、どのコンテンツをアップデートすべきかということも見えてきます。
5:オウンドメディアに関するよくある質問
採用オウンドメディアを初めてつくる際は、たくさんの疑問があると思います。こちらに、私たちがよくいただくご質問をまとめますので、ぜひ、ご参考にしてみてください。
Q1:採用サイトと採用オウンドメディアは違いは?
冒頭部分のおさらいにもなるのですが、採用サイトと採用オウンドメディアにおける1番の違いは“情報の発信” と“積み重ね”の2点です。
基本的に採用サイトは一度つくったら、コンテンツを頻繁に更新することはなく、2〜3年経ったらリニューアルするというのが、一般的だと思います。
一方の採用オウンドメディアは、常にコンテンツを制作、発信していくことが可能です。また、数年後に一からリニューアルを行うことはなく、コンテンツをどんどん積み重ねていくことが価値となる考え方をします。
Q2:採用オウンドメディアはコーポレートサイトなど他サイトと分けてつくるべきか?
基本的には分けることをおすすめしています。なぜなら、“求職者向け”とターゲットがはっきりしていた方が、メディアに掲載するコンテンツが明確、鮮明になるからです。
ただ、2章でお話したように、採用オウンドメディアをより企業ブランディングの向上にも機能させたい場合は、コーポレートサイト内に設置しても問題はありません。
ターゲットをどこまで広く取るか、メディア運用のプロジェクトメンバーの所属部署など、色々な要因を鑑みて、設置場所を決めていきましょう。
Q3:コンテンツはどのくらいの頻度であげるべきか
4章のおさらいにはなりますが、ひと月にアップするコンテンツの数は、まずは月4本を目標にしましょう。リソースに余裕がある場合は、もちろん4本以上アップできると望ましいです。
ただ、量か質かでいうと、質の方が優先度は高いです。量に意識が向きすぎてコンテンツ自体が良くないと、せっかく記事はアップしているのに人が集まるメディアにはなりません。
量と質のバランスを意識しながら、月4本以上を目指してみてください。
Q4:どのくらい運用したら効果はでるのか?
このご質問については、その時の採用市場やその企業の業界、求めている人材など、様々な要素があるので、一概にお答えするのは難しいのですが、最初の目安としては1年〜2年経ったタイミングでの効果を重視することをおすすめしています。
月4本のコンテンツアップを1年〜2年継続していれば、コンテンツ数も約50〜100本ある状態ですので、メディアとしても効果を測定できる状態となっているからです。
企業によっては、1年経たないタイミングで応募者の多くが採用オウンドメディアのコンテンツを読んでおり、強力な応募材料になっているというケースもあります。
毎月、PV数の確認や採用応募者へのヒアリングを行いながら、1年〜2年後のタイミングで効果を分析してみてください。
6:オウンドメディア制作にあたっての注意点
軌道に乗ればあらゆるシーンで効果を発揮する採用オウンドメディアですが、残念ながら失敗してしまうケースもあります。
ただ、失敗するケースはある程度パターンがありますので、事前にそのパターンを知り、日頃から注意していればなんの問題もありません!
いまから、採用オウンドメディアを立ち上げようと思っている方は、ぜひ、下記の2点をおさえておいてください。
6-1:目的の曖昧化
採用オウンドメディアが失敗してしまうパターンの1つ目が、目的の曖昧化です。特にオウンドメディアは長期で運用していくものなので、サイトの成長具合、担当者の変更といった要因でいつの間にか当初の目的がないがしろにされてしまうケースも少なくありません。
また、PV数やコンテンツのアップ数など、分かりやすい数値目標だけをいつの間にか追ってしまい、そもそもの目的がないがしろになるパターンもあります。
採用オウンドメディアを立ち上げる際は、まず最初に「なぜ、このサイトをつくり、運用していくのか」という目的をじっくり検討するようにしましょう。ここにたくさんの時間をかける分には全く問題ありません。プロジェクトに関わるメンバー一同がしっかりと納得できるまで考えることが大切です。
できあがった目的は、「メディアミッション」として言語化しておくこともおすすめです。日々運用する中で、何か迷いが生じた際に立ち返ることができるようにしておきましょう。
6-2:リソースに対する無理な目標設定
もう1つのよくある失敗例はリソースに対しての無理な目標設定です。結果を早く出したい気持ちもわかるのですが、オウンドメディアは「とにかく継続すること」と「コンテンツの質」の両輪がなによりも大切です。無理のない目標を設定し、いかに持続可能性を担保するかを意識してみてください。
たとえば、オウンドメディア以外仕事も兼任している3人のチームに対して「コンテンツ毎日更新!」「初月10万PV!」という無理な目標を掲げたとしましょう。
おそらく、
毎日なんとか記事をアップすることが目的に変化
↓
一つひとつのコンテンツの質が低下
↓
PV数の伸び悩み
↓
大変だが成果は出ない
という悪循環に陥ることと思います。
チームの人的リソースやこのプロジェクトにかけられる予算を正しく把握し、長期的かつ高品質に運営できる目標設定を心がけましょう。
社内リソースだけでの運営が難しい場合は、社外のライターさんにオウンドメディアの目的や意図をしっかりと共有した上で、コンテンツをつくってもらうというのも、ひとつの方法です。
7:まとめ
いかがでしたでしょうか。
最後にもう一度まとめますと、採用オウンドメディアとは「独自の情報発信」と「情報の積み重ね」を強みとして、採用ブランド力を強化していきます。結果として採用応募者の増加やミスマッチの減少などが、データにも表れています。
また、運用の仕方によっては、インナーブランディングの促進や商品・サービスブランディングの強化といった企業ブランディング全体における効果も期待することができます。
実際に採用オウンドメディアを制作、運用する際は、メディアの目的をしっかりと設定し、コーポレートアイデンティティに基づいたコンテンツを継続的にアップすることを心がけてみてください。
ここまでお付き合いいただきまして、ありがとうございました。採用面はもちろん、企業全体のブランディングを向上させるオウンドメディアが出来上がることを願っています。
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